為替や金利の変動による損失を抑える方法を決めるときや、顧客に商品の損益を説明するときに、原資産の値で損益が決まる仕組みを使います。この仕組みを知っていると、どの取引でなぜ得や損が出るかを説明できます。

原資産の値で損益が決まる取引

デリバティブは、ほかの資産や指標の値に応じて損益が決まる取引です。元になる資産や指標を原資産といいます1。英語の derivative は「派生的」という意味で、日本語では金融派生商品や派生商品とも訳されます1。

たとえば、A 社が B 社と、3 か月後にドルを今日決めた為替レートで買う約束をしたとします。このように、売買の価格や数量を今約束し、約束の日が来たら売買する取引が先渡取引の形です23。

今日の時点では条件を決めるだけで、ドルと円の受け渡しはありません。3 か月後に、売る側の B 社が買う側の A 社にドルを渡し、A 社は B 社に、今日決めたレートで計算した円を払います。3 か月後の市場のレートがいくらになっていても、受け渡す額は今日の約束のとおりです。

3 か月後に市場でドルが約束のレートより高くなっていれば、A 社は市場より安くドルを買えるので得をし、B 社は損をします。ドルが約束のレートより安くなっていれば、A 社は市場より高く買うことになり、得と損が入れ替わります2。約束した後の値動きの向きで得をする側と損をする側が決まり、A 社の得はそのまま B 社の損になります。

原資産になるもの

原資産には、株式、債券、外国為替のような金融商品の価格だけでなく、金利の水準のような指標もあります。気温や降雨量に連動する天候デリバティブもあります1。代表的な原資産と、それを使う取引の例は次のとおりです4。

原資産 取引の例
金利 金利スワップ、金利オプション
為替 為替予約、通貨オプション、通貨スワップ
株式、株価指数 株価指数先物、株価オプション
債券 国債先物、国債先物オプション
商品 商品先物
企業の信用状態 法人の信用状態に関する事由が起きたときに金銭を払う取引5
気象 天候デリバティブ

3 つの基本の形と損益の違い

デリバティブの基本の形は、先渡取引と先物取引(2 つで 1 つの形)、スワップ、オプションの 3 つです。先物取引とオプション、スワップとオプションを組み合わせた商品もあります6。3 つは何を約束するかが違い、そのため値動きに対する損益の形も違います。

形 何を約束するか 損益の形
先渡取引と先物取引 将来の決められた日に、今決めた価格で売買する 買う側は価格が上がれば得、下がれば損。売る側はその逆
スワップ 将来の利息などを、決めた条件で交換する 固定金利を払って変動金利を受け取る側は、金利が上がれば得、下がれば損。相手はその逆
オプション 決めた価格で売買する権利を、代金を払って買う 買い手は、価格が行使価格より有利に動いた幅が払った代金を上回れば得で、損失は代金まで

先渡取引と先物取引では、約束の日が来たら、そのときの価格がいくらでも約束した価格で売買します2。そのため、価格が上がっても下がっても、動いた分だけ得か損が出ます。2 つの違いは、満期の損益を数値の例と図で示した先渡しと先物で扱います。

スワップの典型は、同じ通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップです。変動金利で借りている会社が、固定金利を払って変動金利を受け取るスワップを結ぶと、金利が上がっても、借入の利息が増えた分をスワップの受け取りでまかなえます。一方で、金利が下がると、スワップだけを見れば受け取りが減って損が出ます。その損は借入の利息が減った分と打ち消し合うため、金利が下がったことの得は受けられません7。

オプションは、ある金融商品をあらかじめ決めた価格(行使価格)で売買するかどうかを選べる権利の取引です。権利を買うには代金(プレミアム)を払います8。買い手は得になるときだけ権利を行使するため、損失は払ったプレミアムまでに限られます。売り手は、プレミアムを受け取る代わりに、買い手が行使すればそれに応じる義務を負います。そのため、損失が受け取ったプレミアムを大きく上回ることがあります9。買う権利(コール)の売り手の損失は、原資産の価格が上がるほど大きくなり、上限がありません。

想定元本とレバレッジ

デリバティブでは、損益の計算のもとになる金額と、取引を始めるときに実際に動くお金が大きく違います。金利スワップでは、利息を計算するための元本を決めますが、その元本そのものは受け払いしません。この計算上の元本を想定元本といいます7。想定元本 100 億円の金利スワップの架空の例で考えます。変動金利が 0.5% ポイント上がると、変動金利を受け取る側の 1 年分の受け取りは 100 億円 × 0.5% = 5,000 万円増えます。金利が同じだけ下がれば、受け取りは 5,000 万円減ります。

先物取引は、取引を始めるときに証拠金を差し入れるだけで取引でき、原資産を売買するときのように代金の全額を用意する必要がありません10。少ない元手で大きな取引ができることをレバレッジ効果といいます。日本取引所グループの用語集によると、先物取引の取引金額は証拠金の数十倍になります。そのため、大きな利益が出ることがある一方で、見通しを誤れば損失も大きくなります11。

原資産 1 億円分の先物取引を、証拠金 500 万円を差し入れて買う架空の例で考えます。原資産の価格が 5% 上がれば 500 万円の利益で、差し入れた証拠金と同じ額です。5% 下がれば 500 万円の損失で、10% 下がれば損失は 1,000 万円になり、差し入れた証拠金を上回ります。

金融商品取引法での 3 つの区分

金融商品取引法は、デリバティブ取引を次の 3 つに分けています12。

  • 市場デリバティブ取引: 取引所の市場で行う取引
  • 店頭デリバティブ取引: 取引所の市場を通さずに行う取引
  • 外国市場デリバティブ取引: 外国の市場で行う取引

取引所で売買する上場デリバティブと、当事者どうしで結ぶ店頭デリバティブの違いは、上場デリバティブと店頭デリバティブで扱います。

使う目的と主なリスク

デリバティブの主な使い方は、ヘッジと投機です。ヘッジは、持っている資産や将来売買する予定の資産の値動きによる損失を、デリバティブを組み合わせて抑える使い方です。投機は、値上がりや値下がりを見込んで取引し、値動きから利益を得ようとする使い方です。少ない元手で取引できるため、投機にも多く使われています10。

先物取引の運用手法には、投機とヘッジのほかに裁定取引があります。裁定取引は、異なる市場の間で、同じ商品や同じ種類の商品の価格の差を利用する取引です3。

使うときの主なリスクは次の 3 つです。

  • 市場リスク: 原資産の価格、金利、為替相場の変動によって損失が出るおそれです10。
  • 取引相手の信用リスク: 当事者どうしで決済する取引では、相手が破綻すると、受け取るはずのお金を受け取れなくなるおそれがあります。取引相手の数だけ、このリスクを負います13。清算機関が間に入る取引では、取引相手ごとの信用リスクを意識せずに取引できます13。
  • 解約の制約: 金融庁は、金融機関が顧客に説明する事項の例として、デリバティブ商品は原則として解約できないことを示しています。顧客の都合で途中で解約するときは、解約清算金が要ることがあります14。取引所の先物取引は、取引最終日までに、買っていた先物を売るか、売っていた先物を買い戻す反対の売買をすれば、取引を終えられます15。反対の売買ができるように、規格がそろえてあります3。

注

  1. 金融広報中央委員会「1-1 デリバティブとは?」(やさしいデリバティブ)の本文と「デリバティブの対象」。 ↩ ↩2 ↩3

  2. 金融広報中央委員会「2-1 先物取引とは?」(やさしいデリバティブ)の冒頭と、指輪の予約の例の「パターン(1)」「パターン(2)」。 ↩ ↩2 ↩3

  3. 企業年金連合会「先物取引(用語集)」の本文。先渡契約と反対の売買は 1 段落目(「反対売買が可能なように標準化されたもの」)、運用手法は 3 段落目。 ↩ ↩2 ↩3

  4. 金利、為替、株式、商品の行は、金融広報中央委員会「1-4 デリバティブの種類」の表。気象の行は同「1-1 デリバティブとは?」の「デリバティブの対象」。債券の行は、日本取引所グループ「商品概要(国債(JGB)先物)」の「商品概要」と「関連情報」。 ↩

  5. 「金融商品取引法」第 2 条第 21 項第 5 号。企業の信用状態は同号イ(法人の信用状態に係る事由その他これに類似するものとして政令で定めるもの)。 ↩

  6. 金融広報中央委員会「1-4 デリバティブの種類」(やさしいデリバティブ)の 1 文目と、表の後の段落。 ↩

  7. 金融広報中央委員会「4-2 金利スワップの仕組み」(やさしいデリバティブ)の変動金利で借り入れている例と、「想定元本」の段落。 ↩ ↩2

  8. 金融広報中央委員会「3-1 オプション取引とは?」(やさしいデリバティブ)の「デリバティブのオプションは?」。 ↩

  9. 金融広報中央委員会「3-4 オプション取引の損益」(やさしいデリバティブ)の「オプション取引の買い手の立場」と「オプション取引の売り手の立場」。 ↩

  10. 金融広報中央委員会「1-3 デリバティブの特徴と利用法」(やさしいデリバティブ)の「利便性」「ヘッジング(hedging)」「スペキュレーション(speculation)」「マーケット・リスクの例」。 ↩ ↩2 ↩3

  11. 日本取引所グループ「先物取引(用語集)」。 ↩

  12. 「金融商品取引法」第 2 条第 20 項(デリバティブ取引)、第 21 項柱書き(市場デリバティブ取引)、第 22 項柱書き(店頭デリバティブ取引)、第 23 項(外国市場デリバティブ取引)。 ↩

  13. 日本証券クリアリング機構「金利スワップ 債務負担」の「債務負担の具体例」。 ↩ ↩2

  14. 金融庁「デリバティブ商品を契約するときのポイント」の表面(PDF の 1 ページ目)の「説明事項(主な例)」。 ↩

  15. 大阪取引所「決済方法(先物)」(北浜投資塾)の「反対売買による決済」。 ↩