増えていく情報の族 (Ft)(\mathcal{F}_t) が与えられたとき、すべての tt で XtX_t が Ft\mathcal{F}_t に可測なら、確率過程 XX は (Ft)(\mathcal{F}_t) に適合しているといいます。ブラウン運動の場合、情報は、時点 tt までのブラウン運動の動きで張られるものを取ることが多いと、重川の講義資料は書いています1。MIT の資料の言い方では、各時点 tt の値が、s≤ts \le t の XsX_s だけに依ります2。

たとえば、各時点の価格 XtX_t そのものや、min⁡{Xt,c}\min\{X_t, c\} は適合しています。期間全体の最大値 max⁡0≤t≤TXt\max_{0 \le t \le T} X_t は、tt の時点ではまだわからない将来の価格を含むため、適合していません。売買の量を決める戦略も、将来の価格を見て決めると成り立たないため、適合している必要があります2。

適合した被積分関数の伊藤積分は、2 乗可積分などの条件のもとでマルチンゲールになります2。LIBOR マーケット・モデルでも、フォワードレートのドリフトとボラティリティは適合過程として置かれます3。

注

  1. 重川一郎「数理ファイナンス入門」(京都大学、2009 年愛媛大学理学部集中講義)の 42 ページ(6 章「ブラウン運動」の確率過程の定義。「(Ft)(\mathcal{F}_t)-適合であるという」)。同じ節の末尾に、ブラウン運動で張られる情報を取ることが多いことが書かれている。 ↩

  2. Massachusetts Institute of Technology「Lecture 18: Itō Calculus」の 4〜5 ページ、定義 2.1(適合過程)、例 2.2、その後の売買戦略の説明、定理 2.3。例 2.2 (iii) は、期間の最大値が適合していないこと。 ↩ ↩2 ↩3

  3. Martin Haugh「Market Models」(Columbia University、Term Structure Models: IEOR E4710、2010 年)の 6 ページ、式 (14) の直後(μn(t)\mu_n(t) と σn(t)\sigma_n(t) が adapted processes であること)。 ↩