コモディティの先物で、期先(満期の遠い先物)ほど価格が低い並び(バックワーデーション)が現れやすいのは、どの場合ですか。
理解度チェック: コモディティ・デリバティブ
最終確認日: 2026年9月25日
下書きです。公開前の確認のために表示しています。
「コモディティ・デリバティブ」の章の内容を確かめる 6 問の問題です。選択肢を選んで「回答する」を押すと、正解と解説が出ます。「正解と解説」を開いて、先に答えを見ることもできます。
問 1
正解と解説
正解: D
在庫が少なく需給が引き締まっているときは、保管費用を払っても現物を持っておく価値が高く、現物を手元に持つ利点を利回りの形で表したコンビニエンス・イールドが高くなります。先物の価格は、現物の価格に資金の調達コストと保管費用を足し、この利点を引いた水準で決まるため、利点が大きいと期先の価格が低くなり、バックワーデーションが現れやすくなります。バックワーデーションは、資金の調達コストと保管費用の合計より、コンビニエンス・イールドのほうが大きいときに現れます。
限月の遠い(期先の)先物ほど価格が高い形をコンタンゴといいます。保管費用や資金の調達コストが上がると、先物の価格に足す額が増えるので、コンタンゴの向きに動きます。在庫が多く需給が緩んでいるときは、現物を持つ価値が低く、コンビニエンス・イールドも低いので、コンタンゴが現れやすくなります。
詳しくは: コモディティ・デリバティブの全体像
問 2
2020 年 4 月 20 日に、ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)のWTI 原油の、満期の最も近い(期近の)先物が、取引の始まった 1983 年以来初めてマイナスの価格を付けました。その背景として正しいものはどれですか。
正解と解説
正解: A
NYMEX の WTI 原油の先物は、満期まで持つとオクラホマ州クッシングで原油を受け渡す受渡決済の先物です。新型コロナウイルス感染症の広がりで原油の消費が急に減り、余った原油が貯蔵に回って、クッシングの貯蔵の余地が少なくなっていました。空いている貯蔵にもすでに契約済みのものがあるとみられ、貯蔵の契約のない先物の買い手が借りるには、高い費用がかかる状況でした。そのため、受渡しを避けたい買い手の一部が、相手にお金を払ってでも先物を売って手放しました。マイナスの価格では、売り手がお金を払い、買い手がお金を受け取ります。
月の平均価格で現金決済するのは、東京商品取引所のプラッツドバイ原油先物です。マイナスの価格は、取引最終日が近づいていた、2020 年 5 月に受け渡す限月の先物で起きました。2020 年 6 月に受け渡すブレント原油の先物は、4 月 21 日にプラスの価格で取引を終えました。WTI 原油の、取引最終日が遠い限月の先物も、プラスの価格でした。
先物の買い手は価格が下がると損失が出ます。価格が 0 を下回ると、買い手の損失は買った値段の全額より大きくなります。反対に、売り手は価格が下がれば利益が出て、価格が上がると損失が出ます。
詳しくは: エネルギー(原油、天然ガス)
問 3
ある小売電気事業者が、日本卸電力取引所(JEPX)のスポット市場で翌月に買う予定の電力について、同じエリアの東京商品取引所の電力先物(ベースロード)を買ってヘッジしました。スポット価格が上がっても下がっても、先物で固定した費用と実際の調達の費用のあいだに残る差の原因として正しいものはどれですか。
正解と解説
正解: C
先物で固定できるのは、対象のエリアで、期間を通して一定の量の電力を、期間の平均の価格で買う費用です。小売電気事業者の実際の需要は 30 分ごとに変わるため、需要の多い時間帯に価格も高いと、実際の調達の費用は平均の価格で計算した額より高くなります。最も少ない時間帯の量をベースロードで固定し、平日の 8 時〜20 時にそれを超える量を日中ロードで追加して固定することもできます。それでも、30 分ごとの需要の形との差は残ります。
東京商品取引所の電力先物は、JEPX のスポット市場の価格を対象にした現金決済の先物で、電力は動きません。スポット市場では、入札の締め切り後にすべての売りと買いを合わせて 1 つの約定価格を決め、参加者は自分の入札した価格によらずその価格で売買します。電力先物の最終決済価格は、対象のエリアプライスの平均です。先物の対象のエリアと実際に取引するエリアが違うと、市場分断でエリアごとの価格が分かれたときに、先物の受け払いとスポット市場の支払いが打ち消し合わない差が別に生じます。
詳しくは: 電力
問 4
架空の例として、貴金属の市場で、通貨(ドル)の借入金利が年 8%、金の貸出金利が年 3% だとします。貴金属の市場が、金と通貨を交換する先渡しやスワップの 1 年のスワップレートを見積もる考え方に沿うと、スワップレートはいくらですか。
正解と解説
正解: B
スワップレートは 5% です。貴金属の市場は、先渡しの価格を、通貨の金利から金属の金利を引いた差で見積もります。この例では 8% − 3% = 5% です。この 5% を日数で按分して現物の価格に足したものが、満期までの期間の先渡しの価格になります。
11% は、2 つの金利を足した値です。通貨の金利から金属の金利を引くので、足しません。8% は通貨の金利だけを見た値、3% は金属の金利だけを見た値で、どちらも 2 つの金利の差ではありません。なお、非鉄金属や外国為替では、現物の価格に足す「ポイント」で先渡しの価格を見積もりますが、貴金属の市場はこの形を使いません。
詳しくは: 金属
問 5
架空の例として、飼料を作る会社が、3 か月後にとうもろこし 50 トンを現物で買う予定で、とうもろこし先物 1 枚(50 トン)を 1 トンあたり 4 万円で買いました。3 か月後に先物の価格は 1 トンあたり 4 万 5,000 円になり、現物の購入価格は先物の価格に 1,000 円を足した値でした。先物の損益と現物の購入代金を合わせた負担はいくらですか(手数料は考えません)。
正解と解説
正解: C
合わせた負担は 205 万円です。現物の購入価格は 4 万 5,000 円 + 1,000 円 = 4 万 6,000 円で、購入代金は 4 万 6,000 円 × 50 トン = 230 万円です。先物では(4 万 5,000 円 − 4 万円)× 50 トン = 25 万円の利益が出るので、230 万円 − 25 万円 = 205 万円になります。
230 万円は、先物の損益を入れ忘れた値です。200 万円は、先物を買った 4 万円 × 50 トンがそのまま負担になると考えた値です。180 万円は、先物の利益を 50 万円と数えた値で、先物の損益は(先物の価格 − 買った価格)に 50 トンを掛けて求めます。
現物の購入価格と先物の価格の差(ベーシス)が変わると、負担も変わります。仮にベーシスが 3,000 円に広がると、現物の購入価格は 4 万 8,000 円、購入代金は 240 万円で、先物の利益 25 万円を引いた負担は 215 万円になります。ベーシスが縮めば、負担は 205 万円より小さくなります。ヘッジを建ててから外すまでにベーシスが想定外に変わるリスクを、ベーシスリスクと呼びます。
詳しくは: 農産物
問 6
架空の例として、EU ETS(EU の排出量取引制度)の対象事業者が、1 年後に排出枠が 5,000 トン分足りないと見込みました。EU の排出枠(EUA)の先物(1 枚 1,000 排出枠、満期は 1 年後)を 1 トン 50 ユーロで 5 枚買い、満期の価格は 1 トン 40 ユーロになりました。先物の受け払いと市場の購入費用を合わせた実質の費用はいくらですか(手数料と証拠金の利息は除く)。
正解と解説
正解: D
実質の費用は 25 万ユーロです。市場で買う費用は 40 ユーロ × 5,000 = 20 万ユーロです。先物の受け払いは、約定から受渡までの合計で(40 − 50)× 5,000 = −5 万ユーロとなり、5 万ユーロを払います。合わせて 20 万ユーロ + 5 万ユーロ = 25 万ユーロで、1 トンあたり 50 ユーロです。
20 万ユーロは、先物の受け払いを入れ忘れた値です。15 万ユーロは、先物で 5 万ユーロを受け取ると考えて、20 万ユーロから引いた値です。5 万ユーロは、先物の受け払いだけを見た値です。価格が下がったときは、先物を使わなければ 20 万ユーロで済んだので、その差の 5 万ユーロは先物を買った分の負担になります。反対に市場の価格が 60 ユーロに上がると、市場で買う費用は 30 万ユーロに増えますが、先物で(60 − 50)× 5,000 = 5 万ユーロを受け取り、実質の費用はやはり 25 万ユーロです。
詳しくは: 排出権