金利先物は、将来の借入れの金利を今のうちに決めたい企業と、先物の価格から将来の金利の水準を読む金融機関の両方が使います。

「100 − 金利」で表す価格

金利先物は、将来の決まった期間の短期金利を今の時点で売買する先物取引です。主な商品は、どれも 3 か月間の金利を対象にします。大阪取引所の TONA3か月金利先物は、日本銀行が公表する TONA(無担保コール翌日物金利)を 3 か月間、日次で複利にして年率に直した金利を対象にします。価格は、その金利を 100 から引いた値です1。TONA は、金融機関どうしが担保なしで今日借りて翌日返す資金の金利です2。算出と公表の仕組みは TONA で扱います。

架空の例で考えます。ある限月の金利先物の価格が 99.000 なら、その限月が対象にする 3 か月間の金利を年 1.000% として取引していることになります。価格が 98.500 なら年 1.500%、99.500 なら年 0.500% です。対象の 3 か月間が終わって実際の金利が決まると、その金利から最終決済価格が決まり、約定した価格との差が先物を買った人と売った人の最終的な損益になります。

対象になる 3 か月間を金利参照期間といいます。大阪取引所の TONA3か月金利先物では、3 月、6 月、9 月、12 月の第 3 水曜日から、3 か月後の第 3 水曜日の前日までです。限月の名前は、金利参照期間が始まる月で付けます。たとえば 9 月限は、9 月の第 3 水曜日から 12 月の第 3 水曜日の前日までの金利を対象にします。取引最終日は、原則として金利参照期間が終わる日(3 か月後の第 3 水曜日の前日。休業日に当たるときは前の営業日に繰り上げる)です3。

金利の動きと売り手・買い手の損益

価格を「100 − 金利」で表すため、金利が上がると先物の価格は下がり、金利が下がると価格は上がります。東京金融取引所の TONA3ヵ月金利先物も、価格を債券と同様に 100 − 金利で表示します2。金利先物では「100 − 金利」の値に対して注文を出す慣行があり、この表し方を IMM 指数方式といいます4。IMM(International Monetary Market)は、米国の CME(Chicago Mercantile Exchange)が 1972 年に開設した市場の名前です5。

損益の大きさは、金利 0.01%(1bp)あたりの金額で決まります。大阪取引所の TONA3か月金利先物は、1 単位の取引金額が、価格に 25 万円を掛けた額です。価格の 1(金利の 1%)が、額面 1 億円を 3 か月(0.25 年)借りたときの利息 25 万円に当たるように決めてあります4。そのため価格が 0.01 動くと 1 単位の損益は 2,500 円動き、東京金融取引所の TONA3ヵ月金利先物も 1bp の値は 2,500 円です2。価格 99.000 で 1 単位を売買した例の満期の損益は、次のとおりです。

対象期間の金利(年 %) 最終決済価格 売り手の損益(円) 買い手の損益(円)
0.500 99.500 −125,000 125,000
1.000 99.000 0 0
1.500 98.500 125,000 −125,000

金利が約定時の 1.000% より 0.5%(50bp)上がると、売り手は 50 × 2,500 円で 12 万 5,000 円の利益、買い手は同じ額の損失になります。金利が 0.5% 下がれば、損益はその逆です。売り手と買い手の損益を足すと、どの金利でも 0 になります。

−1.5−1.0−0.50.0+0.5+1.0+1.599損益(ポイント)最終決済価格(ポイント)利益損失損益分岐点 99
図 1金利先物を 99.000 で売った側の満期の損益
図の説明

金利先物を価格 99.000 で 1 単位売った側の、満期の損益を価格のポイントで表した図です。横軸は最終決済価格、縦軸は損益で、損益は価格が上がるほど同じ幅で減る直線です。価格が 99.000 のときに 0 になり、それより低い(金利が 1.000% より高い)と利益、高い(金利が低い)と損失になります。価格が 98.000(金利 2.000%)なら 1 ポイントの利益、100.000(金利 0%)なら 1 ポイントの損失で、1 ポイントは TONA3か月金利先物では 25 万円に当たります。先物の売り手は、金利が上がると得をします。

TONA・SOFR の先物と終了した先物

日本では、TONA をもとにした 3 か月の金利先物が、大阪取引所と東京金融取引所の両方に上場しています67。米国の CME には、SOFR(Secured Overnight Financing Rate)をもとにした 3 か月の金利先物があります8。SOFR は、米国債を担保にした翌日物の資金調達の費用を表す金利で、ニューヨーク連邦準備銀行(ニューヨーク連銀)が運営しています9。米ドルの指標金利の移行を進める代替参照金利委員会(ARRC)は、2022 年 5 月の公表で、SOFR 先物の取引が大きく伸びたことに触れています10。

商品名は、取引所ごとの表記(大阪取引所は「か月」、東京金融取引所は「ヵ月」)に合わせています。

商品 取引所 対象の金利 金利参照期間
TONA3か月金利先物 大阪取引所 TONA の 3 か月の日次の複利(実日数/365 で年率に直す) 3 月、6 月、9 月、12 月の第 3 水曜日から 3 か月
TONA3ヵ月金利先物 東京金融取引所 TONA の 3 か月の日次の複利(実日数/365 で年率に直す) 3 月、6 月、9 月、12 月の第 3 水曜日から 3 か月
Three-Month SOFR Futures CME SOFR の 3 か月の日次の複利(実日数/360 で年率に直す) 3 月、6 月、9 月、12 月の IMM 日(四半期ごとの水曜日)から次の IMM 日まで

表の日数計算と期間は、各取引所の資料と、CME が米国商品先物取引委員会(CFTC)に出した申請書で確かめられます632811。

翌日物の金利の複利ではなく、銀行間の 3 か月物の金利を対象にした金利先物もありました。東京金融取引所のユーロ円3ヵ月金利先物は、ユーロ円 TIBOR(Tokyo Interbank Offered Rate)の 3 か月物を対象にしていましたが1213、2024 年 6 月 28 日 15 時 30 分に取引を止めました14。ユーロ円 TIBOR そのものも 2024 年 12 月末で公表を停止しました15。

米国では、CME の Three-Month Eurodollar Futures(ユーロドル 3 か月金利先物)が、米ドルの LIBOR(London Interbank Offered Rate)16の 3 か月物を対象にしていました。CME は 2021 年 2 月に、LIBOR が終わるときには、残っているユーロドル先物の建玉を対応する SOFR 先物に移す規則の改正を CFTC に申請しました17。

複利の金利による最終決済

東京金融取引所の TONA3ヵ月金利先物の最終決済は、差金決済です。最終決済価格は、次の順に求めます2。

  1. 金利参照期間の営業日ごとに、TONA に適用日数を掛けて 365 で割り、その日の金利を求める(休日をはさむときは、同じ TONA を休日の分まで含めた日数に当てる)。
  2. 1 に 1 を足した値をすべて掛け合わせ、1 を引いて、期間の複利の金利を求める。
  3. 2 に「365 ÷ 期間の暦日の日数」を掛けて年率に直す。
  4. 百分率にして小数点以下第 4 位を四捨五入し、100 から引いた値を最終決済価格にする。

金利参照期間が 91 日で、毎日が営業日、TONA が毎日 1.000% だった場合の架空の例で考えます。期間の複利の金利は約 0.2496% で、年率に直すと約 1.0012% です。小数点以下第 4 位を四捨五入すると 1.001% になり、最終決済価格は 98.999 です。複利で積み上げるため、毎日の金利がすべて 1.000% でも、年率は単利の 1.000% よりわずかに高くなります。期間の終わりに日々の翌日物金利を複利で積み上げて利率を決める方法を後決め複利といいます。

満期まで待たずに損益が積み上がるのも、金利先物の特徴です。取引所の先物では、清算機関が、決済していない建玉を評価し直し、生じた損益を毎日清算します(値洗い)18。顧客が業者(金融商品取引業者)に委託して取引するときは、毎日の評価の損益は、その業者に預けた証拠金の計算に足し引きされます。損失で証拠金が必要な額を下回れば追加で預け、利益が出れば一定の範囲で引き出せます19。最終決済では、顧客と業者の間で最終決済価格と約定した価格の差にもとづく損益を受け払いします。途中で引き出した利益があればその分を差し引くため、顧客の最終的な損益は通算でこの差になります20。

将来の借入れの金利を決める

金利先物は、将来の借入れや運用の金利の変動に備えるヘッジに使われます。ヘッジでは、持っている、または持つ予定の資産や負債と、損益が反対に動く建玉を先物で持ちます22。金利が上がると損をする借り手は先物を売り、金利が下がると損をする、資金を運用する側は先物を買います。

A 社が、ある限月の金利参照期間と同じ 3 か月間に 1 億円を借りる予定の架空の例で考えます。借入れの利息はその期間の TONA を後決め複利にした金利で決まり、上乗せの金利はないものとします。A 社は今、その限月の金利先物を価格 99.000(金利 1.000%)で 1 単位売ります。利息は、簡単にするため期間を 0.25 年として計算します。

期間の金利(年 %) 借入れの利息(円) 先物の損益(円) 合わせた負担(円)
0.500 125,000 −125,000 250,000
1.000 250,000 0 250,000
1.500 375,000 125,000 250,000

金利が 1.500% に上がると、借入れの利息は 37 万 5,000 円に増えますが、先物で 12 万 5,000 円の利益が出て、合わせた負担は 25 万円(年 1.000%)です。一方で、金利が 0.500% に下がると、利息は 12 万 5,000 円で済むのに先物で同じ額の損失が出て、合わせた負担はやはり 25 万円です。金利が上がったときの負担増を避ける代わりに、金利が下がったときの得はなくなります23。企業がデリバティブをどう使うかは事業会社の利用で扱います。

TONA3ヵ月金利先物は、TONA を参照する店頭の円金利スワップのヘッジや代わりの取引に使われることが想定されています2。先物の価格は、将来の 3 か月ごとの金利が今いくらで取引されているかを示す指標にもなります2。6 月限が 99.500、9 月限が 99.400 の架空の例で考えます。6 月からの 3 か月の金利は 0.500%、9 月からの 3 か月の金利は 0.600% で取引されています。今の時点で決まる将来の期間の金利をフォワードレートといいます24。

先物で消えない差と資金負担

先物のヘッジには、ヘッジの対象と先物の値動きがずれるリスクが残ります。現物の金利と先物の価格の差(ベーシス)が思っていたより広がったり縮んだりすることをベーシスリスクといいます23。上の例では、借入れの金利の期間と基準を先物の金利参照期間とそろえたため、差が出ませんでした。実際の借入れでは、期間が先物の限月とずれたり、上乗せの金利が付いたりします。また、先物は 1 単位あたり 1bp で 2,500 円と決まっていて、利息の計算に使う実際の日数とは合わないため、同じ金額の利息をぴったり打ち消すとは限りません。

もう 1 つは資金の出入りです。先物の取引では、債務の履行を保証するための証拠金を預けることが義務づけられ、相場の変動によっては証拠金を追加で預ける必要があります18。上の例で金利が下がっていく途中では、A 社は借入れの利息がまだ減っていないうちに、値洗いの損失で足りなくなった証拠金を追加で預けることがあります。

FRA との違い

金利先物と FRA(金利先渡取引)は、どちらも将来の期間の金利を今決める取引です。先渡しと先物の違いは、将来の予約という点ではなく、取引所取引か相対取引かにあり、規格の標準化や値洗い、証拠金などの先物の制度はそこから生まれています25。次の表では、金利の取引に固有の違いを並べます。

項目 金利先物 FRA
取引の場 取引所(上場デリバティブ) 当事者どうしの相対(店頭デリバティブ)
条件の表し方 「100 − 金利」の価格で売買する 固定の金利(約定金利)を決める
金額と期間 1 単位の大きさと、四半期ごとの金利参照期間が決まっている 想定元本と期間を当事者どうしで決める
損益の受け払い 毎日の値洗いで損益を計算し、金利参照期間が終わってから最終決済価格と約定した価格の差で差金決済する 期間の始めに金利が決まった時点で、期間の終わりの利息の差を割り引いた額を 1 回だけ受け渡す

先物の欄は大阪取引所・東京金融取引所の規格32、FRA の欄はニューヨーク大学の講義資料の説明26にもとづきます。

注

  1. 大阪取引所「先物取引のすべて」の 21 ページ、「金利先物取引の仕組み」の「(1) 取引の対象」。 ↩

  2. 東京金融取引所「TONA3ヵ月金利先物」の「TONAとは」「TONA3ヵ月金利先物の商品概要」(取引単位、価格の表示方法、金利参照期間、最終決済、最終決済価格)、「TONA複利における日次累積複利および最終決済価格の計算方法」「TONA3ヵ月金利先物の活用方法」「OTC(店頭)円金利スワップ取引のヘッジツールとして」。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9

  3. 大阪取引所「先物取引のすべて」の 21 ページ、「金利先物取引の仕組み」の「(1) 取引の対象」と「(2) 限月取引及びその数」。 ↩ ↩2 ↩3

  4. 大阪取引所「先物取引のすべて」の 23 ページ、「(5) 取引単位、呼値及び制限値幅」の「①取引単位、呼値の単位」と「IMM指数方式」。 ↩ ↩2

  5. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 263 ページ、「Part 4 金融先物・オプション取引の用語」の「CME(Chicago Mercantile Exchange)」(「1972年にIMM(International Monetary Market)を開設して世界初の通貨先物取引を開始しました」)。 ↩

  6. 日本取引所グループ「商品一覧(先物・オプション)」の「金利」の行(「100 - TONA3か月金利(Act/365、%)」「TONA3か月金利先物」)。 ↩ ↩2

  7. 東京金融取引所「事業内容について」の「上場商品概要」。 ↩

  8. Chicago Mercantile Exchange Inc. の LIBOR フォールバック規定に関する申請書(2021 年 2 月 9 日)の「SOFR as Successor to USD LIBOR」(PDF の 4〜5 ページ目)。 ↩ ↩2

  9. Federal Reserve Bank of New York「Additional Information about Reference Rates Administered by the New York Fed」の「Information about the Treasury Repo Reference Rates」。SOFR の説明と、運営者としての説明を参照。 ↩

  10. Alternative Reference Rates Committee「ARRC Welcomes CME Group’s SOFR First for Options Announcement」(2022 年 5 月 5 日)の 1 ページ(「the impressive growth already seen in SOFR futures」)。 ↩

  11. Chicago Mercantile Exchange Inc. の申請書(2021 年 2 月 9 日)の注 32(PDF の 14 ページ目)。SOFR 先物の金利参照期間を「spanning from one Mar/Jun/Sep/Dec Quarterly IMM Wednesday to the next」と書いている。 ↩

  12. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 15 ページ、「金融取の金利先物等取引の概要」の表と、28 ページの「差金決済」の②。 ↩

  13. 日本銀行、金融庁「Review of JPY LIBOR Transition and Future Initiatives」(Bank of Japan Review 2022-E-4、2022 年 5 月)の 3 ページ(「the Tokyo Interbank Offered Rate (TIBOR)」)。TIBOR の英語の正式名称の出典。 ↩

  14. 東京金融取引所「ユーロ円3ヵ月金利先物の取引停止について」(2024 年 6 月 14 日)。 ↩

  15. 一般社団法人全銀協TIBOR運営機関「金利指標改革を踏まえた全銀協TIBORの現状および今後の展望」詳細説明資料(2026 年 6 月)の 1 ページの注(「同指標は2024年12月末をもって恒久的な公表停止に至っています」)。 ↩

  16. 日本銀行、金融庁「Review of JPY LIBOR Transition and Future Initiatives」(Bank of Japan Review 2022-E-4、2022 年 5 月)の 1 ページ(「The London Interbank Offered Rate (LIBOR)」)。LIBOR の英語の正式名称の出典。 ↩

  17. Chicago Mercantile Exchange Inc. の申請書(2021 年 2 月 9 日)の「Operation of USD LIBOR Fallbacks for CME Three-Month Eurodollar Futures」(PDF の 12 ページ目)と、提案した規則 45236.B.(PDF の 26 ページ目)。 ↩

  18. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 7〜8 ページ、「⑵ 取引所金融先物取引」のイ〜ト。 ↩ ↩2 ↩3

  19. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 24〜26 ページ、「③ 受託取引の証拠金」のイ(※2の「先物の計算上の損益」)、ハ、ホ。日本取引所グループ「顧客が差し入れる証拠金」(2023 年 11 月 2 日更新)の「受入証拠金の計算方法」「計算上の損益額」「計算上の利益の払出し」「証拠金の差入れ及び維持」。 ↩

  20. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 30 ページ、「b.金利先物等取引の最終決済の場合」と、28〜29 ページ「⑽ 顧客の決済に伴う金銭の授受」の a の※1(計算上の利益額を引き出しているときの調整。最終決済も同様とする)。 ↩

  21. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 27〜28 ページ、「⑼ 取引所・取引参加者間の金利先物等取引の最終決済」の「b.差金決済」①とその注記(「清算参加者と金融取の間および非清算参加者と清算参加者の間では」)。 ↩

  22. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 62 ページ、「8. 金融先物取引の利用法」の「⑴ へッジ取引」。 ↩

  23. 金融先物取引業協会「金融先物取引の知識」(2015 年)の 62〜64 ページ、「〔事例1-1〕借入れ金利についてのへッジ」。 ↩ ↩2

  24. 日本銀行金融機構局 金融高度化センター「スポットレートとその応用」(2012 年 8 月)の「4.インプライド・フォワード・レート」(12 ページ。「現時点のスポットレートの体系から、将来の金利の予測値を導くことが可能。」)。 ↩

  25. 日本取引所グループ「国債先物入門」(服部孝洋、2021 年)の「2. 3 先渡(フォワード)との違い:先物の本質は取引所取引」(4〜5 ページ)。 ↩

  26. Jennifer Carpenter "Forward Rate Agreements"(ニューヨーク大学スターン・スクールの講義資料)の 2 ページ。固定金利 f と想定元本 N の説明と、金利が分かった期間の始めに割り引いた額で決済するという説明。 ↩