複数の銘柄に連動する商品を売るディーラーは、銘柄どうしの動きの揃い方が変わると損益が動くため、ヘッジの手段を探します。相関スワップは、その動きの揃い方そのものを受け払いにする取引で、相関のリスクを管理する場面に出てきます。

何と何を交換するか

相関スワップは、2 者が満期に 1 回、実現相関とストライクの差を受け払いします。バリアンス・スワップに似た取引で、満期に、想定元本に実現相関とストライクの差を掛けた額が払われます1。買い手の受け取りは次のとおりです。

N×(ρR−K)N \times \left(\rho_R - K\right)

ρR\rho_R は契約期間中の実現相関、KK は契約のときに決めるストライク、NN は想定元本です。受け取りが負のときは、買い手が売り手に払います。

実現相関は、指数を構成する nn 銘柄のうち 2 銘柄ずつの組について、相関 ρij\rho_{ij} を求め、指数の重み wiw_i、wjw_j の積で重みを付けて平均した値です1。

ρR=∑i<jwiwjρij∑i<jwiwj\rho_R = \frac{\sum_{i<j} w_i w_j \rho_{ij}}{\sum_{i<j} w_i w_j}

重みがすべて等しければ、組ごとの相関の単純な平均になります。

満期の受け払いの例

X 銀行が、Y 証券から相関スワップを買う条件の架空の例で考えます。対象は 3 銘柄 A、B、C を同じ重みで含む指数で、ストライクは 0.5、想定元本は 1 億円です。重みが等しいので、実現相関は 3 組(A と B、A と C、B と C)の相関の単純平均です。

実現した組ごとの相関が 0.7、0.6、0.5 なら、実現相関は 0.6 で、X 銀行は 1 億円 × (0.6 − 0.5) = 1,000 万円を受け取ります。組ごとの相関が 0.3、0.4、0.5 なら、実現相関は 0.4 で、X 銀行は 1 億円 × (0.4 − 0.5) = −1,000 万円、つまり 1,000 万円を払います。Y 証券の損益は、X 銀行と符号が逆です。実現相関がストライクを上回れば買い手が得て売り手が損をし、下回れば逆になります。

実現相関 X 銀行(買い手)の受け取り
0.0 −5,000 万円
0.5 0 円
1.0 5,000 万円
買い手の受け取り(万円)相関スワップの買い手−6,000−4,000−2,00002,0004,0006,00000.20.40.60.81ストライク実現相関
図 1実現相関と買い手の受け取り
図の説明

ストライク 0.5 の相関スワップを想定元本 1 億円で買ったときの、満期の受け取りです。横軸は実現相関(0 から 1)、縦軸は買い手の受け取り(万円)です。直線で右上がりになり、実現相関が 0 のときは 5,000 万円を払い、1 のときは 5,000 万円を受け取ります。ストライク 0.5 の左右で、受け取りの符号が入れ替わります。

実現相関は組ごとの相関の平均なので、1 を超えません。この例では、売り手の最大の払いは、実現相関が 1 のときの 5,000 万円です。ストライクが 0.5 なら、実現相関との差は 0.5 までしかないためです。

買い手の側にも限度があります。3 銘柄を同じ重みで含む指数では、3 つの相関の平均が −0.5 を下回れないため(相関行列の性質から計算できます)、買い手の最大の払いは 1 億円 × (−0.5 − 0.5) = −1 億円、つまり 1 億円です。

バリアンス・スワップの売り手の損失に、式の上では上限がないこととは対照的です。バリアンス・スワップの受け払いはバリアンス・スワップとボラティリティ・スワップで扱います。

実現相関の求め方

2 銘柄ずつの相関をすべて計算する方法のほかに、指数と構成銘柄の実現ボラティリティから求める近似があります。実現相関は、指数のバリアンスと、構成銘柄のバリアンスを指数の重みで平均した値の比で近似できます。この近似は Bossu が示したものです2。

ρR≈σI2∑iwiσi2\rho_R \approx \frac{\sigma_I^2}{\sum_i w_i \sigma_i^2}

σI\sigma_I は指数の実現ボラティリティ、σi\sigma_i は銘柄 ii の実現ボラティリティです。分子は指数のバリアンス・スワップ、分母は構成銘柄のバリアンス・スワップの重み付きの合計に対応します。このため、実現相関は、取引されている 2 種類のバリアンス・スワップの比とみなせます。分母は、元の形では重み付き平均ボラティリティの 2 乗です。これをバリアンスの重み付き平均に置き換えたのが上の近似で、元の値より小さくなります2。

バリアンス・スワップとの違い

項目 バリアンス・スワップ 相関スワップ
受け払いのもと 実現バリアンス(変動の大きさの 2 乗) 実現相関(銘柄どうしの動きの揃い方)
受け取りの形 想定元本 × (実現バリアンス − ストライク)3 想定元本 × (実現相関 − ストライク)
損失の限度 売り手の損失に式の上では上限がない 売り手にも買い手にも限度がある(前の節)
複製 オプションの組み合わせで複製できる 近似的に複製できるが、流動性とボラティリティのボラティリティの影響が残る

バリアンス・スワップは、銘柄ごとの変動の大きさに反応します。相関スワップは、変動の大きさが同じでも、銘柄どうしの動きの揃い方が変われば受け取りが変わります。

ディスパーション取引での位置づけ

ディスパーション取引は、指数のオプションと構成銘柄のオプションを反対向きに持つ取引です。バリアンス・スワップで組むと、指数のバリアンス・スワップを売り、構成銘柄のバリアンス・スワップを買う形になり、相関の損益が出ます。ただし、この取引の損益には、構成銘柄の変動の大きさの変化による部分も混ざります。

損益は、インプライド相関と実現相関の差に構成銘柄の平均的なバリアンスを掛けた部分と、ボラティリティによる部分の和になります。インプライド相関は、オプションやバリアンス・スワップの価格から逆算した相関です。ボラティリティによる部分は、ボルガの次数の項です。ボルガは、オプションの価格をボラティリティで 2 階微分した値で、ボラティリティが動くときの価格の曲がりを表します4。

相関スワップは、受け払いが相関だけで決まります。そのため、相関を取引したいときの、より直接の手段として提案されてきました5。

価格の決まり方とヘッジの難しさ

相関スワップのストライクは、ディスパーション取引から逆算したインプライド相関と、差が出ることがあります。2010 年の論文によると、先行研究は、同じ満期の相関スワップのストライクと、バリアンス・スワップを使うディスパーション取引のインプライド相関の間に、差を観測しています。論文は、この差をディスパーション取引のボルガで説明できるとしています。ただし、ディスパーション取引の重みの付け方を変えると、この結論は見直す必要があると断っています6。

実現相関と近似の関係を使うと、相関スワップは、バリアンス・スワップによるディスパーション取引で動的に準複製できます。この方法は Bossu が示しました。ただし、次の点が問題として挙げられています。バリアンス・スワップの流動性が、すべての市場、すべての指数と構成銘柄で足りているとは限りません。また、この方法はボラティリティの形を決めておらず、ボラティリティが確率的に動くこと(ボラティリティのボラティリティ)を考慮していません7。

何に使われるか

2010 年の論文によると、銀行がワースト・オブ型などの商品を売った結果、相関のショート、つまり相関が上がると損をする持ち高を持ちます。その一部を戻す手段として、相関スワップが挙げられています8。

ワースト・オブ型のコールを売った X 銀行の架空の例で考えます。前の例と同じ、想定元本 1 億円、ストライク 0.5 の相関スワップを買うとします。商品はワースト・オブ型のコールで、実現相関がストライクより 0.1 高いと 1,200 万円の損、0.1 低いと 1,200 万円の益になるとします。

実現相関が 0.6 になると、スワップの受け取りは 1,000 万円、商品の損は 1,200 万円で、合計は −200 万円です。実現相関が 0.4 になると、スワップの払いは 1,000 万円、商品の益は 1,200 万円で、合計は 200 万円です。商品とスワップで相関への感応度が同じでないため、差が残ります。商品の感応度がこの例のとおり一定なら、想定元本を 1 億 2,000 万円にすると、0.1 あたりの受け払いが 1,200 万円になり、差は消えます。

注

  1. Antoine Jacquier、Saad Slaoui "Variance dispersion and correlation swaps"(外部サイト)の 3.2 節(5 ページ)。満期の受け払いの式と、組ごとの相関を wiwjw_i w_j で重み付けして平均する実現相関の式。 ↩ ↩2

  2. 同じ論文の 3.2 節(5 ページ)。実現相関が指数と構成銘柄の実現ボラティリティの比で近似できること、この近似を Bossu(2006)が示したこと、分母をバリアンスの重み付き平均にした近似が、ジェンセンの不等式により元の値の下限であること。 ↩ ↩2

  3. 同じ論文の 2 節(2 ページ)。バリアンス・スワップの受け取りの式と、無限個のコールとプットで複製できるという説明。 ↩

  4. 同じ論文の要旨と 5 章。ディスパーション取引の損益が、インプライド相関と実現相関の差に構成銘柄の平均バリアンスを掛けた項と、ボルガの次数のボラティリティの項の和であること。 ↩

  5. 同じ論文の 1 節(1 ページ)。ボラティリティの取引が相関の持ち高を生み、それを戻す必要から相関スワップが提案されたこと。 ↩

  6. 同じ論文の要旨と 5 章。同じ満期の相関スワップのストライクとインプライド相関が一致しないことが実証的に観測されていること、その差がボルガで説明できること、重みの付け方を変えると見直す必要があるとされること。 ↩

  7. 同じ論文の 3.2 節(5 ページ)。Bossu が相関スワップをバリアンスのディスパーション取引で動的に準複製できると示したこと、末尾の流動性が足りない市場があること、モデルがボラティリティの形を決めておらず、ボラティリティのボラティリティを考慮していないこと。 ↩

  8. 同じ論文の要旨。銀行がワースト・オブ型などを売った結果として相関のショートを持つこと、その一部を買い戻す方法として相関スワップとディスパーション取引が提案されていること。 ↩