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デリバティブ・コンパス

理解度チェック: 担保と XVA

最終確認日: 2026年9月26日

下書きです。公開前の確認のために表示しています。

「担保と XVA」の章の内容を確かめる 6 問の問題です。選択肢を選んで「回答する」を押すと、正解と解説が出ます。「正解と解説」を開いて、先に答えを見ることもできます。

  1. 問 1

    清算機関の日本証券クリアリング機構(JSCC)は、円の金利スワップを清算しています。JSCC の 2026 年 9 月時点の業務方法書と取扱いによると、この清算には、変動証拠金に利息を付けて受け渡す清算約定(担保型)があります。担保の付利で割り引く考え方に当てはめると、この変動証拠金でカバーした円の受け払いを割り引く金利はどれですか。

    正解と解説

    正解: B

    割り引く金利は、円の翌日物金利です。時価の全額を現金の担保で絶えずやりとりする取引では、将来の受け払いを担保に付く金利(付利)で割り引きます。時価がプラスの側は、受け取った担保に付利を払い、最後に全額を返します。付利の金利で資金を借りて持ち高をまかなうのと同じなので、割引の金利も付利の金利になります。JSCC の担保型では、円の清算約定の変動証拠金の利息の基準金利が、日本銀行が公表する無担保コールオーバーナイト物レートの加重平均値(TONA)です。この考え方に当てはめると、割引の金利は円の翌日物金利になります。

    Federal Funds Rate は、JSCC が米ドルの清算約定の利息に使う基準金利です。資金を調達する金利に合わせて評価するのは、担保のない取引です。通貨スワップの市場の差を加えるのは、受け払いと担保の通貨が違う場合で、この問いの前提には当たりません。

    詳しくは: 担保と割引カーブ

  2. 問 2

    架空の例として、銀行が、取引相手から 5 年後に円で決まった額を受け取る取引を持ち、時価はプラスです。クレジット・サポート・アネックス(CSA)では、担保を差し入れる取引相手が円かドルの現金を選べ、いつでも入れ替えられます。円の担保のときの割引の金利は年 1.00%、ドルの担保のときはそれより 0.40% 高く、どちらも一定とします。取引相手が担保の通貨を選んだあと、割引に使う金利は年何%ですか。

    正解と解説

    正解: C

    割引に使う金利は 1.40% です。ドルの担保のときの割引の金利は、円の担保のときの金利に、通貨スワップの市場から求める円とドルの差(+0.40%)を加えた値です。1.00% + 0.40% = 1.40% です。担保を差し入れるのは時価がマイナスの側で、時価の絶対値を小さくしたいので、割引の金利が最も高くなる通貨を選びます。取引相手は、1.00% の円ではなく 1.40% のドルを選びます。

    1.00% は、円の担保のままの金利です。割引の金利が低いほど銀行から見た今の価値は大きくなりますが、通貨を選ぶ権利は差し入れる側の取引相手が持っています。0.60% は、差を引いてドルの金利を求め(1.00% − 0.40%)、さらに割引の金利が低い通貨が選ばれるとした値です。

    取引相手がドルに入れ替えると、円の担保だけの契約と比べて、銀行から見た今の価値は小さくなり、その分が銀行の損になります。取引相手から見ると、負債の今の価値が同じ額だけ小さくなります。差が −0.40% なら、ドルの割引の金利は 0.60% で、取引相手は 1.00% の円を選びます。このとき今の価値は円の担保だけのときと同じです。この計算は金利を一定としており、差が変動することによるオプションの価値は入っていません。

    詳しくは: 担保と割引カーブ

  3. 問 3

    XVA は、信用リスクや担保を考えずに求めた時価(リスク・フリーの時価)に足し引きする調整の総称です。時価がマイナスで自社が払う側にある取引で、自社の信用力が下がり、DVA(Debt Valuation Adjustment)を同じ方法で計算し直しました。DVA と時価はどう変わりますか。

    正解と解説

    正解: A

    DVA は増え、時価は上がります。DVA は自社がデフォルトする可能性を反映する調整です。時価がマイナスで自社が払う側にあるとき、自社がデフォルトすれば支払いの一部を免れます。自社の信用力が下がるとデフォルトの可能性が高まり、免れる分が増えるため、DVA は大きくなって時価を引き上げます。同じ方法と入力で計算すると、自社の DVA は、取引相手から見た自社に対する CVA(Credit Valuation Adjustment)と大きさが同じで、符号が逆になります。

    取引相手の信用力で決まるのは CVA で、取引相手がデフォルトしない前提の時価と、デフォルトの可能性を加味した時価の差額です。CVA は時価を下げます。MVA(Margin Valuation Adjustment)は、差し入れる当初証拠金を資金調達するコストで、KVA(Capital Valuation Adjustment)は、規制資本を持つためのコストです。どちらも時価を下げます。各調整を 0 以上の金額で表すと、調整後の時価は、リスク・フリーの時価 − CVA + DVA − FVA − MVA − KVA です。DVA だけが足されるため、DVA が増えれば時価は上がります。

    詳しくは: XVA の全体像

  4. 問 4

    架空の例として、銀行の円の金利スワップの 1bp あたりの感応度は、5 年のテナー(期間の区切り)に +500 万円、10 年のテナーに −300 万円だけ出るとします。リスク・ウェイトは両方で 50bp、両テナーの相関は 0.6 で、どちらも SIMM が定める値ではありません。SIMM の手順(感応度にリスク・ウェイトを掛け、相関を使って足し合わせる)で求めた当初証拠金はいくらですか。

    正解と解説

    正解: C

    当初証拠金は 2.00 億円です。加重感応度は、5 年が 50 × 500 万円 = 2.5 億円です。10 年は 50 × (−300 万円) = −1.5 億円です。相関の項は、テナーを入れ替えた組を別に数えるため 2 倍にします。2 × 0.6 × 2.5 × (−1.5) = −4.5 です。当初証拠金は 2.52+(−1.5)2−4.5=4=2.00\sqrt{2.5^2 + (-1.5)^2 - 4.5} = \sqrt{4} = 2.00 億円です。

    2.50 億円は、相関の項を 2 倍にし忘れた値です(6.25+2.25−2.25\sqrt{6.25 + 2.25 - 2.25})。2.92 億円は、相関の項を入れずに計算した値で、相関が 0 のときの額です(8.5\sqrt{8.5})。1.00 億円は、加重感応度をそのまま足した値(2.5 − 1.5)で、相関が 1 のときの額と同じです。相関がプラスのテナーどうしで加重感応度の符号が反対なので、5 年と 10 年の加重感応度は一部を打ち消し合います。取引相手から見ると感応度の符号がすべて反対になりますが、式の中では符号がそろって入れ替わるため、取引相手が計算しても 2.00 億円です。

    詳しくは: 当初証拠金の標準モデル(ISDA SIMM)

  5. 問 5

    架空の例として、ある事業会社を参照するクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドが 120bp(1.2%)、回収率が 40% だとします。ハザード率はこの先も一定で、CDS のスプレッドと回収率から見積もる式(クレジット・トライアングル)で求めます。この事業会社が 2 年のうちにデフォルトする確率はいくらですか。

    正解と解説

    正解: B

    デフォルトする確率は 3.92% です。ハザード率は、CDS のスプレッドを損失率(LGD)で割った値で、LGD は 1 − 40% = 60% です。ハザード率は 1.2% ÷ 0.6 = 2.0% です。2 年後まで生き残る確率は、e−0.02×2=96.08%e^{-0.02 \times 2} = 96.08\% です。2 年のうちにデフォルトする確率は、1 − 96.08% = 3.92% です。

    4.00% は、ハザード率に年数を掛けた値(2.0% × 2)です。生き残った分にだけデフォルトが起きる点を数えていないため、少し大きくなります。2.40% は、LGD で割らず、スプレッドに年数を掛けた値(1.2% × 2)です。5.82% は、LGD の代わりに回収率で割った値(1.2% ÷ 0.4 = 3.0%)から求めた確率です(1−e−0.03×21 - e^{-0.03 \times 2})。

    この式で求めるのは、リスク中立確率でのデフォルト確率で、現実にデフォルトが起きる確率とは違います。ハザード率が区間ごとに違うときは、短い満期の CDS から順にハザード率を求めるため、この式は目安として使います。

    詳しくは: CVA と DVA

  6. 問 6

    MVA は、差し入れる当初証拠金を資金調達するコストを、取引の期間で積み上げて求める評価調整です。MVA を求めるとき、式に入れる当初証拠金の量はどれですか。

    正解と解説

    正解: D

    式に入れるのは、将来の各時点の当初証拠金の期待値です。MVA の式は、時点ごとに、ファンディング・スプレッドと期待当初証拠金と割引係数と区間の長さを掛け、期間で足し合わせます。取引が進むと感応度が変わり、当初証拠金も年ごとに変わるため、今の額だけでは足りません。金利スワップなら、将来の各テナーの感応度をシミュレーションして、将来の当初証拠金を求めます。

    評価時点の額を一定とするのは、プロファイルの形を無視した置き方です。年ごとに減る形なら、MVA を大きく見積もることになります。当初証拠金は原則として再利用できず、変動証拠金と違って運用の益を生まないため、再利用できるとした量は式に入れません。最大の額を当てはめるのも、時点ごとの期待値という形と違います。

    ファンディング・スプレッドが縮むと MVA は減って評価の益になり、広がると MVA は増えて評価の損になります。MVA はスプレッドに比例します。

    詳しくは: FVA と MVA