OIS の決済や、後決め複利を使う貸出の利払いでは、変動金利の受払額と利息は、期間の終わりに、契約の条件に沿って日々の TONA から計算します。積み上げ方と日数の数え方を押さえると、計算した金額の食い違いが、金利、日数、休日のどこから出たかを確かめられます。

翌日物金利を毎日積み上げた期間の利率

後決め複利の利率は、利息の期間の初日に資金を翌日物で運用し、毎営業日、受け取った利息ごと運用し直したときの増え方を、年率に直したものです。翌日物の金利は日々変わるため、期間の利率は、期間の最後の営業日の金利が分かるまで決まりません。そのため「後決め」と呼びます。これに対し、期間の初めに利率が決まる方式を「前決め」といいます1。日本円の指標金利について、日本銀行と金融庁の資料は、TONA(無担保コール翌日物金利)の後決め複利の利率が金利支払日の直前に決まると整理しています。一方、ターム物金利の TORF(東京ターム物リスク・フリー・レート)と TIBOR(東京銀行間取引金利)は前決めです2。TONA、TORF、TIBOR は、円 LIBOR(ロンドン銀行間取引金利)の代わりの候補として整理されたものです。

日本円の OIS は、固定金利と、期間中の TONA を複利で計算した変動金利を交換する取引です。変動金利の受け払いの額は、期間の終わりに期間中の TONA を複利計算して決まります3。貸出でも、日本円金利指標に関する検討委員会が、TONA の後決め複利を使う貸出の利息の計算方式を 2020 年 12 月に整理して公表しました4。TONA の定義と算出の方法は、TONAで扱います。

後決め複利の求め方

後決め複利の利率は、次の 3 つの手順で求めます。まず、期間中の営業日ごとに、その日の TONA に、その金利を使う日数を掛けて 365 で割り、1 を足します。次に、それをすべての営業日について掛け合わせます。最後に、積から 1 を引いて期間の増え方にし、365 ÷ 期間の日数を掛けて年率に直します。式で書くと次のとおりです5。

R=(∏i=1db(1+ri×ni365)−1)×365DR = \left( \prod_{i=1}^{d_b} \left( 1 + \frac{r_i \times n_i}{365} \right) - 1 \right) \times \frac{365}{D}

RR は期間の利率(年率)、dbd_b は期間の営業日の数、rir_i は期間の ii 番目の営業日の TONA、nin_i はその TONA を使う暦日の日数、DD は期間の暦日の日数です。利息は、元本に RR と D÷365D \div 365 を掛けて求めます。

利息=元本×R×D365\text{利息} = \text{元本} \times R \times \frac{D}{365}

検討委員会の整理では、期間の利率 RR は小数点以下 5 桁(% で表した値)に端数処理し、利息の額は 1 円単位に端数処理します6。貸出で金利に上乗せするスプレッドは、複利の計算に入れず、複利で求めた利率に後から足します7。

深掘りSOFR Index を使った後決め複利の求め方

米ドルの翌日物金利 SOFR(Secured Overnight Financing Rate)を公表するニューヨーク連邦準備銀行(ニューヨーク連銀)は、SOFR を毎営業日複利で積み上げた指数(SOFR Index)も公表しています。期間の初日の指数を IxI_x、期間の終わりの日の指数を IyI_y、期間の暦日の日数を dcd_c とすると、期間の後決め複利は次の式で求められます8。

R=(IyIx−1)×360dcR = \left( \frac{I_y}{I_x} - 1 \right) \times \frac{360}{d_c}

指数の比は、本文の式の積の部分で、365 を 360 にしたものに当たります。ただし、指数は小数点以下 8 桁に丸めて公表されるため、同じ期間の SOFR の 30 日平均などの公表値と、小数点以下 5 桁目で違うことがあると、ニューヨーク連銀は説明しています8。

日数の数え方と休日の扱い

期間の日数 DD は、初日を含め、最終日を含めずに数えます。検討委員会の資料はこれを「後片端落とし」と呼んでいます。年に直すときの日数計算の慣行は、TONA に合わせて 1 年を 365 日とする ACT/365(固定)です10。一方、SOFR の平均と指数は、米ドルの短期金融市場の慣行に合わせて、実際の日数を 360 で割ります11。

休日の分は、日ごとに積み上げません。直前の営業日の金利を使い、次の営業日までの暦日の日数を掛けます12。そのため、金曜日の TONA は、次の月曜日が祝日でなければ、土曜日と日曜日を含めた 3 日分として、1 + 金利 × 3 ÷ 365 を掛けます13。営業日は、変動金利の算出場所である東京の休日で決めます13。日付が休日に当たるときの営業日の調整について、検討委員会の貸出サブグループの意見照会では、修正翌営業日(Modified Following)を採用することに圧倒的多数が賛同しました10。

1 週間の後決め複利の計算例

祝日のない 1 週間の例で計算します。期間は 2026 年 3 月 23 日(月)から 3 月 30 日(月)までの 7 日で、営業日は 23 日から 27 日(金)までの 5 日です。金利は、下のシミュレーターのサンプルの翌日物金利を使う架空の例で考えます。サンプルの値は実際の TONA ではありません。日付と使う金利の日数の対応は、次の図のとおりです。

3 月 23 日(月)期間の初日。1 日分3 月 24 日(火)1 日分3 月 25 日(水)1 日分3 月 26 日(木)1 日分3 月 27 日(金)3 日分(土曜日と日曜日を含む)3 月 30 日(月)期間の終わりの日。日数には数えない
図 11 週間の期間で、日ごとに使う金利と日数
図の説明

2026 年 3 月 23 日から 30 日までの期間で、日ごとに使う金利の日数を古い順に並べた図です。23 日から 26 日の 4 営業日は、その日の金利を 1 日分使います。27 日(金)は土曜日と日曜日を含めて 3 日分使います。30 日は期間の終わりの日で、日数には数えません。日数の合計は期間の暦日の日数 7 日と同じになります。図の間隔は時間の長さを表さず、塗りの丸は期間の初日と終わりの日です。

営業日 金利(%) 日数 1 + 金利 × 日数 ÷ 365 積み上げた倍率
3 月 23 日(月) 0.727 1 1.0000199178 1.0000199178
3 月 24 日(火) 0.727 1 1.0000199178 1.0000398360
3 月 25 日(水) 0.729 1 1.0000199726 1.0000598094
3 月 26 日(木) 0.726 1 1.0000198904 1.0000797010
3 月 27 日(金) 0.728 3 1.0000598356 1.0001395414

最後の倍率から 1 を引いた 0.0001395414 が、7 日間の増え方です。これに 365 ÷ 7 を掛けると、期間の利率は 0.7276% です。元本 1 億円の利息は、1 億円 × 0.7276% × 7 ÷ 365 で、13,954 円になります14。

期間と金利の動きによる利率の違い

期間の利率は、期間中の日々の金利を日数で重み付けして積み上げた値になるため、途中で金利が上がると、上がる前と後の金利の間の値になります。2026 年 2 月 2 日から 5 月 1 日までの 88 日の期間で、同じサンプルの金利(3 月 18 日までは 0.477% 前後、3 月 19 日からは 0.727% 前後)を使うと、期間の利率は 0.5997% です。元本 1 億円の利息は、1 億円 × 0.5997% × 88 ÷ 365 で、144,587 円になります14。上がった後の金利を使う日が期間の約半分のため、利率は 2 つの金利のほぼ中ほどになります。このサンプルは祝日(2 月 11 日、2 月 23 日、3 月 20 日、4 月 29 日)も営業日として金利を使っているため、実際の東京の営業日で計算した値とは違います。

シミュレーター後決め複利の日ごとの計算
入力
営業日
営業日
営業日
0.450.500.550.600.650.700.7501020304050607080金利(%)期間の始めからの日数0.5997%
  • その日までの複利(年率)
  • 日々の翌日物金利
日ごとの計算の過程
日付使う金利の日付金利日数積み上げた倍率
2026年2月2日2026年2月2日0.477%11.00001307
2026年2月3日2026年2月3日0.477%11.00002614
2026年2月4日2026年2月4日0.479%11.00003926
2026年2月5日2026年2月5日0.476%11.00005230
2026年2月6日2026年2月6日0.478%31.00009159
2026年2月9日2026年2月9日0.475%11.00010461
2026年2月10日2026年2月10日0.478%11.00011770
2026年2月11日2026年2月11日0.477%11.00013077
2026年2月12日2026年2月12日0.477%11.00014384
2026年2月13日2026年2月13日0.479%31.00018322
2026年2月16日2026年2月16日0.476%11.00019626
2026年2月17日2026年2月17日0.478%11.00020936
2026年2月18日2026年2月18日0.475%11.00022238
2026年2月19日2026年2月19日0.478%11.00023548
2026年2月20日2026年2月20日0.477%31.00027469
2026年2月23日2026年2月23日0.477%11.00028776
2026年2月24日2026年2月24日0.479%11.00030089
2026年2月25日2026年2月25日0.476%11.00031394
2026年2月26日2026年2月26日0.478%11.00032704
2026年2月27日2026年2月27日0.475%31.00036609
2026年3月2日2026年3月2日0.478%11.00037919
2026年3月3日2026年3月3日0.477%11.00039226
2026年3月4日2026年3月4日0.477%11.00040534
2026年3月5日2026年3月5日0.479%11.00041847
2026年3月6日2026年3月6日0.476%31.00045761
2026年3月9日2026年3月9日0.478%11.00047071
2026年3月10日2026年3月10日0.475%11.00048373
2026年3月11日2026年3月11日0.478%11.00049683
2026年3月12日2026年3月12日0.477%11.00050990
2026年3月13日2026年3月13日0.477%31.00054913
2026年3月16日2026年3月16日0.479%11.00056226
2026年3月17日2026年3月17日0.476%11.00057531
2026年3月18日2026年3月18日0.478%11.00058841
2026年3月19日2026年3月19日0.725%11.00060829
2026年3月20日2026年3月20日0.728%31.00066816
2026年3月23日2026年3月23日0.727%11.00068809
2026年3月24日2026年3月24日0.727%11.00070802
2026年3月25日2026年3月25日0.729%11.00072801
2026年3月26日2026年3月26日0.726%11.00074791
2026年3月27日2026年3月27日0.728%31.00080779
2026年3月30日2026年3月30日0.725%11.00082767
2026年3月31日2026年3月31日0.728%11.00084763
2026年4月1日2026年4月1日0.727%11.00086757
2026年4月2日2026年4月2日0.727%11.00088750
2026年4月3日2026年4月3日0.729%31.00094748
2026年4月6日2026年4月6日0.726%11.00096738
2026年4月7日2026年4月7日0.728%11.00098735
2026年4月8日2026年4月8日0.725%11.00100723
2026年4月9日2026年4月9日0.728%11.00102720
2026年4月10日2026年4月10日0.727%31.00108701
2026年4月13日2026年4月13日0.727%11.00110695
2026年4月14日2026年4月14日0.729%11.00112695
2026年4月15日2026年4月15日0.726%11.00114686
2026年4月16日2026年4月16日0.728%11.00116683
2026年4月17日2026年4月17日0.725%31.00122649
2026年4月20日2026年4月20日0.728%11.00124646
2026年4月21日2026年4月21日0.727%11.00126640
2026年4月22日2026年4月22日0.727%11.00128634
2026年4月23日2026年4月23日0.729%11.00130634
2026年4月24日2026年4月24日0.726%31.00136609
2026年4月27日2026年4月27日0.728%11.00138606
2026年4月28日2026年4月28日0.725%11.00140595
2026年4月29日2026年4月29日0.728%11.00142592
2026年4月30日2026年4月30日0.727%11.00144587
期間の利率(年率、後決め複利)
0.5997%
元本 1 億円の利息(88 日 ÷ 365)
144,587
支払日
2026年5月1日

単純化している点

  • 日次の金利はサンプルの値(実際の TONA ではありません)で、2026/03/19 から 0.25% 上がります。
  • 営業日は平日とし、祝日は考えません。休日は直前の営業日の金利を、休日の日数分の単利で使います。
  • 利率は TONA の慣行(1 年を 365 日)で計算し、途中で丸めません。
  • ロックアウトは、終わりから数えた営業日の日(カットオフ日)より後の日に、カットオフ日の金利を使います。0 と 1 はロックアウトなしと同じです。

このシミュレーターは学習のために単純化した計算で、実際の取引の評価やリスク管理には使えません。(免責事項)

シミュレーターの説明

利息の期間の始めと終わりを変えると、日ごとの計算の過程(使う金利、日数、積み上げた倍率)と、期間の利率、利息が変わります。始めを 3 月 23 日、終わりを 3 月 30 日にすると、上の 1 週間の計算例と一致します。グラフの、その日までの複利の利率は、金利が上がった 3 月 19 日から上向きになります。ルックバックやロックアウトを入れると、使う金利の日付がずれ、表で太字になります。

単利の平均との違い

期間中の金利を複利にせず、日数で重み付けして平均する方法を単利の平均といいます。式で書くと次のとおりです。

単利の平均=1D∑i=1dbri×ni\text{単利の平均} = \frac{1}{D} \sum_{i=1}^{d_b} r_i \times n_i

検討委員会の資料は、貸出で実務上の必要に応じて単利を使うことを妨げないとしています15。

金利がプラスなら、後決め複利は単利の平均より高くなります。1 + 金利 × 日数 ÷ 365 を掛け合わせると、足し合わせた分に加えて、利息に付く利息の分が積に入るためです。88 日の例では、後決め複利の 0.5997% に対し、単利の平均は 0.5993% で、元本 1 億円の利息の差は 102 円です。同じ期間なら、差は金利の水準が高いほど大きくなります。同じ 88 日で金利が毎日 0.5% なら後決め複利は 0.5003% ですが、毎日 5% なら 5.0296% で、単利の平均の 5% より 0.03% ほど高くなります14。

期間の終わりまで利率が決まらない問題

後決め複利では、利息の額が期間の終わりまで決まりません。日本銀行は、ある営業日の TONA の確定した値(確報値)を翌営業日の午前 10 時頃に公表するため16、期間の最後の営業日の TONA は、期間の終わりの日になってから分かります。リスク・フリー・レートに関する勉強会の 2018 年 4 月の資料にある日本円の OIS の例では、期間の終わりの日に TONA の公表を待って変動金利の額を計算し、その 2 営業日後に差額を決済します17。

利息を期間の終わりの日に払う貸出や債券では、利息の額を確かめて支払いを準備する時間がありません。この問題に対して、何営業日か前の金利を使うルックバックなどの計算の慣行があります18。ルックバック、ロックアウト、支払い遅延の仕組みと利率への影響は、ルックバック、ロックアウト、支払い遅延で扱います。

注

  1. 日本円金利指標に関する検討委員会「日本円金利指標の適切な選択と利用等に関する市中協議」(2019 年 7 月)の 10 ページ、「選択肢(1)O/N RFR 複利(前決め)」「選択肢(2)O/N RFR 複利(後決め)」。 ↩

  2. 日本銀行金融市場局・金融機構局、金融庁総合政策局・監督局「円LIBOR移行対応の振り返りと今後の取り組み」(日銀レビュー 2022-J-8、2022 年 5 月)の 3 ページ、図表 2「代替金利指標の3つの選択肢」の「金利決定のタイミング」。 ↩

  3. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 4 月)の 8 ページ、「(変動金利の受払額が金利計算期間の満期日に確定)」。 ↩

  4. 日本円金利指標に関する検討委員会「貸出における TONA(後決め)のコンベンション(利息計算方式)について」の本文 1 ページ。公表の年月は、日本銀行「円LIBOR移行対応の振り返りと今後の取り組み」(2022 年 5 月)の 3 ページ、図表 3 による。 ↩

  5. 日本円金利指標に関する検討委員会「貸出における TONA(後決め)のコンベンション(利息計算方式)について」の別紙 1 ページ、「1.記号・数式等」。資料は RR を ACRdbACR_{db}、rir_i を TONAiTONA_i、dbd_b を dbdb、DD を tndbtn_{db} と書いています。 ↩

  6. 同じ資料の本文 2 ページの「端数処理」と、別紙 1 ページの「【ステップ2】利息額(Interest Amount)の計算」。 ↩

  7. 同じ資料の本文 3 ページ、「スプレッドの取扱い」。 ↩

  8. Federal Reserve Bank of New York, "Additional Information about Reference Rates Administered by the New York Fed" の "Calculation Methodology for the SOFR Averages and Index"。 ↩ ↩2

  9. 日本円金利指標に関する検討委員会「貸出における TONA(後決め)のコンベンション(利息計算方式)について」の本文 2 ページの「利息計算手法」と、別紙 1〜2 ページ、「2.各方式の計算式」。 ↩ ↩2

  10. 同じ資料の本文 2 ページ、「日数計算」「計算期間の初日と最終日の取扱い」「営業日」。 ↩ ↩2

  11. Federal Reserve Bank of New York, "Additional Information about Reference Rates Administered by the New York Fed" の "Calculation Methodology for the SOFR Averages and Index" の 2 つ目の段落。 ↩

  12. 日本円金利指標に関する検討委員会「貸出における TONA(後決め)のコンベンション(利息計算方式)について」の本文 2 ページ、「休日処理」。 ↩

  13. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 4 月)の 5 ページ、「基本的な取引方式」。 ↩ ↩2

  14. このページの計算例とシミュレーターは、利率を途中で丸めずに利息を求め、1 円未満を四捨五入して示しています。検討委員会の整理のとおり利率を小数点以下 5 桁(%)に端数処理すると、88 日の例の利息は 144,587.6 円になります。 ↩ ↩2 ↩3

  15. 日本円金利指標に関する検討委員会「貸出における TONA(後決め)のコンベンション(利息計算方式)について」の本文 2 ページ、「単利」。 ↩

  16. 日本銀行金融市場局「「コール市場関連統計」の解説」の「3.公表方法」(2 ページ)の表。 ↩

  17. リスク・フリー・レートに関する勉強会「日本円OIS(Overnight Index Swap)─取引の概要と活用事例─」(2018 年 4 月)の 5 ページ「基本的な取引方式」と、6 ページ「例2:1年未満のOIS 清算取引で、満期時のみに利払いを行うケース」。 ↩

  18. 日本円金利指標に関する検討委員会「貸出における TONA(後決め)のコンベンション(利息計算方式)について」の本文 1 ページ、「Lookback 期間(調整日数)」。 ↩