金利スワップそのものではなく、スワップを始める権利だけを買いたいときに使う商品です。金利オプションの価格やインプライド・ボラティリティを分析する場面でも使います。

ペイヤーズとレシーバーズの権利

スワップションは、金利スワップを対象にしたオプションで、金融機関の金利リスクのヘッジなどに使われています1。買い手は売り手にプレミアムを払い、満期に、あらかじめ決めた固定金利で金利スワップを始める権利を得ます。この固定金利を行使金利といいます。固定金利を払う(ペイする)スワップを始める権利をペイヤーズ・スワップション、固定金利を受ける(レシーブする)スワップを始める権利をレシーバーズ・スワップションといいます2。

たとえば、A 社が B 銀行から、想定元本 100 億円、満期 2 年、スワップの期間 3 年、行使金利 1.50% のペイヤーズ・スワップションを買うとします。A 社は今、B 銀行にプレミアムを払います。2 年後に A 社が権利を行使すると、A 社はそこから 3 年間、B 銀行に固定金利 1.50% の利息を払い、B 銀行から変動金利の利息を受け取ります。A 社が行使しなければスワップは始まらず、B 銀行は受け取ったプレミアムをそのまま得ます。

↑ 受取 ↓ 支払ペイヤーズの買い手の A 社から見た受け払い(行使した場合)今2 年後3 年後4 年後5 年後−0.48 億円プレミアム未確定変動金利−1.5 億円固定金利未確定変動金利−1.5 億円固定金利未確定変動金利−1.5 億円固定金利
図 1ペイヤーズ・スワップションを行使したときの受け払い
図の説明

ペイヤーズの買い手の A 社が、2 年後に権利を行使したときの受け払いです。プレミアム(約 0.48 億円。後の計算例で求めるペイヤーズの値)を払うのは今だけで、行使したあとの 3 年後から 5 年後は、毎年、固定金利の支払と変動金利の受取が続きます。変動金利の受取は、取引を結んだ時点では金額が決まっていないため、矢印の長さは目安です。行使しなければ、プレミアムの支払だけで終わります。

満期とスワップの期間は、市場では「1 month into 10 year」(満期 1 か月、対象は 10 年の金利スワップ)のように、満期、スワップの期間の順に呼びます3。上の例は「2 year into 3 year」にあたり、2 年 × 3 年とも表します。対象のスワップの変動金利が TONA(無担保コール翌日物金利)か別の金利かによって、スワップの固定金利の水準が違い、スワップションの価格も違います4。

金利スワップで固定金利を受けることは債券を買うことに、固定金利を払うことは債券を売ることに似ています。そのため、レシーバーズは債券のコール・オプション、ペイヤーズはプット・オプションにあたると整理できます2。一方、金利スワップの固定金利の水準(スワップレート)を原資産とみると向きが逆になり、ペイヤーズはスワップレートが上がるほど価値が上がります。価格の式は、スワップレートを原資産とみた形です。

満期の行使、決済の方法、行使のスタイル

満期に行使するかどうかは、そのときに市場で同じ期間のスワップを結べるスワップレートと、行使金利を比べて決まります。ペイヤーズの買い手は、市場のスワップレートが行使金利より高ければ、行使して市場より低い固定金利で払う側になれます。レシーバーズの買い手は、市場のスワップレートが行使金利より低ければ、行使して市場より高い固定金利を受け取れます5。上の例(行使金利 1.50%、スワップの期間 3 年、想定元本 100 億円)で、満期の 3 年のスワップレートごとに比べると次のとおりです。

満期の 3 年のスワップレート ペイヤーズの買い手 レシーバーズの買い手
1.00% 行使しない 行使する。市場より 0.50% 高い固定金利を受け取れ、差は毎年 5,000 万円
1.50% 行使しても市場との差は 0 行使しても市場との差は 0
2.00% 行使する。市場より 0.50% 低い固定金利で払え、差は毎年 5,000 万円 行使しない

スワップレートが 2.00% のペイヤーズ(1.00% のレシーバーズ)では、行使して得る差は 3 年間で毎年 5,000 万円(100 億円 × 0.50%)で、割り引く前の合計は 1 億 5,000 万円です。ただし、この差は 3 年後から 5 年後に受け取るお金で、今払うプレミアムとは受け払いの時点が違います。毎年の差を今の時点まで割り引いて足した額が、計算例で求めるプレミアム(ペイヤーズならブラック・モデルで 48,100,402 円)を上回れば買い手の得、下回れば損です。スワップレートが 1.50% 以下なら、ペイヤーズの買い手は行使せず、払ったプレミアムの分だけ損をします。売り手の損益はその裏返しで、プレミアムを受け取る代わりに、行使されれば市場より不利な固定金利のスワップを持ちます。

行使金利をフォワード・スワップレート(下の式で定義する、今のカーブから求めた将来のスワップレート)と同じにしたものを、アット・ザ・マネー・フォワード(ATMF)と呼びます。ペイヤーズでは、行使金利がフォワード・スワップレートより低いものをイン・ザ・マネー、高いものをアウト・オブ・ザ・マネーといいます6。

決済には、行使したときに実際にスワップを始める現物決済と、行使した時点のスワップの時価をもとに差額だけを受け払いする現金決済があります7。

スワップションは店頭デリバティブで、行使のスタイルを取引ごとに選べます。満期にだけ行使できるヨーロピアン・オプション、いつでも行使できるアメリカン・オプション、その中間にあたるバミューダン・オプションなどがあります。情報ベンダーから得られるスワップションのデータは、ヨーロピアンのものが一般的です8。以下の式と計算例は、ヨーロピアンのスワップションを対象にします。

価格の求め方(アニュイティを使う式)

ヨーロピアンのスワップションの価格は、フォワード・スワップレートを原資産とみたオプションの価格に、アニュイティを掛けて求めます。アニュイティは、行使で始まるスワップの各支払日の割引係数を足した値です(支払いの期間がどれも 1 年のとき)。行使すると複数年にわたって受け払いが続くため、その受け払いを 1 回ずつ割り引く意味でアニュイティを掛けます9。

満期を TT 年、スワップの期間を nn 年とし、支払いは年 1 回で期間はどれも 1 年とします。アニュイティ AA は、tt 年後の割引係数を DF(t)DF(t) として次の式です。

A=∑t=T+1T+nDF(t)A = \sum_{t=T+1}^{T+n} DF(t)

支払いの期間の長さが 1 年でないときは、各期間の長さ(年)を掛けて足します。その形はスワップのパーレートの式と同じです。パーレートの式は金利スワップの時価評価で扱います。

フォワード・スワップレート FF は、TT 年後に始まる nn 年のスワップ(先スタートのスワップ)の時価を、今の時点で 0 にする固定金利です10。

F=DF(T)−DF(T+n)AF = \frac{DF(T) - DF(T+n)}{A}

T=0T = 0 にすると、今から始まるスワップのパーレートの式になります。

ペイヤーズの価格 VV は、想定元本を NN、行使金利を KK、標準正規分布の累積分布関数を Φ\Phi とすると、ブラック・モデルでは次の式になります。σB\sigma_B はブラック・モデルのボラティリティで、スワップレートの変化率の標準偏差(年率)です9。

V=NA[F Φ(d1)−K Φ(d2)]V = N A \left[ F \, \Phi(d_1) - K \, \Phi(d_2) \right] d1=ln⁡(F/K)+σB2T/2σBTd_1 = \frac{\ln(F/K) + \sigma_B^2 T / 2}{\sigma_B \sqrt{T}} d2=d1−σBTd_2 = d_1 - \sigma_B \sqrt{T}

バシュリエ・モデル(正規モデル)では、スワップレートの変化幅そのものが正規分布に従うとし、ペイヤーズの価格は次の式になります。σN\sigma_N は正規ボラティリティで、スワップレートの変化幅の標準偏差(年率、bp で表す)です。ϕ\phi は標準正規分布の確率密度関数です9。

V=NA σNT[d Φ(d)+ϕ(d)]V = N A \, \sigma_N \sqrt{T} \left[ d \, \Phi(d) + \phi(d) \right] d=F−KσNTd = \frac{F - K}{\sigma_N \sqrt{T}}

ブラック・モデルは、スワップレートが 0 以下にならない前提の式で、FF が 0 以下だと ln⁡(F/K)\ln(F/K) が求まらず価格を計算できません11。金利がマイナスになってからバシュリエ・モデルが広まった経緯と、2 つのモデルの前提の違いはキャップとフロアで扱います。

翌日物金利が 0.50%、OIS(翌日物金利スワップ)の固定金利が 1 年 0.60%、2 年 0.75%、5 年 1.10%、10 年 1.50% の架空の例で考えます。2 年 × 3 年、行使金利 1.50% のスワップションを評価します。割引係数は 2 年が 0.985156、3 年が 0.972123、4 年が 0.959262、5 年が 0.946571 です。アニュイティは 3 年から 5 年の割引係数を足した 2.877956 で、フォワード・スワップレートは (0.985156 − 0.946571) ÷ 2.877956 = 1.3407% です。ブラック・モデルのボラティリティを 30%、正規ボラティリティを 40bp にすると、価格は次の表になります12。

スワップション ブラック・モデル(円) バシュリエ・モデル(円)
ペイヤーズ、行使金利 1.50% 48,100,402 44,583,700
レシーバーズ、行使金利 1.50% 93,946,937 90,430,235
ペイヤーズ、行使金利 1.35% 63,715,517 63,618,703
レシーバーズ、行使金利 1.35% 66,392,709 66,295,894

行使金利 1.50% はフォワード・スワップレートより高いため、ペイヤーズはアウト・オブ・ザ・マネーで、レシーバーズより安くなります。ペイヤーズの 48,100,402 円は想定元本の約 0.48%(48bp)です。2 つのボラティリティは、正規ボラティリティがおよそフォワード・スワップレートとブラック・モデルのボラティリティの積になる近似の関係13で、1.3407% × 30% ≈ 0.40%(40bp)になるようにそろえました。行使金利がフォワード・スワップレートに近い 1.35% では 2 つのモデルの価格はほぼ同じで、1.50% のようにフォワード・スワップレートから離れると差が開きます。

ペイヤーズとレシーバーズの差

同じ満期、スワップの期間、行使金利のペイヤーズを買い、レシーバーズを売ると、満期のスワップレートがどうなっても、行使金利で固定金利を払うスワップを持つことになります。スワップレートが行使金利より高ければ自分がペイヤーズを行使し、低ければ相手がレシーバーズを行使するためです。そのため、ペイヤーズの価格からレシーバーズの価格を引いた差は、行使金利を固定金利とする先スタートの固定払いのスワップの価値に等しくなります。プット・コール・パリティと同じ考え方です。

Vpayer−Vreceiver=NA(F−K)V_{\text{payer}} - V_{\text{receiver}} = N A (F - K)

計算例では、100 億円 × 2.877956 × (1.3407% − 1.50%) = −45,846,535 円です。表のブラック・モデルでは 48,100,402 − 93,946,937、バシュリエ・モデルでは 44,583,700 − 90,430,235 で、どちらも同じ −45,846,535 円になります。この関係はボラティリティにもモデルにもよりません。行使金利をフォワード・スワップレートと同じにすると右辺が 0 になり、ATMF のペイヤーズとレシーバーズは同じ価格です。

深掘り満期の受け払いから差の式を確かめる

満期のスワップレートを SS とすると、行使で得るスワップの 1 年あたりの差は、ペイヤーズが max⁡(S−K,0)\max(S - K, 0)、レシーバーズが max⁡(K−S,0)\max(K - S, 0) です。SS が KK より大きくても小さくても、次の式が成り立ちます。

max⁡(S−K,0)−max⁡(K−S,0)=S−K\max(S - K, 0) - \max(K - S, 0) = S - K

右辺の S−KS - K を毎年受け取るのは、満期に固定金利 KK の固定払いのスワップを持つのと同じです。満期に市場で固定金利 SS の固定受けのスワップを結んで重ねると、変動金利の受け払いが打ち消し合い、毎年 S−KS - K が残るためです。今から見たその価値は、先スタートのスワップの時価 NA(F−K)N A (F - K) です。時価が NA(F−K)N A (F - K) になるのは、フォワード・スワップレートの式から N[DF(T)−DF(T+n)]=NAFN [DF(T) - DF(T+n)] = N A F となり、変動金利の受け払いの現在価値が NAFN A F、固定金利の受け払いの現在価値が NAKN A K になるためです。

価値を動かす金利とボラティリティ

ペイヤーズは金利が上がると価値が上がり、レシーバーズは金利が下がると価値が上がります。計算例のカーブの市場の金利をすべて 0.5% 上げると、フォワード・スワップレートは 1.8437% になり、ブラック・モデルの価格はペイヤーズが 136,749,755 円に上がり、レシーバーズが 39,773,556 円に下がります。すべて 0.5% 下げると、フォワード・スワップレートは 0.8377% になり、ペイヤーズが 5,346,209 円に下がり、レシーバーズが 199,770,571 円に上がります。買い手は、相場が自分の側に動けば得をし、逆に動いても損はプレミアムまでです。売り手はその逆で、相場が不利に動くと損が大きくなります。

ボラティリティが上がると、ペイヤーズもレシーバーズも価格が上がります。ブラック・モデルのボラティリティを 30% から 40% に上げると、ペイヤーズは 69,848,655 円、レシーバーズは 115,695,190 円になります。ボラティリティが上がると買い手は得をし、売り手は損をします。ペイヤーズとレシーバーズの差は先スタートのスワップの価値のままで、ボラティリティでは変わりません。

シミュレータースワップションの価格とモデルの違い
入力
商品
%
年
年
%
%
bp
0100200300400500600700−10123456価格(百万円)行使金利(%)48.1
  • ブラック・モデル
  • バシュリエ・モデル
フォワード・スワップ・レート
1.34%
アニュイティ(割引係数の和)
2.8780
ブラック・モデルの価格(円)
48,100,402
バシュリエ・モデルの価格(円)
44,583,700
ペイヤーズ − レシーバーズ / 同じ行使金利の固定払いのスワップ(円、バシュリエ・モデル)
−45,846,535 / −45,846,535

単純化している点

  • カーブは、カーブの構築のシミュレーター(swap-curve)の既定の市場の金利を平行に動かしてブートストラップしたもので、割引と将来の金利の予想に同じカーブを使います。
  • キャップ・フロアとスワップの支払いは年 1 回で、期間はどれも 1 年とみなします。キャップ・フロアの最初の 1 年は、金利が今決まっているため含めません。
  • ボラティリティはすべての満期と行使金利で同じとし、スマイルは考えません。ブラック・モデルをずらしたシフテッド・ブラックは扱いません。
  • 想定元本は 100 億円です。

このシミュレーターは学習のために単純化した計算で、実際の取引の評価やリスク管理には使えません。(免責事項)

シミュレーターの説明

商品、カーブの平行移動、満期、スワップの期間、行使金利、2 つのボラティリティを変えられます。変えると、フォワード・スワップレート、アニュイティ、2 つのモデルの価格、行使金利ごとの価格のグラフが変わります。結果の最後の行で、ペイヤーズとレシーバーズの価格の差が、同じ行使金利の固定払いのスワップの価値と一致することを確かめられます。カーブを大きく下げてフォワード・スワップレートが 0 以下になると、ブラック・モデルは計算できないと表示されますが、バシュリエ・モデルは価格を求められます。

何に使われるか

スワップションは、金利が動いたときの損失に備えるヘッジに使われます。金利が上がると損をする持ち高(たとえば債券の保有)がある人は、固定金利を払うスワップでヘッジすることも、ペイヤーズを買うこともできます。スワップでヘッジすると、金利が上がったときの持ち高の損失をスワップの利益で埋められますが、金利が逆に下がったときは、持ち高の利益をスワップの損失が打ち消します。ペイヤーズを買うと、プレミアムの負担はありますが、金利が上がれば行使して持ち高の損失を埋められ、金利が下がれば行使せず、持ち高の利益はプレミアムの分を差し引いて残ります14。

2021 年の財務省の「ファイナンス」の解説によると、日本の生命保険会社は、資産と負債の年限と金額のずれ(金利リスク)を抑える ALM の手段として、スワップションを買っています15。生命保険会社は資産より負債のデュレーションが長く、金利が大きく下がると、負債の金利リスクの増え方が資産より大きくなります。たとえば、30 年のスワップレートが 1% のときに、行使金利 0.5% のレシーバーズを買う場合を考えます。金利が 0.5% を下回れば、行使して固定金利を受けるスワップを持ち、資産の金利リスクを増やして負債の増えた分に合わせられます。金利が 0.5% を下回らなければ行使しません。このとき負債の金利リスクも大きくは増えていないため、プレミアムは使わなかった備えの費用になります。

逆に、一時払終身保険のように、金利が大きく上がると契約者の解約が増え、負債の金利リスクが急に減る商品もあります。同じ解説によると、アウト・オブ・ザ・マネーのペイヤーズを買うと、金利が上がったときに資産の側の金利リスクを減らす持ち高を作れ、負債の金利リスクが金利の水準で変わるリスクをヘッジできます15。

スワップションの価格から逆算したボラティリティを、インプライド・ボラティリティといいます。インプライド・ボラティリティは、市場参加者が各年限の金利の変動をどう見ているかの分析にも使われます。スワップションは 1 年から 30 年まで対象のスワップの期間が幅広く、満期も取引ごとに決めるため、同じ満期と期間のデータを続けて取れます16。

リスクと取引の実務

売り手の損失は、受け取ったプレミアムを超えて膨らむことがあります(「価値を動かす金利とボラティリティ」の数値の例)。店頭デリバティブのため、取引の相手の信用リスク(カウンターパーティ・リスク)もあります。2021 年の財務省の「ファイナンス」の解説が紹介する意見では、この信用リスクを減らす観点から、海外の通貨のスワップションでは現金決済が増えています7。

円金利のスワップションは、長い間、流動性の低さが問題とされてきました17。キャップやフロアと比べれば流動性は高いものの、取引が少ないと、市場の価格が少数の参加者の見方しか映さないことがあります。インプライド・ボラティリティを分析に使うときも、流動性に気をつけます。

他の金利オプションとの違い

金利のオプションには、スワップションのほかに、店頭で取引する金利キャップと金利フロア(キャップとフロア)、取引所に上場している国債先物のオプション(国債先物オプション)があります。違いは次の表のとおりです21。

項目 スワップション キャップ・フロア 国債先物オプション
原資産 金利スワップ(1 年から 30 年まで) 短期金利 長期国債先物
取引の場 店頭 店頭 取引所
流動性 キャップ・フロアより高い。円金利では長く低いと指摘されている スワップションより低い 満期の短いものに取引が集まる。円金利では低いとの指摘もある

スワップションはキャップやフロアより流動性が高く、データを取りやすく、2021 年の財務省の「ファイナンス」の解説の筆者の実感では、店頭の金利オプションの分析にはスワップションがほとんどです。キャップは、金利が行使金利を上回った期間ごとに差額を受け取るオプションです。国債先物オプションは、限月ごとに満期がそろうため取引が集まりやすく、7 年前後の金利が 1 か月未満の近い将来にどれだけ動くとみられているかを知るのに向いています。スワップションは満期を取引ごとに決めるため、1 年以上先の見方も分かります。

注

  1. 服部孝洋「債券(金利)オプション入門―スワップションについて―」(財務省「ファイナンス」2021 年 8 月号)の 49 ページ。スワップションを金利スワップのオプションとし、金融機関が持つ金利リスクのヘッジなどに広く使われているとしています。 ↩

  2. 同じ資料の 50 ページ。レシーバーズ・スワップションをコール・オプション、ペイヤーズ・スワップションをプット・オプションに相当するとし、権利を行使するとスワップをレシーブ(ペイ)するポジションが生まれるとしています。 ↩ ↩2

  3. 同じ資料の 51 ページ。「1 month into 10 year(原資産は10年金利スワップ、満期は1か月後)」の例と、円金利ではプレミアムで値を示す傾向があること、35bp の例、ボラティリティで取引しない理由。 ↩ ↩2

  4. 同じ資料の 50 ページ。原資産の金利スワップがどの変動金利に紐づくかによって、オプションのプライスも異なるとしています。 ↩

  5. 同じ資料の 57 ページ。レシーバーズの例として、市場のスワップレートが 1% なら行使金利 0.5% で受けるオプションを行使するメリットはなく、0.4% なら行使するメリットが生まれるとしています。ペイヤーズは、固定金利を払う向きが逆になるため、スワップレートが行使金利を上回るときに行使します。 ↩

  6. 同じ資料の 52 ページ。 ↩

  7. 同じ資料の 52 ページ。現物決済(physical settlement)と現金決済(cash settlement)、現金決済は行使時点の時価をもとに差金決済をするとしています。 ↩ ↩2

  8. 同じ資料の 51 ページ。資料は「ヨーロピアン・タイプ」「アメリカン・タイプ」「バミューダ・タイプ」と書き、バミューダ・タイプを前の 2 つの中間にあたるとしています。 ↩

  9. 服部孝洋「スワップション入門(モデル編)―ノーマル(ブラック)・モデルおよびSABRモデルについて―」(財務省「ファイナンス」2021 年 10 月号)の 3.2 節(60〜61 ページ)の式 (4) と式 (5)。資料の NN は Φ\Phi にあたり、d1d_1 は TT 年の満期の形に直しています。 ↩ ↩2 ↩3

  10. Society of Actuaries "Interest Rate Swaps"(2017 年 5 月)の 4 章 "Special Formula" の式 (4.1)(12 ページ)と Example 7(13 ページ)。資料の Pt0P_{t_0} と PtnP_{t_n} は、DF(T)DF(T) と DF(T+n)DF(T+n) にあたります。 ↩

  11. 服部孝洋「スワップション入門(モデル編)」(2021 年 10 月号)の 2.1 節(57 ページ)と、式 (5) の後の説明(61 ページ)。 ↩

  12. 価格は、このページに埋め込んだシミュレーター(rate-options)と同じ計算で求め、円未満を四捨五入しています。割引係数とアニュイティは小数 6 桁、フォワード・スワップレートは小数 4 桁(%)に丸めて示しています。 ↩

  13. 服部孝洋「スワップション入門(モデル編)」(2021 年 10 月号)の 3.1 節(59〜60 ページ)の式 (3)。資料は、実務家が σN≈F×σB\sigma_N \approx F \times \sigma_B の近似式で 2 つのボラティリティの違いを把握しているとし、あくまで近似式であることに注意が必要だとしています。 ↩

  14. 服部孝洋「債券(金利)オプション入門―スワップションについて―」(2021 年 8 月号)の 50 ページ。 ↩

  15. 同じ資料の 5 節(56〜57 ページ)。 ↩ ↩2

  16. 同じ資料の 49 ページと 52〜53 ページ。1 年スワップから 30 年スワップまでのオプションが取引されていること、取引日から満期日までの期間を決めて取引することを挙げています。 ↩

  17. 同じ資料の 53 ページ。 ↩

  18. 同じ資料の 50 ページの図 1 の注。 ↩

  19. 日本証券クリアリング機構「清算対象取引(金利スワップ)」の清算対象取引の表の注(2026 年 9 月 25 日に確かめた)。 ↩

  20. 服部孝洋「債券(金利)オプション入門―スワップションについて―」(2021 年 8 月号)の 55〜56 ページ。 ↩

  21. 同じ資料の 52〜53 ページ(国債先物オプション)と 58 ページ(キャップとフロア)。国債先物オプションの流動性が低いとの指摘は 54 ページ。 ↩