架空の例として、ある銀行の金利の持ち高の年限別の感応度は、1 年が +100 万円、5 年が +100 万円、10 年が −200 万円です。年限別の感応度は、その年限の金利だけを 1bp 上げたときの時価の変化です。ある日、1 年の金利は変わらず、5 年の金利が 4bp、10 年の金利が 8bp 上がりました。年限別の感応度で近似すると、この日の持ち高の時価の変化はいくらですか。
理解度チェック: リスクの計測
最終確認日: 2026年9月26日
下書きです。公開前の確認のために表示しています。
「リスクの計測」の章の内容を確かめる 6 問の問題です。選択肢を選んで「回答する」を押すと、正解と解説が出ます。「正解と解説」を開いて、先に答えを見ることもできます。
問 1
正解と解説
正解: C
時価の変化は −1,200 万円です。年限ごとに、感応度にその年限の金利の動き(bp)を掛けて足します。1 年は +100 × 0 = 0 万円です。5 年は +100 × 4 = +400 万円です。10 年は −200 × 8 = −1,600 万円です。合わせると 0 + 400 − 1,600 = −1,200 万円で、1,200 万円の損になります。
0 万円は、DV01 だけで見た値です。年限別の感応度の和は DV01 にほぼ等しく、この持ち高の DV01 は 100 + 100 − 200 = 0 なので、DV01 からは損益が出ないように見えます。年限ごとの金利の動きの違いは DV01 に表れません。この日は長い年限の金利ほど大きく上がり、イールドカーブの傾きが変わったため、損益が出ました。−1,600 万円は、10 年だけを数え、5 年の +400 万円を落とした値です。+1,200 万円は、損益の向きを取り違えた値です。
金利が逆に動き、5 年の金利が 4bp、10 年の金利が 8bp 下がった日なら、同じ計算で時価の変化は +1,200 万円で、1,200 万円の得になります。
問 2
ある銀行は、金利の持ち高の限度を、全年限の DV01 の合計だけでなく、年限別の感応度ごとにも置いています。年限別の感応度にも限度を置くことで、止められるようになる持ち高はどれですか。
正解と解説
正解: B
止められるようになるのは、DV01 の合計は小さくても、1 つの年限の金利に損益が偏った持ち高です。年限の違う持ち高どうしは、すべての金利が同じだけ動くときには打ち消し合うため、DV01 の合計は小さく見えます。年限別の感応度に限度を置くと、合計が小さくても、1 つの年限に偏った持ち高を止められます。ベガを満期と行使価格の格子で分けて限度を置くのも、同じ考え方です。
相関の高さは、年限別の感応度でも分かりません。違うリスクファクター(持ち高の価値を動かす要因)の感応度を足した値は、年限の違う金利どうしの相関(リスクファクターどうしの相関)を考えていないためです。相関は、感応度にリスクファクターの動きの大きさと相関を掛け合わせる VaR(バリュー・アット・リスク)の分散共分散法などで補います。
大きな動きで損益が膨らむことも、年限別の感応度では分かりません。感応度は小さな動きのときの 1 次の近似で、価格の曲がり方(凸性)をつかめないためです。大きな動きの損益は、ストレステストで評価し直して求めます。
問 3
正解と解説
正解: D
VaR の意味は、翌日の損失が 3,000 万円を超える確率を 1% と見積もったことです。VaR は、保有期間(損失を測る先の期間)と信頼水準(損失が VaR 以内に収まる確率)を決めて求めます。残りの 99% の日は、損失が 3,000 万円以内に収まるか、利益が出ます。100 営業日のうち 1 日ほどは、損失が 3,000 万円を超えると見込むことになります。
VaR は損失の上限ではありません。1% の確率で起きる、3,000 万円より大きな損失の大きさは、VaR には表れません。1% の確率で起きる大きな損失の平均、つまり VaR を超えたときの損失の平均を表すのは期待ショートフォールで、VaR とは別の量です。損失が出る確率を 1% とする読み方は、損失が出る日と VaR を超える日を取り違えています。VaR が 3,000 万円でも、3,000 万円より小さい損失はそれ以外の 99% の日にも出ます。
詳しくは: VaR
問 4
架空の例として、1 つ目の資産を 3 億円(日次のボラティリティ 1.0%)、2 つ目の資産を 5 億円(同 0.8%)持ち、2 つの資産の相関は 0 とします。損益は平均 0 の正規分布に従うとし、信頼水準 99% の係数は 2.326 とします。分散共分散法で求めた、保有期間 1 日、信頼水準 99% の VaR はいくらですか。
正解と解説
正解: A
VaR は約 1,163 万円です。3 億円は 30,000 万円、5 億円は 50,000 万円として計算します。1 つ目の資産の損益の標準偏差は、30,000 × 1.0% = 300 万円です。2 つ目の資産は、50,000 × 0.8% = 400 万円です。全体の損益の分散は、300 × 300 + 400 × 400 + 2 × 0 × 300 × 400 = 250,000 です。その平方根の 500 万円が、全体の損益の標準偏差です。VaR は、これに係数を掛けた 2.326 × 500 = 1,163 万円です。
約 1,628 万円は、資産ごとの VaR を足した値です。1 つ目の資産は 2.326 × 300 で約 698 万円、2 つ目の資産は 2.326 × 400 で約 930 万円で、足すと約 1,628 万円になります。これは相関が 1 のときの全体の VaR と同じです。相関が 1 より小さいと、2 つの資産の損失が同じ日に重なるとは限らないため、全体の VaR は資産ごとの VaR の合計より小さくなります。500 万円は、損益の標準偏差のままで、信頼水準の係数を掛け忘れた値です。
損益は平均 0 の正規分布として扱うため、同じ 1% の確率で、1,163 万円を超える利益も出ます。
詳しくは: VaR
問 5
架空の例として、ある持ち高の 1 日の損益を、等しく起こりうる 200 通りのシナリオで求めました。損失の大きい方から 6 個は、5,000、2,500、2,000、1,800、1,700、1,500 万円です。信頼水準 97.5% の VaR は、損失の大きい方から 5 番目の 1,700 万円です。同じ信頼水準の期待ショートフォールはいくらですか。
正解と解説
正解: C
期待ショートフォールは 2,600 万円です。200 通りの 2.5% は 5 通りなので、VaR を含めて、損失の大きい方から 5 個を平均します。5 個の和は 5,000 + 2,500 + 2,000 + 1,800 + 1,700 = 13,000 万円です。これを 5 で割って 2,600 万円になります。
1,700 万円は VaR そのものです。VaR は 5,000 万円の損失が出るシナリオがあることを映しませんが、期待ショートフォールは、この裾の損失を平均の形で取り込みます。約 2,417 万円は、6 番目の 1,500 万円まで入れて 6 個で平均した値です(14,500 ÷ 6)。平均するのは、信頼水準から決まる 5 個までです。2,825 万円は、VaR の 1,700 万円を除いて上の 4 個で平均した値です(11,300 ÷ 4)。「VaR を超えたときの損失の平均」といっても、標本の損益から求めるときは、損失の大きい方から 2.5% に当たる 5 通りを平均します。VaR の 1,700 万円もその 5 通りの 1 つなので、平均に入れます。
詳しくは: 期待ショートフォール
問 6
銀行の市場リスクの規制には、銀行が自分のモデルでリスクの量を求める内部モデル方式があります。トレーディング勘定の抜本的見直し(FRTB)で、内部モデル方式がリスクの量として使うことにしたものはどれですか。
正解と解説
正解: B
FRTB で使うことにしたのは、ストレス期間のデータで求めた、信頼水準 97.5% の期待ショートフォールです。バーゼル銀行監督委員会は、VaR が分布の裾の損失を捉えないことから、FRTB の内部モデル方式で期待ショートフォールを採用しました。それまでの VaR とストレス VaR の二重の枠組みは、ストレス期間のデータを使った期待ショートフォールに一本化しました。日本の告示も、内部モデル方式を使う銀行に、期待ショートフォールを片側 97.5% の信頼水準で日次に計算するよう定めています。
10 営業日以上の保有期間で求めた 99% の VaR は、1996 年 1 月に公表された、市場リスクを自己資本の規制の対象に含める改定で使い始めた量です。99% の VaR とストレス VaR の組は、2009 年 7 月に公表されたバーゼル 2.5 の枠組みです。ストレス VaR は、連続した 1 年のストレス期間のデータで求めた、片側 99% の VaR です。期待ショートフォールでも、FRTB の信頼水準は 99% ではなく 97.5% です。損益が正規分布なら、97.5% の期待ショートフォールは 99% の VaR とほぼ同じ大きさになります。
詳しくは: 期待ショートフォール