株式を持つ運用担当者が値下がりに備えるときや、証券会社の業務で顧客の証拠金の額を決めるときに出てくる商品です。

日経平均株価の買う権利と売る権利

株価指数オプションは、株価指数を原資産にしたオプションです。日本では、大阪取引所に日経225オプションが上場しています。日経平均株価を、将来の特定の日(SQ 日。取引最終日の翌営業日)に行使価格で買う権利(コール・オプション、コール)か、売る権利(プット・オプション、プット)を取引します12。取引が始まったのは 1989 年 6 月 12 日です3。コールとプットの一般の仕組みはオプションの基本(コールとプット)で扱います。

日経平均株価が 40,000 円のときに、行使価格 39,000 円のプットをプレミアム 400 円で 1 枚買う取引の架空の例で考えます。取引単位はプレミアムの 1,000 倍なので4、買い手が払う代金は 400 円 × 1,000 で 40 万円です。

条件 この例での値
原資産 日経平均株価
種類 プット(売る権利)
行使価格 39,000 円
満期 SQ 日
プレミアム 400 円(1 枚で 40 万円)

同じ日経平均株価を原資産にした先物は株価指数先物で扱います。

満期は SQ 値との差額で決済する

日経225オプションは、SQ 日にだけ行使できるヨーロピアン・オプションで、行使すると、行使価格と特別清算数値(SQ 値)の差額を受け払いします56。SQ 値は、SQ 日の日経平均株価の各構成銘柄の始値から計算する特別な日経平均株価の値です2。日経平均株価そのものや株式を受け渡すことはしません。

取引最終日までに売り買いして取引を終えなかった持ち高は、満期にイン・ザ・マネー(行使すると差額を受け取れる状態)なら、権利放棄をしない限り自動で行使されます。アウト・オブ・ザ・マネー(行使しても差額が生じない状態)なら、自動では行使されず、持ち高がなくなります6。プットの買い手が受け取る額は「(行使価格 − SQ 値)× 1,000 × 枚数」で、ここから払ったプレミアムを引いたものが損益です7。上の例のプットを SQ 日まで持った場合は、次のとおりです。

SQ 値(円) 受け取る差額(万円) 払ったプレミアム(万円) 損益(万円)
36,000 300 40 260
38,600 40 40 0
39,000 0 40 −40
42,000 0 40 −40

SQ 値が 36,000 円なら、差額は(39,000 − 36,000)× 1,000 で 300 万円で、プレミアムの 40 万円を引いて 260 万円の利益です。SQ 値が行使価格の 39,000 円以上なら、行使しても差額がないため権利は消え、払った 40 万円が損失になります7。損益が 0 になるのは、行使価格からプレミアムを引いた 38,600 円で、この価格を損益分岐点といいます。

−1,0000+1,000+2,000+3,000+4,000+5,00039,000損益(円)SQ 値(円)利益損失損益分岐点 38,600
図 1行使価格 39,000 円のプットの買いの満期の損益
図の説明

日経225オプションで、行使価格 39,000 円のプットをプレミアム 400 円で買ったときの、満期の損益です。横軸は SQ 値、縦軸はプレミアムを含めた損益で、1 枚の損益はこの 1,000 倍です。SQ 値が 39,000 円以上では行使されず、損益は −400 円で一定です。39,000 円を下回ると、SQ 値が 1 円下がるごとに損益が 1 円増え、38,600 円で 0(損益分岐点)、36,000 円で 2,600 円の利益になります。損失は払ったプレミアムの 400 円までです。

プットを売った側の損益は、買った側のちょうど反対です。SQ 値が下がるほど売り手の損失は大きくなるため、売り手は証拠金を差し入れます。損失が払ったプレミアムまでに限られる買い手には、証拠金は要りません8。

行使価格の刻みと取引単位

日経225オプションでは、1 つの限月に、行使価格の違う銘柄が一定の刻みで並びます。新しい限月の取引が始まるときは、前の営業日の日経平均株価の終値にいちばん近い 250 円の整数倍を中心に、250 円刻みで上下に 16 ずつの行使価格を設定します。その後は、満期の近い 3 つの限月を除き、日経平均株価の終値に合わせて、250 円刻みで上下に 16 ずつ並ぶように行使価格を足します。満期の近い 3 つの限月では、125 円刻みで上下に 24 ずつ並ぶように足します9。

項目 日経225オプションの定め(2026 年 9 月時点)10
限月(3 月、6 月、9 月、12 月) 6 月限と 12 月限は直近の 16 限月、3 月限と 9 月限は直近の 3 限月
限月(そのほかの月) 直近の 8 限月
行使価格の刻み 250 円(満期の近い 3 限月は、125 円刻みの行使価格も足す)
取引単位 プレミアム × 1,000 円
呼値の単位 プレミアムが 300 円以下なら 1 円、300 円を超えると 5 円

取引最終日は、各月の第 2 金曜日(休業日なら繰り上げ)の前の営業日です2。

SQ 日の前に反対売買で終える

SQ 日を待たずに、反対売買で取引を終えることもできます。買った人は売り(転売)、売った人は買い戻して(買戻し)、プレミアムの差額を受け払いします7。上の例のプットを 400 円で買った人の、架空の例で考えます。日経平均株価が下がってプレミアムが 550 円になったところで転売すると、(550 − 400)× 1,000 で 15 万円の利益です。反対に、日経平均株価が上がってプレミアムが 250 円になったところで転売すると、15 万円の損失です。

プレミアムは、日経平均株価と行使価格の関係で大きく変わり、満期までの日数とボラティリティ(値動きの大きさ)にも左右されます11。

プットを買って株式の値下がりに備える

株式やファンドを持つ人は、プットを買って、値下がりに備える(ヘッジする)ことがあります14。原資産を持ったままプットを買う組み合わせをプロテクティブ・プットといいます。

日経平均株価が 40,000 円のときに、4,000 万円分の株式を持つ人の架空の例で考えます。持っている株式は日経平均株価と同じ割合で値上がり、値下がりするものとします。この人が、最初の節の例と同じ行使価格 39,000 円のプットをプレミアム 400 円で 1 枚買います。株式の金額は日経平均株価の 1,000 倍にあたるので、1 枚でちょうど見合います。SQ 値ごとの損益は次のとおりです。

SQ 値(円) 株式の損益(万円) プットの損益(万円) 合わせた損益(万円)
36,000 −400 260 −140
40,000 0 −40 −40
44,000 400 −40 360

SQ 値が 36,000 円まで下がると、株式は 400 万円の損失ですが、プットで 260 万円の利益が出るため、合わせた損失は 140 万円です。SQ 値が 39,000 円を下回れば、どこまで下がっても合わせた損失は 140 万円(行使価格までの値下がり 100 万円とプレミアム 40 万円)で止まります。一方、SQ 値が 44,000 円に上がると、株式は 400 万円の利益ですが、プットは行使されずプレミアムの 40 万円が損失になり、合わせた利益は 360 万円です。値下がりの損失に上限ができる代わりに、SQ 値が 39,000 円以上なら、株式だけを持つときよりプレミアムの 40 万円の分だけ損益が小さくなります。

この例は、株式の値動きが日経平均株価とそろう前提で計算しています。実際に持つ株式の値動きが日経平均株価と違えば、その差の分は、プットの損益では埋まりません。

大阪取引所の株価指数オプション

大阪取引所には、日経平均株価のほかにも、国内の株価指数を原資産にしたオプションが上場しています。2026 年 4 月 13 日に更新された日本取引所グループの商品一覧では、次のとおりです15。

原資産の株価指数 オプション
日経平均株価 日経225オプション、日経225ミニオプション
東証株価指数(TOPIX) TOPIX オプション
JPX日経インデックス400 JPX日経インデックス400 オプション
東証銀行業株価指数 東証銀行業株価指数オプション

日経225ミニオプションは、大阪取引所が「ミニサイズ」と呼ぶ小型のオプションで、2023 年 5 月 29 日に取引が始まりました1。TOPIX オプションと JPX日経インデックス400 オプションも、日経225オプションと同じく、SQ 日にだけ行使できるヨーロピアンです5。

注

  1. 日本取引所グループ「日経225オプション 商品概要」の「商品概要」の本文と「日経225ミニオプション」の項。 ↩ ↩2

  2. 日本取引所グループ「日経225オプション 制度概要」の「取引最終日」「SQ日」「権利行使日」「オプション清算数値(SQ値)」の行。制度概要は、SQ 値を「オプション清算数値(SQ値)」と呼んでいます。 ↩ ↩2 ↩3

  3. 日本取引所グループ「日経225オプション 制度概要」(2026 年 2 月 16 日更新)の「取引開始日」の行。 ↩

  4. 日本取引所グループ「日経225オプション 制度概要」の「取引単位」の行。 ↩

  5. 日本取引所グループ「よくあるご質問」の先物・オプションの Q9「【OSE】権利行使はいつできますか。」。 ↩ ↩2

  6. 日本証券クリアリング機構「指数オプション取引の決済方法」。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  7. 大阪取引所「決済方法」(北浜投資塾、オプション)の「反対売買による決済」「SQ値による決済」「権利放棄(権利消滅)」。 ↩ ↩2 ↩3

  8. 大阪取引所「オプション取引とは」(北浜投資塾)の「オプションの買い手の特徴」と「オプションの売り手の特徴」。 ↩

  9. 日本取引所グループ「日経225オプション 制度概要」の「権利行使価格」の行の「新規設定」と「追加設定」。資料は「権利行使価格」と書いています。 ↩

  10. 日本取引所グループ「日経225オプション 制度概要」の「限月取引」「権利行使価格」「取引単位」「呼値の単位」の行。2026 年 9 月 25 日に確かめました。 ↩

  11. 大阪取引所「プレミアム」(北浜投資塾)の「銘柄によって違うプレミアム」と「時間的価値はどのように決まるのか」。 ↩

  12. 日本取引所グループ「日経225オプション 制度概要」の「証拠金」の行。制度概要は、詳しくは JSCC のウェブサイトを見るよう案内しています。 ↩

  13. 大阪取引所「先物取引のすべて」の 37 ページ、「(2) 顧客が差し入れる証拠金について」。 ↩

  14. 日本取引所グループ「ヘッジ取引(用語集)」。 ↩

  15. 日本取引所グループ「商品一覧(先物・オプション)」(2026 年 4 月 13 日更新)の大阪取引所の「国内株価指数」の行。 ↩