ヘッジは、対象の損失を、ヘッジに使う商品や指数の損益で打ち消す方法です。両者が同じ動きをしなければ、打ち消されずに残る部分が出ます。商品先物では、手元の現物の価格と先物の価格の差(ベーシス)が、ヘッジを建ててから外すまでに想定外に広がったり縮んだりするリスクを指します1。天候、運賃、不動産、長寿のように、実際の損失や保有物と指数の連動がもとからずれる場面にも、同じ語を使います2345。

農家が天候デリバティブで、冷夏の損失 1,000 万円に備えて受け取りの上限を 800 万円に決める架空の例で考えます。損失が 1,000 万円出ても受け取りは 800 万円までなので、200 万円が残ります。損失が出ない年でも、指数が条件を満たせば受け取りが生じます。実際の損害が出ていなくても条件を満たせば補償金が支払われる、という説明が論文にあります6。残るのは損のほうだけではありません。

契約の条件を合わせても、ずれは完全には消えません。FFA では船の仕様や航路、不動産では物件の個別性や指数の公表の頻度、長寿スワップでは基金の受給者と指数の人口の違いが、ずれの理由として資料に挙がっています345。

注

  1. CFTC「CFTC Glossary」の「Basis」と「Basis Risk」の項("unexpected widening or narrowing of the basis between the time a hedge position is established and the time that it is lifted")。 ↩

  2. 環境省「保険会社(株式会社損害保険ジャパン)へのヒアリング結果要旨」の 1 ページ(「補償金と実際の損害額とにギャップが生じるリスク(ベーシスリスク)」)。 ↩

  3. Adland、Alizadeh「Explaining price differences between physical and derivative freight contracts」(2018 年)の 3 ページ(序論。船の仕様の違いと航路や運航の違いなどを挙げる)。 ↩ ↩2

  4. 不動産デリバティブ研究会「報告書」(2007 年 6 月)の脚注 30(「原資産価格とデリバティブ価格が乖離するリスク」。観測と公表の頻度の違い、不動産の個別性が理由)。 ↩ ↩2

  5. SOA「Managing Longevity Risk: A Solution to Consider」(2023 年 2 月)の "How a Longevity Swap Works"(インデックス型の長寿スワップは、実際の人口と指数の人口の違いによる "basis risk" が大きい)。 ↩ ↩2

  6. 横内絢子「農業経営における天候リスクマネジメント技術導入手法」(農業情報研究 16 巻 4 号、2007 年)の 228 ページ(「ヘッジ不完全」と「オーバーヘッジ」)。 ↩