オプションを買ったり売ったりする前に、満期の価格ごとの損益と、損失がどこまで広がりうるかを確かめる場面で、オプションの満期の損益を使います。

損益はペイオフからプレミアムを引いたもの

オプションのペイオフは、満期にオプションを行使して得る金額で、行使しないときは 0 です。オプションの買い手の満期の損益は、このペイオフから、取引の最初に払ったプレミアムを差し引いたものです1。コール・オプション(コール)とプット・オプション(プット)の仕組みは、オプションの基本(コールとプット)で扱います。コールとプットのそれぞれを買うか売るかで、持ち高は 4 つに分かれます。

原資産を行使価格 100 円で買う権利(コール)を、プレミアム 5 円で 1 単位買う架空の例で考えます。満期の価格が行使価格を上回れば、買い手は権利を行使して原資産を 100 円で買い、市場の価格で売って差額を得ます。行使価格を下回れば、権利を放棄します2。満期の価格ごとのペイオフと損益は次のとおりです。

満期の原資産の価格(円) ペイオフ(円) プレミアム(円) 損益(円)
80 0 −5 −5
100 0 −5 −5
105 5 −5 0
110 10 −5 5
120 20 −5 15

買い手のペイオフは 0 を下回りません。一方で、損益はペイオフよりプレミアムの 5 円だけ低く、満期の価格が 100 円以下では 5 円の損失になります。この例では、プレミアムを払う時点と満期の時点の違い(その間の金利)、取引の手数料、税金は考えず、プレミアムをそのまま差し引きます。ペイオフと損益の呼び分けは資料によってそろっておらず、プレミアムを差し引かない線を「損益(ペイオフ)」の図と呼ぶ資料もあります3。

先渡取引の満期の損益は、価格の差に比例する直線です。オプションの損益は、行使価格のところで折れ曲がる線になります。

コールの買いの損失はプレミアムまで

コールの買い手の損失は、払ったプレミアムまでに限られます4。満期の価格が行使価格を上回ると、損益は「満期の価格 − 行使価格 − プレミアム」になり、価格が上がるほど利益が増えます2。損益が 0 になる満期の価格を損益分岐点といい、コールの買いでは行使価格にプレミアムを足した価格です5。上の例では 100 + 5 で 105 円になり、105 円を上回ると利益、下回ると損失です。

−100+10+20+30+40100損益(円)満期の原資産の価格(円)利益損失損益分岐点 105
図 1コールの買いの満期の損益
図の説明

行使価格 100 円のコールを、プレミアム 5 円で 1 単位買ったときの満期の損益です。横軸は満期の原資産の価格、縦軸はプレミアムを含めた 1 単位あたりの損益です。価格が 100 円以下では行使せず、損益は −5 円で一定です。100 円を超えると、価格が 1 円上がるごとに損益が 1 円増え、105 円で 0(損益分岐点)、120 円で 15 円の利益になります。損失は 5 円までで、利益には上限がありません。

コールの売りの利益はプレミアムまで

コールの売り手の利益は、受け取ったプレミアムまでに限られ、損失には上限がありません6。売り手は、プレミアムを受け取る代わりに、買い手が権利を行使したら行使価格で原資産を売る義務を負います。上の例のコールを売った側は、満期の価格が 100 円以下なら行使されず、受け取った 5 円がそのまま利益になります。100 円を超えると行使され、損益は「行使価格 − 満期の価格 + プレミアム」になります2。損益分岐点は買い手と同じ 105 円で、満期の価格が 120 円なら 15 円、140 円なら 35 円の損失です。

−40−30−20−100+10100損益(円)満期の原資産の価格(円)利益損失損益分岐点 105
図 2コールの売りの満期の損益
図の説明

行使価格 100 円のコールを、プレミアム 5 円で 1 単位売ったときの満期の損益です。横軸は満期の原資産の価格、縦軸はプレミアムを含めた 1 単位あたりの損益です。価格が 100 円以下では行使されず、損益は受け取ったプレミアムの 5 円で一定です。100 円を超えると、価格が 1 円上がるごとに損益が 1 円減り、105 円で 0(損益分岐点)、120 円で 15 円の損失になります。利益は 5 円までで、損失には上限がありません。

プットの買いは値下がりで利益になる

プットの買い手は、満期の価格が行使価格からプレミアムを引いた価格を下回ると、利益になります7。原資産を行使価格 100 円で売る権利(プット)を、プレミアム 5 円で 1 単位買う架空の例で考えます。満期の価格が 100 円を下回れば、買い手は権利を行使し、原資産を市場の価格で買って行使価格の 100 円で売り、その差額を得ます。損益は「行使価格 − 満期の価格 − プレミアム」になります8。損益分岐点は 100 − 5 で 95 円で、満期の価格が 80 円なら 15 円の利益です。100 円以上なら権利を放棄し、損失は払った 5 円までです。利益は価格が下がるほど増えます。原資産の価格が 0 円を下回らないとすると、最大の利益は価格が 0 円のときの 95 円(100 − 5)です9。

−100+10+20+30+40100損益(円)満期の原資産の価格(円)利益損失損益分岐点 95
図 3プットの買いの満期の損益
図の説明

行使価格 100 円のプットを、プレミアム 5 円で 1 単位買ったときの満期の損益です。横軸は満期の原資産の価格、縦軸はプレミアムを含めた 1 単位あたりの損益です。価格が 100 円以上では行使せず、損益は −5 円で一定です。100 円を下回ると、価格が 1 円下がるごとに損益が 1 円増え、95 円で 0(損益分岐点)、80 円で 15 円の利益になります。損失は 5 円までで、利益は価格が 0 円のときの 95 円が最大です。

プットの売りは値下がりで損失が膨らむ

プットの売り手の利益は受け取ったプレミアムまでで、満期の価格が下がるほど損失が増えます8。上の例のプットを売った側は、満期の価格が 100 円以上なら行使されず、受け取った 5 円が利益になります。100 円を下回ると行使され、行使価格の 100 円で原資産を買い取る義務を負うため、損益は「満期の価格 − 行使価格 + プレミアム」になります8。損益分岐点は買い手と同じ 95 円で、満期の価格が 80 円なら 15 円の損失です。損失がいちばん大きいのは価格が 0 円のときの 95 円で、受け取ったプレミアムの 19 倍です。

−40−30−20−100+10100損益(円)満期の原資産の価格(円)利益損失損益分岐点 95
図 4プットの売りの満期の損益
図の説明

行使価格 100 円のプットを、プレミアム 5 円で 1 単位売ったときの満期の損益です。横軸は満期の原資産の価格、縦軸はプレミアムを含めた 1 単位あたりの損益です。価格が 100 円以上では行使されず、損益は受け取ったプレミアムの 5 円で一定です。100 円を下回ると、価格が 1 円下がるごとに損益が 1 円減り、95 円で 0(損益分岐点)、80 円で 15 円の損失になります。利益は 5 円までで、損失は価格が 0 円のときの 95 円が最大です。

4 つの持ち高の比較

同じオプションの買い手と売り手の損益は、どの満期の価格でも符号だけが逆で、足すと 0 になります10。行使価格 100 円、プレミアム 5 円の例で 4 つの持ち高の損益分岐点と最大の利益・損失を並べると次のとおりで、損益分岐点は買いと売りで同じです5。

持ち高 損益分岐点(円) 最大の利益(円) 最大の損失(円)
コールの買い 105 上限なし 5
コールの売り 105 5 上限なし
プットの買い 95 95 5
プットの売り 95 5 95

買い手の利益は売り手の損失で、買い手の損失(払ったプレミアム)は売り手の利益です10。そのため、売りの損益の図は、買いの損益の図を 0 の線で上下に折り返した形になります。

行使価格の違うオプションや原資産を組み合わせた損益(スプレッド、ストラドルなど)は、オプションの組み合わせ戦略で扱います。

プレミアムと損益分岐点

プレミアムが高いほど、買い手の損益分岐点は行使価格から遠くなり、買い手の最大の損失と売り手の最大の利益は大きくなります。例のコールのプレミアムが 5 円から 8 円に上がると、買いの損益分岐点は 105 円から 108 円に移って行使価格から 8 円離れ、最大の損失は 8 円になります。プレミアムは、原資産の価格のボラティリティ(値動きの大きさ)が高いほど高くなります11。

次のシミュレーターはプレミアムを入力せず、原資産の今の価格 100、残存 1 年、金利 0 として、ボラティリティから計算します。初期値のコールの買い(行使価格 100、ボラティリティ 20%)のプレミアムは、本文の例の 5 ではなく 7.97 です。損益分岐点は 107.97、最大の損失は 7.97 で、利益には上限がありません。プットの買いに切り替えると、プレミアムは同じ 7.97 で、損益分岐点と最大の利益はどちらも 92.03 です。

シミュレーターオプション 1 つの満期の損益
入力
%
−10010203040708090100110120130損益(1 単位あたり)満期の原資産の価格107.97
  • 満期の損益(プレミアムを含む)
  • プレミアムを含めない損益
コールの買い(行使価格 100)
プレミアム 7.97 を払う
損益分岐点
107.97
最大の利益
上限なし
最大の損失
7.97

単純化している点

  • プレミアムは、原資産の現在の価格 100、残存期間 1 年、金利 0%、配当なしとして、ブラック・ショールズの式で計算しています。
  • 金利を 0 としているため、プレミアムを払う時点と満期の時点の違い(金利)は考えません。
  • 満期にだけ行使できるオプション(ヨーロピアン)として、満期の損益だけを示します。満期より前の時価の動きは示しません。
  • 損益は 1 単位あたりで、取引の手数料、税金、証拠金は考えません。

このシミュレーターは学習のために単純化した計算で、実際の取引の評価やリスク管理には使えません。(免責事項)

シミュレーターの説明

「商品と戦略」でオプション 1 つの 4 つの持ち高(コールの買いと売り、プットの買いと売り)を切り替え、行使価格とボラティリティを動かすと、満期の損益の線、損益分岐点、最大の利益と損失が変わります。グラフには、プレミアムを含めない損益(ペイオフ)の線も並びます。ボラティリティを上げるとプレミアムが高くなり、損益分岐点が行使価格から離れます。

注

  1. 大阪取引所「決済方法(オプション)」の「SQ値による決済」。コールの買いの損益を「(SQ値 - 権利行使価格) × 取引単位 × 数量 - 支払いプレミアム」としています。 ↩

  2. 金融広報中央委員会「3-4 オプション取引の損益(やさしいデリバティブ)」のコールの節。行使価格 1,000 円、プレミアム 100 円の例で、買い手と売り手の損益の式を示しています。 ↩ ↩2 ↩3

  3. 日本取引所グループ(服部孝洋)「国債先物オプション入門」(2022 年)の 24〜25 ページ。図表 12 を「コール・オプションの損益(ペイオフ)の図」と呼んでいます。図表 12 の満期の線は、プレミアムを差し引かず、権利行使価格までは損益 0 の横軸に沿っています。 ↩

  4. 金融広報中央委員会「3-4 オプション取引の損益(やさしいデリバティブ)」の「オプション取引の買い手の立場」。 ↩

  5. 関西大学(太田浩司)「企業財務論2010 Lecture Note 28 オプション取引 Part 1」の 2.1〜2.4(2〜4 ページ)。コールは「権利行使価格+プレミアム」、プットは「権利行使価格-プレミアム」を損益分岐点としています。 ↩ ↩2

  6. 金融広報中央委員会「3-4 オプション取引の損益(やさしいデリバティブ)」の「オプション取引の売り手の立場」。 ↩

  7. 関西大学(太田浩司)「企業財務論2010 Lecture Note 28 オプション取引 Part 1」の 2.3「プットの買い」(3 ページ)。 ↩

  8. 金融広報中央委員会「3-4 オプション取引の損益(やさしいデリバティブ)」のプットの節。 ↩ ↩2 ↩3

  9. 金融広報中央委員会は売りの損失を「上限もない」、関西大学は「無限」とします。The Options Industry Council「Long Straddle」の "Max Gain" は "the stock price cannot go below zero" を理由に利益の上限を認め、本文はこれに沿います。 ↩

  10. 金融広報中央委員会「3-4 オプション取引の損益(やさしいデリバティブ)」のコールとプットの損益の表。行使価格 1,000 円、プレミアム 100 円の例で、どの価格でも買い手と売り手の最終的な損益が符号だけ逆になっています。 ↩ ↩2

  11. 関西大学(太田浩司)「企業財務論2010 Lecture Note 28 オプション取引 Part 1」の 4「オプション・プレミアムの決定要因」(7 ページ)。 ↩