約定のあとには、割当とギブアップ、ポートフォリオの照合、証拠金の交換と紛争の管理、コンプレッションの業務があります。取引後の業務を担当するオペレーション、担保管理、システムの担当者は、これらを外部の事業者のサービスで行うことがあります。

「取引後の効率化サービス」は、4 つの役割をまとめた呼び名で、効率が上がるという評価を含みません。

4 つの役割とサービス

サービスの名前、提供範囲、運営者は、公式の資料に基づきます。

役割 サービスが受け持つ手順 取り上げるサービス
割当とギブアップ ブロックの取引をファンドなどの口座別に割り当て、引き渡し先と突き合わせる OSTTRA の Give Up Messaging
ポートフォリオの照合 取引の主な条件と時価を取引相手と突き合わせ、食い違いを解決する OSTTRA の triResolve
証拠金の交換と紛争の管理 証拠金の請求と受け入れを交換し、食い違いを紛争として管理する Acadia、OSTTRA の triResolve Margin
コンプレッション 参加者が持ち寄った取引を一斉に解約し、想定元本と件数を減らす OSTTRA の triReduce、Quantile

OSTTRA は、MarkitServ、Traiana、TriOptima、Reset の 4 つの事業を合わせて 2021 年に発足しました。OSTTRA は、Traiana を FX のプライムブローカレッジの取引後の基盤を作った事業、TriOptima を多国間のコンプレッションを先導した事業と紹介しています1。沿革と運営者の変遷、約定後の電子確認のサービスは、約定後の電子確認と照合のサービスで扱います。

割当とギブアップ

この役割で取り上げるサービスは、Traiana の基盤の Give Up Messaging です。資産運用会社が複数のファンドの分をまとめて執行すると、約定のあとに、ファンドの口座ごとの取引へ割り当てます。執行したブローカーから、資産運用会社が指定する別のブローカーへ取引を引き渡すことが、ギブアップです。引き渡しの受け手を、OSTTRA の資料は Prime Broker(プライムブローカー)と呼びます。ブロックと割当の両方の水準の内容を引き渡し先へ送る形と、ギブアップを通して割り当てる形があり、割当とギブアップのどちらが先かは、一つに決まっていません。

サービス 提供範囲
OSTTRA の Give Up Messaging ブロックと割当の取引の内容を、プライムブローカーとスワップの提供者へ送り、受け手が突き合わせる2
OSTTRA の Trade Processing の割当 割当の突き合わせ、処理、不一致の管理3

Give Up Messaging は、執行ブローカー、投資運用会社、取引の場が送り手になり、一致すると投資運用会社へ確認が返ります。FX、エクイティ・スワップ、CFD に特に力点を置くサービスです2。Trade Processing の割当は Traiana の Harmony と Clientlink を含み、投資運用会社が取引相手と相対で、または複数のプライムブローカーへのギブアップを通して、約定後に割り当てます。FX では、Harmony がプライムブローカー、執行ブローカー、顧客のあいだのギブアップを支え、割当の処理は取引の前と後の両方にわたります3。運営者はどちらも OSTTRA です。

ポートフォリオの照合

この役割で取り上げるサービスは、OSTTRA の triResolve です。取引の主な条件と毎日の時価を取引相手と突き合わせ、データの送付から、食い違いの解決までを受け持ちます4。

triResolve の対象は、相対、清算、社内、取引所取引、プライムブローカレッジ、クライアント清算の取引と、担保残高、キャッシュフローです。手順は、データの送付、正規化と照合、取引相手と同じ結果を見ること、食い違いの解決の順です。取引情報蓄積機関への報告データの検証と照合もあり、報告先の制度の一覧に、米国の Dodd-Frank 法、EMIR、スイス、豪州、香港、日本、シンガポールなどが挙がります4。運営者は OSTTRA です。

2022 年 7 月 6 日付の OSTTRA の発表では、MarkitWire で確認された取引を triResolve へ直接届ける接続が示されました。利用者が有効にすると、MarkitWire の取引 ID で、FpML の取引の表現を triResolve の既存のデータに結びつけます5。

証拠金の交換と紛争の管理

この役割で取り上げるサービスは、Acadia のサービスと、OSTTRA の triResolve Margin です。運営者は、Acadia が LSEG(London Stock Exchange Group plc)、triResolve Margin が OSTTRA です。LSEG は 2023 年 3 月末に Acadia の取得を完了しました6。

サービス 対象 受け持つ手順
Acadia の Agreement Manager 担保契約のデータ 取引相手との突き合わせと、確認された契約の記録7
Acadia の IM Exposure Manager 当初証拠金と感応度。ISDA SIMM とスケジュール方式 中央での算出、照合、紛争の解決、SIMM のデータ(CRIF)の当日の再提出に伴う再計算8
Acadia の Margin Manager 相対の OTC、清算された OTC、取引所取引のデリバティブ、レポ、証券の貸借などの契約 証拠金の請求と受け入れのメッセージ、紛争の解決、監査証跡9
OSTTRA の triResolve Margin 変動証拠金と当初証拠金。清算取引と取引所取引の証拠金も含む 請求の計算と交換(Acadia との接続を含む)、データの品質の確認、紛争の解決の道具10

triResolve Margin は、取引相手の評価との比較をデータの品質の確認に含みます。ほかに担保の選択と記帳、SWIFT による担保の支払いの指示、清算ブローカーなどへの接続もあります10。

Acadia には、ほかに Collateral Manager、Payments Manager、Settlement Manager などがあります11。

SIMM のファイルについて、OSTTRA の triCalculate の Initial Margin Analytics は、IM Exposure Manager へ直接送る接続を持ちます。triResolve Margin との接続もあります12。

コンプレッション

この役割で取り上げるサービスは、OSTTRA の triReduce と、LSEG の Quantile の Interest Rate Compression です。LSEG は、2022 年 11 月 30 日に Quantile Group Limited を取得しました13。

サービス 対象 受け持つ手順
OSTTRA の triReduce 清算する取引と清算しない取引の OTC デリバティブ サイクルの単位で、総想定元本と明細の件数を減らす。清算機関と連携するものがある14
Quantile の Interest Rate Compression 金利。複数の通貨を同時に対象にできる リスクの全体と時価を保ったまま、総想定元本と取引件数を減らす15

triReduce のサイクルは、金利スワップ、インフレ、通貨スワップ、CDS、FX フォワード、コモディティ・スワップにあります。FX は NDF と貴金属も扱います14。

Quantile の手順は、参加者と中央の当事者(資料は central parties)がデータを送って制約を設定します。解約する取引、残る取引、リスクを置き換える取引の案が出て、参加者が受け入れると清算機関で実行されます。同じグループ内の部署や法人のあいだの社内のコンプレッションもあります15。Quantile には、ほかに当初証拠金の最適化と資本の最適化のサービスがあります16。

不一致の例と役割の位置づけ

資産運用会社の J 社が、K 銀行で、想定元本 30 億円の FX フォワードを 1 つの注文で執行する架空の例で考えます。J 社は、ブロックの取引と、ファンド 1 に 20 億円、ファンド 2 に 10 億円の割当の内容を、J 社が指定した L 銀行へ送って引き渡します。割当の突き合わせで、J 社の通知ではファンド 2 が 10 億円、L 銀行の記録では 8 億円だったとします。数字が一致しません。見つかったあとの扱いは、サービスや契約で決まります。

割当が一致した取引は、そのあとの日々の照合で、条件と時価が取引相手と突き合わされます。triResolve Margin は、証拠金の請求の食い違いを紛争として解決する道具を持ちます。コンプレッションは、サイクルの単位で参加者が取引を持ち寄って行います。

割当とギブアップ照合証拠金の交換コンプレッション割当と引き渡しを突き合わせる条件と時価を持ち寄り突き合わせる証拠金の請求と受け入れを交換する食い違いを紛争として管理する取引を持ち寄り一斉に解約する
図 1取引後の 4 つの役割が、1 件の取引に対して働く順の一例
図の説明

割当と引き渡しの突き合わせから、紛争としての管理までは、1 件の取引が通る順の一例です。コンプレッションは、参加者が取引を持ち寄って行うため、ほかの手順とつながりません。

資料で確かめられたサービスどうしの接続は 4 組です。triResolve Margin と Acadia は、証拠金の請求の交換でつながります。triCalculate は、SIMM のファイルを IM Exposure Manager へ送り、triResolve Margin と接続します。MarkitWire と triResolve は、確認された取引でつながります。

運営者の変更

日付 出来事 資料
2021 年 12 月 6 日 LSEG が、Quantile Group Limited の取得に合意したと発表した LSEG の発表17
2022 年 10 月 26 日 英国の競争・市場庁(CMA)が、LSEG による Quantile の取得を、競争上の実質的な懸念がないとして承認した CMA の発表18
2022 年 11 月 30 日 LSEG の年次報告書が、Quantile の取得日とした LSEG の 2022 年の年次報告書13
2022 年 12 月 19 日 LSEG が、Acadia の取得に合意したと発表した。LSEG は 2018 年から Acadia の少数持分を持っていた LSEG の発表19
2023 年 3 月末 LSEG が、Acadia の取得を完了した LSEG の 2023 年 4 月 27 日付の取引報告6

サービスの優劣、利用者の数、シェア、費用、日本の金融機関が各サービスを使えるか、OSTTRA、Acadia、Quantile 以外の事業者のサービスは、この記事では扱いません。

注

  1. OSTTRA「About us」の、事業の位置づけの段落。 ↩

  2. OSTTRA「Give Up Messaging」の、Powered by Traiana の表示と冒頭の 2 つの段落。 ↩ ↩2

  3. OSTTRA「Trade Processing」の、冒頭の段落、Allocate の項、Coverage for Foreign Exchange の項。 ↩ ↩2

  4. OSTTRA「Portfolio Reconciliation」の、冒頭の段落、How it works の 4 つの手順、Coverage の表、Repository Reconciliation の一覧。 ↩ ↩2 ↩3

  5. OSTTRA「OSTTRA Streamlines Trade Reconciliation with Connectivity Between MarkitWire and triResolve」(2022 年 7 月 6 日付)の、本文の 2 つの段落。 ↩

  6. LSEG「London Stock Exchange Group plc: Q1 2023 Trading Update」(2023 年 4 月 27 日付)の、Acadia の取得完了の段落。 ↩ ↩2

  7. LSEG「Agreement Manager」の、冒頭の段落。 ↩

  8. LSEG「IM Exposure Manager (IMEM)」の、冒頭の段落と Features & benefits の項。 ↩

  9. LSEG「Margin Manager」の、冒頭の段落と、対象の契約の種類の文。 ↩

  10. OSTTRA「Collateral Management」の、Benefits、How it works、Included Services の項。 ↩ ↩2

  11. LSEG「Acadia」の、Our solutions の項。 ↩

  12. OSTTRA「Initial Margin Analytics」の、Benefits の Seamless connectivity の項。 ↩

  13. LSEG「London Stock Exchange Group plc Annual Report 2022」の、注 1 の取得事業の表(PDF の 168 ページ)。 ↩ ↩2

  14. OSTTRA「Portfolio Compression」の、冒頭の段落と Coverage の Rates、Foreign Exchange の項。 ↩ ↩2

  15. LSEG「Interest Rate Compression」の、冒頭の段落と How it works の 3 つの手順。 ↩ ↩2

  16. LSEG「Quantile」の、Our solutions の項。 ↩

  17. LSEG「LSEG to acquire Quantile Group Limited」(2021 年 12 月 6 日付)の、取得に合意した段落。 ↩

  18. 英国の競争・市場庁「CMA clears LSEG / Quantile merger」(2022 年 10 月 26 日付)の、承認の段落。 ↩

  19. LSEG「LSEG to acquire Acadia to enhance post trade offering」(2022 年 12 月 19 日付)の、取得に合意した段落と、2018 年からの少数持分の文。 ↩