返済予定のある借入の金利を固定したい企業と、その取引を引き受ける銀行は、借入の残高に合わせて想定元本を減らす金利スワップを組みます。

想定元本を借入の残高に合わせて減らす

償却型スワップは、想定元本が期間とともに減っていく金利スワップです。金利スワップの大半は想定元本が期間を通して一定ですが、元本を少しずつ返す借入の残高に合わせて、想定元本を減らしていくスワップもあります1。固定金利と変動金利を交換し、想定元本そのものを受け渡さない点は、想定元本が一定の金利スワップと同じです。基本の仕組みは金利スワップで扱います。

B 社が C 銀行から 100 億円を、期間 4 年、変動金利(上乗せの金利はないものとする)で借り、毎年の終わりに 25 億円ずつ返す架空の例で考えます。B 社は利払いを固定するため、A 銀行と、想定元本が借入の残高と同じように減る金利スワップを結びます。B 社は年 2% の固定金利を払い、変動金利を受け取ります。A 銀行はその逆です。

C 銀行貸し手B 社借り手A 銀行スワップの相手元本の返済変動金利変動金利固定金利 年 2%
図 1借入と償却型スワップの取引の流れ
図の説明

借入とスワップが B 社でつながる様子を示す図です。B 社は C 銀行には元本と変動金利の利息の両方を払い、A 銀行とのスワップでは利息だけを受け払いして元本は動きません。B 社がスワップで受け取る変動金利は、C 銀行に払う変動金利と同じ額で、打ち消し合います。B 社に残る負担は、A 銀行に払う固定金利だけです。

スワップの想定元本は、利息を計算する期間ごとに、その期間の借入の残高と同じ値にします。

期間 借入の残高(億円) スワップの想定元本(億円)
1 年目 100 100
2 年目 75 75
3 年目 50 50
4 年目 25 25

固定金利を払う側のキャッシュフロー

B 社がスワップで払う固定金利の利息は、固定金利が毎年 2% のままでも、想定元本に合わせて毎年減ります。1 年目は 100 億円 × 2% = 2 億円、4 年目は 25 億円 × 2% = 0.5 億円です。受け取る変動金利の利息は、その年の変動金利と想定元本で決まります。ここでは、変動金利が 1 年目 1%、2 年目 2%、3 年目 3%、4 年目 4% になったと仮定して、B 社のスワップのキャッシュフローを示します。

↑ 受取 ↓ 支払固定金利を払う B 社から見たスワップの受け払い1 年後2 年後3 年後4 年後+1 億円変動金利−2 億円固定金利+1.5 億円変動金利−1.5 億円固定金利+1.5 億円変動金利−1 億円固定金利+1 億円変動金利−0.5 億円固定金利
図 2B 社から見た償却型スワップのキャッシュフロー
図の説明

変動金利が 1 年目から順に 1%、2%、3%、4% になったと仮定したときの、固定金利を払う B 社のスワップの受け払いです。B 社は、固定金利の利息を、1 年後に 2 億円、2 年後に 1.5 億円、3 年後に 1 億円、4 年後に 0.5 億円払います。変動金利の利息は、1 年後に 1 億円、2 年後に 1.5 億円、3 年後に 1.5 億円、4 年後に 1 億円を受け取ります。固定金利の支払は想定元本に合わせて毎年同じ額ずつ減ります。

利払日ごとの受け払いを表にすると、次のとおりです。差し引きのプラスは B 社の受け取り、マイナスは B 社の支払です。利息は 1 年分ずつとして計算しています。実際の取引では、期間の長さを日数計算の慣行で数え、利払日を営業日の調整で決める点も、想定元本が一定の金利スワップと同じです2。

利払日 想定元本(億円) 変動金利(仮定) 受け取り:変動金利の利息(億円) 支払:固定金利の利息(億円) 差し引き(億円)
1 年後 100 1% 1 2 −1
2 年後 75 2% 1.5 1.5 0
3 年後 50 3% 1.5 1 0.5
4 年後 25 4% 1 0.5 0.5

変動金利が 4% になる 4 年目でも、想定元本が 25 億円のため変動金利の利息は 1 億円で、3 年目の 1.5 億円より少なくなります。この例では、固定金利を説明のため切りのよい 2% にしています。約定の時点で時価が 0 になる固定金利との差は、次の節で扱います。

固定金利の水準は想定元本の重みで決まる

約定の時点で時価が 0 になる固定金利 KK は、各期間のフォワードレート FiF_i の平均で、重みは想定元本と期間の長さと割引係数の積です3。期間の数を nn、ii 回目の期間の想定元本を QiQ_i、期間の長さ(年)を τi\tau_i、支払日の割引係数を DF(ti)DF(t_i) とすると、次の式になります。

K=∑i=1nQi τi Fi DF(ti)∑i=1nQi τi DF(ti)K = \frac{\sum_{i=1}^{n} Q_i \, \tau_i \, F_i \, DF(t_i)}{\sum_{i=1}^{n} Q_i \, \tau_i \, DF(t_i)}

想定元本がどの期間も同じなら、QiQ_i は分子と分母で打ち消し合い、想定元本が一定の金利スワップのパーレートの式になります4。フォワードレートと割引係数の求め方と、想定元本が一定のときの式は金利スワップの時価評価で扱います。

前の節と同じく、今のカーブから求めたフォワードレートが 1 年目から順に 1%、2%、3%、4% だとします。期間はどれも 1 年です。割引係数は、1 年後が 1 ÷ 1.01、2 年後がそれをさらに 1.02 で割った値というように、フォワードレートから順に求めます。償却型スワップと、想定元本が 100 億円で一定の 4 年のスワップについて、各期間の重みを比べると次の表になります5。

期間 フォワードレート 割引係数 償却型の想定元本(億円) 償却型の重み 想定元本が一定のときの重み
1 年目 1% 0.990099 100 41.0% 26.0%
2 年目 2% 0.970685 75 30.1% 25.5%
3 年目 3% 0.942413 50 19.5% 24.7%
4 年目 4% 0.906166 25 9.4% 23.8%

時価が 0 になる固定金利は、償却型スワップで 1.97%、想定元本が一定の 4 年のスワップで 2.46% です。償却型は、想定元本が大きく、金利の低い前半の期間に重みがかかるためです。割引係数を 1 とみなして手で確かめると、償却型は (100 × 1% + 75 × 2% + 50 × 3% + 25 × 4%) ÷ 250 = 2.0%、一定のほうは 4 つの金利の平均の 2.5% です。この例のようにフォワードレートが期間とともに上がるカーブでは、償却型の固定金利は同じ期間で想定元本が一定のスワップより低くなり、フォワードレートが期間とともに下がるカーブでは高くなります。

前の節の 2% は 1.97% をわずかに上回るため、固定金利を払う B 社から見た約定の時点の時価は −6,580,942 円です。

想定元本が残っている長さも、償却型では短くなります。ここでは、各期間の想定元本に期間の長さを掛けて足した値を最初の想定元本で割ったものを、平均の残存期間と呼びます。例では (100 + 75 + 50 + 25) ÷ 100 = 2.5 年で、期間 4 年の半分をやや超える長さです。借入の元本 25 億円ずつが返されるまでの年数(1〜4 年)を平均しても、同じ 2.5 年になります。

平均の残存期間が短いぶん、金利が動いたときの時価の変化も小さくなります。割引係数を変えずに、どの期間のフォワードレートも 0.01% 上がったとすると、固定金利を払う側の時価は、想定元本と期間の長さと割引係数を掛けて足した値の 0.01% だけ増えます。例では、償却型で 2,415,861 円、想定元本が一定の 4 年のスワップで 3,809,363 円です。固定金利を払う側は金利が上がると得をし、下がると損をします。固定金利を受け取る側はその逆です6。金利が 0.01%(1bp)動いたときの時価の変化を DV01 といいます。

借入の利払いを固定する使い方

元本を少しずつ返す変動金利の借入をしている企業は、借入の残高に合わせた償却型スワップで固定金利を払うと、利払いを固定金利の借入と同じ形にできます7。例の B 社では、C 銀行に払う変動金利を A 銀行から受け取る変動金利でまかなえるため、B 社の利払いは、変動金利がどう動いても毎年の残高の 2% になります。4 年間の利払いの合計は 2 + 1.5 + 1 + 0.5 = 5 億円です。

得になる場合と損になる場合を、変動金利が 4 年間同じ水準のままだった 2 つの場合で比べます。借入の残高の合計は 100 + 75 + 50 + 25 = 250 億円・年です。

4 年間の変動金利 スワップがない場合の利払いの合計(億円) スワップがある場合の利払いの合計(億円) スワップによる差(億円)
ずっと 4% 10 5 5 少ない
ずっと 1% 2.5 5 2.5 多い

変動金利が高いままなら、B 社はスワップにより利払いが 5 億円少なくなります。反対に変動金利が低いままなら、スワップがなければ 2.5 億円で済んだ利払いが 5 億円になり、2.5 億円多く払います。償却型スワップも、想定元本が一定の金利スワップと同じく、利払いの額を固定する代わりに、金利が下がったときに利払いが減る利点を手放します。

想定元本が一定のスワップで元本を返す借入の利払いを固定しようとすると、2 年目からはスワップの想定元本が借入の残高を上回ります。例では、想定元本 100 億円のスワップに対して、残高は 2 年目 75 億円、3 年目 50 億円、4 年目 25 億円です。上回った分は借入と対応しないため、その分のスワップの損益が金利の動きに応じて残ります。

期限前返済と残るリスク

借入を予定より早く返すと、借入の残高とスワップの想定元本がずれます。想定元本の減り方は取引の始めに契約で決めるため、借入を早く返しても、契約を変えなければスワップの想定元本は予定どおりに減ります。たとえば B 社が 2 年目の終わりに残りの 50 億円をすべて返すと、3 年目の想定元本 50 億円と 4 年目の 25 億円のスワップは、対応する借入がないまま残ります。残ったスワップは、借入のない固定金利を払う金利スワップと同じです。

その時価は、残りの期間のフォワードレートから求めた、時価が 0 になる固定金利と、固定金利 2% の比較で決まります。時価が 0 になる固定金利が 2% より低ければ、B 社から見た時価はマイナスで、スワップを途中で終えるには、B 社が A 銀行に時価にあたる額を払うことになります8。2% より高ければ時価はプラスで、B 社が時価にあたる額を受け取る側になります。例のカーブが変わらなければ、残る 3 年目と 4 年目のフォワードレートは 3% と 4% で 2% より高いため、B 社から見た時価はプラスです。

取引の相手の信用リスクがあることも、想定元本が一定の金利スワップと同じです。想定元本そのものは受け渡さないため、信用リスクは、貸出のように元本を受け渡す取引より小さくなります。損失が出うるのは、自分から見て時価がプラスのスワップで、相手が債務不履行になったときです6。

取引の実務

清算機関の日本証券クリアリング機構(JSCC)は、清算する円の金利スワップの条件の 1 つとして、想定元本が一定であるか、取引の開始時に想定元本の減らし方か増やし方を決めて期中に変えないことを求めています。想定元本は 1 円以上 4 兆円未満であることも条件です9。取引の開始時に減らし方を決め、期中に変えない償却型スワップは、この想定元本の条件を満たします。清算の対象になるには、スワップの種類や契約期間など、ほかの条件も満たす必要があります。

想定元本の形による違い

想定元本の動き方で、金利スワップは次のように分かれます。想定元本が期間とともに増えていくものをアクリーティング・スワップといい、事業の成長に合わせて借入を増やしていく見込みの企業が使う例があります11。

種類 想定元本の動き 主な使い方
想定元本が一定の金利スワップ 期間を通して同じ 期間を通して残高が変わらない借入の利払いを固定する。金利スワップの大半はこの形
償却型スワップ 取引の開始時に決めた予定に沿って減る 元本を少しずつ返す借入の残高に合わせて利払いを固定する
アクリーティング・スワップ 取引の開始時に決めた予定に沿って増える 借入を段階的に増やしていく予定に合わせて利払いを固定する

注

  1. Society of Actuaries "Interest Rate Swaps"(2017 年 5 月)の 2 章 "Definitions"(4 ページ)。10 章 "Glossary"(31 ページ)にも同じ定義があります。 ↩

  2. 日本証券クリアリング機構「清算対象取引(金利スワップ)」の「11.日数計算式」と「12.営業日調整」。資料は、清算する取引の条件として、日数計算式と営業日調整が ISDA 定義集に定義されたものであることを求めています。2026 年 9 月 25 日に確かめた内容です。 ↩

  3. Society of Actuaries "Interest Rate Swaps" の 3 章 "General Formula" の式 (3.7)(10 ページ)。資料の QtiQ_{t_i} は想定元本、ff はフォワードレート、PtiP_{t_i} は割引債の価格で、本文の QiQ_i、τiFi\tau_i F_i、DF(ti)DF(t_i) にあたります。資料の f∗f^{*} は決済期間の実効金利で、期間の長さが等しいとき、本文の τiK\tau_i K が資料の固定金利 RR にあたります。 ↩ ↩2

  4. 同じ資料の 3 章の Example 3 の後(10 ページ)と 4 章 "Special Formula"(11 ページ)。想定元本が一定なら、式 (3.7) の分子と分母で想定元本が打ち消し合うとしています。 ↩

  5. 割引係数と重みは丸めた値で表示し、固定金利(1.9728% と 2.4632%)、時価、時価の変化は丸める前の値から計算しています。割引係数は DF(ti)=DF(ti−1)÷(1+Fi)DF(t_i) = DF(t_{i-1}) \div (1 + F_i)、DF(t0)=1DF(t_0) = 1 で求めました。時価は、想定元本を億円で表した ∑Qi(Fi−2%)DF(ti)\sum Q_i (F_i - 2\%) DF(t_i) を円に直して四捨五入した値です。 ↩

  6. Board of Governors of the Federal Reserve System "Trading and Capital-Markets Activities Manual" の Section 4325.1 "Interest-Rate Swaps" の "Credit Risk"(2001 年 4 月の版の Page 10〜11)。 ↩ ↩2

  7. Society of Actuaries "Interest Rate Swaps"(2017 年 5 月)の 8 章 "Exercises" の問題 7(19〜20 ページ)と、9 章の解答(26 ページ)。元本を返す変動金利の借入に amortizing interest rate swap を組み合わせる例です。 ↩

  8. Society of Actuaries "Interest Rate Swaps"(2017 年 5 月)の 6 章 "Market Value"(15 ページ)の脚注 8。資料は、スワップは一方の当事者が相手に時価を払うことで途中で終えられるとしています。 ↩

  9. 日本証券クリアリング機構「清算対象取引(金利スワップ)」の「10.想定元本」。ほかに「3.スワップの種類」「4.変動金利の種類」「8.契約期間」などの条件があります。2026 年 9 月 25 日に確かめた内容です。 ↩

  10. 企業会計基準委員会 企業会計基準第 10 号「金融商品に関する会計基準」の注 14「金利スワップについて」と、結論の背景の第 107 項。2026 年 9 月 25 日に確かめた版(会計基準検索システムの最終更新日 2026 年 7 月 17 日)です。 ↩

  11. Society of Actuaries "Interest Rate Swaps"(2017 年 5 月)の 2 章 "Definitions"(4 ページ)と脚注 4。資料は、想定元本が期間とともに増えるスワップを accreting swap と呼び、その理由の例として、事業の急な成長を見込み、成長に合わせて借入を増やす必要がある企業を挙げています。 ↩