実務上級
システム担当者
- こんな人に
- 情報システム部門、SIer、パッケージベンダーで、取引管理やリスク計算のシステムを作り、運用する人に向けています。
- 読み方
- 新人は先に共通基礎を読みます。実務経験者は段階 1 から、取引管理システムに携わったことがある人は段階 2 から読みます。段階 6 は評価エンジンを作る人向けです。
- 先に読むロードマップ
- 新人の共通基礎
段階 1業務とシステムの全体像実務
部署の役割と、フロントからバックまでのシステム構成、ベンダー製品、約定とライフサイクル・イベントのデータを押さえます。
- 入門フロント・ミドル・バックの役割取引をする人が記録や支払いも受け持つと、損失の隠蔽や着服にほかの人が気づけないため、部署を分けます。業務(金融機関内)
- 入門フロントからバックまでのシステム構成システムは多くの場合、取引、リスク管理、確認・決済・担保、会計の業務ごとに分かれ、使う部署もまたがります。データ・システム
- 実務取引管理システムの種類とベンダーの具体例取引管理システムの入手の仕方は、市販の統合型、専門型、自社開発の 3 つに分けて見ます。データ・システム
- 入門約定の管理取引をした部署とは別の部署が入力を確かめ、誤りがあれば訂正し、確かめ終えた取引を取引相手との照合に回します。業務(金融機関内)
- 実務取引期間中のイベント処理期間中のイベントによって、取引は続くか、終わるか、別の取引に置き換わります。業務(金融機関内)
- 実務ライフサイクル・イベントのデータ報告のデータは、取引にしたことのアクションと、その理由のイベントを分け、イベントを 12 種類に区別します。データ・システム
段階 2計算に要る前提実務
日数と営業日の慣行、複利と割引、ゼロレートとフォワードレート、カーブの構築、後決め複利の計算など、実装で間違えやすい決まりを押さえます。
- 入門日数計算の慣行利息は、元本に金利と「期間の日数 ÷ 1 年の日数」を掛けて求め、期間の日数は開始日を含めて終了日を含めずに数えます。基礎知識
- 入門営業日の調整と休日カレンダー日本の銀行の休日は、日曜日、土曜日、国民の祝日に関する法律の休日、12 月 31 日から 1 月 3 日です。基礎知識
- 入門複利と割引金利 2% で 100 円を 3 年預けると、元本だけに利息を付ける単利では 106 円、年 1 回の複利では 106.12 円になります。基礎知識
- 入門現在価値と割引係数金利が 2% なら、1 年後に受け取る 102 円の現在価値は 100 円です。基礎知識
- 実務ゼロレートとフォワードレートスポットレートは、途中に利息の受け払いがない割引債の複利の利回りです。基礎知識
- 実務金利カーブのブートストラップスワップの固定金利から割引係数はそのまま読み取れないため、短い年限から順に、市場の固定金利で時価が 0 になる割引係数を求めます。基礎知識
- 実務マルチカーブ割引は OIS のカーブ、予想は参照する金利と期間ごとのカーブで分け、予想は時価が 0 になる条件から求めます。基礎知識
- 実務後決め複利の計算後決め複利は、翌日物の資金を毎日利息ごと運用し直した結果を年率に直したもので、利率は期間の終わりに決まります。指標金利
- 実務ルックバック、ロックアウト、支払い遅延ルックバックを 5 営業日にすると、利率は期間の終わりの 5 営業日前に分かります。指標金利
段階 3データと標準実務
市場データの管理、夜間のバッチ処理、FpML と ISDA CDM、識別子、電子取引基盤と約定後のサービスとの連携を押さえます。
- 実務市場データの管理部署ごとの前提の食い違いは、財務報告と市場リスクの評価を誤らせることがあります。データ・システム
- 実務夜間のバッチ処理夜間のバッチ処理は、その日の終わりの値を使う処理をまとめて動かすもので、その場で動くオンラインの処理と分けて考えます。データ・システム
- 実務FpMLFpML は、ISO 20022 と統合でき、CDM の対応づけの対象にもなっています。データ・システム
- 実務ISDA CDMCDM は、金融商品、取引、ライフサイクル・イベントの表し方をそろえる、機械が読めて実行もできるデータモデルです。データ・システム
- 実務LEI、UTI、UPILEI は法人を、UTI は取引を、UPI は商品を識別するコードで、それぞれ ISO の規格で形が決まっています。データ・システム
- 実務電子取引基盤(SEF など)制度の狙いは国で違い、米国は取引前の価格の透明性、日本は取引の公正の確保のための概要の開示を掲げます。市場インフラ
- 実務約定後の電子確認と照合のサービス電子確認では、条件が一致するか当事者が受け入れると、確認が成立します。市場インフラ
段階 4評価とリスクの計算処理実務
スワップとオプションの評価、グリークス、担保による割引、センシティビティと VaR、モンテカルロ法、日次の時価と損益の確定を、処理の流れとして押さえます。
- 実務金利スワップの時価評価時価は、自分が受け取る分の現在価値から自分が払う分の現在価値を引いた金額で、市場の金利で約定した時点では 0 です。仕組み:金利
- 実務ブラック・ショールズ・モデル原資産の価格は幾何ブラウン運動に従い、ボラティリティと金利は一定で、取引の費用なしに連続的に売買できると仮定します。評価
- 入門グリークス架空のコール(価格 8.43)は、デルタが 0.5596 なので、原資産の価格が 1 上がると価格がおよそ 0.56 上がると見積もれます。評価
- 実務担保と割引カーブ担保の通貨、付利の金利、受け渡しの頻度、閾値はクレジット・サポート・アネックス(CSA)で決め、割引に使う金利はこの条件で変わります。評価
- 実務センシティビティ(DV01、ベガ、年限別の感応度)リスクファクターは商品ごとに決まり、金利は年限ごとの金利をそれぞれ 1 つのリスクファクターとして扱います。市場リスク管理
- 入門VaR信頼水準 99% の VaR は、損失がその額を超える確率が 1% になる金額です。市場リスク管理
- 実務モンテカルロ法経路は、原資産の期待収益率を無リスク金利と置いたリスク中立の動きで作ります。評価
- 実務日次の時価と損益の確定取引をする人が自分の損益を決めると誤りや不正が隠れるため、損益はフロントの数字をそのまま使わず、取引をしない部署が確かめます。業務(金融機関内)
段階 5報告と規制の要件実務
規制当局への報告、取引情報の報告制度、電子取引基盤の使用義務、記録の保存、記帳する法人の扱いなど、システムが満たす要件を押さえます。
- 実務規制当局への報告取引情報は取引ごとに取引情報蓄積機関へ送り、自己資本比率やリスクの状況は決まった時期に当局へ送ります。業務(金融機関内)
- 実務取引情報の報告制度根拠は金融商品取引法の 156 条の 63 から 156 条の 66 と内閣府令です。規制:日本
- 実務電子取引基盤の使用義務改正後は、TONA 複利(後決め)の円金利スワップなど、告示の要件をすべて満たす取引が対象です。規制:日本
- 実務記録の保存日本は、金融商品取引業者に業務の帳簿書類の作成と保存を求め、種類と期間は内閣府令が定めます。規制:地域共通のテーマ
- 実務どの法人で取引を記帳するか顧客と営業をする法人と、取引を帳簿に載せるブッキング法人は、同じとは限りません。組織・ブッキングモデル
段階 6評価エンジンの数値計算上級
カーブの補間、キャリブレーション、有限差分法、AAD、ハル・ホワイト・モデルと XVA の計算、取引のデジタル化に進みます。
- 上級カーブの補間補間する量は割引係数、その対数、ゼロレートのどれかで、選んだ量が、点の間のフォワードレートの形を決めます。基礎知識
- 上級キャリブレーション評価に使うモデルは、ヘッジにも使う商品のうち、市場で価格が見えるものの今の価格に合わせます。評価
- 上級有限差分法微分を格子の点どうしの差で置き換えると、陽解法なら、1 時間刻みの計算が、隣り合う 3 点の値の重み付きの和で書けます。評価
- 上級AAD(随伴自動微分)入力を 1 つずつ動かすバンプは、感応度の本数に比例して再計算が増え、幅の選び方による誤差も出ます。評価
- 上級ハル・ホワイト・モデル短期金利は、平均回帰の速さとボラティリティの 2 つで動き、正規分布に従うため、マイナスの値もとります。評価
- 実務XVA の全体像CVA、FVA、MVA、KVA は時価を下げ、DVA は時価を上げます。評価
- 実務取引のデジタル化(CDM、トークン化)採用の公表があるのは CDM と取引報告で、トークン化は調査と実験が中心です。新しい潮流
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