CMS は、CMS 債の利息のように、長期金利に連動する利息を受け払いする場面で出てきます。長短金利差の見方を取引に表すときにも使われます。

何と何を交換するか

CMSは、金利スワップのうち、片方のレグの金利に、期間の決まったスワップレートを使うものです1。例えば、1 年物のような短期の金利と、10 年スワップレートのような長期の金利を、定期的に交換します2。分類の中での位置づけは金利エキゾチックの全体像で扱います。

組み合わせは主に 2 つあります。スワップレートと短期の変動金利を交換する形と、スワップレートとあらかじめ決めた固定金利を交換する形です3。スワップレートを受け払いする脚を、CMS レグと呼びます。

受け払いの例

E 社が、想定元本100 億円、期間 5 年、年 1 回の利払いの CMS に入る架空の例で考えます。E 社は 10 年スワップレートに応じた利息を受け取り、固定金利 2.0% の利息を払います。スワップレートは各期の初めに観測し、利息はその期の終わりに受け払いします。観測日の 10 年スワップレートは、次の表のとおりになったと仮定します。

利払日 観測日 観測した 10 年スワップレート(仮定) 受取:CMS レグの利息(億円) 支払:固定金利の利息(億円) 差し引き(億円)
1 年後 取引開始日 1.8% 1.8 2.0 −0.2
2 年後 1 年後 2.2% 2.2 2.0 0.2
3 年後 2 年後 2.5% 2.5 2.0 0.5
4 年後 3 年後 2.0% 2.0 2.0 0
5 年後 4 年後 1.6% 1.6 2.0 −0.4

差し引きのプラスは E 社の受取、マイナスは支払です。E 社は、10 年スワップレートが 2.0% を上回った 2 期と 3 期で得をし、下回った 1 期と 5 期で損をします。5 年間の合計は 0.1 億円の受取です。利息は 1 年分ずつとして計算しています。

↑ 受取 ↓ 支払10 年スワップレートを受け取る E 社から見た受け払い1 年後2 年後3 年後4 年後5 年後+1.8 億円CMS レグ−2 億円固定金利+2.2 億円CMS レグ−2 億円固定金利+2.5 億円CMS レグ−2 億円固定金利+2 億円CMS レグ−2 億円固定金利+1.6 億円CMS レグ−2 億円固定金利
図 1E 社の CMS(10 年スワップレートを受け取り、固定金利を払う)の受け払い
図の説明

E 社が、10 年スワップレートを受け取り、固定金利を払う CMS の、5 年間の受け払いの図です。受け取る額は 1 年後に 1.8 億円、2 年後に 2.2 億円、3 年後に 2.5 億円、4 年後に 2.0 億円、5 年後に 1.6 億円で、払う額は毎年 2 億円(固定金利)です。受け取る額が払う額を上回るのは 2 年後と 3 年後で、下回るのは 1 年後と 5 年後で、4 年後は同額です。払う額は毎年同じで、受け取る額だけが観測日のスワップレートで変わります。

参照する期間と見直しの周期

名前のコンスタント・マチュリティは、毎回同じ期間のスワップレートを参照することを指します。観測日が来るたびに、その日から始まる同じ期間のスワップのレートを使うため、回ごとに参照するスワップは別のものです3。例えば、5 年後を観測日とする回は、その日から始まる 5 年物のスワップレートで決まり、その 1 年後を観測日とする回は、6 年後に始まる 5 年物のスワップレートで決まる、という形です3。

見直しの周期と、観測日から利払日までの間は、契約で決まります。日本銀行の資料の CMS 債の例では、利息は年 1 回で、利払いの 1 年前に決まります2。田中らの論文の設定では、観測日の半年後に利息を交換します1。どちらの例でも、レートを観測する時点と受け取る時点の間にずれがあります(年 1 回の例では 1 年、田中らの設定では半年)。

コンベキシティ調整が要る理由と向き

CMS の評価で、先のスワップレートを使うだけでは足りない理由は、スワップレートが長い期間の受け払いを表す水準なのに、CMS はそれを 1 回の利払日にまとめて受け取るためです。今の市場から計算できる先のスワップレート(フォワード・スワップレート)は、その長い期間の受け払いが続くことを前提にした水準です。このとき、フォワード・スワップレートは、利払日を満期とする割引債を基準にした確率の測り方(T1 フォワード測度)ではマルチンゲールにならず、利払日に受け取る額の期待値は、今のフォワード・スワップレートと異なります4。この差を、広義のコンベキシティ調整といいます。取引の開始時に価値がゼロになる固定金利を求めるには、各期の CMS レグを評価する必要があり、この調整が出てきます。

向きは、コンベキシティ調整が生まれる仕組みから分かります。レシーバー・スワップ(固定金利を受け取るスワップ)の価値は、スワップレートに対して凸の形をしています。レシーバー・スワップの価値は、スワップレートが上がると下がります。価値が凸なら、スワップレートが揺れたときの価値の平均は、平均のレートでの価値より大きくなります。そのため、価値の平均をゼロに合わせると、必要なレートの平均は、価値がゼロになるレートであるフォワード・スワップレートより高くなります5。観測日と利払日が同じ CMS では、この調整は正で、スワップレートを受け取る側の評価を上げる向きに働きます6。

利払日が観測日より後になると、遅れに由来する項が加わります。この項が負になる条件では、期待されるスワップレートがフォワード・スワップレートを下回りえます7。広義の調整は、観測日と利払日が同じときの調整(狭義のコンベキシティ調整)と、広義と狭義の差(タイミング調整)に分けて計算できます8。

調整の大きさは、ガウシアン・モデルの数値計算では、観測までの期間とスワップの期間が長いほど大きくなります8。また、レートの観測日と支払日の間に自然な時間の遅れ(natural time lag)がある商品は調整が要らず、金利を決めた日に支払う商品(in arrear)と CMS は、遅れが自然な形でないため調整が要ります9。例えば、半年ごとの利払いで、観測の半年後に交換する 0.5 年のスワップレートなら、観測から交換までの間隔が参照期間と同じなので、調整はゼロです4。利払いの周期と参照期間が同じでも、観測日と支払日が同じなら調整は要ります。

観測日と利払日が同じ標準的な設定で、調整を入れずにフォワード・スワップレートで評価すると、CMS を受け取る側の評価は低くなる向きにずれます。遅れの項が負になる場合は、この向きが逆になりえます。フォワードのレシーバー・スワップの買いとゼロクーポン債の売りで複製するようにヘッジしても、CMS の買いと合わせたポートフォリオの満期時の価値は凸性の効果で正になり、静的なヘッジでは凸性の項をヘッジできないことが示されています10。評価の一般的な手順は金利スワップの時価評価で扱います。

価値が何で変わるか

CMS の価値は、長期のスワップレートの水準と、長短金利差で変わります。E 社の例のように固定金利を払う形では、観測日の 10 年スワップレートが 2.0% を上回れば E 社が得をし、下回れば損をします。CMS 債の利息も、長期金利の上昇で増え、低下で減ります2。

短期の変動金利を払う形では、長短金利差(イールドカーブの傾き)が効きます。CMS デリバティブは、長期金利を受け取り短期金利を払うため、イールドカーブの傾きが急になるかなだらかになるかを取引に表す商品として使われます11。E 社が 10 年スワップレートを受け取り、短期金利を払う架空の例で考えます。次の表は 1 期分の差し引きです。

観測日の姿(仮定) 10 年スワップレート 短期金利 差 E 社の差し引き(億円)
基準 2.0% 0.5% 1.5% 1.5
差が広がる 2.5% 0.5% 2.0% 2.0
差が逆転する 1.2% 1.4% −0.2% −0.2

CMS 債を持つ投資家は、イールドカーブが上昇しながら平らになると、債券価格が下がり、調達コストとの対比で利鞘が縮むか逆鞘になりえます12。

評価は、金利の動きを表すモデルに依ります。解析解は一般に得られないため、近似式を使い、ガウシアン・モデルと CIR モデルで調整を求める方法があります13。調整にはモデルの前提が入るため、前提が現実と合わないリスクが残ります(モデル・リスク)。ここで述べた符号と大きさの結果は、ガウシアン・モデルなどの前提に限られます。

CMS 債と CMS オプション

CMS 債は、CMS レグの金利を債券の利息にしたもので、発行体が投資家に払う利息は、スワップレートを払うレグと同じ受け払いになります3。CMS 債の例では、投資家が利息のゼロフロア(利息を 0% 以上に保つ保証)を、発行体からフロアとして買います14。

CMS のスワップレートを原資産にしたオプションもあります。CMS フロアの 1 回分(フロアレット)の価格には、近似式が導かれています15。

この記事が書いていないこと

CIR モデルでの調整の大きさ、遅れがあると調整がゼロになる一般の理由、式の導出、実際の市場での調整の大きさ、ヘッジの実務、流動性は、この記事では扱いません。

注

  1. 日本銀行金融研究所 田中敬一・山田健・渡部敏明「金利派生商品の効率的な価格付け:確率密度関数の近似を用いて」(「金融研究」2006 年 10 月)の 9 ページ、「(1)CMS」。変動支払い側が、観測日(T0)のスワップレートを T1(T0 の 0.5 年後)に支払う設定です。 ↩ ↩2

  2. 日本銀行金融機構局 金融高度化センター「仕組商品投資のリスク把握と管理」の 8 ページ、「(3)CMS(constant maturity swap)債」の注記(1 年 LIBOR と 10 年スワップレートの例)と、11 ページの設例(年 1 回の利息が利払いの 1 年前に決まる)。 ↩ ↩2 ↩3

  3. Eric Benhamou「Pricing Convexity Adjustment with Wiener Chaos」(LSE Financial Markets Group Discussion Paper 351、2000 年 4 月)の 4 ページ、「2.2 CMS derivatives」。観測日と支払日が同じ設定です。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  4. 田中ほか(2006 年 10 月)の 10 ページ。CMS(t) の定義、フォワード・スワップレートがマルチンゲールでないこと、広義のコンベキシティ調整(bCA)の定義と、脚注 8(参照金利が 0.5 年スワップレートなら bCA = 0)。 ↩ ↩2

  5. Benhamou(2000 年 4 月)の 3〜4 ページ、「2.1 convexity of Swap rates」と図 1。 ↩

  6. Benhamou(2000 年 4 月)の 9 ページ。スポット CMS スワップ(T = T0)で調整が常に正になること。複数因子の対数正規の割引債モデルによる近似式にもとづく。 ↩

  7. Benhamou(2000 年 4 月)の 10 ページ。支払日が観測日より後のとき、遅れに由来する調整が負になる条件があり、期待されるスワップレートがフォワード・スワップレートを下回りうること。 ↩

  8. 田中ほか(2006 年 10 月)の 12 ページ(狭義の調整とタイミング調整の定義)、25 ページ「(4)CMS、CMS オプション」、26 ページの表 5。ガウシアン・モデルでは、コンベキシティ調整は観測時点(T0)とスワップ期間(t)の増加関数であり、広義の調整、狭義の調整、タイミング調整を分けて求めている。 ↩ ↩2

  9. Eric Benhamou「A Martingale Result for Convexity Adjustment in the Black Pricing Model」(EconWPA、2000 年 2 月)の 13 ページ、「4 CMS rate」の導入。自然な時間の遅れ(natural time lag)がある商品は調整が要らず、in arrear と CMS は要ることを述べた箇所です。 ↩

  10. Benhamou(EconWPA、2000 年 2 月)の 13〜16 ページ、「4.1 Introduction」と「4.2 Hedging strategy」。期待されるスワップレートが先のスワップレートより高いこと(14 ページ)と、フォワードのレシーバー・スワップとゼロクーポン債による複製のヘッジでも凸性の項が残ること(16 ページ)を述べています。 ↩

  11. Benhamou(2000 年 4 月)の 2 ページ、「1 Introduction」。CMS デリバティブは、短期金利で貸し借りしながら将来の長期金利を受け払いするため、イールドカーブのスティープ化やフラット化を取引する商品であること。 ↩

  12. 日本銀行金融機構局 金融高度化センター「仕組商品投資のリスク把握と管理」の 10 ページ、「CMS 債のリスク特性」と、24 ページのストレスシナリオ(イールドカーブのフラット化)。 ↩

  13. 田中ほか(2006 年 10 月)の 2 ページ、「1.はじめに」(解析解を得ることは一般に困難であること)と、25〜27 ページ(ガウシアン・モデルと CIR モデルによる数値計算)。 ↩

  14. 日本銀行金融機構局 金融高度化センター「仕組商品投資のリスク把握と管理」の 9 ページ、「基本的な仕組み[CMS 債]」。 ↩

  15. 田中ほか(2006 年 10 月)の 12 ページ、「(2)CMS オプション」。 ↩