金利スワップや債券の時価評価、市場リスクの計測では、年限ごとの金利から、将来のお金を今の価値に直す率と、将来の期間の金利を求めます。スポットレートとフォワードレートは、どんな関係にあるのでしょうか。

スポットレートとフォワードレートの意味

スポットレートは、今から将来のある時点までの期間の金利です。その時点に受け払うキャッシュフローは、スポットレートで割り引くと現在価値になります1。定義としては、割引債のように投資した時点と回収する時点にだけキャッシュフローがある債券の、複利の利回りです。途中に利息がないため、ゼロ・クーポン・レートとも呼びます。割引係数と現在価値の考え方は、現在価値と割引係数で扱います。

スポットレートが今から始まる期間の金利なのに対し、将来のある時点から始まる期間の金利を今のスポットレートから求めたものをフォワードレートといいます2。求めるときは、市場取引に裁定が働くことを前提にします。この前提で求めた金利は、インプライド・フォワードレートとも呼びます。

1 年のスポットレートが 2.00%、2 年のスポットレートが 2.25%(年 1 回の複利)の架空の例で考えます。100 を 2 年間運用する方法を 2 つ比べると、次の表になります。

運用の仕方 1 年後の金額 2 年後の金額
2 年のスポットレート 2.25% で 2 年間運用する なし 104.55
1 年のスポットレート 2.00% で 1 年間運用し、2 年目は 1 年後から 2 年後までのフォワードレートで運用する 102.00 104.55

2 年のスポットレートで運用すると、途中の受け払いはなく、2 年後に 100 × 1.0225 × 1.0225 で約 104.55 になります。1 年後の 102.00 を 2 年後に 104.55 にする金利は、104.55 ÷ 102.00 − 1 で約 2.50% です3。この 2.50% が 1 年後から 2 年後までのフォワードレートで、どちらの運用でも 2 年後の金額が同じになるように決まります。

フォワードレートの求め方

nn 年後から mm 年間のフォワードレートは、2 つの運用の金額を等しくする金利です。1 つは n+mn+m 年のスポットレートで運用する方法です。もう 1 つは nn 年のスポットレートで運用し、nn 年後からフォワードレートで運用し直す方法です。nn 年のスポットレートを rnr_n、nn 年後から mm 年間のフォワードレートを Fn,mF_{n,m} とすると、年 1 回の複利では次の関係が成り立ちます4。

(1+rn+m)n+m=(1+rn)n(1+Fn,m)m(1 + r_{n+m})^{n+m} = (1 + r_n)^{n}(1 + F_{n,m})^{m}

この式を Fn,mF_{n,m} について解くと、フォワードレートの計算式になります。

Fn,m=((1+rn+m)n+m(1+rn)n)1/m−1F_{n,m} = \left( \frac{(1 + r_{n+m})^{n+m}}{(1 + r_n)^{n}} \right)^{1/m} - 1

割引係数 DF(t)=1/(1+rt)tDF(t) = 1 / (1 + r_t)^t を使うと、同じ式は割引係数の比で書けます5。1 年ごとのフォワードレート(m=1m = 1)なら、t−1t - 1 年後から tt 年後までのフォワードレートは次の式です。

Ft−1,1=DF(t−1)DF(t)−1F_{t-1,1} = \frac{DF(t-1)}{DF(t)} - 1

イールドカーブ(年限ごとのスポットレートの並び)を割引係数で持っているときは、この形で計算できます。s=1,2,…,ts = 1, 2, \dots, t について 1+Fs−1,11 + F_{s-1,1} を掛け合わせると、途中の割引係数が打ち消し合い、積は 1/DF(t)=(1+rt)t1 / DF(t) = (1 + r_t)^t になります。そのため、フォワードレートで 1 年ずつ割り引いた値は、tt 年のスポットレートで割り引いた値と一致します。

深掘りフォワードレートとスポットレートの大小の関係

1 年ごとのフォワードレートの式に DF(t)=1/(1+rt)tDF(t) = 1 / (1 + r_t)^t を入れると、次の式になります。

1+Ft−1,1=(1+rt)t(1+rt−1)t−11 + F_{t-1,1} = \frac{(1 + r_t)^t}{(1 + r_{t-1})^{t-1}}

rt>rt−1r_t > r_{t-1}(スポットレートが年限とともに上がる区間)なら、分母の (1+rt−1)t−1(1 + r_{t-1})^{t-1} は (1+rt)t−1(1 + r_t)^{t-1} より小さくなります。そのため右辺は 1+rt1 + r_t より大きく、Ft−1,1>rtF_{t-1,1} > r_t です。rt<rt−1r_t < r_{t-1} なら不等号の向きが逆になり、Ft−1,1<rtF_{t-1,1} < r_t です。スポットレートが年限によらず同じなら、フォワードレートもスポットレートと同じになります。

計算例:右上がりのカーブの 5 年分

1 年のスポットレートが 2.00% で、5 年の 3.00% まで 1 年ごとに 0.25% ずつ上がる(年 1 回の複利)架空の例で考えます。各年限の割引係数と、1 年ごとのフォワードレートは次の表のとおりです6。

年限(t 年) スポットレート(%) 割引係数(小数第 6 位まで) フォワードレート(t − 1 年後から t 年後まで、%)
1 2.00 0.980392 2.00
2 2.25 0.956474 2.50
3 2.50 0.928599 3.00
4 2.75 0.897166 3.50
5 3.00 0.862609 4.01
金利(%)スポットレートフォワードレート01234512345年限(年)
図 1スポットレートとフォワードレートの形(右上がりのカーブ)
図の説明

横軸を年限、縦軸を金利(%)として、上の表のスポットレートとフォワードレートを折れ線で結んだ図です。フォワードレートの点は、その年の 1 年前から始まる 1 年間の金利を、その年の位置に置いています。スポットレートの線は 1 年ごとに 0.25% ずつ上がるのに対し、フォワードレートの線は約 0.50% ずつ上がり、傾きが約 2 倍です。1 年目は 2 本の線が重なり、2 年目以降はフォワードレートの線がスポットレートの線の上にあって、年限が延びるほど差が開くことが読み取れます。

たとえば 2 年目のフォワードレートは、1 年と 2 年の割引係数の比から 0.980392 ÷ 0.956474 − 1 で約 2.50% です。4 年後から 5 年後までのフォワードレートは 0.897166 ÷ 0.862609 − 1 で約 4.01% になり、5 年のスポットレート 3.00% より約 1 ポイント高くなります。表のフォワードレートで 1 年目から 5 年目まで 1 年ずつ割り引くと、5 年の割引係数は 0.862609 になり、5 年のスポットレートで割り引いた値と同じです。

カーブの形とフォワードレート

フォワードレートがスポットレートより高いか低いかは、スポットレートの水準ではなく、年限を延ばしたときの上がり方で決まります。上の例のようにスポットレートが年限とともに上がる区間では、フォワードレートはスポットレートより高くなります。スポットレートが年限とともに下がる区間では低くなり、どの年限でも同じなら等しくなります。1 年を 3.00%、5 年を 2.00% にした右下がりの例では、4 年後から 5 年後までのフォワードレートは 1.01% です。

シミュレータースポットレートとフォワードレートの関係
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%
%
年
複利の頻度
2.02.53.03.54.04.511.522.533.544.55金利(%)年数3.00%
  • ゼロレート(0 年から t 年まで)
  • フォワードレート(t − 1 年から t 年まで)
5 年のゼロレート
3.00%
4 年後から 5 年後までのフォワードレート
4.01%
5 年の割引係数(ゼロレートから / フォワードレートの積から)
0.8626 / 0.8626

単純化している点

  • ゼロレートは、1 年から満期まで、年数に比例して変わる(直線でつなぐ)とします。1 年より短い期間は考えません。
  • フォワードレートは、ゼロレートと同じ複利の頻度で表した 1 年間の金利です。

このシミュレーターは学習のために単純化した計算で、実際の取引の評価やリスク管理には使えません。(免責事項)

シミュレーターの説明

1 年と満期のゼロレート、満期までの年数、複利の頻度を変えると、1 年ごとのゼロレートとフォワードレートのグラフが変わります。満期のゼロレートを 1 年より低くすると、グラフの 2 本の線の上下が入れ替わります。結果の表で、スポットレートから求めた満期の割引係数と、フォワードレートで 1 年ずつ割り引いた積が同じになることを確かめられます。

複利の頻度を変えると、同じ 2.00% と 3.00% でも割引係数とフォワードレートの値が少し変わります。1 年 2.00%、5 年 3.00% のまま連続複利で計算すると、5 年の割引係数は 0.8607、4 年後から 5 年後までのフォワードレートは 4.00% です。

実務での使われ方

スポットレートは、市場で取引されている金利からそのまま読み取れるわけではありません。金利スワップなどの市場金利から、1 年、2 年、3 年と短い年限の順に逆算して求めます。市場金利がない年限は、前後の年限の市場金利から補ってから計算します7。詳しい手順は金利カーブのブートストラップで扱います。

スポットレートは、金融商品の現在価値(理論価値)を求める基礎になります。スポットレートから割引係数やフォワードレートを求め、市場リスクの計測と把握に使います8。

前提と限界

フォワードレートは、市場取引に裁定が働くことを前提に、今の時点のスポットレートから求めた値です。日本銀行の資料は、フォワードレートを、今の市場の期待を反映した将来の金利として捉えられるとしています。一方で、市場の期待は日々変わり、今の期待が将来の市場で実現するとは限りません10。そのため、将来に実際に付く金利は、今求めたフォワードレートと違う値になることがあります。

本文の式と計算例は、「カーブの形とフォワードレート」の節の最後の連続複利の例を除き、年数を整数の年にし、年 1 回の複利で計算しています。

注

  1. 日本銀行金融機構局 金融高度化センター「スポットレートとその応用」(参考資料5)の「2.スポットレート」(6 ページ)。同じセンターの「Ⅱ.市場リスクの把握と管理」(2012 年 6 月)の「(参考)割引率(スポットレート)の定義」(10 ページ)も同じ定義です。 ↩

  2. 「スポットレートとその応用」の「4.インプライド・フォワード・レート」(12 ページ)。資料の見出しは「インプライド・フォワード・レート」、13 ページの見出しは「インプライド・フォワードレート」と書いています。 ↩

  3. 金額は小数第 3 位を四捨五入しています。丸める前の値では、2 年後の金額は 104.550625、フォワードレートは約 2.5006% です。 ↩

  4. 「スポットレートとその応用」の「インプライド・フォワードレートの計算式」(13 ページ)。資料の記号 nFrm(n年後のm年金利)を、本文では Fn,mF_{n,m} と書いています。 ↩

  5. 「スポットレートとその応用」の「3.ディスカウント・ファクター」(11 ページ)。 ↩

  6. スポットレートと割引係数は丸める前の値から計算し、表示の桁で四捨五入しています。表の割引係数(小数第 6 位まで)の比から計算しても、フォワードレートの小数第 2 位は表と同じです。 ↩

  7. 「スポットレートとその応用」の「スポットレートの計算式」(8 ページ)と「(例)スポットレートの計算式」(9 ページ)。市場金利がない年限の扱いは 8 ページの注。 ↩

  8. 「スポットレートとその応用」の「スポットレートの重要性」(10 ページ)。 ↩

  9. 「Ⅱ.市場リスクの把握と管理」(2012 年 6 月)の「(2)GPS(グリッド・ポイント・センシティビティ)」(14 ページ)。BPV は同じ資料の 13 ページ。 ↩

  10. 「スポットレートとその応用」の「留意点」(16 ページ)。 ↩