金利スワップは、変動金利で借りている企業が利払いを固定したい場面や、金融機関が預金と貸出の金利のずれを調整したい場面で出てくる取引です。

固定金利と変動金利の交換

固定金利と変動金利を交換する金利スワップでは、2 つの当事者が固定金利を払う側と変動金利を払う側に分かれます。どちらの利息も、契約で決めた共通の想定元本にそれぞれの金利を掛けて計算します1。変動金利は、利息を計算する期間ごとに、市場の指標金利をもとに決まります。円の金利スワップでは、指標金利にTONA(無担保コール翌日物金利)や TIBOR が使われています2。

A 銀行と B 社が、想定元本 100 億円、期間 3 年、利払いが年 1 回の金利スワップを結ぶ架空の例で考えます。B 社は年 1% の固定金利を払い、変動金利を受け取ります。A 銀行はその逆で、固定金利を受け取り、変動金利を払います。

想定元本は利息の額を決めるための計算上の元本で、取引の始めにも終わりにも受け渡しません3。そのため、想定元本 100 億円の金利スワップでも、実際に動くお金は利息の分だけです。

固定金利を払う側のキャッシュフロー

B 社から見ると、毎年の支払は 1 億円(100 億円 × 1%)で、取引を結んだときに決まっています。一方で受取は、その年の変動金利で決まるため、取引を結んだ時点では金額が分かりません。ここでは、変動金利が 1 年目 0.5%、2 年目 1%、3 年目 1.5% になったと仮定して、B 社のキャッシュフロー(お金の受け払い)を示します。

↑ 受取 ↓ 支払固定金利を払う B 社から見た受け払い1 年後2 年後3 年後+0.5 億円変動金利−1 億円固定金利+1 億円変動金利−1 億円固定金利+1.5 億円変動金利−1 億円固定金利
図 1B 社から見た金利スワップのキャッシュフロー
図の説明

変動金利が 1 年目 0.5%、2 年目 1%、3 年目 1.5% になったと仮定したときの、固定金利を払う B 社の受け払いです。B 社は、1 年後、2 年後、3 年後の利払日に、固定金利の利息 1 億円をそれぞれ払います。変動金利の利息は、1 年後に 0.5 億円、2 年後に 1 億円、3 年後に 1.5 億円を受け取ります。受け取る額だけが年ごとに変わり、払う額は毎年同じです。

利払日ごとの受け払いを表にすると、次のとおりです。差し引きのプラスは B 社の受取、マイナスは B 社の支払です。この例は利息を 1 年分ずつとして計算しています。

利払日 変動金利(仮定) 受取:変動金利の利息(億円) 支払:固定金利の利息(億円) 差し引き(億円)
1 年後 0.5% 0.5 1 −0.5
2 年後 1% 1 1 0
3 年後 1.5% 1.5 1 0.5

同じ日に受け払いする利息は、差額だけを受け渡す決め方にできます(差金決済)。日本円の OIS(翌日物金利スワップ)の資料では、利払日ごとに差額を決済する例が示されています4。上の例で差金決済をすると、B 社は 1 年後に 0.5 億円を払い、2 年後は受け渡しがなく、3 年後に 0.5 億円を受け取ります。

変動金利の利息がいつ決まるかは、指標金利によって違います。TIBOR を使う取引では利息を計算する期間の前に決まり、TONA を複利で計算する取引では期間の終わりに決まります5。

金利が動くとどちらが得をするか

固定金利を払う側は、変動金利が上がると得になり、下がると損になります。固定金利を受け取る側はその逆です。上の例で変動金利が 0.5% だった 1 年目は、B 社が 0.5 億円を払い、A 銀行が 0.5 億円を受け取ります。変動金利が 1.5% だった 3 年目は、B 社が 0.5 億円を受け取り、A 銀行が 0.5 億円を払います。どちらの側も、取引を結んだ時点では、この先の変動金利の水準が分かりません。

利払いを固定金利や変動金利に変える使い方

変動金利で借入をしている企業は、金利が上がると利払いが増えます。そこで、この企業が A 銀行と金利スワップを結び、固定金利を払う代わりに変動金利を受け取ることにします。借入の利息として払う変動金利を、スワップで受け取る変動金利でまかなえるため、企業が自分で負担するのはスワップの固定金利だけになり、固定金利の借入と同じ利払いになります6。

B 社が C 銀行から、想定元本と同じ 100 億円を、期間 3 年、スワップと同じ変動金利(上乗せの金利はないものとする)で借りている例で考えます。

C 銀行貸し手B 社借り手A 銀行スワップの相手変動金利変動金利固定金利 年 1%
図 2変動金利の借入と金利スワップの組み合わせ
図の説明

C 銀行、B 社、A 銀行の 3 者の受け払いです。B 社は、借入の利息として C 銀行に変動金利を払います。同時に、A 銀行との金利スワップで、A 銀行から変動金利を受け取り、A 銀行に年 1% の固定金利を払います。2 つの変動金利は同じ額で相殺され、B 社の利払いは年 1% の固定金利だけになります。

B 社の利払いは、変動金利がどう動いても毎年 1 億円になります。変動金利が 1.5% に上がった 3 年目は、スワップがなければ 1.5 億円払うところを 1 億円で済み、0.5 億円得になります。反対に、変動金利が 0.5% に下がった 1 年目は、スワップがなければ 0.5 億円で済んだところを 1 億円払うため、0.5 億円損になります6。金利が下がっても、B 社の利払いは減りません。企業のヘッジの使い方は事業会社の利用で扱います。

逆向きの使い方もあります。固定金利で借りている企業が、固定金利を受け取り変動金利を払う金利スワップを組み合わせると、利払いは変動金利で借りたのと同じ形になります7。

金融機関は、預金のように金利が変わる資金で、固定金利の債券や貸出を持つことがあります。このとき、固定金利を払い変動金利を受け取るスワップを組むと、調達と運用の金利のずれを埋められます8。

金利の動きと取引相手のリスク

金利スワップで利払いを固定しても、金利の動きによる損益は残ります。上の例の B 社は、金利が下がった年にはスワップがない場合より多く払いました。この先の金利は誰にも分からないので、金利が動くことによるリスクを完全に消すことはできません9。

当事者どうしが店頭で直接結んだ(相対の)金利スワップでは、取引の相手の信用リスクを考えて取引する必要があります。清算機関(CCP)は、当事者の債務を引き受けて取引の相手方になり、決済の履行を保証します。そのため、参加者は理論上、個々の相手の信用リスクを直接負わずに済みます10。金利スワップでも、清算機関を使うと取引の相手のリスクを減らせます11。

取引の実務

日本証券クリアリング機構(JSCC)は、取引所での取引とは別に、店頭(OTC)デリバティブ取引として、金利スワップを 2012 年 10 月から清算しています12。清算の対象は、TONA や TIBOR を変動金利にする円の金利スワップのうち、JSCC が定める条件を満たすものです2。

似た取引との違い

金利スワップには、交換する金利の組み合わせによっていくつかの種類があります。代表的な固定金利と変動金利の交換のほかに、変動金利どうしを交換するものもあります13。

取引 交換する金利 変動金利の例
金利スワップ(固定と変動) 固定金利と変動金利 TIBOR、TONA の複利
OIS(翌日物金利スワップ) 固定金利と、翌日物金利を複利で計算した変動金利 TONA の複利
ベーシス・スワップ 変動金利と変動金利 TONA の複利と TIBOR、期間の違う TIBOR どうし

JSCC は、TIBOR と TONA の変動金利どうしや、期間の違う TIBOR どうしを交換するスワップも清算しています2。

注

  1. 日本取引所グループ「スワップ(用語集)」。 ↩

  2. 日本証券クリアリング機構「清算対象取引(金利スワップ)」の対象の表と、「1.定義集」「2.取引相手方の要件」「7.通貨」。条件には、国際スワップ・デリバティブ協会(ISDA)の定義集に基づく取引であること、清算参加者どうしの取引であること、円建てであることなどがあります。 ↩ ↩2 ↩3

  3. 金融広報中央委員会「4-2 金利スワップの仕組み(やさしいデリバティブ)」の「想定元本」。 ↩

  4. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 3 月時点の情報)の「基本的な取引方式」(5 ページ)の「決済方法:差金決済」と、「例1」(6 ページ)。 ↩

  5. 同じ資料の「(1)IBOR と OIS レートの性質の違い」(7〜8 ページ)。IBOR(TIBOR など)は「変動金利の受払額も金利計算期間の前に決定」、OIS は「変動金利の受払額が金利計算期間の満期日に確定」としています。 ↩

  6. 金融広報中央委員会「4-2 金利スワップの仕組み(やさしいデリバティブ)」の「スワップ取引利用例」。 ↩ ↩2

  7. 同じ資料の「変動金利と固定金利の交換する金利スワップの例」。 ↩

  8. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 3 月時点の情報)の「(ALM スワップ)」(9 ページ)。資料は OIS を使う例として説明しています。 ↩

  9. 金融広報中央委員会「4-2 金利スワップの仕組み(やさしいデリバティブ)」の「スワップ取引利用例」の後の説明。 ↩

  10. 日本証券クリアリング機構「JSCCとは」の「「清算機関」の機能」と「JSCCの役割」の「(2)安全性の向上」。資料は証券・商品市場の売買を例に清算機関の機能を説明しています。 ↩

  11. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 3 月時点の情報)の「(清算適格取引の拡充)」(12 ページ)。 ↩

  12. 日本証券クリアリング機構「JSCCとは」の「沿革」。 ↩

  13. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 3 月時点の情報)の「(OIS の定義)」(3 ページ)。 ↩