後決め複利を使う貸出の利息や変動利付債の経過利息を計算する場面と、デリバティブによるヘッジの条件を合わせる場面で、ルックバック、ロックアウト、支払い遅延の条件を決めます。
利息の額を前もって知る 3 つの慣行
後決め複利の利率は、利息の期間の最後の営業日の翌日物金利が公表されるまで決まりません。日本銀行は TONA(無担保コール翌日物金利)の確報値を翌営業日に公表するため1、何も工夫しなければ、利率が分かるのは期間の終わりの日です。期間の終わりの日に利息を払う貸出や債券では、額を確かめて支払いを準備する時間がありません。後決め複利の式と日数の数え方は後決め複利の計算で扱います。
米国の代替参照金利委員会(ARRC)は、変動金利の債券(変動利付債)について、支払いを前もって知らせる慣行を 3 つ挙げています2。この債券は SOFR を使うものです。3 つはルックバック、ロックアウト、支払い遅延で、組み合わせて使うこともあります。
ルックバック:何営業日か前の金利を使う
ルックバックは、利息の期間の中の日ごとに、その日より何営業日か前の金利を使う慣行です。5 営業日のルックバックなら、期間の最後の営業日にも 5 営業日前の金利を使うため、利率は期間の終わりの 5 営業日前に分かります。ARRC の貸出の資料の例では、6 月 1 日に始まる 30 日の期間で、6 月 1 日には 5 営業日前の 5 月 25 日の金利を使い、6 月 2 日には 5 月 26 日の金利を使います。エージェント(貸出の事務をまとめる金融機関)は 6 月 23 日までに期間の最後までの金利を知り、借り手は 6 月 30 日までに利息を払えます3。
ルックバックには、金利をどの日数で重み付けするかで 2 つの方式があります。オブザベーション・シフトなしは、金利だけを何営業日か前のものにし、日数の重みは利息の期間の日のまま使います。英国の作業部会(Working Group on Sterling Risk-Free Reference Rates)の貸出の資料は、この方式を「ラグ(Lag)」とも呼んでいます4。オブザベーション・シフトありは、金利を見る期間(観察期間)そのものを何営業日か前にずらし、それぞれの金利を観察期間の中でその金利が当たる日数で重み付けします5。ルックバックを 営業日とすると、オブザベーション・シフトなしの利率は次の式で求めます。
は利息の期間の営業日の数、 は期間の 番目の営業日から 営業日前の金利、 は 番目の営業日から次の営業日までの暦日の日数、 は利息の期間の暦日の日数です。オブザベーション・シフトありの利率は、観察期間の営業日ごとに、その日の金利とその日から次の営業日までの日数を使い、観察期間の日数で年率にします。
は観察期間の営業日の数、 は観察期間の 番目の営業日の金利、 はその金利を使う観察期間の暦日の日数、 は観察期間の暦日の日数です。どちらの方式でも、利息は元本 × × で、利息の期間の日数を使って求めます。英国の作業部会の資料の計算例も、オブザベーション・シフトありの利率を観察期間の日数で年率にし、利息の期間の日数を掛けて利息を求めています6。
2 つの方式の差は、週末と休日の重みに出ます。オブザベーション・シフトなしでは、金曜日の利息の日数 3 日分に、金曜日より前の日の金利が掛かります。このため、週末や休日に当たる金利が、その日数の取引を表す金利とずれることがあります。5 営業日のルックバックなら、同じ曜日の金利を使うため週末の重みはそろいますが、休日はそろいません7。オブザベーション・シフトありでは、観察期間の日数が利息の期間の日数と違うことがあります(観察期間が休日の直前から始まるときなど)8。
ロックアウト:最後の数日の金利を固定
ロックアウトは、期間の終わりの何営業日か前の日(カットオフ日)の金利を、その後の期間の最後の営業日まで繰り返し使う慣行です。カットオフ日の金利を使う期間は、「suspension period」とも呼ばれます2。ここでは、ロックアウトを 営業日とすると、期間の終わりの日の 営業日前をカットオフ日にします。カットオフ日の金利を繰り返し使うのは、その後の 営業日です。TONA のように翌営業日に公表される金利なら、利率はカットオフ日の翌営業日、つまり期間の終わりの 営業日前に分かります。
ロックアウトの間に金利が動くと、その動きは利率に入りません。2026 年 2 月 23 日(月)から 3 月 23 日(月)までの 28 日の期間で、下のシミュレーターのサンプルの金利を使う架空の例で考えます。このサンプルは祝日(2 月 23 日、3 月 20 日)も営業日として金利を使っているため、実際の東京の営業日で計算した値とは違います9。
サンプルでは 3 月 19 日に金利が 0.477% 前後から 0.727% 前後に上がるため、期間のうち上がった後の金利を使うのは最後の 2 営業日だけです。ロックアウトを 3 営業日にすると、カットオフ日は 3 月 18 日(水)で、19 日と 20 日の 2 営業日にも 18 日の金利を使います。下の表は、期間の最後の 5 営業日を示します。
| 営業日 | 日数 | 何もずらさない金利(%) | ロックアウト 3 営業日の金利(%) |
|---|---|---|---|
| 3 月 16 日(月) | 1 | 0.479 | 0.479 |
| 3 月 17 日(火) | 1 | 0.476 | 0.476 |
| 3 月 18 日(水) | 1 | 0.478 | 0.478 |
| 3 月 19 日(木) | 1 | 0.725 | 0.478 |
| 3 月 20 日(金) | 3 | 0.728 | 0.478 |
期間の利率は、何もずらさなければ 0.5128% ですが、ロックアウト 3 営業日では 0.4772% になります。元本 1 億円の利息は 39,336 円から 36,604 円になり、2,732 円少なくなります10。この例では借り手の払う利息が減り、貸し手の受け取る利息も同じだけ減ります。期間の最後に金利が下がった場合は逆に、ロックアウトで利率が高くなり、借り手の払う利息が増えます。ロックアウトの間の金利の上げ下げは利払いに入らず、貸し手と借り手のどちらにとっても、損にも得にもなり得ます11。
支払い遅延:支払日を後ろにずらす
支払い遅延は、利率の計算は変えずに、支払日を期間の終わりから何営業日か後にする慣行です。期間中の日ごとの金利は、その日の金利のままです。利率は期間の終わりの日に決まり、支払いまでの数営業日で額を確かめて払います。日本円の OIS の例では、期間の終わりの日に TONA の公表を待って変動金利の額を計算し、その 2 営業日後に差額を決済します12。これも支払い遅延の形です。
ARRC の資料が示す、支払い遅延を使った債券の例では、最後の期間だけは満期日に払うために 2 営業日のロックアウトを組み合わせています。最初の期間の後の支払いは 2 営業日遅れる分、投資家はその間の運用の収入を得られないことがあります13。
同じ期間での利率と支払日の違い
2026 年 2 月 2 日(月)から 5 月 1 日(金)までの 88 日の期間で、金利が 3 月 18 日までは 0.477% 前後、3 月 19 日からは 0.727% 前後の架空の例で考えます。慣行ごとの利率と支払日を比べます10。このサンプルは祝日(2 月 11 日、2 月 23 日、3 月 20 日、4 月 29 日)も営業日として金利を使っているため、実際の東京の営業日で計算した値とは違います。支払い遅延の行の支払日の 5 月 5 日も、実際には祝日です9。「利率が分かる日」は、翌営業日に公表される金利として数えています。
| 慣行 | 利率 | 元本 1 億円の利息 | 利率が分かる日 | 支払日 |
|---|---|---|---|---|
| 何もずらさない | 0.5997% | 144,587 円 | 5 月 1 日(金) | 5 月 1 日(金) |
| ルックバック 2 営業日(オブザベーション・シフトなし) | 0.5883% | 141,833 円 | 4 月 29 日(水) | 5 月 1 日(金) |
| ルックバック 2 営業日(オブザベーション・シフトあり) | 0.5914% | 142,592 円 | 4 月 29 日(水) | 5 月 1 日(金) |
| ルックバック 5 営業日(シフトの有無によらない) | 0.5799% | 139,802 円 | 4 月 24 日(金) | 5 月 1 日(金) |
| ロックアウト 2 営業日 | 0.5997% | 144,590 円 | 4 月 30 日(木) | 5 月 1 日(金) |
| 支払い遅延 2 営業日 | 0.5997% | 144,587 円 | 5 月 1 日(金) | 5 月 5 日(火) |
ルックバックでは、期間の途中で上がった金利を使い始める日が遅れるため、利率が下がります。何もずらさなければ、上がった後の金利を使う日は 88 日のうち 43 日です。オブザベーション・シフトなしの 2 営業日では、3 月 23 日から使い始めるため 39 日になります。オブザベーション・シフトありの 2 営業日では、観察期間が 1 月 29 日(木)から 4 月 29 日(水)までの 90 日になり、そのうち 41 日です。そのため、シフトありの利率はシフトなしより少し高くなります。
5 営業日のルックバックでは、どの日も同じ曜日の金利を使い、観察期間も 88 日のままなので、2 つの方式の利率が同じになります。期間の最後の金利がほぼ一定のため、ロックアウト 2 営業日の利率は何もずらさない場合とほとんど変わりません。金利が下がる期間なら、ルックバックで利率は上がります。
図の説明
88 日の比較の表の、利率が分かる日と支払日を日付の順に並べた図です。ルックバックの営業日数が多いほど利率が分かる日は早く、ロックアウトはそれより遅く、何もずらさない場合は期間の終わりに分かります。支払い遅延だけは、支払日が期間の終わりより後になります。塗りの丸は期間の終わりです。日付は、祝日を営業日とみなす数え方によるもので、実際の東京の営業日の日付とは違います。図の間隔は日付の間の長さを表しません。
- その日までの複利(年率)
- 日々の翌日物金利
| 日付 | 使う金利の日付 | 金利 | 日数 | 積み上げた倍率 |
|---|---|---|---|---|
| 2026年2月2日 | 2026年1月29日 | 0.475% | 1 | 1.00001301 |
| 2026年2月3日 | 2026年1月30日 | 0.478% | 1 | 1.00002611 |
| 2026年2月4日 | 2026年2月2日 | 0.477% | 1 | 1.00003918 |
| 2026年2月5日 | 2026年2月3日 | 0.477% | 1 | 1.00005225 |
| 2026年2月6日 | 2026年2月4日 | 0.479% | 3 | 1.00009162 |
| 2026年2月9日 | 2026年2月5日 | 0.476% | 1 | 1.00010466 |
| 2026年2月10日 | 2026年2月6日 | 0.478% | 1 | 1.00011776 |
| 2026年2月11日 | 2026年2月9日 | 0.475% | 1 | 1.00013077 |
| 2026年2月12日 | 2026年2月10日 | 0.478% | 1 | 1.00014387 |
| 2026年2月13日 | 2026年2月11日 | 0.477% | 3 | 1.00018308 |
| 2026年2月16日 | 2026年2月12日 | 0.477% | 1 | 1.00019615 |
| 2026年2月17日 | 2026年2月13日 | 0.479% | 1 | 1.00020928 |
| 2026年2月18日 | 2026年2月16日 | 0.476% | 1 | 1.00022232 |
| 2026年2月19日 | 2026年2月17日 | 0.478% | 1 | 1.00023542 |
| 2026年2月20日 | 2026年2月18日 | 0.475% | 3 | 1.00027447 |
| 2026年2月23日 | 2026年2月19日 | 0.478% | 1 | 1.00028757 |
| 2026年2月24日 | 2026年2月20日 | 0.477% | 1 | 1.00030064 |
| 2026年2月25日 | 2026年2月23日 | 0.477% | 1 | 1.00031372 |
| 2026年2月26日 | 2026年2月24日 | 0.479% | 1 | 1.00032684 |
| 2026年2月27日 | 2026年2月25日 | 0.476% | 3 | 1.00036598 |
| 2026年3月2日 | 2026年2月26日 | 0.478% | 1 | 1.00037908 |
| 2026年3月3日 | 2026年2月27日 | 0.475% | 1 | 1.00039210 |
| 2026年3月4日 | 2026年3月2日 | 0.478% | 1 | 1.00040520 |
| 2026年3月5日 | 2026年3月3日 | 0.477% | 1 | 1.00041827 |
| 2026年3月6日 | 2026年3月4日 | 0.477% | 3 | 1.00045750 |
| 2026年3月9日 | 2026年3月5日 | 0.479% | 1 | 1.00047063 |
| 2026年3月10日 | 2026年3月6日 | 0.476% | 1 | 1.00048367 |
| 2026年3月11日 | 2026年3月9日 | 0.478% | 1 | 1.00049678 |
| 2026年3月12日 | 2026年3月10日 | 0.475% | 1 | 1.00050980 |
| 2026年3月13日 | 2026年3月11日 | 0.478% | 3 | 1.00054910 |
| 2026年3月16日 | 2026年3月12日 | 0.477% | 1 | 1.00056218 |
| 2026年3月17日 | 2026年3月13日 | 0.477% | 1 | 1.00057525 |
| 2026年3月18日 | 2026年3月16日 | 0.479% | 1 | 1.00058839 |
| 2026年3月19日 | 2026年3月17日 | 0.476% | 1 | 1.00060143 |
| 2026年3月20日 | 2026年3月18日 | 0.478% | 3 | 1.00064075 |
| 2026年3月23日 | 2026年3月19日 | 0.725% | 1 | 1.00066062 |
| 2026年3月24日 | 2026年3月20日 | 0.728% | 1 | 1.00068058 |
| 2026年3月25日 | 2026年3月23日 | 0.727% | 1 | 1.00070051 |
| 2026年3月26日 | 2026年3月24日 | 0.727% | 1 | 1.00072044 |
| 2026年3月27日 | 2026年3月25日 | 0.729% | 3 | 1.00078040 |
| 2026年3月30日 | 2026年3月26日 | 0.726% | 1 | 1.00080031 |
| 2026年3月31日 | 2026年3月27日 | 0.728% | 1 | 1.00082027 |
| 2026年4月1日 | 2026年3月30日 | 0.725% | 1 | 1.00084015 |
| 2026年4月2日 | 2026年3月31日 | 0.728% | 1 | 1.00086011 |
| 2026年4月3日 | 2026年4月1日 | 0.727% | 3 | 1.00091992 |
| 2026年4月6日 | 2026年4月2日 | 0.727% | 1 | 1.00093985 |
| 2026年4月7日 | 2026年4月3日 | 0.729% | 1 | 1.00095984 |
| 2026年4月8日 | 2026年4月6日 | 0.726% | 1 | 1.00097975 |
| 2026年4月9日 | 2026年4月7日 | 0.728% | 1 | 1.00099972 |
| 2026年4月10日 | 2026年4月8日 | 0.725% | 3 | 1.00105937 |
| 2026年4月13日 | 2026年4月9日 | 0.728% | 1 | 1.00107933 |
| 2026年4月14日 | 2026年4月10日 | 0.727% | 1 | 1.00109927 |
| 2026年4月15日 | 2026年4月13日 | 0.727% | 1 | 1.00111921 |
| 2026年4月16日 | 2026年4月14日 | 0.729% | 1 | 1.00113921 |
| 2026年4月17日 | 2026年4月15日 | 0.726% | 3 | 1.00119895 |
| 2026年4月20日 | 2026年4月16日 | 0.728% | 1 | 1.00121892 |
| 2026年4月21日 | 2026年4月17日 | 0.725% | 1 | 1.00123880 |
| 2026年4月22日 | 2026年4月20日 | 0.728% | 1 | 1.00125877 |
| 2026年4月23日 | 2026年4月21日 | 0.727% | 1 | 1.00127872 |
| 2026年4月24日 | 2026年4月22日 | 0.727% | 3 | 1.00133855 |
| 2026年4月27日 | 2026年4月23日 | 0.729% | 1 | 1.00135854 |
| 2026年4月28日 | 2026年4月24日 | 0.726% | 1 | 1.00137846 |
| 2026年4月29日 | 2026年4月27日 | 0.728% | 1 | 1.00139844 |
| 2026年4月30日 | 2026年4月28日 | 0.725% | 1 | 1.00141833 |
- 期間の利率(年率、後決め複利)
- 0.5883%
- ずらさない場合の利率(比べるため)
- 0.5997%
- 元本 1 億円の利息(88 日 ÷ 365)
- 141,833
- 支払日
- 2026年5月1日
単純化している点
- 日次の金利はサンプルの値(実際の TONA ではありません)で、2026/03/19 から 0.25% 上がります。
- 営業日は平日とし、祝日は考えません。休日は直前の営業日の金利を、休日の日数分の単利で使います。
- 利率は TONA の慣行(1 年を 365 日)で計算し、途中で丸めません。
- ロックアウトは、終わりから数えた営業日の日(カットオフ日)より後の日に、カットオフ日の金利を使います。0 と 1 はロックアウトなしと同じです。
このシミュレーターは学習のために単純化した計算で、実際の取引の評価やリスク管理には使えません。(免責事項)
シミュレーターの説明
ルックバックの営業日数とずらし方、ロックアウトの営業日数、支払い遅延の営業日数を変えて、日ごとの計算で使う金利の日付、期間の利率、支払日の動きを見ます。画面の「金利だけをずらす(ラグ)」がオブザベーション・シフトなし、「期間ごとずらす(シフト)」がオブザベーション・シフトありです。初期値のルックバック 2 営業日で、ずらし方を切り替えると、利率の差が出ます。支払い遅延を足すと、利率は変わらず、支払日だけが後ろにずれます。サンプルの金利は実際の TONA ではなく、営業日は土曜日と日曜日を除いた日で、祝日は考えない架空の例で考えます。
貸出、債券、デリバティブでの使われ方
日本円の貸出では、日本円金利指標に関する検討委員会(検討委員会)が、TONA の後決め複利を使う貸出の利息の計算方式を 2020 年 12 月に整理して公表しました14。それに先立つ意見照会では、検討委員会の貸出サブグループの参加者の圧倒的多数が、オブザベーション・シフトなしのルックバック(Lookback without Observation Shift)を選びました。貸出サブグループはこの方式を軸に検討を続けました15。
次の意見照会では、ルックバックの日数に 5 営業日を一例として示すことに、英米の検討との整合と利払いの実務を理由に大多数が賛同しました15。英国の検討体は 5 営業日を推奨し、米国の検討体は 5 営業日を事例として示しました16。ただし、経済的には短いほど望ましいとの意見もありました。オブザベーション・シフトありの方式(Observation Period Shift)も、利用を妨げないことにも、圧倒的多数が賛同しました15。
米国のシンジケート・ローンでも、ARRC はオブザベーション・シフトなしの営業日のルックバックを推奨しています。オブザベーション・シフトありでは、観察期間と利息の期間の日数がずれる期間に期限前返済があると、借り手の払う利息が多すぎたり少なすぎたりすることがあるためです。貸出を売買するときの売り手と買い手の間でも、同じずれが起こり得ます17。
債券では、ARRC の 2019 年 8 月の資料の時点で、SOFR を使う変動利付債の慣行は 1 つに定まっていませんでした。英ポンドの翌日物金利 SONIA(Sterling Overnight Index Average)18を使う債券の発行のうち、資料の時点で最近のものは、5 営業日のルックバックを採っていました。ARRC の変動利付債の作業部会は、当時、ルックバックを使う形のうちでは、オブザベーション・シフトありを好んでいました。金利に正しい重みを付けられ、公表された SOFR の複利の指数を使えるためです19。
作業部会の整理では、ルックバックやロックアウトの日数を長くすると、税の計算や決済のシステムのために額を確かめる時間が増え、短くすると、利率が市場の金利の水準に近くなります19。
ARRC の作業部会の整理では、デリバティブの市場で支払い遅延は一般的な慣行とされます13。変動利付債でオブザベーション・シフトや支払い遅延を使うと、デリバティブによるヘッジと条件を合わせやすくなります。ヘッジと条件が合わない変動利付債は、費用とリスクを増やすことがあります19。
注
-
日本銀行金融市場局「「コール市場関連統計」の解説」の「3.公表方法」(2 ページ)の表。確報値は翌営業日の午前 10 時頃の公表です。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR Floating Rate Notes Conventions Matrix」(2019 年 8 月)の 6 ページ、Lockout、Lookback、Payment Delay の説明と注 11。 ↩ ↩2
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR "In Arrears" Conventions for Syndicated Business Loans」の 2 ページ、「Lookback/Lockout/Payment Delay」と注 10(5 月 25 日が休日でない前提)。エージェントの原語は administrative agent です。 ↩
-
Working Group on Sterling Risk-Free Reference Rates「Detailed Loans Conventions」(2020 年 9 月、2021 年 3 月更新)の 2 ページの注 1(Observation Lag convention)と 4 ページの注 1(Lag)。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR Floating Rate Notes Conventions Matrix」の 8 ページ、3 つ目の形(FRNs with Two-Day Backward-Shifted Observation Period and No Lockouts)の説明。 ↩ ↩2
-
Working Group on Sterling Risk-Free Reference Rates「Detailed Loans Conventions」の 4 ページ(どちらの方式でも、利息は利息の期間の暦日の日数で計算する)と、10 ページの計算例(観察期間の 28 日で年率にし、利息の期間の 31 日で利息を求める)。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR Floating Rate Notes Conventions Matrix」の 8 ページ、2 つ目の形(FRNs with Five-Day Lookback and No Lockouts)の説明。 ↩
-
同じ資料の 8 ページ、注 17。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR Floating Rate Notes Conventions Matrix」の 7 ページ(1 つ目の形の説明)と、10 ページの作業部会の考え方の 2 つ目。 ↩ ↩2
-
リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 4 月)の 6 ページ、「例2:1年未満のOIS 清算取引で、満期時のみに利払いを行うケース」。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR Floating Rate Notes Conventions Matrix」の 9 ページ、4 つ目の形(FRNs with Two-Day Payment Delay, No Lookback, and Two-Day Lockout prior to Maturity)の説明。 ↩ ↩2
-
日本銀行金融市場局・金融機構局、金融庁総合政策局・監督局「円LIBOR移行対応の振り返りと今後の取り組み」(日銀レビュー 2022-J-8、2022 年 5 月)の 3 ページ、図表 3。 ↩
-
日本円金利指標に関する検討委員会「貸出における TONA(後決め)のコンベンション(利息計算方式)について」の本文 1 ページの冒頭と「Lookback 期間(調整日数)」、2 ページの「①以外の方式」。 ↩ ↩2 ↩3
-
同じ資料の本文 1 ページ、注 3。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR "In Arrears" Conventions for Syndicated Business Loans」の 2〜3 ページ、「Lookback/Lockout/Payment Delay」。 ↩
-
Bank of England「SONIA interest rate benchmark」の冒頭の説明。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR Floating Rate Notes Conventions Matrix」の 6 ページ(慣行が定まっていないこと)、7 ページ(2 つ目の形)、10 ページの作業部会の考え方の 3、4 つ目、10〜11 ページの日数の欄。 ↩ ↩2 ↩3
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR "In Arrears" Conventions for Syndicated Business Loans」の 4 ページ、「SOFR Index」。 ↩
-
Alternative Reference Rates Committee「SOFR Floating Rate Notes Conventions Matrix」の 7〜10 ページ、各形の「Secondary trading consideration」と注 14。 ↩