米ドルの金利スワップや貸出、債券を扱う人は、変動金利の参照先として SOFR を使います。SOFR は、どのレポ取引から、どの順で算出され公表されるのでしょうか。

SOFR のもとになるレポ取引

SOFR は、米国債を担保にして現金を翌日まで借りるときの金利を、市場全体で広く測った指標金利です1。

現金を借りる側が米国債を差し入れ、決めた日に現金を返して米国債を受け取る取引をレポ取引といいます2。SOFR は、このうち翌営業日に現金を返す翌日物の取引の金利から作ります。

レポ取引には、担保の決め方が違う種類があります。三者間レポでは、受け入れてよい担保の範囲を決めておきます。DVP(Delivery-versus-Payment)レポは、取引の相手どうしが取引ごとに受け渡す米国債の銘柄を決める相対の取引です。FICC(Fixed Income Clearing Corporation)が清算します3。

ニューヨーク連邦準備銀行(ニューヨーク連銀)は、米国債のレポ取引の金利として 3 つの指標を公表しており、SOFR はその中で最も広い範囲の取引を含みます3。

指標 含む取引
TGCR(Tri-Party General Collateral Rate) 三者間レポのうち、担保の銘柄を後から割り当て(ジェネラル・コラテラル)、相手が互いに分かっているもの。連邦準備制度が相手の取引は除く
BGCR(Broad General Collateral Rate) 米国債のジェネラル・コラテラルのレポ取引の金利。TGCR の取引に、FICC の GCF Repo の取引を足したもの
SOFR BGCR の取引に、FICC の DVP レポの取引を足したもの

DVP レポは、特定の銘柄を一時的に手に入れるためにも使われます。ほしい銘柄を担保に取るために、現金の貸し手が低い金利を受け入れることがあり、この状態を「スペシャル」といいます。スペシャルの取引の金利は、資金の調達の一般的なコストを表しません。そこでニューヨーク連銀は、DVP レポの取引のうち金利の低い方から取引量の 20% を毎日取り除いてから算出します4。

取引量で重み付けした中央値の求め方

SOFR は、取引量で重み付けした中央値です。取引を金利の低い順に並べ、取引量を順に足していき、足した量が全体の 50% に達したところの取引の金利を SOFR にします。公表する値は 1bp(0.01%)単位に丸めます5。

5 つの取引で取引量の合計が 1,000 億ドルの架空の例で考えます。その半分の 500 億ドルに達する取引を探します。

順 金利(%) 取引量(億ドル) 足した取引量(億ドル)
1 2.00 100 100
2 2.02 300 400
3 2.03 200 600
4 2.05 250 850
5 2.10 150 1,000

2 番目の取引までで 400 億ドル、3 番目の取引までで 600 億ドルになるため、500 億ドルは 3 番目の取引に入ります。この例の SOFR は 2.03% です。5 つの金利を単純に平均すると 2.04% になり、中央値とは値が違います。

中央値は、端にある取引の金利が動いても変わりません。この例で 5 番目の取引の金利が 2.10% から 3.00% に変わっても、金利の順と足した取引量は同じなので、SOFR は 2.03% のままです。単純な平均なら、同じ変化で 2.04% から 2.22% に上がります。

ニューヨーク連銀は、SOFR と一緒に、同じ方法で求めた取引量の 1%、25%、75%、99% の位置の金利と、算出に使った取引量の合計(10 億ドル単位に丸めたもの)も公表します5。

算出と公表の流れ

SOFR の算出と公表は、次の図の順で進みます。

市場参加者提供元(BNY、OFR)ニューヨーク連銀1bp 超の変更米国債を担保に翌日物のレポ取引をする(対象日)対象日の取引のデータを連銀へ送る翌営業日にデータを確かめてSOFR を算出する午前 8 時ごろにウェブサイトで公表する午後 2 時 30 分ごろに値を直して公表する
図 1SOFR の算出から公表までの流れ
図の説明

図は、対象日の取引のデータが市場参加者から提供元、ニューヨーク連銀へと進み、連銀が翌営業日に算出して、米国東部時間の午前 8 時ごろに公表する順を示します。公表の後の直しは、1bp を超えて変わるときだけ、午後 2 時 30 分ごろ(米国東部時間)に、例外として別の経路をたどります。各手順の詳細と根拠は、次の番号つきリストに書きます。

  1. 市場参加者が、米国債を担保にした翌日物のレポ取引をします。この日を SOFR の「対象日」とします(ニューヨーク連銀は value date と呼びます)。
  2. 三者間レポの取引のデータは BNY(Bank of New York Mellon)と米国財務省の金融調査局(OFR)から、GCF Repo と DVP レポの取引のデータは OFR から、ニューヨーク連銀に届きます1。ニューヨーク連銀は、連邦準備制度理事会の監督上の権限と OFR の権限に基づいてデータを集めています6。
  3. ニューヨーク連銀は、対象日の翌営業日に、対象日の取引のデータを確かめて SOFR を算出します。取引の相手どうしが独立していないように見える取引や、誤りと疑われる取引は、判断して除くことがあります7。
  4. ニューヨーク連銀は、対象日の翌営業日の米国東部時間の午前 8 時ごろに、ウェブサイトで SOFR を公表します1。
  5. 公表の後に、算出の誤りや、朝に間に合わなかったデータが見つかり、SOFR が 1bp を超えて変わるときは、ニューヨーク連銀が同じ日の午後 2 時 30 分ごろに値を直します。直すのは公表した日だけです8。

米国債の取引について、SIFMA が市場を終日休みにするよう勧める日には、SOFR を公表しません8。

ある種類の取引のデータが届かない日は、その種類の取引について、最後に届いた日のデータを使います。そのときは、最後に届いた日からの金利の変化の分だけ、そのデータの金利をずらして算出します。金利の変化は、ニューヨーク連銀の取引デスクがプライマリー・ディーラーのレポでの借り入れを毎日調べた結果から求めます9。

SOFR の平均と指数、ターム SOFR

日々の SOFR をそのまま使う取引では、利息の期間の終わりまで利率が決まりません10。期間の利率を求めるには、期間中の SOFR を複利で積み上げます。計算の方法は後決め複利の計算で扱います。ニューヨーク連銀は、この計算を助けるために、SOFR を複利で積み上げた 30 日、90 日、180 日の平均と、SOFR 指数を公表しています11。SOFR 指数は、SOFR の最初の対象日の 2018 年 4 月 2 日を 1.00000000 とし、その後の SOFR を複利で積み上げた値です。2 つの日の指数の比から、好きな期間の複利の平均を求められます12。

利息の期間の初めに利率が決まっている金利が要る取引のために、SOFR にはターム物金利もあります。ARRC(Alternative Reference Rates Committee)は、米国の当局が集めた民間の市場参加者の会合です。ARRC は 2021 年 7 月 29 日に、CME グループのターム SOFR(ターム物の SOFR)を正式に推奨しました13。このとき推奨した期間は、1 か月、3 か月、6 か月です。ARRC は 2022 年 5 月に、12 か月も支持(endorse)すると発表しました14。

ターム SOFR は、SOFR を参照するデリバティブの取引をもとに作ります15。ターム SOFR のように、主な通貨のターム物のリスク・フリー・レート(RFR)は、翌日物の RFR の後決め複利と交換される OIS(翌日物金利スワップ)の固定金利や、金利先物の価格をもとに作ります16。

ARRC は、ターム SOFR を使う範囲を絞るよう勧めています。企業向けの貸出(複数の貸し手が加わる貸出、中堅企業向けの貸出、貿易金融)では、使うことを支持しています。一方で、デリバティブの大部分にはすでに SOFR の後決め複利が使われているため、ターム SOFR を使うことを支持しません。デリバティブでターム SOFR を使うのは、ターム SOFR を参照する貸出などを持つ顧客のヘッジのための取引に限るよう勧めています。ターム SOFR のもとになるデリバティブの取引が減ると、ターム SOFR そのものの頑健さが損なわれるためです17。

米ドル LIBOR の後継の金利

ARRC は 2017 年 6 月 22 日に、米国債のレポ取引の広い範囲の金利を、米ドル LIBOR に代わる RFR として選びました19。この金利が SOFR で、最初の SOFR は 2018 年 4 月 3 日に、対象日 2018 年 4 月 2 日の値として公表されました20。

米ドル LIBOR のパネル銀行(LIBOR の算出のために金利を呈示していた銀行)は、2023 年 6 月 30 日に最後の呈示をしました。米ドル LIBOR はこれで、銀行が無担保で資金を調達するコストを表す指標ではなくなりました21。米ドル LIBOR を参照していた契約の移し方(フォールバックなど)を含む移行の経緯は、LIBOR からの移行で扱います。

ほかの通貨の RFR は、円が TONA(無担保コール翌日物金利)、ユーロが €STR(euro short-term rate)、英ポンドが SONIA(Sterling Overnight Index Average)です22。

注

  1. Federal Reserve Bank of New York「Secured Overnight Financing Rate Data」の冒頭の説明と、公表時刻を述べる 2 段落目("at approximately 8:00 a.m. ET")。 ↩ ↩2 ↩3

  2. 日本銀行金融市場局「本邦レポ市場のトレンドと近年の特徴点」(日銀レビュー 2025-J-7、2025 年 8 月)の「はじめに」と注 4。日本のレポ取引についての説明ですが、一定期間、資金と債券を交換する取引という仕組みは同じです。 ↩

  3. Federal Reserve Bank of New York「Additional Information about Reference Rates Administered by the New York Fed」の「Primary Data Inputs for the Treasury Repo Reference Rates」の TGCR、BGCR、SOFR の段落。 ↩ ↩2

  4. 同じ資料の「Primary Data Inputs for the Treasury Repo Reference Rates」の SOFR の段落。20% を取り除くのは、関係会社どうしの取引を除いた後です。 ↩

  5. Federal Reserve Bank of New York「Additional Information about Reference Rates Administered by the New York Fed」の「Calculation Methodology for the TGCR, BGCR, and SOFR」。 ↩ ↩2 ↩3

  6. 同じ資料の「Primary Data Inputs for the Treasury Repo Reference Rates」の 1 段落目。2022 年 1 月 24 日より前は、DTCC Solutions LLC からもデータを得ていました。 ↩

  7. 同じ資料の「Data Exclusions for the Treasury Repo Reference Rates」。 ↩

  8. 同じ資料の「Details on Publication and Revisions for the Treasury Repo Reference Rates」。 ↩ ↩2

  9. 同じ資料の「Data Contingencies for the Treasury Repo Reference Rates」。 ↩

  10. 日本円金利指標に関する検討委員会「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議」(2019 年 7 月)の 10 ページ(PDF の 11 ページ目)、選択肢(2)「O/N RFR 複利(後決め)」の説明(「金利の計算期間の最終日が近づいた時点で適用金利が確定します(=後決め)」)。円の翌日物金利についての説明ですが、翌日物金利を複利で積み上げて利率を決める仕組みは同じです。 ↩

  11. Federal Reserve Bank of New York「Additional Information about Reference Rates Administered by the New York Fed」の「Calculation Methodology for the SOFR Averages and Index」の 1 段落目。 ↩

  12. 同じ資料の「Calculation Methodology for the SOFR Averages and Index」の SOFR Index の段落と、指数から平均を求める式の段落。 ↩

  13. Alternative Reference Rates Committee「ARRC Formally Recommends Term SOFR」(2021 年 7 月 29 日)の 1 段落目。ARRC の説明は同じ資料の「About the ARRC」。 ↩

  14. 日本銀行「LIBOR 移行対応に関する国内外の動向」(金利指標フォーラム、2023 年 12 月)の 2〜3 ページ、2022 年 3 月 23 日の ARRC 会合の項(「ARRC が 2021 年に同 1、3、6 か月物を推奨した」)と 5 月 18 日の ARRC 会合の項(12 か月物を「endorse することを承認(5 月 19 日発表)」)。 ↩

  15. Alternative Reference Rates Committee「ARRC Best Practice Recommendations Related to Scope of Use of the Term Rate」(2021 年 7 月)の「Background」の 2 段落目。 ↩

  16. 日本銀行「LIBOR 公表停止後のドル調達プレミアムのモニタリングにおける留意点について」(日銀レビュー、2022 年 2 月)の図表 1 の注 2。 ↩

  17. 同じ資料の「Recommended Best Practices for Use of the SOFR Term Rate in New Contracts」の 1 と 2。 ↩

  18. 同じ資料の「Recommended Best Practices for Use of the SOFR Term Rate in New Contracts」の 1 段落目。 ↩

  19. ARRC の 2017 年 6 月 22 日の発表資料(出典に記載)の 1 段落目。SOFR であることは「ARRC Best Practice Recommendations Related to Scope of Use of the Term Rate」の「Background」の 1 段落目。 ↩

  20. Federal Reserve Bank of New York「Additional Information about Reference Rates Administered by the New York Fed」の SOFR Index の表の注。 ↩

  21. 日本銀行「LIBOR 移行対応に関する国内外の動向」(金利指標フォーラム、2023 年 12 月)の 12 ページ、2023 年 6 月 22 日の ARRC 会合の項(「米ドル LIBOR のパネル行は 6 月 30 日をもって最後のレート呈示を行うこと、これをもって、同指標は指標性を喪失し、無担保ホールセール市場における銀行の資金調達コストの実態を表すものではなくなること」)。 ↩

  22. Financial Conduct Authority「About LIBOR transition」の「RFRs recommended as alternatives to LIBOR」の表。 ↩