架空の例として、ある銀行が、想定元本 50 億円、スプレッド 80bp(年 0.8%)、期間 5 年のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)でプロテクションを買い、プレミアムを 3 か月ごとに払います。1 年後のプレミアムの支払いの後に参照組織にクレジット・イベントが起き、現金決済で債務の価格が額面の 40% と決まりました。この銀行の CDS の損益はいくらですか。
理解度チェック: CDS
最終確認日: 2026年9月25日
下書きです。公開前の確認のために表示しています。
「CDS」の章の内容を確かめる 6 問の問題です。選択肢を選んで「回答する」を押すと、正解と解説が出ます。「正解と解説」を開いて、先に答えを見ることもできます。
問 1
正解と解説
正解: C
CDS の損益は 29 億 6,000 万円の利益です。1 回のプレミアムは 50 億円 × 0.8% ÷ 4 = 1,000 万円です。1 年間で 4 回払うので、払ったプレミアムの合計は 4,000 万円です。現金決済では、プロテクションの売り手が額面と債務の価格の差額を払います。受け取る額は 50 億円 ×(100% − 40%)= 30 億円です。損益は 30 億円 − 4,000 万円 = 29 億 6,000 万円です。イベントが起きた後は、プレミアムの支払いは続きません。
19 億 6,000 万円の利益は、債務の価格の 40% を受け取る額と取り違えた値です。受け取る額を 50 億円 × 40% = 20 億円と考えています。そこからプレミアムを引くと、20 億円 − 4,000 万円 = 19 億 6,000 万円です。売り手が払うのは、価格ではなく額面との差額です。29 億 9,000 万円の利益は、プレミアムを 1 回分しか引いていない値です。30 億円 − 1,000 万円 = 29 億 9,000 万円です。30 億 4,000 万円の利益は、プレミアムを受け取ると考えて足した値です。30 億円 + 4,000 万円 = 30 億 4,000 万円です。プレミアムは、プロテクションの買い手が売り手に払います。
5 年間クレジット・イベントが起きなければ、銀行は売り手から何も受け取りません。払ったプレミアムの 50 億円 × 0.8% × 5 年 = 2 億円が、CDS の損になります。
詳しくは: クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)
問 2
CDS の説明として、誤っているものはどれですか。
正解と解説
正解: B
誤っているのは、プロテクションの売り手が負う信用リスクに、取引の相手が破綻するリスクは含まれないという説明です。売り手は、参照組織の信用リスクに加えて、取引の相手が破綻するリスクも負います。
そのほかの説明は正しい内容です。スプレッドが上がると、今なら高いスプレッドがかかるプロテクションを低いスプレッドで持っている買い手は得になり、同じリスクを低いスプレッドで引き受けている売り手は損になります。CDS のプロテクションは、参照組織の債務を持っていなくても買うことも売ることもできます。CDS のクレジット・イベントの条件は、社債や貸出の契約で不履行とする条件と一般に同じではないため、ヘッジしたつもりの貸出に損失が出ても、CDS から支払いがないことがあります。
詳しくは: クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)
問 3
架空の例として、ある参照組織の債務のオークションで、第 1 段階の中値は 30、オープン・インタレストは 150 億円の売りでした。第 2 段階の買いの指値注文は、高い順に、32 で 40 億円、31 で 50 億円、29 で 80 億円、27 で 100 億円で、指値は額面 100 あたり、中値からの幅の上限にはかからないとします。最終価格はいくらになりますか。
正解と解説
正解: D
最終価格は 29 です。オープン・インタレストが売りのときは、高い買い注文から順に当てていき、全額が埋まったときの最後の注文の価格が最終価格になります。上から足すと、32 までで 40 億円、31 までで 90 億円、29 までで 170 億円です。150 億円に届くのは 29 の注文なので、最終価格は 29 です。この最終価格が、CDS の決済に使う回収率になります。プロテクションの売り手は、想定元本の(100 − 29)÷ 100 = 71% を払います。
32 は、最も高い買い注文の価格です。1 つ目の注文だけでは 40 億円で、150 億円に届きません。31 は、150 億円に届く前の最後の注文の価格です。30 は第 1 段階の中値で、中値がそのまま最終価格になるのは、オープン・インタレストが 0 のときです。
詳しくは: クレジット・イベントと決済
問 4
CDS の現物決済の説明として、正しいものはどれですか。
正解と解説
正解: C
現物決済では、買い手が参照組織を債務者とする債券や貸出債権などを売り手に渡し、売り手は額面の金額を払います。架空の例として、想定元本 10 億円の CDS で債務の価格が額面 100 に対して 25 になったとき、売り手は 10 億円を払い、2 億 5,000 万円の価値の債券を受け取るので、7 億 5,000 万円の損を負います。
売り手が債務を買い手に渡すとする選択肢は、受け渡しの向きが逆です。債務を渡すのはプロテクションの買い手で、売り手が払うのは額面の金額です。渡せる債務の範囲は契約で決めます。債券を持たずにプロテクションを買った人も、決済のために債券を市場で手に入れなければなりません。
詳しくは: クレジット・イベントと決済
問 5
架空の例として、想定元本 10 億円、満期 5 年で、プレミアムは四半期ごとの後払い(期間はどれも 0.25 年とみなす)の CDS を評価します。ハザード率は 2%、金利は連続複利で 1% で、回収率とともに満期まで一定で互いに関係しません。回収率を 40% から 60% に上げると、パー・スプレッドと RPV01(プレミアムが 1bp 違うときのプレミアム・レグの価値の差)はどうなりますか。
正解と解説
正解: A
パー・スプレッドは下がり、RPV01 は変わりません。プロテクション・レグが埋めるのは、額面から回収できる分を引いた損失です。回収率が高いほど、プロテクション・レグの価値は小さくなります。パー・スプレッドは、ハザード率と(1 − 回収率)にほぼ比例します。これをクレジット・トライアングルといい、式では です( はパー・スプレッド、 はハザード率、 は回収率)。回収率を 40% から 60% に上げると、(1 − 回収率)が 0.6 から 0.4 になり、パー・スプレッドは 3 分の 2 になります。この条件では、120.15bp から 80.10bp に下がります。
RPV01 は、プレミアムが 1bp 違うとプレミアム・レグの価値がいくら違うかを表します。プレミアム・レグの価値には回収率が入らないため、RPV01 は 463,727 円のまま変わりません。RPV01 が下がるとする選択肢は、回収率とハザード率を取り違えています。ハザード率を上げると生存確率が下がり、RPV01 は下がります。パー・スプレッドが上がるとする選択肢は、回収率を上げたときの向きが逆です。
回収率を 40% から 20% に下げると、(1 − 回収率)が 0.8 になり、パー・スプレッドは 160.20bp に上がります。
詳しくは: CDS の評価
問 6
架空の例として、100 社を等しい重みで束ねたCDS インデックスのプロテクションを、想定元本 50 億円、クーポン 100bp(年 1%)で買っています。構成銘柄の 1 社にクレジット・イベントが起き、判定日は利払日と同じ日で、次の利払日より前に終わったオークションで回収率は 40% と決まりました。このときの受け払いと以後のクーポンの計算で、正しいものはどれですか。
正解と解説
正解: B
売り手が 3,000 万円を払い、以後のクーポンは想定元本 49 億 5,000 万円で計算します。構成銘柄にクレジット・イベントが起きると、プロテクションの売り手は、その銘柄の重みの分の損失を払います。1 社の重みは 100 分の 1(1%)です。売り手が払う額は、50 億円 × 1% ×(1 − 40%)= 3,000 万円です。インデックスの管理会社は、その銘柄の重みを 0 にした新しいバージョンを公表し、取引の想定元本はその銘柄の重みの分だけ減ります。以後の想定元本は、50 億円 − 50 億円 × 1% = 49 億 5,000 万円です。次の利払日のクーポンは、49 億 5,000 万円 × 1% ÷ 4 = 1,237 万 5,000 円です。
5,000 万円を払うとする選択肢は、損失を(1 − 回収率)で減らさず、1 社の重みの分の想定元本をそのまま払うと考えています。50 億円 × 1% = 5,000 万円です。売り手が払うのは、回収率 40% で回収できる分を除いた損失です。想定元本 50 億円のまま計算するとする選択肢は、新しいバージョンで想定元本が減ることを見落としています。
プロテクションの買い手は、クレジット・イベントが起きなくても、構成銘柄の信用力の見方が良くなってスプレッドが狭まると、時価の損を負います。スプレッドが広がれば、時価の利益になります。
詳しくは: CDS インデックス(iTraxx、CDX)