確率微分方程式 dXt=μt dt+σt dWtdX_t = \mu_t\,dt + \sigma_t\,dW_t では、μt dt\mu_t\,dt の項の係数 μt\mu_t がドリフトです。ドリフトが定数 μ\mu で、σ\sigma も定数なら、Xt=μt+σWtX_t = \mu t + \sigma W_t で、MIT の資料はこれを、ドリフト μ\mu のブラウン運動と呼びます。期待値は E[Xt]=μtE[X_t] = \mu t で、WtW_t の項は平均に効きません12。

たとえば、μ=2\mu = 2(1 年あたり)、X0=100X_0 = 100 なら、3 年後の期待値は 100+2×3=106100 + 2 \times 3 = 106 です。実際の値は、WtW_t の動きの分だけ、これより上にも下にもなります。

ドリフトは定数でなくてもよく、現在の値に依る形にもできます。ハル・ホワイト・モデルの短期金利のドリフトは θ(t)−art\theta(t) - a r_t で、水準 θ(t)/a\theta(t)/a に向けて引き戻す平均回帰を表します3。また、同じ過程でも、確率の測度を取り替えるとドリフトが変わります。LIBOR マーケット・モデルでは、満期 TM+1T_{M+1} の割引債を基準にしたフォワード測度で、最後のフォワードレートのドリフトは 0 になり、ほかのフォワードレートのドリフトは 0 になりません4。

注

  1. Massachusetts Institute of Technology「Lecture 18: Itō Calculus」の例 1.3 (i)(2 ページ)と、3 章 Change of measure(5〜7 ページ)。本文は、資料の BtB_t を WtW_t に置き換えています。 ↩

  2. Massachusetts Institute of Technology「Lecture 17: Stochastic Processes II」の例 2.6(5 ページ。ドリフト μ\mu のブラウン運動の期待値が E[X(t)]=μtE[X(t)] = \mu t であること)。例の計算は、この式による。 ↩

  3. 「Interest Rate Modelling and Derivative Pricing」(Humboldt-Universität zu Berlin、Sebastian Schlenkrich、2020/21 年冬学期)の Part IV、スライド p. 254(ハル・ホワイト・モデルの式 dr=(θ(t)−ar) dt+σ dWdr = (\theta(t) - a r)\,dt + \sigma\,dW)。θ(t)/a\theta(t)/a が水準であることは、式からの導出による。 ↩

  4. Martin Haugh「Market Models」(Columbia University、Term Structure Models: IEOR E4710、2010 年)の 6 ページ、式 (14) と、8 ページ、式 (24) と (25)、Remark 3。 ↩