BMR は、ベンチマークを算出して提供する業務(担う者を管理者と呼びます)、金融機関などが入力データを提供する業務、ベンチマークを参照する契約や金融商品を扱う業務に関わる規則です。管理者は認可と登録、使う側は登録簿の確認とフォールバックの計画、EU の域外のベンチマークを使う者は同等性・承認・推奨で、この規則の条文を参照します。

何を求める規制か

BMR は、EU でベンチマークを算出する管理者、入力データを出す者、ベンチマークを使う者に、共通の枠組みを課す規則です。目的は、金融商品や金融契約で使う指標の正確さと完全性を保つことです1。規則の前文は、LIBOR と EURIBOR のような指標金利の操作の事例が、指標に利益相反がありうることを示した、と書いています。あわせて、裁量の余地と弱い統治が、操作されやすさを高めるとも書いています2。

ベンチマークの基本は指標金利とはで扱います。

規則の柱は、次の 5 つです。

柱 求めること 節
管理者 認可か登録を受け、統治と利益相反の管理の体制を持つ 管理者の認可と登録、統治とコントリビューターの行為
重要なベンチマークと重要度の高いベンチマーク(significant benchmark) 区分に応じて、より強い要件と監督を受ける 重要性による 2 つの区分
利用者 登録簿の確認、新しい参照の制限、ベンチマークが変わるか終わる場合の計画 使う側の義務
EU の域外のベンチマーク 同等性、承認、推奨のいずれかで EU で使う EU の域外のベンチマーク
終了するベンチマーク 欧州委員会や加盟国が、置き換えを法で定める 終了するベンチマークの置き換え

前文は、IOSCO の原則を、ベンチマークの規制要件の世界標準として考慮に入れる、と書いています3。

根拠と所管

BMR は、欧州議会と理事会の 2016 年 6 月 8 日付の規則 (EU) 2016/1011 です4。EU の規則なので、全加盟国に直接適用されます。規則は 8 つの Title に分かれます5。

Title 内容 条
I 目的、範囲、定義 第 1 条から第 3 条
II ベンチマークの完全性と信頼性(統治、入力データ、コントリビューター) 第 4 条から第 16 条
III ベンチマークの種類ごとの要件(重要なベンチマーク、重要度の高いベンチマーク、置き換えを含む) 第 17 条から第 25 条
IV 透明性と消費者保護 第 27 条、第 28 条
V EU でのベンチマークの利用(第三国のベンチマークを含む) 第 29 条から第 33 条
VI 管理者の認可、登録、監督 第 34 条から第 48n 条
VII 委任法令と実施法令 第 49 条、第 50 条
VIII 経過規定と最終規定 第 51 条から第 59 条

誰が何を担うかは、次のとおりです。

事項 担う者 根拠
管理者の認可と登録 管理者が所在する加盟国の所管当局。EU の重要なベンチマークの管理者と、推奨の申請は、欧州証券市場監督機構(ESMA) 第 34 条第 1 項、第 1a 項6
登録簿の維持 ESMA。公開する 第 36 条7
重要なベンチマークの一覧 欧州委員会が実施法令で作り、少なくとも 2 年ごとに見直す 第 20 条第 1 項8
重要なベンチマークの監督 EU 全体で重要なものは ESMA。1 つの加盟国で重要なものは、各国の所管当局 ESMA のページ9
第三国の管理者の承認の監督 ESMA 第 32 条10

ESMA のページは、2026 年 1 月 1 日から、ESMA が第三国のベンチマークの推奨を行う EU の管理者の監督も担い、第三国のベンチマークの管理者の窓口になる、と書いています9。

条文は 2026 年 10 月 5 日時点で公開されている版(2025 年の改正を反映した版)を確かめました。

対象になるベンチマークと者

BMR は、EU の中での、ベンチマークの提供、ベンチマークへの入力データのコントリビューション、ベンチマークの使用に適用されます11。

用語の範囲

規則の主な用語は、次のとおりです12。

用語 規則の意味
ベンチマーク 金融商品や金融契約の支払額か、金融商品の価値を決めるのに参照する指数
ベンチマークの提供 算出の仕組みを運営すること、入力データを集めて分析し処理すること、算式か評価で算出すること
ベンチマーク管理者 ベンチマークの提供を支配する者
コントリビューター 入力データの提供(コントリビューション)をする者。入力データの提供とは、管理者が自分では容易に手に入れられない入力データを出すこと
ベンチマークの使用 ベンチマークを参照する金融商品の発行、支払額の決定、金融契約の当事者になること、投資ファンドの成績の測定など
監督対象の事業体 規則が列挙する者(信用機関、投資会社、保険会社、認可か登録を受けた管理者など)

投資ファンドの成績を測る指数も、ベンチマークに含まれます。その指数に連動すること、資産配分を決めること、成功報酬を計算することが目的の場合です12。

監督対象の事業体として列挙されるのは、信用機関、投資会社、保険会社、清算機関、取引情報蓄積機関、規則に従って認可か登録を受けた管理者などです。UCITS(譲渡性のある証券への集合投資事業)とその運用会社、AIFM(オルタナティブ投資ファンドの運用者)、職域年金の機関も含みます12。

監督対象の事業体のうち、EU に所在する管理者に入力データを出す者を、規則は監督対象コントリビューターと呼びます12。

適用されない者

規則は、次の者には適用されません13。

対象 条件
中央銀行 なし
公的機関 雇用、経済活動、物価などの公共政策のために、データを出すか、ベンチマークを提供するか、提供を支配する場合
清算機関(CCP) リスク管理と決済のために参照価格か決済価格を提供する場合
報道機関と記者 ベンチマークを報道で公表するか言及するだけで、提供を支配しない場合
自社の借入金利を公表する者 内部で決めた自社の変動か固定の借入金利を公表するだけの場合(その者かグループ会社が顧客と結ぶ金融契約にだけ適用される金利に限る)
欧州委員会が指定した現物の外国為替ベンチマーク 通貨管理のある第三国の通貨の現物レートで、条件を満たし、欧州委員会が指定したもの(第 18a 条)14

表は、適用されない者の一部です。商品ベンチマークの少額の例外と、指数の提供者が、その指数がベンチマークに使われると知らず、知りえない場合の例外も、規則にあります13。

2026 年 1 月からの適用の範囲

2026 年 1 月に、適用の範囲が狭まりました。規則の大部分が適用されるベンチマークは、次の 4 種類に限られます15。

  • 重要なベンチマーク
  • 重要度の高いベンチマーク
  • EU 気候移行ベンチマーク
  • EU パリ協定整合ベンチマーク

この 4 種類に、附属書 II の商品ベンチマークは載っていません。ただし、附属書 II の対象になる商品ベンチマークも、範囲に残ります96。認可と登録では、この商品ベンチマークを加えた 5 区分になります。

限定を受ける Title は、Title II、Title III(置き換えの規定を除く)、Title IV、Title V、Title VI です15。EU の気候に関する 2 種類のベンチマークは、2019 年 11 月に区分に加わりました9。

置き換えの規定は、この限定を受けません。ESMA の登録簿にいる管理者か、登録簿にいる管理者と同じグループの管理者が提供する、EU で使うすべてのベンチマークには、範囲の限定とは別に 2 つの規定が適用されます15。

欧州委員会は、2023 年の提案の説明で、第三国のベンチマークの規定を重要なものに絞って EU の利用者が使えなくなる恐れをなくすのが、見直しの狙いの 1 つだと書いています。EU の管理者にも同じ範囲の要件を課して条件をそろえる、とも書いています16。

管理者の認可と登録

管理者は、EU に所在し、次の表の対象のベンチマークを提供するなら、認可か登録を受けます6。

区分 対象
認可 次の 5 区分のいずれかとして使う指数の提供者
登録 管理者以外の監督対象の事業体が、次の 3 区分の指数を提供する場合

認可の 5 区分は、重要なベンチマーク、重要度の高いベンチマーク、附属書 II の商品ベンチマーク、EU 気候移行ベンチマーク、EU パリ協定整合ベンチマークです。登録の 3 区分は、重要度の高いベンチマーク、EU 気候移行ベンチマーク、EU パリ協定整合ベンチマークです。登録は、事業を規律する法令が提供を妨げず、重要なベンチマークになる指数を提供しない場合に限ります。

図 1 は、EU に所在する管理者が提供する指数について、認可か登録の手続の対象かを見る問いです。

はいいいえEU に所在する管理者が提供する指数かEU の域外の管理者は、域外の節へいいえはい適用されない者の表の行に当たるか規則が適用されない者の表の行に当たるはいいいえ表の対象のベンチマークとして使う指数かこの節の表の対象に入らない原則として、認可か登録の手続の対象になる
図 1認可か登録の手続の対象かを見る 3 つの問い
図の説明

認可か登録の手続の対象かを、3 つの質問で順に確かめる図です。質問 1 の「いいえ」は EU の域外のベンチマークの節へ、質問 2 の「はい」は規則が適用されない者の表の行に当たる場合、質問 3 の「いいえ」はこの節の表の対象に入らない場合です。3 つを通ると、原則として認可か登録の手続の対象になり、どちらの区分かは表の条件で決まります。

EU に所在する G 銀行が指数を提供する架空の例で考えます。

  • 例 1: G 銀行(信用機関)が、重要度の高いベンチマークとして使われる指数を提供します。事業を規律する法令は提供を妨げず、この指数は重要なベンチマークになる指数ではないとします。EU に所在する管理者の指数で、適用されない者にも当たらないので、図 1 の 3 つの質問を通ります。G 銀行は管理者以外の監督対象の事業体で、登録の条件にも当たります。
  • 例 2: G 銀行が、内部で決めた自社の変動の借入金利を公表するだけで、その金利は、同行が顧客と結ぶ金融契約にだけ適用されるとします。この場合、「適用されない者」の表の、自社の借入金利を公表する者の行に当たるため、図 1 の質問 2 で外れ、認可も登録も対象になりません。

申請の宛先は、管理者が所在する加盟国の所管当局です。重要なベンチマークのうち、規模か代替の乏しさで重要と認められるもの(次の節)の管理者と、第三国のベンチマークの推奨を同時に申請する者の宛先は、ESMA です6。

時間の定めは、次のとおりです6。

手続 期限
申請 監督対象の事業体が、申請者の指数を参照する合意をしてから 30 営業日以内。重要度の高いベンチマークは、別に 60 営業日の期限もある(次の節)
申請の完全性の確認 受領から 15 営業日以内に所管当局が通知する
認可の決定 完全な申請の受領から 4 か月以内
登録の決定 完全な申請の受領から 45 営業日以内
ESMA への通知 認可か登録の決定から 5 営業日以内

認可と登録は別の手続で、決定の期限も、4 か月と 45 営業日で異なります。ESMA は、公開の登録簿を維持します。登録簿には、認可か登録を受けた管理者、第三国の同等性、承認、推奨で EU で使えるベンチマーク、重要なベンチマークの一覧などが載ります7。

重要性による 2 つの区分

重要なベンチマーク

重要なベンチマークは、欧州委員会が実施法令で作る一覧に載るベンチマークです。次のいずれかを満たすものが対象です8。

条件 内容
(a) 規模 EU で金融商品、金融契約、投資ファンドの成績の測定が参照する合計額が、ベンチマークのすべての期間について少なくとも 5,000 億ユーロ
(b) 1 つの加盟国で重要 多数のコントリビューターが 1 つの加盟国にいて、その国で重要と認められたもの
(c) 代替が乏しい 合計額が少なくとも 4,000 億ユーロ((a) の額未満)で、代替がほとんどなく、終わると重大な悪影響が出る

(c) の「代替がほとんどない」は、代替のベンチマークが市場にないか、ごく少ないことです。重大な悪影響は、ベンチマークが終わるか信頼できなくなったときに、市場の健全性、金融の安定、消費者、実体経済、家計や企業の資金調達に出るものを指します8。

(c) の合計額の条件を満たさなくても、代替の乏しさと影響の条件を満たせば、関係する加盟国の所管当局どうしの合意で、重要と認められる場合があります8。一覧は少なくとも 2 年ごとに見直します8。

EU で重要なベンチマークの例が EURIBOR です。2026 年 10 月 12 日の時点で、EU 全体で重要なベンチマークは EURIBOR だけです。EURIBOR の管理者は、European Money Markets Institute(EMMI)です。EMMI は、2019 年 7 月に、ベルギーの FSMA(Financial Services and Markets Authority)が認可しました。2022 年 1 月 1 日に、EMMI の監督は FSMA から ESMA に移りました9。

重要なベンチマークの管理者が提供をやめるつもりなら、直ちに所管当局に通知し、4 週間以内に、新しい管理者への移行か、提供の終了の方法の評価を出します。この間は、提供をやめられません。所管当局は、評価のあと、管理者に公表を続けさせることができ、1 回の期間は 12 か月までで、延ばせます。強制できる期間は全体で 5 年までです17。

重要度の高いベンチマーク

重要なベンチマーク以外のベンチマークで、使う側の平均の合計額が 6 か月間で少なくとも 500 億ユーロなら、重要度の高いベンチマークです。管理者は、この額に達したら、直ちに所管当局(第三国の管理者は ESMA)に通知します18。所管当局は、額に達しなくても、代替が乏しく、終わると影響が大きいベンチマークを、ESMA に諮ったうえで重要度が高いと指定できます。管理者が自分で申請する指定もあり、その場合は合計額が少なくとも 200 億ユーロ必要です18。

重要度の高いベンチマークの管理者は、通知か指定から 60 営業日以内に、認可か登録を求めます。第三国の管理者は、承認か推奨を求めます。ただし、同等性の決定の対象のベンチマークは除きます。求めなかったり、手続が失敗したりすると、所管当局か ESMA は、規則に従っていないので使わないよう、公示します19。欧州委員会は、500 億ユーロの額が適切かについて、ESMA と協力して 2028 年 12 月 31 日までに報告するとされています18。

統治とコントリビューターの行為

統治と行為の規定は Title II にあり、規則の大部分が適用される 4 種類のベンチマークにだけ適用されます15。

管理者には、次のことが求められます20。

事項 内容
統治 役割と責任が明確な組織の構造を持つ
利益相反 管理者、その役職員、コントリビューター、利用者の間の利益相反を見つけ、防ぐか管理する。判断が必要な場面で、独立して誠実に行う
業務の分離 ベンチマークの提供を、利益相反の恐れがある事業から運営上分ける
開示 利益相反を、利用者、所管当局、必要ならコントリビューターに公表するか開示する

所有構造などによる利益相反が十分に抑えられない場合、所管当局は、独立した監視の機能を置くよう求めることができます。利益相反を管理できないなら、原因になる活動か関係をやめるか、ベンチマークの提供をやめるよう求めることができます20。

入力データをコントリビューターが出すベンチマークでは、管理者はベンチマークごとに行動規範を作り、コントリビューターが守っていることを、継続して、少なくとも年 1 回と変更のときに確かめます21。行動規範は、出す入力データ、出せる者の確認、システムと管理体制、裁量の扱い、記録の保存などを定めます21。

監督対象コントリビューターには、入力データの提供が利益相反に左右されないこと、裁量を行使するときは行動規範に沿って独立して誠実に行うこと、データの完全性と正確さを守る管理の枠組みを持つことが求められます。具体的な管理は、次のとおりです22。

管理 内容
提出者の管理 誰が入力データを出せるかを定める。釣り合いが取れるなら、提出者より上位の自然人の承認を得る
研修 提出者に、BMR と市場阻害行為規則(規則 (EU) No 596/2014)の研修をする
利益相反 組織上の分離を含む対策。報酬の仕組みがベンチマークを操作する誘因にならないかを考える
記録 入力データの提供に関する通信、提出に使った情報、利益相反(ベンチマークを参照する金融商品の持ち高を含む)、内部と外部の監査を保存する

管理者は、ベンチマークの内容を利用者に示すため、ベンチマークごとに説明書(ベンチマーク・ステートメント)を公表します。説明書は、登録簿に載ってから 2 週間以内に出し、少なくとも 2 年ごとに見直します23。説明書には、測る市場や経済の実態、裁量を使う場面、ベンチマークの変更や終了がありうることなどを書きます23。変更や終了の場合の手順も、あわせて公表します24。

使う側の義務

使う側の規定は Title IV と V にあります。Title IV の規定は、統治の規定と同じ 4 種類にだけ適用されます15。管理者の確認と新しい参照の制限の規定は、附属書 II の商品ベンチマークも挙げます25。

新しい参照の制限は、次のとおりです25。

場合 制限
重要なベンチマーク、附属書 II の商品ベンチマーク、EU の気候に関する 2 種類のベンチマーク(またはそれを含む組み合わせ) 管理者が登録簿にいないと、監督対象の事業体は新しい参照を加えられない
公示(第 24a 条第 6 項)の対象の、重要度の高いベンチマーク 新しい参照を加えられない
公示の対象のベンチマークを、すでに契約や金融商品で使っている場合 公示から 6 か月以内に、適切な代替に置き換える。できないなら、理由をウェブサイトに公表して顧客に示す

監督対象の事業体は、使おうとするベンチマークの管理者の状態を、登録簿などで定期的に確かめます。市場の混乱を避けるために必要なら、ESMA か所管当局は、公示の対象のベンチマークの使用を 6 か月から 24 か月の期間認めることができます25。

監督対象の事業体で、ベンチマークを使う者は、ベンチマークが大きく変わるか提供が終わる場合に取る行動を、書面の計画にして持ちます。計画には、できるなら代替のベンチマークを、適切な理由とともに挙げます。所管当局から求められたら、遅滞なく計画を出し、計画を契約、金融商品、投資ファンドのフォールバックの条項に反映します26。

目論見書の対象の有価証券などが、範囲のベンチマークを参照する場合は、発行者などは、そのベンチマークの管理者が登録簿にいるかを、明確に目立つように書きます25。

EU の域外のベンチマーク

EU の域外にいる管理者のベンチマークを、監督対象の事業体が使うには、ベンチマークと管理者が登録簿に載ります。載る方法は 3 つです27。

方法 内容 所管
同等性 欧州委員会が、第三国の法制度と監督の実務が EU と同等だと実施決定で認める 欧州委員会、ESMA27
承認 第三国の管理者が、ESMA の承認を得る ESMA10
推奨 認可か登録を受けた EU の管理者が、第三国のベンチマークを推奨し、EU で使えるようにする ESMA28

同等性は、国全体、または特定の管理者やベンチマークについて認められます。管理者がその国で認可か登録を受けて監督を受け、EU での使用に同意し、ESMA と第三国当局の協力の取り決めが動いている必要があります27。

承認では、EU の法定代理人を置きます。規則(一部の条を除く)に従うか、IOSCO の原則の適用が規則の遵守と同等であることが条件です。完全な申請から 90 営業日以内に ESMA が確認します10。

推奨では、規則と同等以上の厳しさの要件を満たすこと、監視できる専門性があること、第三国で提供する客観的な理由があることが条件です。申請を受けてから 90 営業日以内に ESMA が決めます28。

2026 年 10 月 12 日時点の ESMA のページが同等性の決定を挙げる国は、オーストラリア、ニュージーランド、シンガポールです9。推奨の申請は、2025 年 10 月 1 日から ESMA に出します。それまでは各国の所管当局でした9。

第三国のベンチマークの規定の適用日は、すでに 2 度延期されていました。欧州委員会は、2023 年の提案で、2025 年 12 月 31 日が EU の利用者がベンチマークを使えなくなる崖になりうると説明しました16。

2025 年の改正で、第三国のベンチマークの規定の範囲は、重要なベンチマークなどに狭まりました9。2025 年 12 月 31 日に登録簿に認可、登録、承認、推奨の管理者として載っていた管理者は、その状態を 2026 年 9 月 30 日まで保つとされていました9。この期限は過ぎています。

終了するベンチマークの置き換え

終了するベンチマークの置き換えは、欧州委員会か、加盟国の所管当局が指定します293031。規則 (EU) 2021/168 は、題名に、終了するベンチマークの置き換えの指定を掲げ、規則 (EU) 2016/1011 を改めました32。

置き換えの規定は、次の契約と金融商品に適用されます29。

対象 条件
ベンチマークを参照する契約と、MiFID II の金融商品 加盟国の法が準拠法
ベンチマークを参照する契約 全当事者が EU に設立され、準拠法が第三国の法で、その法がベンチマークの秩序ある終了を定めていない

置き換えを定める権限は、ベンチマークで 2 つに分かれます。

条 誰が 対象のベンチマーク
第 23b 条 欧州委員会が実施法令で指定する 重要なベンチマークなど 3 種類30
第 23c 条 多数のコントリビューターが所在する加盟国の所管当局が指定する 第 20 条第 1 項 (b) の、1 つの加盟国で重要なベンチマーク31

欧州委員会が実施法令で指定できるのは、次の 3 種類です30。

  • 規模か代替の乏しさで重要と認められる重要なベンチマーク
  • 入力データの提供に基づき、終了すると EU の金融市場の機能を著しく乱すベンチマーク
  • 同様の影響か金融システムへの系統的リスクがある第三国のベンチマーク

指定できるのは、所管当局がベンチマークが市場の実態を反映しなくなったと公表したとき、管理者が秩序ある終了か提供の停止を公表し後継の管理者がいないとき、管理者の認可などが撤回されたときなどです30。欧州委員会の実施法令は、置き換えのベンチマーク、スプレッド調整とその方法、必要な付随の変更、適用日を定めます30。

置き換えは、契約と金融商品にフォールバックの条項がないか、適切なものがない場合に、参照をすべて置き換えます。条項が適切でないのは、永続的な置き換えを定めない場合、適用に必要な第三者の同意が拒まれた場合、市場の実態から大きくずれる置き換えを定めて金融の安定に悪い影響がありうる場合です30。

最後の場合に当たるのは、次の 3 つがそろったときです。まず、加盟国の所管当局が、特定の種類の契約について、利害関係者の求めを受けて一括の評価をし、ずれがあると確かめます。次に、評価の後、契約の当事者の 1 つが、契約のフォールバックに、ベンチマークの終了の遅くとも 3 か月前までに異議を出します。最後に、異議の後、当事者が、終了の遅くとも 1 営業日前までに、別の置き換えに合意しません30。

加盟国の所管当局が指定する置き換えは、全当事者か必要な多数が別の置き換えに合意した場合には適用されません31。

施行と改正

日付 出来事
2016 年 6 月 8 日 規則 (EU) 2016/1011 の日付。官報公表の翌日に発効
2018 年 1 月 1 日 規則の適用開始。一部の条は 2016 年 6 月 30 日から適用33
2021 年 2 月 12 日 現物の外国為替ベンチマークの適用除外と、置き換えの指定を題名に掲げる改正(規則 (EU) 2021/168)が官報に公表34
2022 年 1 月 1 日 ESMA が、EU の重要なベンチマークの管理者と、承認された第三国の管理者の監督を始めた9
2025 年 10 月 1 日 推奨の申請の宛先が ESMA になった9
2025 年 12 月 31 日 第三国のベンチマークの経過期間の終了9
2026 年 1 月 1 日 2025 年の改正(規則 (EU) 2025/914)で、規則の範囲が狭まり、ESMA が推奨を行う EU の管理者の監督も担う9
2026 年 6 月 9 日 欧州委員会が、通貨管理のある第三国の通貨の現物の外国為替ベンチマークで、適用除外にするものの一覧を、実施法令で作る期限だった14
2026 年 9 月 30 日 2025 年 12 月 31 日に登録簿にいた管理者が、その状態を保つ期限だった9
2028 年 12 月 31 日 重要度の高いベンチマークの額の報告の期限18

2025 年の改正は、2025 年 5 月に官報に公表されました9。

英国 BMR との違い

英国 BMR は、規則 (EU) 2016/1011 を英国の法として改めた版です35。次の表の英国の欄は、2026 年 1 月 19 日時点で有効な版によります。

項目 EU の BMR 英国 BMR
適用の地域 EU の中 英国の中(第 1 条、第 2 条第 1 項)36
適用の範囲 第 2 条第 1a 項が、規則の大部分を重要なベンチマークなどに限る 第 2 条に同じ限定がない。第 34 条第 1 項 (c) は、重要でないベンチマークだけを提供する者の登録を定める37
当局と登録簿 各国の所管当局と ESMA。登録簿は ESMA 英国金融行為監督機構(FCA)。登録簿も FCA が持つ38
第三国の同等性 欧州委員会が決定する 財務省が規則で定める(第 30 条)39。移行期間の終了日より前の欧州委員会の決定も含む
重要なベンチマークの条件 第 20 条第 1 項は (a) から (c) 第 20 条第 1 項に (d) が加わる。(a) の額は 5,000 億ユーロで同じ40
英国に固有の条 第 23A 条、第 23FA 条から第 23FC 条(2021 年に挿入)41

英国の (d) は、代替が十分にあっても、1 つ以上の利用者が代替に切り替えることが現実的でないことを、条件の 1 つとします40。英国版には、FCA が重要なベンチマークの管理者に、代表性を失った、または代表性が危うくなっているという通知をしたとき、通知から 21 日以内に、そのベンチマークを指定するかを検討するという規定があります41。

英国では、監督対象の事業体は、FCA の登録簿にあるベンチマークか、英国にいる登録簿の管理者のベンチマークを使えます38。

同じ掲載版は、2023 年金融サービス・市場法の附則 1 第 1 部による規則の廃止を、まだ本文に反映していない変更として載せています42。

英国の EMIR はUK EMIRで扱います。

実務への影響

BMR で業務に起きる変化は、使う側と提供する側で分かれます。ベンチマークを使う監督対象の事業体は、重要なベンチマークなど 5 種類のベンチマークについて、管理者が登録簿にいるかを定期的に確かめます。5 種類には附属書 II の商品ベンチマークも入ります43。あわせて、ベンチマークが大きく変わるか終わる場合の行動を書面の計画にして、契約や金融商品のフォールバックの条項に反映します26。重要なベンチマークなど 5 種類のベンチマークを提供する管理者は、認可か登録を受け、統治と利益相反の管理、ベンチマーク・ステートメントの公表を求められます62023。統治、ベンチマーク・ステートメント、書面の計画の規定は、重要なベンチマークなどの 4 種類にだけ適用されます15。

この記事が書いていないこと

範囲の限定とは別に適用される 2 つの規定の中身、現物の外国為替ベンチマークの適用除外の一覧の採択、2026 年 9 月 30 日以後の登録簿の状態は、この記事では扱いません。英国 BMR の廃止後の枠組みは、この記事では扱いません。

注

  1. ESMA の Interactive Single Rulebook の BMR 第 1 条(2025 年の改正を反映した版。2026 年 10 月 5 日に取得)。以下、条文の脚注は断りのない限り同じ版。一部の条は 2026 年 10 月 12 日に取り直した版。 ↩

  2. BMR の前文 (1)(legislation.gov.uk の掲載版。2026 年 10 月 12 日に取得)。 ↩

  3. BMR の前文 (44)(同じ掲載版)。 ↩

  4. legislation.gov.uk の掲載版の題と日付(2026 年 10 月 12 日に取得)。全加盟国に直接適用される点は、BMR 第 59 条の最後の文。 ↩

  5. ESMA の Interactive Single Rulebook の BMR の目次(2026 年 10 月 5 日に取得)の Title の見出しと条の題の並び。 ↩

  6. BMR 第 34 条第 1 項、第 1a 項、第 3 項、第 5 項から第 7 項(30 営業日は第 3 項、15 営業日は第 5 項、4 か月と 45 営業日は第 6 項、5 営業日は第 7 項)。宛先が ESMA の重要なベンチマークは、第 20 条第 1 項 (a) か (c)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6

  7. BMR 第 36 条第 1 項、第 2 項。 ↩ ↩2

  8. BMR 第 20 条第 1 項((a) から (c) と、最後の副項)、第 1a 項。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5

  9. ESMA の "Benchmark Administrators" のページ(2026 年 10 月 12 日に取得)。EU の重要なベンチマークの項、第三国の管理者の項、登録簿の項、同等性の決定の項。2026 年 9 月 30 日までの扱いは第 51 条第 4c 項。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7 ↩8 ↩9 ↩10 ↩11 ↩12 ↩13 ↩14 ↩15

  10. BMR 第 32 条第 2 項、第 3 項、第 5 項、第 8 項。 ↩ ↩2 ↩3

  11. BMR 第 2 条第 1 項。 ↩

  12. BMR 第 3 条第 1 項の (3)、(5)、(6)、(7)、(8)、(9)、(10)、(17)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  13. BMR 第 2 条第 2 項 (a)、(b)、(c)、(e)、(f)、(g)、(h)、(i)。 ↩ ↩2

  14. BMR 第 18a 条第 1 項、第 3 項。 ↩ ↩2

  15. BMR 第 2 条第 1a 項、第 1b 項。置き換えの規定は第 23a 条から第 23c 条。範囲の限定とは別に適用される規定は、第 13 条第 1 項 (d) と第 27 条第 2aa 項。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6

  16. 欧州委員会 "Frequently asked questions: Benchmarks Regulation"(2023 年 10 月 17 日付。2026 年 10 月 5 日に取得)の、見直しの目的の項。 ↩ ↩2

  17. BMR 第 21 条第 1 項から第 3 項。 ↩

  18. BMR 第 24 条第 1 項 (a)、第 2 項、第 3 項、第 7 項、第 10 項。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  19. BMR 第 24a 条第 1 項から第 4 項、第 6 項。同等性の決定は第 30 条。 ↩

  20. BMR 第 4 条第 1 項から第 5 項。 ↩ ↩2 ↩3

  21. BMR 第 15 条第 1 項、第 2 項。 ↩ ↩2

  22. BMR 第 16 条第 1 項、第 2 項。 ↩

  23. BMR 第 27 条第 1 項。 ↩ ↩2 ↩3

  24. BMR 第 28 条第 1 項。 ↩

  25. BMR 第 29 条第 1 項、第 1a 項、第 1b 項、第 2 項。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  26. BMR 第 28 条第 2 項(監督対象の事業体のうち、管理者以外でベンチマークを使う者の計画)。第 28 条は Title IV にあり、第 2 条第 1a 項により、4 種類のベンチマークにだけ適用される。 ↩ ↩2

  27. BMR 第 30 条第 1 項から第 4 項。 ↩ ↩2 ↩3

  28. BMR 第 33 条第 1 項、第 3 項。 ↩ ↩2

  29. BMR 第 23a 条。 ↩ ↩2

  30. BMR 第 23b 条第 1 項から第 5 項、第 8 項、第 9 項。重要なベンチマークは第 20 条第 1 項 (a) か (c)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5 ↩6 ↩7

  31. BMR 第 23c 条第 1 項、第 3 項、第 4 項。 ↩ ↩2 ↩3

  32. 規則 (EU) 2021/168 の題名。官報の題名を転載する Euroalert のページ(2026 年 10 月 5 日に取得)による。 ↩

  33. BMR 第 59 条。 ↩

  34. 欧州議会の "Review of the Benchmark Regulation"(Legislative Train。2026 年 10 月 5 日に取得)の、規則 (EU) 2021/168 の公表(2021 年 2 月 12 日)の記述。European Sources Online の記録も同じ日付。 ↩

  35. legislation.gov.uk の掲載版(2026 年 1 月 19 日時点で有効な版。2026 年 10 月 12 日に取得)。条文中の "assimilated law" の語による。 ↩

  36. 英国版の第 1 条と第 2 条第 1 項("within the United Kingdom")。 ↩

  37. 英国版の第 34 条第 1 項 (c)。 ↩

  38. 英国版の第 29 条第 1 項と、第 3 条の "FCA register" の定義(第 36 条第 1 項の登録簿)。 ↩ ↩2

  39. 英国版の第 30 条第 1 項 (a)、第 2 項、第 3 項。 ↩

  40. 英国版の第 20 条第 1 項 (a)、(d)。 ↩ ↩2

  41. 英国版の第 23A 条第 1 項。第 23FA 条から第 23FC 条は、同じ版の改正の注記による。 ↩ ↩2

  42. 同じ掲載版の、まだ本文に反映していない変更の項(2023 年金融サービス・市場法 (c. 29) の附則 1 第 1 部による廃止)。 ↩

  43. BMR 第 29 条第 1 項、第 1b 項。 ↩ ↩2 ↩3

  44. BMR 第 23b 条第 3 項から第 5 項、第 23c 条第 3 項。 ↩