架空の例として、配当のない株式の今の価格が 2,000 円、1 年の無リスク金利(信用リスクなどのない金利)が年 3% です。金利は 1 年の単利で、同じ金利で借りたり預けたりできます。取引の費用はなく、株式を借りて売る(空売り)こともできます。この株式を 1 年後に受け渡す先渡取引の価格(先渡価格)が 2,100 円のとき、満期の株価によらず利益が残る取引と、残る額の組み合わせはどれですか。
理解度チェック: 評価の基礎
最終確認日: 2026年9月26日
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「評価の基礎」の章の内容を確かめる 5 問の問題です。選択肢を選んで「回答する」を押すと、正解と解説が出ます。「正解と解説」を開いて、先に答えを見ることもできます。
問 1
正解と解説
正解: D
先渡しを売り、2,000 円を借りて株式を買う取引で、満期に 40 円が残ります。株式の買いと借入れの組み合わせは、先渡しの買いと同じ受け払いを作る複製で、その費用から求めた先渡価格は 2,000 × 1.03 = 2,060 円です。2,100 円の先渡しは、この組み合わせより割高です。割高な先渡しを売り、2,000 円を借りて株式を買うと、今の受け払いは差し引き 0 円です。満期には、株式を先渡しの買い手に渡して 2,100 円を受け取り、借入れの返済に 2,060 円を払います。2,100 − 2,060 = 40 円が、満期の株価によらず残ります。
満期の株価が 1,800 円なら、先渡しの売りは 2,100 − 1,800 = 300 円の利益です。株式と借入れは 1,800 − 2,060 = −260 円の損失で、合わせて 40 円です。株価が 2,300 円なら、先渡しの売りは 200 円の損失です。株式と借入れは 2,300 − 2,060 = 240 円の利益で、合わせて同じ 40 円です。
100 円は、借入れの利息 60 円を引き忘れた値です(2,100 − 2,000)。先渡しを買い、株式を空売りして代金を預ける取引は、先渡価格が 2,060 円より安いときの取引です。先渡価格が 2,100 円のときにこの取引をすると、満期に預金の 2,060 円で先渡しの 2,100 円を払うため、株価によらず 40 円の損失になります。
この裁定取引の計算は、売買の手数料などの費用を含めていません。費用の合計が 40 円を上回ると、利益は残りません。費用を無視できて、このような裁定の機会が市場にないこと(無裁定)を前提にすると、先渡価格は 2,060 円になります。
詳しくは: 無裁定と複製
問 2
架空の例として、原資産の今の価格が 100 で、1 期間後に 120 か 80 になる 1 期間の二項モデルを考えます。この原資産を行使価格 100 で買うコール・オプション(コール)の期末の受け取りは、120 なら 20、80 なら 0 です。1 期間の無リスク金利は 2%(割り引きは 1.02 で割る)です。原資産の買いと借入れでこのコールの受け取りを複製するとき、コールの価格はいくらですか。
正解と解説
正解: B
コールの価格(プレミアム)は 10.78 です。複製に使う原資産の単位数は、受け取りの差(20 − 0 = 20)を原資産の価格の差(120 − 80 = 40)で割った 0.5 です。原資産が 80 に下がると 0.5 単位の価値は 40 なので、期末に 40 を返す借入れにすれば、手元に残る額はコールと同じ 0 になります。今借りる額は 40 ÷ 1.02 = 39.22 です。組み合わせを今作る費用は、原資産の代金 0.5 × 100 = 50 から借入れの 39.22 を引いた 10.78 です。原資産が 120 に上がると、0.5 単位の価値 60 から返済の 40 を引いた 20 が残り、コールの受け取りと一致します。
10.00 は、借りる額を割り引かずに 40 とした値です(50 − 40)。今借りた額には期末までに金利が付くため、期末に 40 を返すなら、今借りる額は 40 より少なくなります。19.61 は、上がったときの受け取り 20 を 1.02 で割っただけの値で、下がる場合を考えていません。21.57 は、原資産を 1 単位買い、80 ÷ 1.02 = 78.43 を借りた組み合わせの費用です(100 − 78.43)。この組み合わせは、上がったときに 120 − 80 = 40 を受け取り、コールの 20 と一致しないため、複製になっていません。
10.78 でコールを買った人は、原資産が 120 になれば 20 を受け取ります。80 になれば受け取りは 0 で、払った 10.78 を失います。
詳しくは: 二項モデル
問 3
架空の例として、原資産が 100 で、各段で 1.1 倍か 0.9 倍になる 2 段の二項ツリーで、1 段の無リスク金利は 2%(割り引きは 1.02 で割る)、価格計算に使う上がる確率 p は 0.6、下がる確率は 0.4 です。行使価格 105 のプット・オプション(プット)は、満期前にも行使できるアメリカン・オプションです。1 段目で原資産の価格が 90 の点の、プットの価値はいくらですか。
正解と解説
正解: C
90 の点の価値は 15.00 です。この点から次の段に進むと、原資産の価格は 99 か 81 になります。満期のプットの受け取りは、99 なら 105 − 99 = 6、81 なら 105 − 81 = 24 です。持ち続けたときの値は、(0.6 × 6 + 0.4 × 24) ÷ 1.02 = 12.94 です。今すぐ行使したときの値は、この点の本質的価値の 105 − 90 = 15 です。アメリカン・オプションの各点の価値は 2 つの値の大きいほうなので、15.00 になり、この点では行使するほうが有利です。
12.94 は持ち続けたときの値で、満期にだけ行使できるヨーロピアン・オプションなら、この点の価値になります。13.20 は、確率で重みを付けて足した値(3.6 + 9.6)を、1.02 で割り忘れた値です。16.47 は、上がる側と下がる側の確率を取り違え、(0.4 × 6 + 0.6 × 24) ÷ 1.02 とした値です。p の 0.6 は上がって 99 になる側の確率で、受け取りの大きい 81 の側の確率は 0.4 です。
1 段目で原資産の価格が 110 の点では、今すぐ行使したときの値は 0 です。持ち続けたときの値は (0.6 × 0 + 0.4 × 6) ÷ 1.02 = 2.35 で、こちらのほうが大きいため、持ち続けます。
詳しくは: 二項モデル
問 4
架空の例として、原資産が 100 で、1 期間後に 110 か 90 になる二項モデルで、行使価格 100 のコールの受け取りは 110 なら 10、90 なら 0 です。無リスク金利は 1 期間で 2%、原資産 0.5 単位の買いと 44.12 の借入れで作る複製費用は 5.88 で、費用なしで空売りもできます。上がる確率を 0.8 と予想する投資家でも価格が 5.88 になる理由はどれですか。
正解と解説
正解: A
複製の組み合わせの期末の受け取りは、110 なら 55 − 45 = 10、90 なら 45 − 45 = 0 で、どちらの場合もコールと同じです。この受け取りは、上がる確率をいくらと予想しても変わらないため、同じ受け取りを作る費用は 5.88 のままです。ただし、現実の確率が変わるときは、ふつうは原資産の今の価格や値動きの幅(ボラティリティ)も一緒に変わり、それを通してオプションの価格も変わります。
売り手が予想する確率で価格が決まるわけでもありません。110 になる確率を 0.8 と予想する売り手の期待値 8 を 1.02 で割ると、7.84 です。コールを 7.84 で売れたとすると、売り手はそのうち 5.88 で複製の組み合わせを作り、差の 1.96 を相場の動きによらず残せます。反対に、上がる確率を 0.3 と予想する売り手の値は 0.3 × 10 ÷ 1.02 = 2.94 です。コールを 2.94 で買えれば、買い手は原資産 0.5 単位の空売りと 44.12 の運用を組み、差の 2.94 を残せます。このような裁定が成り立たない価格は、複製の費用の 5.88 だけです。
5.88 は、上がる確率を 0.6 と置いた期待値 6 を 1.02 で割った値と一致します。0.6 は原資産の 2 つの価格と金利から決まる計算上の確率(リスク中立確率)で、投資家の予想を平均したものではありません。
0.6 で原資産の期待値をとると 0.6 × 110 + 0.4 × 90 = 102 で、期待収益率は無リスク金利と同じ 2% です。一方、現実の期待収益率は、無リスク金利にリスクを負う見返りの上乗せ(リスク・プレミアム)を足した値です。0.8 と予想する投資家の期待値は 0.8 × 110 + 0.2 × 90 = 106 で、期待収益率は 6% です。価格が 0.6 での期待値と一致しても、市場の投資家がリスク・プレミアムを求めないことにはなりません。
5.88 でコールを買った人は、原資産が 110 になれば 10 を受け取ります。90 になれば受け取りは 0 で、払った 5.88 を失います。
詳しくは: リスク中立評価
問 5
デリバティブに関わる計算のうち、バリュー・アット・リスク(VaR)の計算では、リスク中立確率ではなく、投資家の予想などに基づく現実の確率を使います。その理由はどれですか。
正解と解説
正解: B
VaR は、将来のある日の価値の分布を予想し、その端の点から損失を求めます。そのため、分布全体を現実の確率で見積もる必要があります。リスク中立評価で使うリスク中立確率は、割り引いた期待値を価格にするための確率で、将来の価値の予想には使えません。
市場でよく売買される商品の価格にパラメータを合わせる(キャリブレーション)のは、価格を求めるための評価モデルです。実務の評価モデルは、原資産などの動きをはじめからリスク中立確率のもとで表し、パラメータを市場価格に合わせます。そのため、決まるのは現実の確率ではなくリスク中立確率で、市場価格に合わせて決まります。
リスク中立確率のもとでも、乱数で経路を作れます。モンテカルロ法による価格の計算は、リスク中立評価の期待値を乱数で求める方法です。原資産の期待収益率を無リスク金利と置いて、原資産の価格の経路を乱数で多数作り、経路ごとの受け取りを割り引いた値を平均します。
原資産の数が増えても計算量がそれほど増えないのは、使う確率ではなく、モンテカルロ法という計算の方法の性質です。モンテカルロ法は、リスク中立確率を使う価格の計算にも使えます。
詳しくは: リスク中立評価