OIS や、後決め複利で変動金利を決める貸出・債券では、利息を TONA から計算します。OIS の差額の決済や後決め複利の利息の支払いでは、日本銀行が TONA をいつ公表するかが、受け払いの額を確定できる時期を決めます。

TONA は何の金利か

TONA は、金融機関どうしの 1 日だけの貸し借りから求める指標金利です。A 銀行が B 銀行から 100 億円を年 0.5% で 1 日借りる架空の例で考えます。1 年を 365 日として日割りすると、A 銀行が翌営業日に元本に上乗せして返す利息は 136,986 円(円未満切り捨て)です。

金融機関どうしが日々の短い期間の資金の過不足を調整する市場をコール市場といいます1。そのうち担保を付けない取引を無担保コール、無担保コールのうち今日約定して今日お金を渡し、翌営業日に返す取引を O/N 物(翌日物)と呼びます2。

TONA は 1 日分の金利なので、3 か月や 6 か月の期間の金利ではありません。期間の金利に使うときは、期間中の日々の TONA を積み上げて計算します(「TONA の使われ方」の節)。1 週間や 3 か月のように 1 日より長い期間について示す金利をターム物金利といい、そのうち期間の初めに値が決まるものを前決めといいます。

2016 年 12 月に、リスク・フリー・レートに関する勉強会が、TONA を日本円のリスク・フリー・レート(RFR)に選びました3。勉強会は、担保のない取引なので相手の信用リスクは含まれるものの、1 日だけの貸し借りのためその程度は限られ、リスク・フリーに近い性質を持つと整理しました4。

名前は資料によって違います。TONA は英語の Tokyo Overnight Average Rate の略で5、TONAR と書く資料もあります6。日本銀行の統計では「無担保コールO/N物レート」と書きます7。金融政策の文書では「無担保コールレート(オーバーナイト物)」と書きます8。日本銀行は、このレートがどの水準で推移するよう促すかという形で、金融市場調節の方針を決めています8。

日本銀行による算出と公表

TONA は、日本銀行が短資会社から受け取った取引のデータをもとに、営業日ごとに算出して公表します。流れは次のとおりです。

  1. 金融機関が、短資会社の仲介で無担保コールの O/N 物の取引を約定します。
  2. 短資会社(上田八木短資、セントラル短資、東京短資の 3 社)が、取引のレートと金額のデータを日本銀行に提供します9。
  3. 日本銀行が、レートごとの出来高で加重平均を求め、当日のうちに速報値を公表します。
  4. 日本銀行が、翌営業日に確報値を公表します。

公表の時刻は次のとおりです10。

公表する値 公表の時刻
速報値 当日の午後 5 時 15 分頃(年末日を除く月末日は午後 6 時 15 分頃)
確報値 翌営業日の午前 10 時頃

図 1 は、ある営業日(T 日)の O/N 物の取引と、その日の TONA の公表を時間の順に並べたものです。

T 日O/N 物を約定し、資金を受け渡すT 日17 時 15 分頃T 日の TONA の速報値を公表翌営業日取引の期日。資金を返す翌営業日午前 10 時頃T 日の TONA の確報値を公表
図 1O/N 物の取引と TONA の公表の順
図の説明

T 日に、金融機関どうしが O/N 物の取引を約定して資金を受け渡します。日本銀行は、T 日の TONA の速報値を、原則として T 日の午後 5 時 15 分頃に公表します(年末日を除く月末日は午後 6 時 15 分頃です)。取引は翌営業日が期日で、借り手は資金を返します。T 日の TONA の確報値は、同じ翌営業日の午前 10 時頃に公表されます。OIS の変動金利に使うのは、この確報値です。図の時刻は公表の時刻で、取引の期日の時刻は表していません。

算出に使うのは、短資会社が仲介した取引だけです。金融機関どうしが短資会社を通さずに直接結ぶ取引(ダイレクト・ディーリング)は入りません。勉強会は RFR を選ぶときに、短資会社が仲介する取引だけでも相応の取引量があるとして、この枠組みのままでよいと整理しました11。

レートと出来高を掛けた値を積数といいます。加重平均は、レートごとの積数を足し合わせ、出来高の合計で割って求めます。結果は小数第 3 位まで(第 4 位を四捨五入)です9。ある日の取引が 3 つのレートで成立した架空の例で考えます。

レート(%) 出来高(億円) 積数(レート × 出来高。% × 億円)
0.470 2,000 940
0.480 5,000 2,400
0.490 3,000 1,470
合計 10,000 4,810

積数の合計 4,810 を出来高の合計 10,000 で割ると 0.481 になり、この日の TONA は 0.481% です。0.490% の出来高(3,000 億円)が 0.470% の出来高(2,000 億円)より多いため、3 つのレートの単純な平均(0.480%)より高くなります。日本銀行は、加重平均のほかに、その日の最高値と最低値、O/N 物の出来高も公表しています12。

TONA の使われ方

TONA を期間の金利に使うときは、利息の期間中の日々の TONA を、期間の終わりに複利で積み上げて利率を決めます。この方法を後決め複利といい、利率が決まるのは期間の最後の日の TONA が公表された後です。計算式、休日の扱い、数値の例は後決め複利の計算で扱います。

代表的な使われ方は OIS(Overnight Index Swap、翌日物金利スワップ)です。日本円の OIS は、固定金利と、一定期間の TONA を複利で計算した変動金利を交換する金利スワップです13。2018 年 4 月の勉強会の資料では、日本円の OIS の変動金利の参照指数は TONA の確報値とされています14。OIS の仕組みとキャッシュフローは OIS(翌日物金利スワップ)で扱います。

円 LIBOR(London Interbank Offered Rate)の公表は 2021 年 12 月末に止まりました15。TONA 後決め複利は、2019 年 7 月の市中協議を経て、円 LIBOR に代わる金利の候補の 1 つに選ばれています16。TONA 後決め複利は、利率が金利の支払日の直前に決まります。期間の初めに利率が決まる前決めの TORF(東京ターム物リスク・フリー・レート)や TIBOR(東京銀行間取引金利)とは、利息の額が分かる時点が違います17。

注

  1. 日本銀行「コール市場」(教えて!にちぎん)。銀行、信託銀行、信用金庫、投資信託、証券会社、保険会社と、仲介する短資会社などが参加しているとしています。2026 年 9 月 25 日に確かめた内容です。 ↩

  2. 日本銀行金融市場局「「コール市場関連統計」の解説」の「1.公表内容」(1 ページ)。無担保コールの O/N 物を「無担保コール市場における、当日約定、当日資金受渡し、翌営業日を期日とする条件で成立した取引のレート」としています。 ↩

  3. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円のリスク・フリー・レートの特定に関する報告書」(2016 年 12 月)の「Ⅰ.概要」(1 ページ)。 ↩

  4. 同じ資料の「Ⅱ-2.市中協議を踏まえた検討事項に対する本勉強会の整理」の②(4 ページ)。 ↩

  5. 一般社団法人全銀協TIBOR運営機関「金利指標改革を踏まえた全銀協TIBORの現状および今後の展望(2026年6月)詳細説明資料」の 9 ページの表の注 *1。「TONAは、Tokyo Overnight Average Rateの略」としています。 ↩

  6. Financial Conduct Authority "About LIBOR transition" の "RFRs recommended as alternatives to LIBOR" の表。日本の行に "Tokyo Overnight Average Rate (TONAR)" と書かれています。2026 年 9 月 25 日に確かめた内容です。 ↩

  7. 日本銀行金融市場局「「コール市場関連統計」の解説」の 1 ページの「データ始期」と、2 ページの「(2)無担保コールO/N物取引の出来高」。 ↩

  8. 日本銀行「金融市場調節方針の変更について」(2026 年 6 月 16 日)の 1.(1 ページ)。 ↩ ↩2

  9. 日本銀行金融市場局「「コール市場関連統計」の解説」の「2.コールレートの算出方法」(2 ページ)。短資会社の名前は資料の「情報提供会社」の一覧によります。 ↩ ↩2

  10. 同じ資料の「3.公表方法」(2 ページ)の表。 ↩

  11. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円のリスク・フリー・レートの特定に関する報告書」(2016 年 12 月)の「Ⅱ-2.市中協議を踏まえた検討事項に対する本勉強会の整理」の①(3 ページ)。 ↩

  12. 日本銀行金融市場局「「コール市場関連統計」の解説」の「1.公表内容」(1〜2 ページ)。 ↩

  13. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 4 月)の「2.OIS とは何か」(3 ページ)。 ↩

  14. 同じ資料の「基本的な取引方式」の「参照指数」(5 ページ)。 ↩ ↩2

  15. 日本銀行金融市場局・金融機構局、金融庁総合政策局・監督局「円LIBOR移行対応の振り返りと今後の取り組み」(日銀レビュー、2022 年 5 月)の 1 ページの「はじめに」。 ↩

  16. 同じ資料の 3 ページの本文。検討委員会が 2019 年 7 月に行った第 1 回市中協議によって、TORF、TONA 後決め複利、TIBOR の 3 つが候補として「選好された」としています。 ↩

  17. 同じ資料の図表 2(3 ページ)。TORF と TIBOR の「金利決定のタイミング」を「前決め」、TONA 後決め複利を「後決め(金利支払日の直前)」としています。 ↩

  18. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 4 月)の「例2」(6 ページ)。 ↩