企業の財務の担当者が借入の金利を固定したいときや、金融機関が外貨の資金を調達するときに、スワップの契約の形が出てきます。

契約で決めること

スワップはデリバティブの一つです。日本銀行のデリバティブの統計では、スワップは、決めておいた計算方法で出したキャッシュフローを、ある期間のあいだに通常は何度か交換する契約の取引とされ、先渡取引(フォワード)、オプションと並ぶ商品の区分です1。デリバティブ全体の仕組みはデリバティブとはで扱います。

A 社と F 銀行が結ぶ、いちばん基本的な形の金利スワップの架空の例で考えます。スワップの契約では、交換するキャッシュフロー(お金の受け払い)について、主に次の 4 つを決めます。

決めること この例 意味
想定元本 50 億円 受け払いの金額を計算するもとになる元本の金額
期間 4 年 取引を始めてから終えるまでの長さ
支払日と計算期間 支払日は 1 年後から 4 年後までの年 1 回 支払日は受け払いをする日、計算期間は 1 回分の金額を計算するもとになる支払日と支払日の間
受け払いの計算方法 A 社は想定元本に年 2% の固定金利を掛けた金額を、F 銀行は想定元本にその計算期間の変動金利を掛けた金額を払う それぞれの当事者が払う金額の計算の仕方

支払日の間隔は、毎日、毎月、3 か月ごと、1 年ごとなど、当事者が決めます2。金利スワップでは想定元本そのものを受け渡しませんが、通貨スワップのように想定元本に当たる金額を受け渡す取引もあります3。

この例は、A 社と F 銀行の 2 者が、互いに相手へ金利を払う契約です。A 社は固定金利で計算した金額を F 銀行に払い、F 銀行は同じ支払日に変動金利で計算した金額を A 社に払います。どちらの金額も、契約で決めた同じ想定元本から計算し、計算の方法だけが違います。想定元本そのものは、2 者の間で受け渡しません。

支払日ごとの受け払い

A 社から見ると、払う金額は取引を結んだときに決まります。A 社は、1 年後から 4 年後までの 4 回の支払日に、毎回 1 億円(50 億円 × 2%)を払います。受け取る金額は、支払日ごとに、その支払日までの計算期間の変動金利で決まります。ここでは、計算期間の始めの変動金利を使う形で考えます4。この形では、取引を結んだ時点で決まっているのは 1 年後に受け取る分だけで、2 年後から 4 年後に受け取る分はまだ決まっていません。

↑ 受取 ↓ 支払固定の側を払う A 社から見た受け払い1 年後2 年後3 年後4 年後取引時に確定変動金利−1 億円固定金利未確定変動金利−1 億円固定金利未確定変動金利−1 億円固定金利未確定変動金利−1 億円固定金利
図 1A 社から見た支払日ごとの受け払い
図の説明

想定元本 50 億円、固定金利 年 2% のスワップで、固定の側を払う A 社の受け払いです。A 社は、1 年後、2 年後、3 年後、4 年後の支払日に、固定金利の 1 億円をそれぞれ払います。同じ支払日に、変動金利で計算した金額を受け取ります。1 年後の分は取引を結んだ時点の変動金利で決まっていますが、2 年後から 4 年後の分はまだ決まっていません。受取の矢印の長さは目安で、金額を表していません。

同じ支払日に互いに払う金額は、両方を払い合う代わりに、差し引いた差額だけを一方が払うことがあります5。たとえば 1 年目の変動金利が 2.4% なら、F 銀行が払う金額は 1.2 億円です。A 社の払う 1 億円と差し引くと、F 銀行が A 社に 0.2 億円を払うだけで済みます。

主な種類:何と何を交換するか

スワップは、交換する受け払いの種類によって名前が変わります6。代表的なのは、同じ通貨で種類の違う金利を交換するものと、異なる通貨の金利などを交換するものです7。ほかに、株式や商品に連動するスワップもあります8。

種類 交換するもの 元本の受け渡し
金利スワップ 同じ通貨の、種類の違う金利(固定金利と変動金利など) しない
通貨スワップ 異なる通貨の金利と元本 する
クーポンスワップ 異なる通貨の金利だけ しない
商品スワップ 商品の数量に固定の価格を掛けた金額と、その時の価格を掛けた金額 しない(数量に価格を掛けた金額を受け払いする)

金利スワップのうち、固定金利と変動金利の交換がもっとも典型的な形です7。金利スワップの名前には、OIS(翌日物金利スワップ)もあります9。

通貨スワップは、たとえば米ドルの金利を受け取って円の金利を払うように、異なる通貨の間で将来の金利と元本を交換します。元本を交換せずに金利だけを交換するものを、クーポンスワップといいます7。銀行の間で代表的な米ドルと円の通貨スワップでは、元本を交換し、あわせて米ドルと円の変動金利どうしを交換します10。通貨スワップと名前の似た取引に、為替スワップがあります。

商品スワップでは、一方が決めた数量の商品のその時の価格で計算した金額を受け取り、固定の金額を払います11。

ほかにも名前にスワップが付く取引があり、株価に連動するものと、企業や国の信用度に連動するものがあります。後者の例がクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)です12。

先渡しを束ねたものとして見る

スワップの受け払いは、支払日ごとの先渡取引を束ねたものとみなせることが多くあります13。先渡取引は、将来の決めた日に、あらかじめ決めた価格で資産を受け渡す取引です14。先渡取引の仕組みは先渡しと先物で扱います。

商品スワップの架空の例で考えます。一方の当事者が、支払日ごとに商品 1 万単位のその時の価格で計算した金額を受け取り、1 単位 5,000 円の固定の価格で計算した 5,000 万円を払うとします。支払日のその時の価格が 1 単位 5,500 円なら、この当事者は差し引き 500 万円を受け取り、4,500 円なら 500 万円を払います。この受け払いは、その支払日に 1 単位 5,000 円で 1 万単位を買う先渡取引を、商品を受け渡さずに差額だけで決済したときと同じ金額になります。支払日が 4 回あれば、受け渡しの日の違う 4 つの先渡取引を同じ固定の価格で束ねた形です。

先渡取引の価値は求め方が分かっているので、スワップを先渡取引に分けて考えると、スワップの価値も求められます13。

深掘り先渡取引の価格を使った商品スワップの価値

商品 NN 単位について、ii 回目の支払日にその時の価格 SiS_i を受け取り、固定の価格 XX を払う商品スワップを考えます。ii 回目の支払日に受け渡す先渡取引の今の価格を FiF_i、その支払日までの割引係数を d(0,i)d(0, i) とします。ii 回目の支払日にその時の価格 SiS_i を受け取ることは、同じ支払日に FiF_i を受け取ることと、今の時点で測った価値が同じです。そのため、支払日が MM 回あるスワップの価値は次の式になります15。

V=N∑i=1Md(0,i) (Fi−X)V = N \sum_{i=1}^{M} d(0, i)\,(F_i - X)

固定の価格 XX は、ふつうこの VV が 0 になるように決めます。先渡取引の価格 FiF_i が支払日によって違えば、XX との差は支払日ごとにプラスにもマイナスにもなり、割り引いて合計すると 0 になります。

始める時点の価値

多くのスワップでは、取引を始める時点で、双方が将来受け取る金額の現在価値が等しくなるように、固定の金利や価格を決めます16。そのため、手数料などを除けば、どちらの当事者もお金を払わずに取引を始められます。前の節の商品スワップでいえば、1 単位 5,000 円の固定の価格は、この条件を満たすように決めたものとします。ただし、相手の求めに合わせて条件を変えた取引では、始める時点の価値が 0 にならず、一方がもう一方に差額を払うことがあります16。

取引を始めた後に金利や価格が動くと、スワップの価値は 0 から離れ、プラスにもマイナスにもなります。2 者の間で受け払いを交換するだけなので、一方の価値は、もう一方の価値の符号を逆にした値です17。

何に使われるか

スワップは、将来の金利の変動による損益を管理する手段として、金融機関の間で広まり、企業の財務管理にも使われています18。変動金利で借入をしている企業は、固定金利を払い変動金利を受け取る金利スワップを組み合わせると、借入を固定金利の借入と同じ形に変えられます。固定金利で借りている企業が逆向きのスワップを組むと、変動金利の借入と同じ形になります19。

利払いを固定するのは、金利が上がったときの負担に備えるヘッジです。A 社が変動金利で 50 億円を借りていて、上のスワップを組んだとします。借入の金利は、スワップの変動金利と同じとします。

変動金利が 3% の年は、借入の利息は 1.5 億円です。A 社はスワップで変動金利の 1.5 億円を受け取り、固定金利の 1 億円を払うので、差し引き 0.5 億円を受け取ります。借入の利息 1.5 億円からこの受取 0.5 億円を引くと、A 社の負担は 1 億円(年 2%)です。

変動金利が 1% の年は、借入の利息は 0.5 億円で、スワップでは受取 0.5 億円と支払 1 億円を差し引いて 0.5 億円を払います。借入の利息 0.5 億円とこの支払 0.5 億円を合わせると、負担はやはり 1 億円で、金利が下がった分の得は受けられません20。F 銀行のスワップの受け払いは、どちらの年も A 社の符号を逆にした額です。

通貨スワップは、外貨の受け払いを円の受け払いに変えるのに使われます。たとえば米ドル建ての債券を買うと、利息と償還の元本を米ドルで受け取るため、米ドルと円の交換の比率が動くことによる為替リスクがあります。通貨スワップを同時に組むと、円建ての債券に投資したのと同じ効果を作れます18。また、米国以外の金融機関が米ドルの資金を手に入れる主な手段の一つにもなっています21。

スワップは、借入や資産の受け払いと組み合わせずに結ぶこともあります。その一つが、変動金利が今の予想より上がるか下がるかに賭ける投機です22。

取引の相手のリスク

日本銀行のデリバティブの統計は店頭デリバティブ(取引所を通さない取引)の統計で、スワップはその区分の一つです1。通貨スワップも取引所を通さない相対取引です23。このように当事者どうしで結んだスワップでは、スワップの価値がプラスの側は、相手が債務不履行になると、その価値に当たる金額を受け取れなくなるおそれがあります24。一方で、受け払いを計算するもとの想定元本は、この損失の大きさを直接表しません24。

注

  1. 日本銀行金融市場局「「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の解説」(2020 年 3 月)の「(2)計数の区分」の「2)商品別」の「ロ)スワップ」。冒頭で、この統計は OTC(店頭)デリバティブ市場の残高の統計だとしています。商品別の区分は、フォワード、スワップ、オプション、その他の商品です。 ↩ ↩2

  2. Society of Actuaries「Interest Rate Swaps」(FM-25-17)の 4 ページ。支払日を settlement dates、その間を settlement period と呼びます。 ↩

  3. 日本銀行金融市場局「「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の解説」(2020 年 3 月)の「1)想定元本」。「金利関連取引など多くのデリバティブ取引では想定元本自体は受け渡しされませんが、外為関連取引のように想定元本額相当の受け渡しが発生する場合もあります」としています。 ↩

  4. Society of Actuaries「Interest Rate Swaps」の 5 ページ Example 1。1 年目の終わりに払う利息は、1 年目の始めの金利で決まります。Martin Haugh「Forwards, Swaps, Futures and Options」の 4 ページ「2.1」も、各期の変動金利を期の始めの金利としています。 ↩

  5. Society of Actuaries「Interest Rate Swaps」の 4 ページ。同じ時点の 2 つの受け払いを差し引き、差額だけを払う例(net swap payment)を示しています。 ↩

  6. 日本取引所グループ「スワップ(用語集)」。 ↩

  7. 金融広報中央委員会「4-1 スワップ取引とは(やさしいデリバティブ)」の「スワップの種類」。 ↩ ↩2 ↩3

  8. Martin Haugh「Forwards, Swaps, Futures and Options」(コロンビア大学 IEOR E4706 の講義資料、2016 年)の 4 ページ「2 Swaps」。"Other types of swaps include equity and commodity swaps" としています。 ↩

  9. 川上高志「ヘッジ取引におけるデリバティブ信用評価調整の影響についての考察」(日本銀行金融研究所『金融研究』2018 年 4 月)の「1. はじめに」(120 ページ)。「翌日物金利スワップ(Overnight Index Swap: OIS)」としています。 ↩

  10. 日本銀行「(日銀レビュー)店頭デリバティブ取引データからみた通貨スワップ市場:感染症拡大の影響とその後の回復を中心に」(2021 年 5 月)の 2 ページ「通貨スワップ取引の概要」。インターバンクの代表的な取引として、ドル/円のベーシス・スワップを挙げています。 ↩

  11. Martin Haugh「Forwards, Swaps, Futures and Options」の 5 ページ Example 3。 ↩

  12. 日本銀行金融市場局「「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の解説」(2020 年 3 月)の「(2)計数の区分」の「1)リスク・ファクター別」の「ホ)クレジット」と、「5)その他の区分」の「ホ)クレジット」。 ↩

  13. Martin Haugh「Forwards, Swaps, Futures and Options」の 5 ページ「2.3 Pricing Swaps」。"the cash-flow stream of a swap can often be considered as a stream of forward contracts" としています。 ↩ ↩2

  14. 日本銀行金融市場局「「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の解説」(2020 年 3 月)の「2)商品別」の「イ)フォワード」。 ↩

  15. Martin Haugh「Forwards, Swaps, Futures and Options」の 5 ページ Example 3 の式。記号は資料と同じです。 ↩

  16. Society of Actuaries「Interest Rate Swaps」の 5 ページ。固定金利は双方の現在価値が等しくなるように決まり、相手に合わせた取引では差額(premium)を払うことがあります。商品スワップは Haugh の 5 ページ Example 3。 ↩ ↩2

  17. Society of Actuaries「Interest Rate Swaps」の 15 ページ「6 Market Value」。 ↩

  18. 金融広報中央委員会「4-1 スワップ取引とは(やさしいデリバティブ)」の「通貨スワップ」「スワップ取引は金利変動リスクの管理に向いている」「金利変動リスクの管理と「金利スワップ」」。 ↩ ↩2

  19. Society of Actuaries「Interest Rate Swaps」の 3〜4 ページ。変動金利の借入を固定金利に、固定金利の借入を変動金利に変えるためにスワップを使う例を挙げています。 ↩

  20. 金融広報中央委員会「4-2 金利スワップの仕組み」(やさしいデリバティブ)の、変動金利で借り入れている例。「予想に反して金利が下落した場合には、そのメリットが受けられなくなる」としています。 ↩

  21. 日本銀行「(日銀レビュー)店頭デリバティブ取引データからみた通貨スワップ市場:感染症拡大の影響とその後の回復を中心に」(2021 年 5 月)の 1 ページの要旨。「通貨スワップ取引は、非米系金融機関にとって、米ドル資金の主要な調達手段の一つ」としています。 ↩

  22. Society of Actuaries「Interest Rate Swaps」の 4 ページ。借入と組み合わせずに金利スワップを結ぶ理由の一つに speculation を挙げています。 ↩

  23. 日本銀行「(日銀レビュー)店頭デリバティブ取引データからみた通貨スワップ市場:感染症拡大の影響とその後の回復を中心に」(2021 年 5 月)の 1 ページの要旨。 ↩

  24. 日本銀行金融市場局「「デリバティブ取引に関する定例市場報告」の解説」(2020 年 3 月)の「(2)想定元本、正の市場価値と信用リスク・エクスポージャー」。 ↩ ↩2