債券や金利デリバティブを評価する担当者は、将来のキャッシュフローを割り引くときに、金利の数え方をそろえる必要があります。
単利と複利の違い
金利 2% で 100 円を 3 年預ける架空の例で考えます。元本だけに利息を付ける数え方を単利といい1、毎年の利息は 100 円の 2% の 2 円のままです。3 年後の金額は 100 円に 2 円を 3 回足した 106 円です。
利息を元本に加え、次の年はその合計に利息を付ける数え方を複利といいます2。1 年後の 102 円には、2 年目に 102 円の 2% の 2.04 円の利息が付き、104.04 円になります。3 年目は 104.04 円の 2% が付き、106.12 円です3。
| 経過年数 | 単利(円) | 年 1 回の複利(円) |
|---|---|---|
| 1 年後 | 102.00 | 102.00 |
| 2 年後 | 104.00 | 104.04 |
| 3 年後 | 106.00 | 106.12 |
複利では利息にも利息が付くため、同じ金利なら、期間が長いほど単利との差が大きくなります1。預ける側から見ると受け取る金額が増えますが、借りる側から見ると、返す金額が同じように複利で増えます2。
複利の頻度による違い
金利 2% の半年ごとの複利なら、半年ごとに 1% の利息を付けます。100 円は半年後に 101 円、1 年後に 101 円の 1% が付いて 102.01 円になります。このように、年に何回も複利にするときは、年の金利を 1 年の回数で割った金利を、1 回ごとに付けます4。
年 1 回の複利の 102 円より 0.01 円多いのは、半年後に付いた 1 円の利息にも、後の半年で利息が付くためです。同じ 2% でも、1 年で増える割合は半年ごとの複利では 2.01% になります。複利の回数を増やすと、1 年後の金額は次の表のように少しずつ大きくなります5。
| 複利の頻度 | 1 回の金利 | 1 年の回数 | 1 年後の金額(円) |
|---|---|---|---|
| 年 1 回 | 2% | 1 | 102.000 |
| 半年ごと | 1% | 2 | 102.010 |
| 四半期ごと | 0.5% | 4 | 102.015 |
| 毎月 | 約 0.167% | 12 | 102.018 |
| 連続 | − | − | 102.020 |
回数をいくら増やしても、1 年後の金額は限りなく大きくはならず、ある値に近づきます。回数を限りなく増やした数え方を連続複利といい、金利 2% の連続複利では 1 年後の金額は約 102.020 円です6。
深掘り複利の頻度ごとの将来の金額の式
年の金利 で、年に 回の複利にすると、今の金額 は 年後に次の金額 になります。1 回ごとに の利息を付け、それを 回くり返すためです。
を限りなく大きくすると、 はネイピア数 (約 2.71828)の 乗に近づきます。そのため、連続複利の 年後の金額は次の式になります。
割引は複利の逆算
金利 2% の半年ごとの複利なら、1 年後の 102.01 円を 1.01 で 2 回割ると、今の 100 円に戻ります。複利の計算が今の金額に倍率を掛けて将来の金額を求めるのに対し、割引は、将来の金額を同じ倍率で割って今の金額を求めます7。
将来に受け取るお金や支払うお金(キャッシュフロー)を、今の時点の価値に直した金額を現在価値といいます。10 年後に受け取る 100 円の現在価値は、年 1 回の複利の金利 2% なら、100 円を 1.02 で 10 回割って 82.03 円です。将来の 1 円の現在価値を割引係数といい、この例では 0.8203 です。割引係数を使った現在価値の求め方は現在価値と割引係数で扱います。
深掘り複利の頻度ごとの割引係数の式
計算例:10 年での頻度の違い
金利 2%、期間 10 年で、数え方ごとに、今の 100 円の 10 年後の金額と、10 年後に受け取る 100 円の現在価値を比べます。単利の現在価値は、100 円を 10 年分の倍率 1.2 で割って求めます(100 ÷ 1.2)。
| 数え方 | 10 年の回数 | 今の 100 円の 10 年後の金額(円) | 10 年後の割引係数 | 10 年後の 100 円の現在価値(円) |
|---|---|---|---|---|
| 単利 | − | 120.00 | 0.8333 | 83.33 |
| 年 1 回の複利 | 10 | 121.90 | 0.8203 | 82.03 |
| 半年ごとの複利 | 20 | 122.02 | 0.8195 | 81.95 |
| 四半期ごとの複利 | 40 | 122.08 | 0.8191 | 81.91 |
| 毎月の複利 | 120 | 122.12 | 0.8189 | 81.89 |
| 連続複利 | − | 122.14 | 0.8187 | 81.87 |
複利の回数が多いほど 10 年後の金額は大きくなり、割引係数と現在価値は小さくなります8。年 1 回の複利と連続複利の差は、10 年後の金額で 0.24 円、現在価値で 0.16 円です。
頻度の差が大きくなる条件
金利がプラスのとき、年 1 回の複利と連続複利の将来の金額の差は、金利が高いほど、期間が長いほど大きくなります。金利を 5% にすると、10 年後の金額は年 1 回の複利で 162.89 円、連続複利で 164.87 円になり、差は 1.98 円です。金利 2% のときの差 0.24 円の 8 倍を超えます。金利 2% のまま期間を 20 年にすると、年 1 回の複利は 148.59 円、連続複利は 149.18 円で、差は 0.59 円です。
金利 5%、10 年の割引係数は、年 1 回の複利で 0.6139、半年ごとで 0.6103、四半期ごとで 0.6084、毎月で 0.6072、連続複利で 0.6065 です。
- 割引係数(複利の頻度: 年 1 回)
- 割引係数(連続複利とみなした場合)
- 10 年後の割引係数
- 0.6139
- 10 年後に受け取る 100 の現在価値
- 61.39
- 同じ金利を連続複利とみなした割引係数
- 0.6065
単純化している点
- 金利は期間によらず一定とし、金利カーブの形は考えません。
- 年数は日数計算の慣行を使わずに年単位で数えます。
このシミュレーターは学習のために単純化した計算で、実際の取引の評価やリスク管理には使えません。(免責事項)
シミュレーターの説明
金利、満期までの年数、複利の頻度を変えると、選んだ頻度の割引係数のグラフと、満期の割引係数、満期に受け取る 100 の現在価値が変わります。比べるために、同じ金利を連続複利とみなした割引係数も出ます。頻度を半年ごと、四半期ごと、毎月と増やすと、割引係数は連続複利の値に近づきます。金利をゼロにすると、どの年数でも 2 本のグラフは重なります。
数え方の違う金利を換算して比べる
同じ「2%」でも、複利の数え方が違えば、将来の金額と割引係数は違う値になります。そのため、数え方の違う金利は、同じ数え方に換算すると比べられます。半年ごとの複利の 2% は、年 1 回の複利で表すと 2.01%、連続複利で表すと約 1.99% です9。
米国の連邦準備制度理事会(FRB)の論文シリーズ(FEDS)で 2006 年に公表された論文は、連続複利が利回りのもっとも簡単な表し方になりうるとしています。一方で、半年ごとの複利で表す慣行(クーポン相当の利回り)が広く使われているとも説明しています9。論文とともに公表されたデータでは、途中で利息を払わない債券(割引債)の利回りは連続複利、利息を払う債券の利回りは半年ごとの複利です10。1 つの資料の中でも、数え方が違う金利が並ぶことがあります。
深掘り半年ごとの複利と連続複利の換算
前提と限界
計算例は、期間を 1 年、半年のような切りのよい長さとし、どの期間も同じ金利で計算しています。実際の取引では、利息の期間の長さを日数から年に直して数えます。その数え方は日数計算の慣行で扱います。
期間ごとに金利が違う場合の、今から将来のある時点までの金利(スポットレート)と、将来のある時点から別の時点までの金利(フォワードレート)の関係は、この記事では扱いません。
注
-
3 年後の金額は 106.1208 円で、円の小数第 2 位に四捨五入しています。 ↩
-
山嵜輝「キャッシュフローと現在価値」(法政大学経営学部 ファイナンス論I の講義資料)の「付利期間」(20〜27 枚目)。 ↩
-
頻度による差が小さいため、この表だけ円の小数第 3 位に四捨五入しています。丸める前の値は、四半期ごと 102.01505 円、毎月 102.01844 円、連続 102.02013 円です。 ↩
-
山嵜輝「キャッシュフローと現在価値」の「微小付利期間の将来価値」と「ネイピア数と連続複利」「連続時間の将来価値と現在価値」(31〜33 枚目)。 ↩
-
同じ資料の「現在価値(2)」(12 枚目)と「n 年満期、1/m 年複利の割引因子」(37 枚目)。資料は割引係数を「割引因子」と呼んでいます。 ↩ ↩2
-
金額と現在価値は円の小数第 2 位に、割引係数は小数第 4 位に四捨五入しています。現在価値は、丸める前の割引係数に 100 を掛けてから丸めています。年 1 回、半年ごと、四半期ごと、毎月、連続の値は、シミュレーター(金利 2%、10 年)の割引係数と現在価値と一致します。 ↩
-
Refet S. Gürkaynak, Brian Sack, Jonathan H. Wright「The U.S. Treasury Yield Curve: 1961 to the Present」(FRB の Finance and Economics Discussion Series 2006-28、2006 年)の 2.1 節(2〜3 ページ)の式 (2)〜(4)。 ↩ ↩2 ↩3
-
同じ資料の 24 ページ。 ↩
-
同じ資料の 2 ページの式 (1) と (2)。割引係数から連続複利の利回りを ln で求める式と、その逆の式を並べています。 ↩