満期の短いオプションのスマイルに、価格の急な飛びが織り込まれている可能性があるとき、評価の担当者は、拡散だけのモデルでどこまで説明できるかを確かめる必要が出ます。

拡散に足すジャンプ

ブラック・ショールズ・モデルは、原資産価格が連続に動き続けると置きます。日本銀行金融研究所の資料は、円・ドル為替レートと日経平均株価指数の収益率の尖度が、正規分布の 3 を上回る例を示し、拡散だけで動くという仮定は必ずしも適当でないとしています1。ジャンプ拡散モデルは、この連続の動き(拡散)に、ときどき起こる価格の飛び(ジャンプ)を足したモデルです。マートンは、ジャンプの大きさに対数正規分布を置いて、ヨーロピアン・オプションの価格を式で求められる形にしました2。

ジャンプが 1 回起こると価格は JJ 倍になるとし、ジャンプで価格が平均して動く割合を k=E[J]−1k = E[J] - 1 とします。配当のない原資産の価格 StS_t は、リスク中立確率の下で次の式に従います。

dStSt−=(r−λk) dt+σ dWt+(J−1) dNt\frac{dS_t}{S_{t-}} = (r - \lambda k)\,dt + \sigma\,dW_t + (J - 1)\,dN_t

St−S_{t-} はジャンプの直前の価格、rr は金利です。WtW_t は標準のブラウン運動で、拡散を作ります。NtN_t は強度 λ\lambda のポアソン過程で、ジャンプが起こった回数を数えます。JJ はジャンプのたびに独立に抽出し、WtW_t、NtN_t、JJ は互いに独立です3。強度 λ\lambda のポアソン過程では、時間 tt の間にちょうど nn 回のジャンプが起こる確率は e−λt(λt)n/n!e^{-\lambda t}(\lambda t)^n/n! です4。

マートンのモデルは、JJ の対数が平均 μJ\mu_J、標準偏差 δ\delta の正規分布に従う(JJ が対数正規分布に従う)と置きます。このとき kk は、次の式で決まります2。

k=E[J]−1=eμJ+δ2/2−1k = E[J] - 1 = e^{\mu_J + \delta^2/2} - 1

モデルのパラメータは次の 4 つです。

記号 名前 役割
σ\sigma 拡散のボラティリティ ジャンプを除いた連続の揺れの大きさ。一定
λ\lambda ジャンプの強度 1 年に平均 λ\lambda 回のジャンプが起こる
μJ\mu_J ジャンプの対数の平均 ジャンプの大きさの中央値の対数。負なら下向きのジャンプが多く、正なら上向きが多い
δ\delta ジャンプの対数の標準偏差 ジャンプの大きさのばらつき

向きの言い方は 2 通りあります。μJ\mu_J の符号はジャンプの向きの多さを表し、kk の符号は、平均して価格を上げるか下げるかを表します。k<0k < 0 になるのは μJ<−δ2/2\mu_J < -\delta^2/2 のときで、μJ=0\mu_J = 0 では k>0k > 0 です。

リスク中立のドリフトの補正

式のドリフトが rr でなく r−λkr - \lambda k なのは、ジャンプの項が平均して価格を動かす分を、あらかじめ引いておくためです。JJ と NtN_t は独立なので、E[(J−1) dNt]=λk dtE[(J-1)\,dN_t] = \lambda k\,dt になります。これを引くと、価格の期待される増え方が金利 rr になり、割引価格 e−rtSte^{-rt}S_t がマーチンゲールになります5。

k<0k < 0(平均では価格を下げるジャンプ)なら、−λk-\lambda k は正です。ジャンプが起こらない間、価格は rr より速く上がり、ときどき下へ飛んで、平均では rr に戻ります。

ジャンプのあるオプションは、原資産と預金だけでは一般に複製できません。不確実性がブラウン運動とポアソン過程の 2 つあり、市場が完備でないためです。マートンは、ジャンプのリスクは分散でき、リスク・プレミアムは要求されないと仮定しました。この仮定の妥当性には議論があります6。市場の価格に合わせるときは、λ\lambda、μJ\mu_J、δ\delta を、リスク中立確率の下のパラメータとして扱います7。

ジャンプの回数で分けた価格式

ジャンプの回数が nn 回と決まれば、満期の対数価格は正規分布に従います。そのため、条件を付けた価格は、ボラティリティと金利を置き換えたブラック・ショールズの式になります。ヨーロピアン・コールの価格は、nn ごとの価格を、次の重みで足し合わせた和です。重みはポアソン確率の形ですが、強度は実際のジャンプの強度 λ\lambda でなく λ′\lambda' で、実際の確率とは違います8。

C=∑n=0∞e−λ′T(λ′T)nn! CBS(S0,K,T,rn,σn)C = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{e^{-\lambda' T}(\lambda' T)^n}{n!}\,C_{BS}(S_0, K, T, r_n, \sigma_n)

CBS(S,K,T,r,σ)C_{BS}(S, K, T, r, \sigma) は、金利 rr、ボラティリティ σ\sigma のブラック・ショールズ・モデルのコールの価格です。KK は行使価格、TT は満期までの年数です。重みの強度 λ′\lambda' と、nn 回目の金利 rnr_n、ボラティリティ σn\sigma_n は、次のとおりです。

λ′=λ(1+k)\lambda' = \lambda(1+k) rn=r−λk+nln⁡(1+k)Tr_n = r - \lambda k + \frac{n\ln(1+k)}{T} σn2=σ2+nδ2T\sigma_n^2 = \sigma^2 + \frac{n\delta^2}{T}

nn 回のジャンプは、対数価格の分散を nδ2n\delta^2 だけ増やし、平均を nμJn\mu_J だけずらします。σn\sigma_n はその分散を、rnr_n は平均のずれと補正の −λk-\lambda k を、ブラック・ショールズの式に取り込む値です。ln⁡(1+k)=μJ+δ2/2\ln(1+k) = \mu_J + \delta^2/2 です。重みは足すと 1 になります。rr での割引と rnr_n での割引の差 e(rn−r)Te^{(r_n - r)T} は (1+k)ne−λkT(1+k)^n e^{-\lambda k T} に等しく、これをポアソン確率に掛けると、強度が λ\lambda から λ(1+k)\lambda(1+k) に変わります。nn が大きいほど重みは急に小さくなるため、nn を途中で打ち切って計算できます8。

深掘りジャンプの回数で条件を付ける導出

上の確率微分方程式の解は、対数価格で次のように書けます。

ln⁡ST=ln⁡S0+(r−λk−σ22)T+σWT+∑i=1NTln⁡Ji\ln S_T = \ln S_0 + \left(r - \lambda k - \frac{\sigma^2}{2}\right)T + \sigma W_T + \sum_{i=1}^{N_T} \ln J_i

NTN_T は満期までのジャンプの回数、JiJ_i は ii 回目のジャンプでの価格の倍率、WTW_T は満期でのブラウン運動の値です。NT=nN_T = n と条件を付けると、ln⁡ST\ln S_T は平均 ln⁡S0+(r−λk−σ2/2)T+nμJ\ln S_0 + (r - \lambda k - \sigma^2/2)T + n\mu_J、分散 σ2T+nδ2\sigma^2 T + n\delta^2 の正規分布に従います。金利 rnr_n、ボラティリティ σn\sigma_n のブラック・ショールズ・モデルでは、満期の対数価格の平均が ln⁡S0+(rn−σn2/2)T\ln S_0 + (r_n - \sigma_n^2/2)T、分散が σn2T\sigma_n^2 T です。2 つを等しくすると、上の rnr_n と σn\sigma_n が決まります。

このとき、条件付きの割引前の期待ペイオフは ernT CBS(S0,K,T,rn,σn)e^{r_n T}\,C_{BS}(S_0, K, T, r_n, \sigma_n) です。現在価値にするときの割引は、rnr_n でなく rr で行うため、e−rTernT=e−λkT(1+k)ne^{-rT}e^{r_n T} = e^{-\lambda k T}(1+k)^n が掛かります。これをポアソンの確率 e−λT(λT)n/n!e^{-\lambda T}(\lambda T)^n/n! に掛けると、

e−λT(λT)nn! e−λkT(1+k)n=e−λ′T(λ′T)nn!e^{-\lambda T}\frac{(\lambda T)^n}{n!}\,e^{-\lambda k T}(1+k)^n = \frac{e^{-\lambda' T}(\lambda' T)^n}{n!}

となり、重みが強度 λ′\lambda' のポアソン確率になります。ジャンプの回数で場合分けする手順は、資料の補論 2 のリスク中立化法と同じです9。

計算例

S0=100S_0 = 100、K=100K = 100、T=1T = 1 年、金利 r=1%r = 1\%、σ=15%\sigma = 15\%、λ=1\lambda = 1、μJ=−0.10\mu_J = -0.10、δ=0.10\delta = 0.10 のコールの架空の例で考えます。μJ+δ2/2=−0.095\mu_J + \delta^2/2 = -0.095 なので、k=e−0.095−1=−0.0906k = e^{-0.095} - 1 = -0.0906 です。重みの強度は λ′=1×0.9094=0.9094\lambda' = 1 \times 0.9094 = 0.9094、−λk=0.0906-\lambda k = 0.0906 です。nn ごとの値は次の表のとおりで、rn=1%+9.06%−9.5% nr_n = 1\% + 9.06\% - 9.5\%\,n、σn2=0.0225+0.01 n\sigma_n^2 = 0.0225 + 0.01\,n から出ます。

nn 重み σn\sigma_n rnr_n CBSC_{BS} 重み × CBSC_{BS}
0 0.402777 15.00% 10.06% 11.7102 4.7166
1 0.366274 18.03% 0.56% 7.4462 2.7274
2 0.166540 20.62% −8.94% 4.7109 0.7845
3 0.050482 22.91% −18.44% 2.9839 0.1506
4 0.011477 25.00% −27.94% 1.8956 0.0218
5 0.002087 26.93% −37.44% 1.2082 0.0025
6 0.000316 28.72% −46.94% 0.7726 0.0002

n=6n = 6 までの和は 8.4036、n=10n = 10 まで足すと 8.4037 で、以後は動きません10。rnr_n は、ジャンプの回数に合わせて割引と平均をそろえるための調整値で、実際の金利ではありません。ジャンプのない同じ条件のブラック・ショールズの価格は、ボラティリティ 15% で 6.46 です。ジャンプを足すと、オプションの価格は 1.94 高くなります。8.4037 をブラック・ショールズの式でボラティリティに直すと 19.92% で、ジャンプが 1 年に平均 1 回起こる分が、拡散の 15% に上乗せされた形です。

パラメータとスマイルの形

マートンの価格をブラック・ショールズの式でインプライド・ボラティリティに直すと、行使価格ごとに値が違います。上の例の条件で、満期ごとに行使価格 80 から 120 までを計算した値です。単位は % です11。

満期 行使価格 80 90 100 110 120
0.25 年 26.30 22.33 19.08 17.65 17.32
1 年 21.68 20.73 19.92 19.29 18.80
4 年 20.57 20.35 20.16 19.99 19.83

μJ\mu_J が負で、下向きのジャンプが多いので、行使価格が低いほどインプライド・ボラティリティが高い右下がりの形になります。行使価格の低いオプションほど、ブラック・ショールズの価格(ボラティリティ 15%)より大きく上乗せされるためです。満期 0.25 年では、行使価格 80 が行使価格 100 より 7.2 ポイント高く、満期 4 年では 0.4 ポイントです。満期が長いほど平らになるのは、ジャンプの回数が増えると、満期までの対数収益率の分布が正規分布に近づき、行使価格による差が小さくなるためです。差は 4 年でも残ります。水準も拡散の 15% には戻らず、4 年の行使価格 100 は 20.16% で、1 年の 19.92% より上です。日本銀行金融研究所の資料は、ジャンプが起こる回数が増え、ジャンプによる変動が平均してドリフトに吸収されるためと説明します12。

インプライド・ボラティリティ(%)0.25 年1 年ジャンプなし0510152025308090100110120現在の価格 100行使価格
図 1満期 0.25 年と 1 年のインプライド・ボラティリティ
図の説明

計算例の条件で、マートンの価格から逆算したインプライド・ボラティリティを、行使価格 75 から 125 まで描いた図です。満期 0.25 年の曲線は、行使価格が低いほど高い右下がりで、低い側ほど傾きが急です。右端の付近では、わずかに右上がりに戻ります。満期 1 年の曲線は、同じ向きでより平らです。2 本の曲線は行使価格 95 と 97.5 の間で交わり、これより低い行使価格では 0.25 年が高く、高い行使価格では 1 年が高くなります。縦線は現在の価格 100 の位置です。ジャンプのない場合の 15% は、行使価格によらず一定の水平線です。短い満期ほど、ジャンプが作る傾きと曲がりが大きいことを示します。

パラメータを 1 つずつ動かしたときの、満期 0.25 年のインプライド・ボラティリティを見ます。ほかは計算例の値のままです。μJ\mu_J と δ\delta を動かすと kk も変わり、補正の −λk-\lambda k も変わります11。

条件 行使価格 80 100 120
計算例(λ=1\lambda = 1、μJ=−0.10\mu_J = -0.10、δ=0.10\delta = 0.10) 26.30 19.08 17.32
λ=2\lambda = 2 30.54 23.00 19.53
δ=0.20\delta = 0.20 33.84 22.28 23.90
μJ=0\mu_J = 0 20.43 17.42 19.81
μJ=+0.10\mu_J = +0.10 17.62 19.78 26.19

λ\lambda を大きくすると、どの行使価格でも値が上がります。δ\delta を大きくすると、両端が持ち上がって曲がりが強くなります。傾きの向きは μJ\mu_J の符号で決まります。μJ=0\mu_J = 0 なら左右ほぼ対称のスマイルで、完全な対称ではありません。μJ=+0.10\mu_J = +0.10 なら、上向きのジャンプが多いので、右上がりになります。

ベイツのモデル

ベイツのモデルは、ヘストン・モデルの確率的ボラティリティに、マートンと同じ形のジャンプを足します13。リスク中立確率の下の式は、次のとおりです。

dStSt−=(r−λk) dt+vt dWtS+(J−1) dNt\frac{dS_t}{S_{t-}} = (r - \lambda k)\,dt + \sqrt{v_t}\,dW_t^{S} + (J - 1)\,dN_t dvt=κ(vˉ−vt) dt+ξvt dWtv,dWtS dWtv=ρ dtdv_t = \kappa(\bar v - v_t)\,dt + \xi\sqrt{v_t}\,dW_t^{v}, \qquad dW_t^{S}\,dW_t^{v} = \rho\,dt

vtv_t、κ\kappa、vˉ\bar v、ξ\xi、ρ\rho はヘストン・モデルと同じ記号で、ジャンプの λ\lambda、JJ、NtN_t、kk はマートンと同じです。ジャンプの平均 kk は、平均回帰の速さ κ\kappa とは別の量です。ここでは、ジャンプの回数と大きさは、2 つのブラウン運動と独立と置きます。ヘストンの式、特性関数、半解析解はヘストン・モデルで扱います。

この仮定の下で、満期の対数株価は、ヘストンの部分とジャンプの部分の和で、2 つは独立です。独立な確率変数の和の特性関数は、それぞれの特性関数の積なので、ベイツのモデルの特性関数は次の形になります14。

φBates(u,T)=φHeston(u,T)⋅exp⁡(λT(eiuμJ−δ2u2/2−1−iuk))\varphi_{\text{Bates}}(u, T) = \varphi_{\text{Heston}}(u, T)\cdot\exp\Bigl(\lambda T\bigl(e^{iu\mu_J - \delta^2u^2/2} - 1 - iuk\bigr)\Bigr)

φHeston\varphi_{\text{Heston}} は、ヘストン・モデルの記事の特性関数(配当なし)です。右の因子の中の eiuμJ−δ2u2/2−1e^{iu\mu_J - \delta^2u^2/2} - 1 が複合ポアソン過程の部分で、−iuk-iuk が補正の −λk-\lambda k に当たります。価格は、ヘストン・モデルと同じ積分の式 C=S0P1−Ke−rTP2C = S_0P_1 - Ke^{-rT}P_2 に、この特性関数を入れて求めます。λ=0\lambda = 0 ならヘストン・モデル、v0=vˉv_0 = \bar v のまま ξ→0\xi \to 0 として分散を一定にすれば、σ2=v0=vˉ\sigma^2 = v_0 = \bar v のマートンのモデルです。

ヘストン部分を v0=vˉ=0.0225v_0 = \bar v = 0.0225(ボラティリティ 15%)、κ=2\kappa = 2、ξ=0.2\xi = 0.2、ρ=−0.5\rho = -0.5、ジャンプを計算例と同じ λ=1\lambda = 1、μJ=−0.10\mu_J = -0.10、δ=0.10\delta = 0.10、S0=100S_0 = 100、金利 1% とする架空の例で考えます。ヘストンだけの場合と、ジャンプを足した場合のインプライド・ボラティリティ(%)は次のとおりです15。

行使価格 ヘストン(0.25 年) ベイツ(0.25 年) ヘストン(1 年) ベイツ(1 年)
80 18.13 26.63 16.91 22.33
90 16.40 22.90 15.71 21.09
100 14.81 19.14 14.66 19.89
110 13.65 16.58 13.84 18.75
120 13.23 15.96 13.29 17.73

ジャンプを足すと、どの行使価格でもインプライド・ボラティリティが上がり、行使価格が低いほど大きく上がります。満期 0.25 年では、行使価格 80 が 8.50 ポイント、120 が 2.73 ポイントです。日本銀行金融研究所の資料は、短期のオプションではジャンプを加えるとモデルの説明力が上がり、長期のオプションには確率的ボラティリティ・モデルが考えられるという先行研究の指摘を紹介しています12。ベイツのモデルは、両方を 1 つのモデルに持つ形です。このページの記号では、パラメータは 8 つ(v0v_0、vˉ\bar v、κ\kappa、ξ\xi、ρ\rho、λ\lambda、μJ\mu_J、δ\delta)です。

前提と限界

パラメータの値で、結果は大きく動きます。計算例で λ\lambda を 1 から 2 にすると、1 年のコールの価格は 8.40 から 10.03 に上がり、満期 1 年・行使価格 80 のインプライド・ボラティリティは 21.68% から 25.95% に上がります11。

マートンのモデルは、σ\sigma、λ\lambda、μJ\mu_J、δ\delta をすべて一定と置きます。そのため、満期が長くなるとスマイルが平らになり、市場で見られる長期のスマイルを説明し切れない可能性があります12。ボラティリティが動く効果は、ベイツのモデルのように確率的ボラティリティを足して取り込みます。

市場の価格に合わせる作業は、安定しません。DAX のオプションの価格に最小二乗法を当てた研究では、ジャンプの強度の出発点を 1 と 5 に変えただけで、合わせたジャンプの分布の形が別になりました。マートンのモデルでも、λ\lambda を増やして σ\sigma を下げると、誤差がほぼ同じ水準で残ります16。上の表でも、λ\lambda、δ\delta、μJ\mu_J のどれもが、スマイルの水準と形を一緒に動かします。合わせ込みの手順と過剰適合はキャリブレーションで扱います。

注

  1. 久田祥史「ジャンプ拡散過程を用いたオプション価格付けモデルについて」(外部サイト)(日本銀行金融研究所「金融研究」2003 年 6 月)の 2 節(53〜54 ページ)の図表 2。尖度は、円・ドル為替レート(1998 年 8 月〜1999 年 7 月)が 12.01、日経平均株価指数(2000 年 10 月〜2001 年 9 月)が 4.93 です。 ↩

  2. 久田祥史(外部サイト)の 3 節(2)(57 ページ)。ジャンプ幅率の対数が正規分布に従う場合を、マートン(1976 年)が解析解の求まる例としたこと、k=exp⁡(μJ+δ2/2)−1k = \exp(\mu_J + \delta^2/2) - 1(資料の記号は mJm_J、sJs_J)。 ↩ ↩2

  3. 久田祥史(外部サイト)の 3 節(1)(55〜56 ページ)の式 (1)。資料はドリフトを期待収益率 mm で書き、本文は mm をリスク中立の rr に置き換えています。 ↩

  4. 久田祥史(外部サイト)の補論 1(70 ページ)の式 (A-3)。 ↩

  5. 久田祥史(外部サイト)の 56 ページの注 10。複合ポアソン過程の期待値 λk dt\lambda k\,dt を引き、ドリフトへの影響を平均で 0 にします。Cont と Tankov(外部サイト) の 2.2 節(5 ページ)の式 (8) は、割引価格がマーチンゲールになる条件を、ドリフトの制約として示しています。 ↩

  6. 久田祥史(外部サイト)の 5 節(66 ページ)。不確実性が 2 つあると市場が不完備になること、マートンの仮定(ジャンプのリスクは分散でき、プレミアムは要求されない)と、その妥当性に議論があること。 ↩

  7. Cont と Tankov(外部サイト) の 2.2 節(5 ページ)。価格をリスク中立確率の下で St=ert+XtS_t = e^{rt + X_t} と置き、オプションの価格に合わせる枠組みです。 ↩

  8. 久田祥史(外部サイト)の 3 節(2)(57 ページ)の式 (2)。記号は本文に合わせています。Cont と Tankov(外部サイト) の 5 節(24 ページ)も、マートンのモデルのコールの価格を、重みが指数的に 0 に近づくブラック・ショールズの価格の重み付き和に展開できるとしています。 ↩ ↩2

  9. 久田祥史(外部サイト)の補論 2(72〜73 ページ)。リスク中立化法で、ジャンプの回数ごとの期待値を、回数の確率で足し合わせます。回数で条件を付けたときの平均と分散の合わせ方は、本文の式による計算です。 ↩

  10. 計算による。級数(n=40n = 40 まで)の値を、特性関数の数値積分で確かめています。 ↩

  11. 計算による。級数の価格から、ブラック・ショールズの式でインプライド・ボラティリティを逆算した値です。 ↩ ↩2 ↩3

  12. 久田祥史(外部サイト)の 3 節(2)(58 ページ)の図表 6 の説明。Bakshi, Cao and Chen(1997 年)の指摘の紹介を含みます。合計の分布が正規分布に近づくという説明は、資料でなく本文の計算(中心極限定理)によります。 ↩ ↩2 ↩3

  13. Bates のワーキング・ペーパー(外部サイト)(1993 年 12 月)の I 節の式 (1)(4 ページ)。分散の式の α−βV\alpha - \beta V、σv\sigma_v は、本文の κ(vˉ−v)\kappa(\bar v - v)、ξ\xi に当たります。掲載版は 1996 年の Review of Financial Studies 誌です。 ↩

  14. Bates のワーキング・ペーパー(外部サイト)の式 (9)〜(10)(10 ページ)。特性関数の指数が、ヘストンに当たる項とジャンプの項 λT[…−1]\lambda T[\ldots - 1] の和で、確率は式 (13) のフーリエ逆変換で求めます。ジャンプが 2 つのブラウン運動と独立という置き方は本文のモデルの仮定で、指数が和の形になる式 (9)〜(10) と整合します。ヘストンの部分はAlbrecher ほか(外部サイト)の 3 節(4 ページ)。 ↩

  15. 計算による。特性関数の数値積分で求めた価格を、モンテカルロ法(ヘストンの部分は 1 年を 400 刻みにした近似)と照らして確かめています。 ↩

  16. Cont と Tankov(外部サイト) の 3.1 節(13〜14 ページ)の図 1 と図 2。 ↩