架空の例として、S 社は参照組織 5 社に 20 億円ずつ貸し、5 社を束ねたファースト・トゥ・デフォルト(FTD)のプロテクションを想定元本 20 億円、期間 5 年、スプレッド年 7.8%(年 1 回払い)で買いました。回収率は 40% です。1 社は 3 年後の払いの直後に、もう 1 社は 4 年後にデフォルトしました。貸出の損失、FTD の補償、払ったスプレッドの合計はいくらですか。
理解度チェック: クレジットのエキゾチック
最終確認日: 2026年10月4日
下書きです。公開前の確認のために表示しています。
「クレジットのエキゾチック」の章の内容を確かめる 4 問の問題です。選択肢を選んで「回答する」を押すと、正解と解説が出ます。「正解と解説」を開いて、先に答えを見ることもできます。
問 1
正解と解説
正解: B
S 社の合計は 16 億 6,800 万円の損です。1 年分のスプレッドは 20 億円 × 7.8% = 1 億 5,600 万円で、3 年後までに 3 回払うので、払ったスプレッドは 4 億 6,800 万円です。1 社のデフォルトによる貸出の損失は 20 億円 ×(1 − 40%)= 12 億円で、2 社分では 24 億円です。FTD が補償するのは 1 社目の 12 億円だけで、取引は 1 社目のデフォルトで終わります。合計は −24 億円 + 12 億円 − 4 億 6,800 万円 = −16 億 6,800 万円です。
4 億 6,800 万円の損は、2 社目の損失も補償されると考えた値です。−24 億円 + 24 億円 − 4 億 6,800 万円 = −4 億 6,800 万円になります。FTD の補償は 1 社分で止まります。18 億 2,400 万円の損は、4 年後にもスプレッドを払うと考えた値です。−24 億円 + 12 億円 − 6 億 2,400 万円 = −18 億 2,400 万円になります。取引は 3 年後に終わっているため、4 年後の払いはありません。28 億 6,800 万円の損は、補償を受けないと考えた値です。−24 億円 − 4 億 6,800 万円 = −28 億 6,800 万円になります。
詳しくは: ファースト・トゥ・デフォルト
問 2
架空の例として、5 社の参照組織の 5 年のクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のスプレッドが、100bp、150bp、200bp、300bp、450bp です。この 5 社を束ねた FTD のスプレッドは、どの範囲に入りますか。
正解と解説
正解: C
FTD のスプレッドは、450bp 以上、1,200bp 以下です。下限は 5 社の中で最大の CDS のスプレッド(450bp)、上限は 5 社の CDS のスプレッドの合計(1,200bp)です。5 社のデフォルト相関が 0 のとき、スプレッドは合計に等しくなります。5 社が同時にデフォルトするときは、バスケットが実質 1 社と同じになり、スプレッドは最大の 1 社に等しくなります。FTD は、1 社ずつ CDS を買う場合の合計より安くなります。
100bp 以上とする選択肢は、下限を最小のスプレッドと取り違えています。450bp 以上、900bp 以下とする選択肢は、上限を最大の 2 倍(450bp × 2 = 900bp)と取り違えています。合計が上限です。240bp 以上、450bp 以下とする選択肢は、下限を 5 社の平均(1,200bp ÷ 5 = 240bp)と取り違え、上限を最大の 1 社にしています。合計という上限が抜けています。
詳しくは: ファースト・トゥ・デフォルト
問 3
架空の例として、参照組織 100 社の CDS を想定元本 10 億円ずつ(合計 1,000 億円)束ねたポートフォリオがあります。回収率は 40% です。このシンセティック CDOを、損失の範囲が 0〜5% のエクイティ(50 億円)、5〜15% のメザニン(100 億円)、15〜100% のシニア(850 億円)のトランシェに分けます。20 社が倒産したとき、メザニンの損失はいくらですか。
正解と解説
正解: A
メザニンの損失は 70 億円です。1 社が倒産するとポートフォリオの損失は 10 億円 ×(1 − 40%)= 6 億円です。20 社では 120 億円で、ポートフォリオの 12% にあたります。トランシェが損失を負い始める水準をアタッチメント・ポイントといいます。メザニンのアタッチメント・ポイントは 5%(50 億円)、損失が元本のすべてに達するデタッチメント・ポイントは 15%(150 億円)です。損失 120 億円のうち、最初の 50 億円はエクイティが負い、それを超える 120 億円 − 50 億円 = 70 億円がメザニンに当たります。シニアには損失が当たりません。
20 億円は、損失 120 億円からエクイティの 50 億円ではなく、メザニンの想定元本 100 億円を引いた値です。引くのはアタッチメント・ポイントの 50 億円です。30 億円は、デタッチメント・ポイント 150 億円までの残り(150 億円 − 120 億円)です。これは、メザニンがこの先に負う余地で、すでに負った額ではありません。100 億円は、メザニンの想定元本です。損失が 150 億円に達したときの値で、120 億円ではまだ元本のすべては失いません。
詳しくは: シンセティック CDO とトランシェ
問 4
シンセティック CDO のトランシェで、参照組織のデフォルトが同じ時期に重なりやすくなる(デフォルト相関が高くなる)とき、トランシェを引き受ける側(プロテクションの売り手)の価値は、エクイティとシニアでどう動きますか。
正解と解説
正解: D
引き受ける側の価値は、エクイティが上がり、シニアが下がります。相関が高いと、デフォルトがほとんど起きない場合も、多数が同時にデフォルトする場合も増えます。エクイティは最初の少数のデフォルトだけを負うため、デフォルトがほとんど起きない場合に得をする分が、多数がデフォルトする場合に損をする分より大きく、価値が上がります。シニアは、多数がデフォルトする場合にだけ損失が当たるため、その確率が上がると価値が下がります。メザニンには両方の影響があり、互いに打ち消し合います。
エクイティが下がるとする選択肢は、損失を最初に負うから相関が高いほど危ない、と考えた誤りです。どちらも上がるとする選択肢と、どちらも下がるとする選択肢は、2 つのトランシェに同じ向きの影響が出ると考えています。実際は、相関が倒産の起き方を偏らせる影響が、損失を負う順番によって違う向きに効きます。
詳しくは: シンセティック CDO とトランシェ