日本銀行のワーキングペーパーは、2 つのファクター xtx_t のアフィン関数で短期金利を rt=ρ+x1t+x2tr_t = \rho + x_{1t} + x_{2t} と表し、ファクターがガウス過程に従い、リスクの市場価格もファクターのアフィン関数であるとする形を、アフィン・モデルの要素として示しています。この形では、無裁定の条件のもとで、TT か月物のゼロクーポンレートが yt,T(xt)=aT+bT′xty_{t,T}(x_t) = a_T + b_T' x_t と、ファクターのアフィン関数になります。aTa_T、bTb_T は、パラメーターと残存期間の関数です1。

割引債の価格は、利回りから P=e−TyP = e^{-T y}(連続複利の場合)と書けるため、ファクターの 1 次式の指数の形になります。ハル・ホワイト・モデルは、アフィン・モデルの 1 つで、満期 SS の割引債の価格は、時点 tt の短期金利 rr を使って A(t,S) eB(t,S) rA(t,S)\,e^{B(t,S)\,r} と書けます2。

平均回帰がない極端な場合(Itkin らの式で κ=0\kappa = 0)の架空の例で考えます。t=0t = 0、S=5S = 5 とします。B(t,S)=t−SB(t,S) = t - S なので B=−5B = -5 です。短期金利が 1 ポイント(0.01)上がると、価格は e−5×0.01=0.951e^{-5 \times 0.01} = 0.951 倍(約 4.9% 下落)になります。逆に 1 ポイント下がると、e5×0.01=1.051e^{5 \times 0.01} = 1.051 倍(約 5.1% 上昇)です。平均回帰の速さ κ\kappa が正の定数なら、B(t,S)=−(1−e−κ(S−t))/κB(t,S) = -(1 - e^{-\kappa(S-t)})/\kappa で、BB の大きさは S−tS - t より小さくなります。

2013 年の同じワーキングペーパーは、日米英の 2013 年 3 月までのデータで、ゼロ金利制約を考慮しないアフィン・モデルが、短期金利の長期的水準を過大に推計する強い傾向を示したと報告しています3。

注

  1. 一上響、上野陽一「ゼロ金利下におけるタームプレミアムの推計:日米英の長期金利の分析」(日本銀行ワーキングペーパー 13-J-6、2013 年 5 月)の 2.1 節(PDF 9〜10 ページ)、式 (1)〜(4)、(7)〜(9)。本文は、資料の式の記号を一部簡略にしています。資料はアフィン・モデルの解析解を Duffie と Kan(1996)によるものとして挙げています。 ↩

  2. Andrey Itkin、Dmitry Muravey「Semi-closed form prices of barrier options in the Hull-White model」(arXiv、2020 年 9 月 17 日版)の 3 ページ、式 (6)〜(7)。資料の記号 κ\kappa は、このサイトのハル・ホワイト・モデルの aa にあたります。 ↩

  3. 同ワーキングペーパーの要旨(PDF 2 ページ)。 ↩