店頭デリバティブのバック・オフィスやオペレーションの担当者は、約定のあとに、取引の条件を取引相手と確認する作業をします。システム部門は、社内の取引の入力と、確認を電子的に行う社外のサービスの間をつなぎます。

約定のあとに電子で確認する理由

約定のあとに取引の条件を確かめないと、入力の誤りが見つからないまま残ります。2005 年ごろの信用デリバティブの確認の滞留は、損失などにつながる誤りを見つけにくくして、取引業者の運用上のリスクを増やしました1。当事者の間で条件を確かめる手続きが取引確認書です。書面の確認書の中身と手順は確認書(コンファメーション)で扱います。

書面の確認は、取引が増えると追いつかなくなります。2005 年ごろの信用デリバティブの確認は、一般に次の手順でした。ディーラーが確認書を手で作ってファクスで送り、受け取った相手が自社の記録と手で突き合わせ、一致したら署名した確認書をファクスで返します。この手順は人手が多く、取引の増加に合わせて広げにくいものでした2。

電子確認のサービスは、この突き合わせをシステムの上で行います。当事者の条件を同じシステムに集め、取引のマッチングかアファメーションで確認を成立させます。このようなシステムを電子確認プラットフォームと呼びます。以降、この種のシステムを指すときは「サービス」にそろえます。同様のサービスは複数の事業者が提供しています3。DTCC(Depository Trust & Clearing Corporation)の Deriv/SERV と、約定後の処理のサービスを運営する OSTTRA がその例です。

DTCC は、子会社を通じて清算・決済などのサービスを提供しています。OSTTRA は 2021 年に設立されました。2012 年の資料では、MarkitSERV を DTCC と Markit が共同で所有していると書かれていますが、2009 年の一覧では、Deriv/SERV は MarkitWire とは別の仕組みとして挙がっています。

約定から清算、報告までの経路

この節は、OSTTRA のサービスを例にした流れで、ほかの事業者では異なることがあります。OSTTRA は、約定のあとの処理を、承認、確認、割り当て、清算、報告の手順に分けています4。そのうち確認から清算と報告までが、次の経路です。

  1. 約定。取引が成立します。ブローカー、ディーラー、取引の場が、成立した取引を送る形があります4。
  2. 条件の送信。取引の条件を、電子確認のサービスに送ります。当事者が送った取引の内容を突き合わせる形(マッチング)と、ブローカー、ディーラー、取引の場が送った条件を当事者が受け入れる形(アファメーション)があります4。
  3. 確認の成立。条件が一致するか、当事者が受け入れると、確認が成立します。食い違いは、当事者の間の手続きで解決します4。
  4. 清算の受付。OSTTRA のサービスは、清算の対象の取引を清算機関へ送れます4。
  5. 報告。OSTTRA のサービスは、報告の対象の取引の詳細を取引情報蓄積機関へ送れます4。

OSTTRA は、金利デリバティブでは、承認を経た法的な確認が、清算と取引の報告を始めると説明しています5。

約定確認サービス清算機関取引情報蓄積機関取引が成立する取引の条件をサービスに送る突き合わせか受け入れで確認が成立する清算の対象なら取引を受け付ける報告の対象なら取引の詳細を受け取る
図 1約定から電子確認、清算の受付、報告までの経路(OSTTRA の金利デリバティブの説明)
図の説明

約定のあとに、取引の条件が電子確認のサービスで確認され、清算機関と取引情報蓄積機関に送られるまでを、OSTTRA の金利デリバティブの説明に沿って 5 つの手順で示します。約定の場は、取引が成立する場所です。サービスは、当事者が送った取引の内容を突き合わせるか、当事者の受け入れを受け付けて、確認を成立させます。金利デリバティブでは、確認のあとに、清算の対象のものは清算機関へ、報告の対象のものは取引情報蓄積機関へ送られます。条件が一致しない取引は、確認が成立せず、食い違いを当事者が解決します。

想定元本 100 億円、期間 5 年の金利スワップで、U 社が固定金利 1%(年)を払う架空の例で考えます。U 社と V 銀行が取引を結び、U 社は想定元本を 100 億円と入力し、V 銀行は 10 億円と入力しました。サービスの上で突き合わせると、想定元本が一致しないことが分かります。

そのままにすると、固定金利の利息は、U 社の記録で年 1 億円、V 銀行の記録で年 0.1 億円です。V 銀行が受け取るはずの利息は、U 社が払うつもりの利息より年 0.9 億円(9,000 万円)少なくなります。

逆に、V 銀行が 1,000 億円と入力していたら、V 銀行の記録の利息は年 10 億円で、U 社が払うつもりの額より年 9 億円多くなります。どちらの向きでも、約定の直後に食い違いを見つけて直せば、利息の受け払いの前に記録がそろいます。

アファメーションとマッチングは何が違うか

確認を成立させる方法は、送られた取引の内容を、受け入れるか突き合わせるかで 2 つに分かれます。

項目 アファメーション マッチング
送られる取引の内容 ブローカー、ディーラー、取引の場が送った取引 当事者が送った取引の内容
確認の方法 当事者が、送られた内容を確かめて受け入れる 送られた内容を突き合わせる

OSTTRA のサービスでは、承認は多くの処理の最初の手順で、受け入れると、取引の記録の作成や確認などの次の手順が始まります。確認は、当事者が送った取引の内容をマッチングするか、承認することで、取引の条件を確認します4。2015 年 2 月の Markit の意見書は、当事者の間の合意の方法として、アファメーションと確認、マッチングを並べています6。

確認の滞留と電子確認の広がり

GAO の報告書によると、2005 年の信用デリバティブの確認の滞留への対応で、電子確認の利用が増えました。同じ報告書では、2005 年 9 月末に、大手 14 社が抱えた未確認の確認書は 153,860 件で、うち 97,650 件(63%)が 30 日を超え、63,322 件(41%)が 90 日を超えていました。このとき 14 社は、9 月に約 13 万件の取引を結んでいました8。

滞留の原因は 2 つありました。1 つは、取引の増加に追いつかない手作業の確認です。1 週間に結ぶ取引の平均は、大手の取引業者で 2004 年の 644 件から 2005 年の 1,450 件に増えました。もう 1 つは、相手に知らせずに自分の側の取引を第三者に譲渡する慣行で、元のディーラーが確認しにくくなりました9。

DTCC は、2002 年ごろから複数のディーラーと、電子で比べて、突き合わせ、確認する仕組みを作り始め、2003 年末に Deriv/SERV を始めました。2004 年半ばに、15 社のディーラーと 7 社のエンドユーザーが登録しましたが、2004 年には信用デリバティブの取引の最大 85% が手作業で確認されていました。電子で確認された取引の割合は、2005 年 9 月に最大 46% でした10。

2005 年 9 月 15 日に、ニューヨーク連邦準備銀行が主要な市場参加者と監督当局の会合を開き、確認の滞留と取引の譲渡の扱いを議題にしました11。10 月 5 日に、大手 14 社の約束を歓迎する声明が出ました。約束の書簡(10 月 4 日付)の主な内容は、次のとおりです12。

項目 約束の内容
滞留の削減 2006 年 1 月 31 日までに、30 日を超えて未確認の取引を、2005 年 9 月 30 日の件数から 30% 減らす
DTCC の利用 2005 年 10 月 31 日までに、DTCC の既存の機能をすべて使う
顧客の利用 取引の多い顧客に、DTCC を含む電子のマッチングの仕組みの利用を求める(2006 年 1 月 15 日まで)
標準的な取引の確認 標準的な取引の確認を、T+5(約定日の 5 営業日後)の基準に移していく

その後の結果を、14 社の合計で、2005 年 9 月と 2006 年 10 月末について比べます13。

項目 2005 年 9 月 2006 年 10 月末
未確認の確認書の合計 153,860 件 37,306 件(約 76% 減)
うち 30 日を超えたもの 97,650 件 5,500 件(94% 減)
電子で確認された取引の割合 46% 85%

2006 年 10 月末に、取引の約 90% が電子確認の対象で、そのうち約 94% が電子で確認され、電子確認の 84% は 5 営業日以内でした13。

DTCC は、2006 年 11 月に、電子確認した取引の記録を保管する仕組み(Trade Information Warehouse)も始めました14。

金利スワップでも、電子確認の割合は課題でした。2008 年 9 月の金利デリバティブでは、取引量の 87% が電子確認の対象なのに、実際に電子で確認されたのは 54% でした15。

名前と運営者の変遷

サービスの名前と運営者は変わってきました。資料に書かれた範囲を、時点ごとに並べます。表の時点は、各資料の日付です。

SwapsWire は、2007 年 6 月の GAO の報告書が、2006 年 1 月の時点の電子の確認の仕組みの例として挙げたサービスです。MarkitSERV は、2012 年の意見書で、取引処理、確認、マッチング、照合のサービスを提供すると書かれた事業者です。

資料の時点 資料 書かれていること
2003 年末 GAO の報告書(2007 年 6 月) DTCC が Deriv/SERV を始めた10
2006 年 1 月 GAO の報告書 大手 14 社が顧客に求めた電子の確認の仕組みの例として、Deriv/SERV と SwapsWire を挙げる16
2009 年 6 月 ニューヨーク連邦準備銀行の約束の一覧 MarkitWire と DTCC の Deriv/SERV を挙げ、MarkitSERV が両者の間をつなぐ機能を用意する予定とする17
2012 年 8 月 MarkitSERV の欧州証券市場監督局への意見書 MarkitSERV は、DTCC と Markit の共同所有で、取引処理、確認、マッチング、照合のサービスを提供する3
2015 年 2 月 Markit の欧州証券市場監督局への意見書 MarkitSERV は、Markit Group Limited の完全子会社とする6
2021 年 11 月 IHS Markit の CDS Indices Primer 「OSSTRA (formerly MarkitSERV)」と書く(綴りは原文のまま)18
2025 年 10 月 10 日 OSTTRA の報道発表 OSTTRA は 2021 年に CME Group と S&P Global の合弁事業として設立され、KKR の運用するファンドが取得を完了した19

2012 年 8 月の資料が共同所有、2015 年 2 月の資料が完全子会社なので、その間に DTCC の持分が Markit に移ったことは分かります。

OSTTRA は、自社を MarkitServ、Traiana、TriOptima、Reset の 4 つの事業を合わせたものと説明しています。自社の沿革では、MarkitServ が金利と信用の市場を紙の手順から電子のアファメーションと確認へ移すのに重要な役割を果たしたとしています20。

OSTTRA は、旧名称を新しい名称に置き換える作業も案内しています。置き換えの表では、MarkitSERV と Markit は OSTTRA に、MarkitWire と TradeServ は OSTTRA Connect に、SwapsWire は Wire に、画面や書類の表示を変えます。両方の表示があって区別が要るときは、MarkitWire と TradeServ をそれぞれ Wire と Serv にします。置き換えは、2026 年 8 月 14 日の試験環境の更新と、同年 8 月 29 日の本番の更新から始めるとされ、表示だけの変更で、業務の手順や接続は変わらないと案内されています21。表の旧名称は、各資料の時点の名前です。

OSTTRA の提供範囲

2026 年 10 月 8 日時点の OSTTRA の説明では、取引処理のサービスは次の 5 つの手順です4。

手順 OSTTRA が説明する内容
承認(affirm) ブローカー、ディーラー、取引の場から送られた取引を、次の処理に進めるために受け入れる
確認(confirm) 取引の条件をマッチングか承認で確認する
割り当て(allocate) 資産運用会社などが、取引の割り当てを、ファンドや口座の単位で確認する
清算(clear) 取引を、清算機関へ送る
報告(report) 取引の詳細を、取引情報蓄積機関へ送る

OSTTRA は、金利デリバティブの承認と確認を扱う中心のプラットフォームを OSTTRA Connect と説明しています5。2012 年と 2015 年の意見書は、金利、信用、株式、為替のデリバティブについて、取引処理、確認、マッチング、照合のサービスを提供すると書いています36。

DTCC は、Trade Information Warehouse を、信用デリバティブの記録の保管とライフサイクルの処理の仕組みと説明しています。同じページに、DTCC と OSTTRA が出している信用イベントの一覧が載っています22。

サービスの優劣、利用者の数、ほかの事業者のサービス、金利デリバティブ以外の資産クラスでの経路は、この記事では扱いません。

注

  1. 米国会計検査院(GAO)の GAO-07-716 の要約の段落("the credit derivatives backlogs increased dealers' operational risk by potentially allowing errors that could lead to losses or other problems to go undetected")。 ↩

  2. 米国会計検査院(GAO)の GAO-07-716 の「Two Factors Largely Caused the Confirmation Backlogs at Dealers」の最初の段落(確認書のファクス、手での突き合わせ、署名の返送)。人手が多い手順("resource intensive")と説明しています。 ↩

  3. MarkitSERV の欧州証券市場監督局への意見書(2012 年 8 月 5 日付)の 1 ページの注 1 と、「Introduction」の段落。MarkitSERV を DTCC と Markit の共同所有とする記述と、"offered also by various other providers"(ほかの事業者も提供)の記述。 ↩ ↩2 ↩3

  4. OSTTRA「Trade Processing」の説明文と、「Explore our Trade Processing Solutions」の Affirm、Confirm、Allocate、Clear、Report の各項。2026 年 10 月 8 日に確かめた。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8

  5. OSTTRA「For Interest Rate Derivatives」の冒頭の説明と、Trade Affirmation、Clearing Connectivity、Trade Reporting の各項。2026 年 10 月 8 日に確かめた。 ↩ ↩2

  6. Markit の欧州証券市場監督局への意見書(2015 年 2 月 13 日付)の 2 ページ目の本文と、注 3(MarkitSERV を "a wholly owned subsidiary of Markit Group Limited" とする)、注 4("affirmation/confirmation or matching")。 ↩ ↩2 ↩3

  7. 大手 14 社の書簡(2005 年 10 月 4 日付)1 ページの「Development of Metrics to Measure Industry Progress」の段落(取引量、確認、決済、不履行のデータを、各月末の 10 営業日後に提供する)。 ↩

  8. GAO-07-716 の Table 2("Number of Credit Derivatives Trade Confirmations Outstanding for 14 Major Dealers, September 2005"。出所は Markit Group のデータ)と、その直前の段落(9 月に約 130,000 件の取引)。 ↩ ↩2

  9. GAO-07-716 の「Two Factors Largely Caused the Confirmation Backlogs at Dealers」と、取引の増加を説明する段落(1 週間に結ぶ取引が 2004 年の 644 件から 2005 年の 1,450 件)。 ↩

  10. GAO-07-716 の、DTCC の自動確認の仕組みを説明する段落(2002 年に作業を開始、2003 年末に Deriv/SERV を開始、2004 年半ばに 15 社と 7 社の利用者、最大 85% が手作業、2005 年 9 月に最大 46%)。利用が広がらなかった理由(DTCC の職員の説明、あるヘッジファンドの職員の話)も同じ段落にある。 ↩ ↩2 ↩3

  11. ニューヨーク連邦準備銀行「Statement Regarding Meeting on Credit Derivatives」(2005 年 9 月 15 日)。 ↩

  12. ニューヨーク連邦準備銀行「Statement Regarding Developments in the Credit Derivatives Markets」(2005 年 10 月 5 日)と、大手 14 社の書簡(2005 年 10 月 4 日付)の 2 ページ(30% の削減、DTCC の利用、顧客の登録、T+5)。顧客の範囲と期限は書簡の 3 ページ。 ↩

  13. GAO-07-716 の、「Since the initial meeting in September 2005」の段落(153,860 件から 37,306 件)、要約の段落(30 日超の 94% 減)、Figure 4 の説明(46% から 85%)、2006 年 10 月末の段落(約 90%、約 94%、84%)。 ↩ ↩2

  14. GAO-07-716 の、"DTCC launched the warehouse in November 2006" の段落。 ↩

  15. ニューヨーク連邦準備銀行「Commitments to further strengthen the operational infrastructure for OTC derivatives」(2009 年 6 月 2 日)の 11 ページ、金利デリバティブの表の説明欄(2008 年 9 月の 54% と 87%)。 ↩

  16. GAO-07-716 の、"to require their active clients to use it or a comparable automated system, such as SwapsWire, by mid-January 2006" の段落。 ↩

  17. IHS Markit「CDS Indices Primer」(2021 年版)の、市場参加者を説明する節("OSSTRA (formerly MarkitSERV)"。原文の綴りは OSSTRA)。 ↩

  18. OSTTRA「KKR Completes Acquisition of OSTTRA from S&P Global and CME Group」(2025 年 10 月 10 日付)の本文と、"About OSTTRA" の段落。 ↩

  19. OSTTRA「About us」の、4 つの事業を合わせたことと、MarkitServ の位置づけの段落。2026 年 10 月 8 日に確かめた。 ↩

  20. OSTTRA「OSTTRA Trade Manager interface renaming reference guide」の、日程(2026 年 8 月 14 日に試験環境、8 月 29 日に本番)、影響(表示だけの変更)、旧名称と新名称の対応表。2026 年 10 月 8 日に確かめた。 ↩

  21. DTCC「Trade Information Warehouse」の冒頭の説明と、"DTCC OSTTRA Event Processing" の 2 つの資料の項。2026 年 10 月 8 日に確かめた。 ↩