銀行が外貨を短い期間だけ調達するときや、機関投資家が外貨建ての資産の為替リスクを抑えるときに使う取引です。

直物と先物を逆向きに組み合わせる取引

為替スワップは、同じ額の外貨を、先に受け渡す売買と後で受け渡す売買で逆の向きに同時に結ぶ取引です。代表的な形は、直物相場で受け渡す売買と先物相場で受け渡す売買の組み合わせです1。先に受け渡す取引をニア・レグ、後で受け渡す取引をファー・レグと呼びます。ニア・レグは直物の取引に、ファー・レグは為替予約のような先渡取引によく似ています2。

日本の F 銀行が、投融資に使う米ドルを 180 日間調達する架空の例で考えます。F 銀行は G 銀行と、1,000 万ドルの為替スワップを結びます。ニア・レグでは、F 銀行が 1 ドル 150.00 円で 1,000 万ドルを買います。ファー・レグでは、ニア・レグの 180 日後に、F 銀行が同じ 1,000 万ドルを 1 ドル 147.061 円で G 銀行に売ります。2 つのレグの相場は、どちらも取引を結ぶ日に決めます。

例では、ニア・レグを、取引の成約から 2 営業日目に受け渡す直物の取引にしています3。ニア・レグも先の日付にする形や、翌日に受け渡して次の日に交換し直すような、ごく短い期間の形もあります。ニューヨーク連邦準備銀行(ニューヨーク連銀)の取引高の調査は、これらも為替スワップに含めています4。

ニア・レグとファー・レグの受け払い

為替スワップでは、外貨の額は 2 つのレグで同じで、円の額だけが 2 つの相場の差の分だけ違います。F 銀行から見た受け払いは次のとおりです。

↑ 受取 ↓ 支払為替スワップでドルを調達する F 銀行から見た受け払いニア・レグファー・レグ(180 日後)+1,000 万ドルドル−15 億円円+14 億 7,061 万円円−1,000 万ドルドル
図 1F 銀行から見たニア・レグとファー・レグの受け払い
図の説明

為替スワップでドルを調達する F 銀行から見た、2 つのレグの受け払いの図です。F 銀行は、ニア・レグで 15 億円を払って 1,000 万ドルを受け取ります。ファー・レグ(ニア・レグの 180 日後)では、1,000 万ドルを払って 14 億 7,061 万円を受け取ります。矢印の長さは、円に換えた金額の大きさの目安で、ドルは 2 つのレグとも 1 ドル 150.00 円で円に換えています。ドルの額は 2 つのレグで同じで、円の受け取りが払いより 2,939 万円少ないことが分かります。

G 銀行の受け払いは図とすべて逆で、ニア・レグで 1,000 万ドルを渡して 15 億円を受け取り、ファー・レグで 1,000 万ドルを受け取って 14 億 7,061 万円を払います。受け渡すのは 2 つの通貨の元本だけで、2 つのレグの間に金利などの受け払いはありません4。

F 銀行から見ると、円を渡してドルを受け取り、期日にドルを返して円を取り戻すため、円を担保にドルを 180 日借りたのと同じ形になります5。

ファー・レグの相場は取引を結ぶ日に決まるため、180 日後の直物相場がいくらでも、F 銀行が受け取る円は 14 億 7,061 万円です。仮に F 銀行がスワップを組まず、直物でドルを買っただけなら、180 日後に 1,000 万ドルを直物で売って円に戻すことになります。180 日後の直物相場が 160.00 円なら 16 億円を受け取り、スワップを組んだ場合より 1 億 2,939 万円多くなります。135.00 円なら 13 億 5,000 万円で、1 億 2,061 万円少なくなります。為替スワップを組むと、ドルを持つ間の為替リスクによる円の額の増減がなくなります。

価格はフォワード・ポイントで決まる

為替スワップは、2 つのレグの相場の差であるフォワード・ポイントで取引されます6。先物相場は、直物相場にフォワード・ポイントを足し引きして求めます7。例のファー・レグの相場 147.061 円は、ニア・レグの 150.00 円にフォワード・ポイント −293.90 銭(−2.939 円)を足した値です。2 つのレグの円の差 2,939 万円は、フォワード・ポイントの大きさ 2.939 円に 1,000 万ドルを掛けた額です。

先物相場を 2 つの通貨の金利から求める金利平価の式と計算は、金利平価と先物為替相場で扱います。例の数値は、その計算例(直物相場 150.00 円、円の金利 0.50%、ドルの金利 4.50%、期間 180 日)と同じです。フォワード・ポイントは 2 つの通貨の金利の差を反映していて、金利の高い通貨の先物相場は、基本的には直物相場より安くなります7。例のフォワード・ポイントがマイナスなのは、ドルの金利が円の金利より高いためです。

F 銀行から見ると、円の受け取りが 2,939 万円少ないことが、為替スワップのコストにあたります。年率で見るときは、フォワード・ポイントを年率に直したものがこのコストにあたり、2 つの通貨の金利の差を含みます6。

外貨の調達、運用、ヘッジに使う

為替スワップは、手元にある通貨を担保にして別の通貨を一定の期間調達したり、手元の通貨を別の通貨に換えて運用したりするのに使われます。投融資に充てる外貨を手当てするとき、銀行や機関投資家は為替スワップなどの取引をよく使います5。米国以外の金融機関が、自国の通貨を為替スワップでドルに交換してドルを調達する取引は「ドル転」と呼ばれます。ドル転は自国の通貨を担保にした有担保の調達の性格を持つため、無担保でのドルの調達が限られた金融機関でも比較的使いやすい取引です8。

例の G 銀行のように、ドルを持っている側は、為替スワップでドルを円に換えて円で運用し、期日にドルを取り戻せます。資金市場と為替スワップ市場のどちらも使えて、取引相手の信用リスクを気にしない金融機関は、ドルを運用するとき、ドルの資金市場で運用する場合と、為替スワップで別の通貨に換えて運用する場合を比べ、利回りの高い方を選びます。ドルを調達するときも、ドルを資金市場で借りる費用と、別の通貨を調達して為替スワップでドルに換える費用を比べ、安い方を選びます9。

実際には、為替スワップでドルを調達する費用がドルの資金市場の金利より高くなる時期があります5。このずれは、円などの側から見た符号付きの値である通貨ベーシスで表し、ドルの調達が割高なときはマイナスになります10。ドルの調達が割高な幅を正の値で表すときは、ドル資金調達プレミアムと呼びます5。

為替スワップは、外貨建ての資産の為替リスクのヘッジにも使われます。日本では、生命保険会社などの機関投資家が、外貨建ての資産に投資するときの為替リスクを抑えるのに、為替スワップや通貨スワップを使っています11。為替リスクをヘッジした外貨建て資産への投資は、為替スワップで円などを担保にドルを調達し、そのドルでドル建ての資産を買う取引と経済的に同じになります12。

通貨スワップとの違い

為替スワップと通貨スワップは、どちらも一定の期間、2 つの通貨の元本を交換し、期日に交換し直す取引です。似た経済効果を持つため、2 つの市場の間には裁定が働くと考えられています13。主な違いは次のとおりです。

項目 為替スワップ 通貨スワップ
主な期間 1 年未満が中心13 通常 1 年以上13
期中の金利の受け払い ない 一定の期間ごとに 2 つの通貨の金利を交換する
期日に交換し直す元本 外貨の額は同じで、相場はフォワード・ポイントの分だけ開始のときと違う 開始のときと同じ額を交換する

2 つの通貨の金利の差を、為替スワップはファー・レグの相場で、通貨スワップは期中の金利の交換で受け払う違いがあります。期中に 2 つの通貨の短期金利を交換する通貨スワップ(日銀レビューの呼び方は通貨ベーシス・スワップ)は、期末の元本の交換額を期初と同じにしますが、本質は為替スワップと変わりません14。通貨スワップの受け払いの形は通貨スワップで扱います。

ニューヨーク連銀 の 2025 年 4 月の取引高の調査では、米国で報告された為替スワップの 61% が、期間 7 日以内の取引でした15。

注

  1. 日本銀行「「外国為替市況」の解説」の「(参考)「時系列統計データ検索サイト」に過去計数のみ掲載の項目」の「1. 3ヶ月フォワード・スプレッド」。資料はこの取引をスワップと呼び、例にスポット買い・フォワード売りを挙げています。 ↩

  2. Orlov、Sharma「Which Witch is Which? Deconstructing the FX Markets Activity」(U.S. Commodity Futures Trading Commission、2023 年 5 月版)の「2.1.3 FX OTC derivatives」(7 ページ)。 ↩

  3. 日本銀行「「外国為替市況」の解説」の「1. スポット・レート」。 ↩

  4. Federal Reserve Bank of New York「Turnover in the United States, April 2025」の Annex I「4. Instrument definitions」の「Foreign exchange swap」(PDF の 11〜12 ページ目)。 ↩ ↩2

  5. 日本銀行「グローバルな為替スワップ市場の動向について」(日銀レビュー、2016 年 7 月)の「最近のドル資金調達プレミアム拡大」(1 ページ)。資料は為替スワップと通貨ベーシス・スワップを合わせて「為替スワップ」と呼びます。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  6. 日本銀行「為替スワップを利用した米ドル資金の調達コストの動向について」(日銀レビュー、2012 年 3 月)の脚注 2(7 ページ)。資料はフォワード・ポイントを「直先スプレッド」と呼びます。 ↩ ↩2

  7. 公益財団法人 国際通貨研究所「直先スプレッドと先物相場の算出方法」の冒頭の段落。資料はフォワード・ポイントを直先スプレッド(スワップポイント)と呼んでいます。 ↩ ↩2

  8. 日本銀行「為替スワップを利用した米ドル資金の調達コストの動向について」(日銀レビュー、2012 年 3 月)の「はじめに」(1 ページ)。 ↩

  9. 日本銀行「為替スワップを利用した米ドル資金の調達コストの動向について」(日銀レビュー、2012 年 3 月)の「ドル転コストの構成要素」(2 ページ)と脚注 1(7 ページ)。資料はユーロとドルの例で、取引相手のリスクを意識しない場合を想定しています。 ↩

  10. 日本銀行金融市場局「店頭デリバティブ取引データからみた通貨スワップ市場:感染症拡大の影響とその後の回復を中心に」(日銀レビュー、2021 年 5 月)の「通貨スワップ取引の概要」(2 ページ)。 ↩

  11. 日本銀行金融市場局「店頭デリバティブ取引データからみた通貨スワップ市場:感染症拡大の影響とその後の回復を中心に」(日銀レビュー、2021 年 5 月)の脚注 7(7 ページ)。 ↩

  12. 日本銀行「グローバルな為替スワップ市場の動向について」(日銀レビュー、2016 年 7 月)の「(投資家のドル建て資産需要)」(2 ページ)。 ↩

  13. 日本銀行金融市場局「店頭デリバティブ取引データからみた通貨スワップ市場:感染症拡大の影響とその後の回復を中心に」(日銀レビュー、2021 年 5 月)の脚注 4(7 ページ)と、「通貨スワップ取引の概要」(2 ページ)。 ↩ ↩2 ↩3

  14. 日本銀行「グローバルな為替スワップ市場の動向について」(日銀レビュー、2016 年 7 月)の脚注 1(7 ページ)。 ↩

  15. Federal Reserve Bank of New York「Turnover in the United States, April 2025」の「Maturity」の項(PDF の 5 ページ目)。期間は取引を結んだときの満期までの期間です。 ↩

  16. Federal Reserve Bank of New York「Turnover in the United States, April 2025」の Annex I(PDF の 10〜12 ページ目)。 ↩