オプションを売買する金融機関のフロントや、店頭でスワップションや期限前償還の条項付き債券を扱う担当者は、取引の条件と行使の手続きを確かめるときに、行使のスタイルを見ます。

行使できる時点で分ける 3 つのスタイル

オプションの買い手が権利を使える時点は、商品ごとに決まっています。権利を満期の日にだけ行使できるものをヨーロピアン・オプション(ヨーロピアン)、取引を始めてから取引最終日までいつでも行使できるものをアメリカン・オプション(アメリカン)といいます1。その中間にあたるのが、あらかじめ決めた複数の日に行使できるバミューダン・オプション(バミューダン)です23。

満期の 1 年前に始めたオプションの架空の例で考えます。

スタイル 行使できる時点 満期の 1 年前に始めたオプションの例
ヨーロピアン 満期の日だけ 1 年後の満期の日の 1 回
アメリカン 満期までのいつでも 取引を始めてから満期までの毎日
バミューダン あらかじめ決めた複数の日 3 か月後、6 か月後、9 か月後、1 年後の 4 回

バミューダンの名前は、バミューダ諸島がヨーロッパとアメリカの間にあることにちなみます。行使できる日の集まりが満期の 1 日だけならヨーロピアン、すべての日ならアメリカンで、バミューダンはその間にあります4。

取引開始満期の 1 年前に始める3 か月後行使できる6 か月後行使できる9 か月後行使できる1 年後行使できる最後の日(満期)
図 1バミューダンの行使できる日
図の説明

満期の 1 年前に始めたバミューダンの、行使できる日の並びです。取引を始めた日は行使の日に入りません。出来事の間隔は、時間の長さに比例しません。

スタイルが決めるのは行使できる時点だけで、コール・オプション(コール)かプット・オプション(プット)か、行使価格はいくらかといった条件とは別に決まります。コールとプットの仕組みはオプションの基本(コールとプット)で扱います。

上場のオプションでの例

日本の取引所では、株価指数や個別の株式を対象にするオプションがヨーロピアンです。大阪取引所の日経225オプション、TOPIX オプション、JPX 日経400 オプションの 3 つの指数のオプションと、金先物オプションは、各限月の取引最終日の翌日にだけ行使できます5。指数のオプションは、行使すると、行使価格と SQ 値(取引最終日の翌日の各構成銘柄の始値をもとに算出する特別清算数値)の差額を受け払いして決済します6。個別の株式を対象にする有価証券オプションもヨーロピアンで、行使すると対象の株式を売買します7。

国債先物オプションはアメリカンで、取引最終日までいつでも行使でき、行使すると国債先物の取引が成立します8。ただし、日本取引所グループが公表している「国債先物オプション入門」によると、満期前に行使されることはほとんどなく、事実上ヨーロピアンとして取引されていると考える実務家もいます9。満期前に行使すると時間的価値を手放すという考え方は、後の「早く行使するか、待つか」の節で、株のオプションの例で扱います。

米国では、同じ取引所の商品でも、原資産によってスタイルが分かれます。Cboe の S&P 500 指数オプション(SPX)は、原則として満期の日にだけ行使できるヨーロピアンです10。一方、個別株のオプションはアメリカンで、満期の日までの営業日ならいつでも行使できます11。日本の有価証券オプションと米国の個別株オプションは、どちらも個別の株式を対象にしながら、行使のスタイルが違います。

店頭のオプションとバミューダン

店頭デリバティブのオプションでは、取引の相手との間で行使のスタイルを決められます。スワップションは、金利スワップを始める権利を売買するオプションです3。スワップションの行使のスタイルにはヨーロピアン、アメリカン、その中間のバミューダンなどがあり、投資家の求めに合わせて選べます2。

債券に付く期限前償還の条項にも、決まった複数の日に行使できるものがあります。例として、発行体が半年ごとの利払日のたびに期限前に償還できる権利を組み込んだ債券があります。この債券では、投資家が期限前に償還する権利を発行体に売り、その対価としてプレミアムを受け取ります12。

利払日ごとに期限前に償還できる権利は、行使できる日があらかじめ決まっているので、定義のうえではバミューダンにあたります3。ただし、呼び方は資料によって違い、ニューヨーク大学の講義資料は、利払日などの決まった範囲の日に行使できる債券の権利をアメリカンと呼んでいます13。

早く行使するか、待つか

同じ原資産、行使価格、満期なら、アメリカンの価値はヨーロピアン以上です。アメリカンの買い手は満期まで待てばヨーロピアンと同じ受け取りを得られ、そのうえ早く行使する道も選べるためです1415。バミューダンは、行使できる日が満期だけならヨーロピアンと同じになり、行使できる日の間隔を細かくするほどアメリカンに近づきます15。

満期前に行使して得になるかどうかは、原資産とオプションの種類で変わります。配当のない株のアメリカン・コールでは、満期前に行使するより、オプションを市場で売るほうが受け取る額が大きくなります14。行使価格 100 円、株価 120 円の架空の例で考えます。

満期前に選べること(行使価格 100 円、株価 120 円) 受け取る値打ち(円)
コールを今すぐ行使する(100 円で買った株を 120 円で売る) 20
コールを市場で売る(オプションの価格 23 円) 23

この例で、行使すると受け取るのは本質的価値(今行使したときの値打ち)の 20 円で、売れば 23 円です。金利がプラスで配当がないとき、コールの価格は満期前には本質的価値より高くなるためです13。差の 3 円が時間的価値で、満期前に行使すると、この分を手放すことになります。そのため、配当のない株のコールでは早く行使する理由がなく、アメリカンとヨーロピアンの価値は同じになります14。

一方で、早く行使したほうが有利になる場合もあります。1 つは配当や利息を払う原資産のコールです。コールを行使すると、行使価格を早く払う分の金利を失う代わりに、満期までに払われる配当や利息を受け取れます。早く行使するほうが有利になり得るのは、配当や利息のほうが大きく、しかも原資産の価格が行使価格を大きく上回っている(深くイン・ザ・マネーの)ときです13。

もう 1 つはプットです。プットで得られる額は行使価格が上限なので、株価が大きく下がったときは、待って増える分が小さくなります。たとえば行使価格 100 円のプットで株価が 5 円なら、今行使して 95 円を受け取れます。満期まで待っても受け取りは最大で 100 円で、増える余地は 5 円までです。今受け取った 95 円には満期まで金利が付くため、配当のない株でも、早く行使するほうが有利になることがあります14。

行使するかどうかの判断を数値で追う方法は、アメリカン・プットの評価の例で二項モデルが扱います。

行使の手続きと割り当て

日本の取引所のオプションでは、満期の行使に買い手の特別な手続きは要りません。取引最終日までに転売や買い戻しをしなかった銘柄は、イン・ザ・マネー(今行使すれば利益が出る状態)なら自動で行使されます。例外は、買い手が権利を使わないと決める権利放棄をしたときです。アウト・オブ・ザ・マネー(今行使すると損失が出る状態)なら、権利を行使しない限り、持ち高はなくなります6。この扱いは、指数オプション、有価証券オプション、国債先物オプションで同じです78。

アメリカンの国債先物オプションが満期前に行使されたときは、行使を割り当てる売り手を抽選で決めます。売り手の持ち高を取引所の決まりでは「売建玉」と呼び、これを取引単位ごとに細かく分けて、無作為に選びます9。米国の個別株のオプションでは、営業日に行使を通知すると、行使の翌営業日に株式が受け渡されます11。

注

  1. 日本取引所グループ「ヨーロピアンタイプオプション(用語集)」。資料は「ヨーロピアンタイプ」「アメリカンタイプ」と書いている。 ↩

  2. 服部孝洋「債券(金利)オプション入門―スワップションについて―」(財務省「ファイナンス」2021 年 8 月号)の 51 ページ。資料は「ヨーロピアン・タイプ」「アメリカン・タイプ」「バミューダ・タイプ」と書いている。 ↩ ↩2

  3. Bank of England "The Technical Standards (EMIR Reporting and Data Quality and Miscellaneous Amendments) Instrument 2023" の Annex A の Table 2 の項目 132 と 133(37 ページ)と、Annex B の同じ項目(97 ページ)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  4. Martin Schweizer "On Bermudan Options"(K. Sandmann, P. J. Schönbucher 編 "Advances in Finance and Stochastics"、Springer、2002 年に所収)の "0. Introduction"。 ↩

  5. 日本取引所グループ「よくあるご質問」の先物・オプションの Q9「【OSE】権利行使はいつできますか。」。 ↩

  6. 日本証券クリアリング機構「指数オプション取引の決済方法」。 ↩ ↩2 ↩3

  7. 日本証券クリアリング機構「有価証券オプション取引の決済方法」。 ↩ ↩2

  8. 日本証券クリアリング機構「国債先物オプション取引の決済方法」。 ↩ ↩2 ↩3

  9. 服部孝洋「国債先物オプション入門」(日本取引所グループ、2022 年)の 19 ページ。 ↩ ↩2 ↩3

  10. Cboe "S&P 500 Index Options Product Specifications" の "Exercise Style"。 ↩

  11. Cboe "Equity Options Specifications" の "Exercise Style" と "Settlement of Option Exercise"。 ↩ ↩2

  12. 日本銀行金融機構局 金融高度化センター「仕組商品投資のリスク把握と管理」の「2.商品の仕組みとリスク特性」の設例(4〜7 ページ)。資料は「マルチコーラブル:発行体が利払(半期)毎に期限前解約できる権利」と書き、この権利を「期限前解約権」と呼んでいる。 ↩

  13. Jennifer Carpenter "American Options, Callable Bonds, and Swaptions"(New York University Stern School of Business の講義資料)の PDF の 3 ページ目、6 ページ目、7 ページ目。 ↩ ↩2 ↩3

  14. New York University Courant Institute の講義資料 "American Options"(Lecture 8)。コールは節 1.1 の 3、4 と注 (a)、(b)(1〜2 ページ)、プットは同じ節の 3 とその注(3 ページ)、節 1.3.2 の Results の 1(10 ページ)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  15. Steven P. Lalley "Lecture 15: American Options"(University of Chicago の講義資料)の節 3.1 の終わりと節 3.2 "Bermuda Options"(PDF の 3 ページ目)。 ↩ ↩2