輸入の支払いや輸出の受け取りで外貨を使う企業は、円での金額を決めるために、銀行と為替予約を結びます1。

将来の外貨と円の交換を今決める取引

為替予約は、顧客と銀行が 1 対 1 で、将来の決めた日か決めた期間に外貨を受け払うときの相場を、今のうちに契約しておく取引です2。将来の条件を今決める点は先渡取引と同じで、先渡しの一般は先渡しと先物で扱います。

架空の例で考えます。米国の C 社から商品を輸入する A 社が、6 か月後に代金 100 万米ドルを払う予定です。今日の直物相場は 1 ドル 150.00 円です。直物相場は、取引の成約から 2 営業日目に資金を受け渡す取引の相場です3。A 社は J 銀行と、6 か月後に 100 万ドルを 1 ドル 148.00 円で買う為替予約を結びます。

このページでは、予約を実行して外貨と円を受け渡す日を受渡日、顧客と銀行が予約で決めた相場を予約相場と書きます。例の予約相場は 148.00 円です。

J 銀行予約の相手A 社輸入企業C 社米国の売り手1 億 4,800 万円100 万ドル代金 100 万ドル
図 1受渡日の A 社、J 銀行、C 社の受け渡し
図の説明

6 か月後の受渡日に、A 社は J 銀行に 1 億 4,800 万円を払い、J 銀行から 100 万ドルを受け取ります。A 社は、受け取った 100 万ドルを輸入の代金として C 社に払います。予約を結んだ日から受渡日までは、どの当事者の間でもお金は動きません。受渡日の直物相場がいくらでも、A 社が払う円は 1 億 4,800 万円です。

受渡日の直物相場と比べた得と損

為替予約を結ぶと、A 社の支払額は受渡日の直物相場にかかわらず 1 億 4,800 万円に決まります。予約を結ばずに受渡日の直物相場でドルを買った場合と比べると、得と損は次のとおりです。

受渡日の直物相場(1 ドル) 予約がないときの支払額 予約があるときの支払額 予約による得と損
160.00 円 1 億 6,000 万円 1 億 4,800 万円 +1,200 万円
148.00 円 1 億 4,800 万円 1 億 4,800 万円 0 円
135.00 円 1 億 3,500 万円 1 億 4,800 万円 −1,300 万円

円安の 160.00 円になると、予約がない場合より 1,200 万円少なく済みます。円高の 135.00 円になると、予約がない場合より 1,300 万円多く払います。どちらの場合も、輸入の代金と予約を合わせた A 社の支払額は 1 億 4,800 万円に決まっており、為替リスクによる支払額の増減がなくなります1。

J 銀行は、受渡日に A 社へ 100 万ドルを渡し、1 億 4,800 万円を受け取ります。輸入企業と逆に、輸出企業は、受け取る予定のドルの円での金額を決めるため、ドルを売る予約を結びます1。

予約相場の決まり方

A 社の予約相場 148.00 円は、ドルと円の金利の差と、J 銀行のマージンなどで決まります4。ドル建ての予約には、2011 年 8 月時点で、このほかの手数料などの直接の費用はかかりませんでした4。

例の為替予約のように、受け渡しの日が取引の成約から 2 営業日目でない取引に使う相場を先物相場と呼びます。先物相場は、受け渡しまでの期間の 2 つの通貨の金利で決まり、ドルの金利が円の金利より高いと、直物相場より円高になります3。例の予約相場が今日の直物相場 150.00 円より円高なのは、ドルの金利が円の金利より高いものとしているためです。先物相場と直物相場の差(フォワード・ポイント)を金利から求める式は、金利平価と先物為替相場で扱います。

受渡日の決め方

受渡日の決め方には、特定の日に決める確定日渡しと、期間の中で受け渡す期間渡しがあります2。確定日渡しは「7 月 11 日渡し」のように実行する日を 1 日に決める方法で、輸出の手形を銀行が買い取る日や外貨預金の満期の日のように、外貨を受け払う日が前もって分かっている取引に使います5。

期間渡しは、代金の決済の日を 1 日に決められないときや、着金が数日ずれることが見込まれるときに使います。「4 月渡し」のように暦の月で決める暦月渡しでは、その月の 1 日から月末までの銀行の営業日なら、いつでも予約を実行できます。月をまたぐ任意の期間を決める特定期間渡しもあります6。

期間の始まりを、予約を結んだ日の直物取引の受け渡しの日(一般に成約から 2 営業日目)にそろえ、そこから 1 か月の間とする決め方もあります。期間渡しでは、実行できる期間の中なら、輸出か輸入の同じ向きの取引で何回かに分けて実行することもできます6。

取り消しにくさと銀行の審査

為替予約は「予約」と呼びますが、銀行との外国為替の取引では、約定書で売買の取引と定めています。原則として取り消せず、受渡日に受け渡す義務があります。受渡日の直物相場が予約相場より有利になっても、それを理由に取り消すことはできません7。決めた日か期間の中で、予約した金額をすべて使い切るのが原則で、使い切れない分は取り消しの手続きをとります。予約した相場のまま期日を変えることは基本的に認められず、戦争や港湾のストライキのような、やむをえない理由があるときに銀行が取り消しや延長に応じることがあります8。

銀行は、予約を結ぶ前に、顧客が予約を実行できるかを審査します。顧客が倒産などで予約を実行できなくなると、銀行は予約相場とそのときの市場の相場との差損を顧客から回収できなくなるおそれがあります。そのため、銀行は予約を顧客への与信とみなしています9。

通貨オプションとの違い

為替の変動に備える取引には、為替予約のほかに通貨オプションがあります。ドルを買う権利を持つ輸入企業なら、満期の直物相場が行使価格より円高で、市場でドルを買うほうが安いときは、権利を放棄できます。買い手は、この権利の対価としてプレミアムを契約時に払います。為替予約にはこの選択がなく、プレミアムもかかりません10。

ドルを買う場合で、為替予約と、ドルを買う権利(ドル・コール)の買い手を比べると、次のようになります。

項目 為替予約 通貨オプション(ドル・コールの買い)
満期の受け渡し 義務(原則として取り消せない) 権利(行使か放棄を選べる)
契約のときの支払い なし プレミアム
円安になったとき 予約相場でドルを買える 行使価格でドルを買える
円高になったとき 予約相場でドルを買う 放棄して直物相場でドルを買える

注

  1. 日本貿易振興機構(ジェトロ)「外国為替取引における先物予約と通貨オプションの違い」(調査時点 2011 年 8 月、最終更新 2025 年 7 月)の「Ⅲ. 実務面における両者の使い分け」。 ↩ ↩2 ↩3

  2. ジェトロ「先物為替予約の種類と利用にあたっての留意点:日本」(調査時点 2011 年 9 月、最終更新 2025 年 7 月)の回答の 1 段落目。 ↩ ↩2

  3. 日本銀行「「外国為替市況」の解説」(2023 年 1 月)の「1. スポット・レート」と、「(参考)「時系列統計データ検索サイト」に過去計数のみ掲載の項目」の「1. 3ヶ月フォワード・スプレッド」。 ↩ ↩2

  4. ジェトロ「外国為替取引における先物予約と通貨オプションの違い」の「Ⅱ. 取引コスト・取引採算」。 ↩ ↩2

  5. ジェトロ「先物為替予約の種類と利用にあたっての留意点:日本」の「I. 「確定日渡し」と「期間渡し」の特徴」の「「確定日渡し」の特徴」。 ↩

  6. ジェトロ「先物為替予約の種類と利用にあたっての留意点:日本」の「I. 「確定日渡し」と「期間渡し」の特徴」の「「期間渡し」の特徴」。 ↩ ↩2

  7. ジェトロ「外国為替取引における先物予約と通貨オプションの違い」の回答の 1 段落目と「Ⅰ. 通貨オプション取引」。 ↩

  8. ジェトロ「先物為替予約の種類と利用にあたっての留意点:日本」の「II. 先物為替予約の留意点」の「予約の取消と期日変更」(調査時点 2011 年 9 月)。 ↩

  9. ジェトロ「先物為替予約の種類と利用にあたっての留意点:日本」の「II. 先物為替予約の留意点」の「事前審査」(調査時点 2011 年 9 月)。 ↩

  10. ジェトロ「外国為替取引における先物予約と通貨オプションの違い」の「Ⅰ. 通貨オプション取引」と「Ⅱ. 取引コスト・取引採算」。 ↩