仕組債や仕組預金を小口投資家に売り出す会社は、PRIIPs 規則にもとづき、基本情報文書(KID)を作って公表します。販売者は、契約の前にそれを渡します。

何を求める規制か

PRIIPs(packaged retail and insurance-based investment products)の規則は、基本情報文書の様式と中身を統一し、その提供を求めます。目的は、小口投資家が商品の主な特徴とリスクを理解し、ほかの商品と比べられるようにすることです1。この種の商品は小口投資家と市場の間に入り、資産を包んで(パッケージして)直接保有とは異なる値動き、特徴、費用を作ります。そのため、投資の包み方を比べるための情報が別に要る、というのが規則の考え方です2。

求めることは、作成者と販売者で分かれます。商品の作成者は、小口投資家に提供する前に基本情報文書(KID)を作って自社のウェブサイトに公表します。商品を助言または販売する者は、小口投資家が契約や申込みに拘束される前に、十分な時間をもって KID を渡します3。

PRIIPs 規則は、MiFID II の販売の規定を補完する措置です4。中心は KID の様式、中身、提供で、民事責任、市場の監視と販売などの禁止、制裁も定めます。MiFID II の販売の規定はMiFID II と MiFIRで扱います。

根拠と所管

根拠は、欧州議会と理事会の 2014 年 11 月 26 日付の規則 (EU) No 1286/2014 です。EU の「規則」は全体に拘束力があり、すべての加盟国に直接適用されます5。規則は 6 つの章からなります6。

章 内容 条
I 目的、適用範囲、定義 第 1 条から第 4 条
II KID の作成、様式と中身、提供 第 5 条から第 14 条
III 保険型投資商品の市場の監視と、販売などの禁止や制限 第 15 条から第 18 条
IV 苦情、救済、当局間の協力、監督 第 19 条から第 21 条
V 行政上の制裁と措置 第 22 条から第 29 条
VI 最終規定(委任、UCITS の経過措置、見直し、施行) 第 30 条から第 34 条

3 つの欧州監督当局(ESAs)は、欧州銀行監督機構(EBA)、欧州保険・年金監督機構(EIOPA)、欧州証券市場監督機構(ESMA)です。誰が何を担うかは、次のとおりです。

事項 担う者 根拠
KID の様式と中身、リスクと成績の表し方、費用の計算方法の技術基準 ESAs が共同委員会で案を作り、欧州委員会が採択する 第 8 条第 5 項7
規則を守っているかの監督と、制裁 加盟国が指定する所管当局 第 4 条第 8 項、第 20 条第 2 項、第 24 条第 2 項8
保険型投資商品の市場の監視と、販売などの一時的な禁止や制限 EIOPA と所管当局 第 15 条から第 17 条9

KID の技術基準は、2017 年 3 月 8 日の委員会委任規則 (EU) 2017/653 です。この規則は、委員会委任規則 (EU) 2021/2268 で改正されました。改正は、成績のシナリオと費用の示し方などを改めるものです。ESMA の 2022 年 6 月 24 日の公表によると、欧州委員会の声明は、新しい規則を 2023 年 1 月 1 日から適用する意図を示しました。欧州委員会は 2022 年 6 月 24 日に、PRIIPs 関連の開示の一部の適用日を 2023 年 1 月 1 日に延ばす委任規則 (EU) 2022/975 を官報に公表しました10。

条文は 2026 年 10 月 12 日時点で公開されている版(EU の規則と技術基準は採択時の本文、英国の版は 2024 年 11 月 22 日時点)を確かめました。

対象になる商品と者

規則は、PRIIP の作成者と、PRIIP を助言または販売する者に適用されます11。作成者には、商品を作る者のほかに、既存の商品のリスクとリターンの特徴や費用を変える者も含まれます。販売者は、小口投資家に商品の契約を申し出るか、契約を結ぶ者です12。

PRIIP は 2 種類あります。1 つは、法形式を問わず、小口投資家が受け取る金額が参照する値や、投資家が直接買わない資産の成績で変わる投資です。もう 1 つは、満期や解約の返戻金の全部または一部が市場の変動にさらされる保険商品です13。投資信託、投資要素のある生命保険、仕組商品、仕組預金が例です2。デリバティブを組み込んだ仕組債のうち、受け取る金額が参照する指標で変わるものは、この定義に当たります。商品の中身は仕組商品とは(デリバティブへの分解)で扱います。

企業の株式や国債のように直接保有する資産は PRIIP ではありません。機関投資家向けのファンドは、小口投資家向けに売られないため対象外です14。規則本文が挙げる適用除外は、次のとおりです15。

適用除外 内容
損害保険 指令 2009/138/EC の附属書 I に挙げる保険
死亡や傷病などの場合だけに給付する生命保険 給付が死亡か、傷害、疾病、障害による就労不能の場合に限られるもの
預金 仕組預金を除く預金
一部の証券 指令 2003/71/EC の第 1 条第 2 項の (b) から (g)、(i)、(j) が挙げる証券
年金商品 国内法で退職後の所得を主な目的とする商品、公的に認められた職域年金、雇用主の拠出が法で求められ選択の余地がない個人年金

小口投資家(retail investor)は、MiFID II のリテール顧客(retail client)です。保険の仲介に関する指令 2002/92/EC の顧客のうち、MiFID II の専門顧客に当たらない者も含みます16。

ここまでの条件を、図 1 の質問の順に並べます。

はいいいえ受け取る金額が、参照する値や直接買わない資産の成績で変わるかPRIIP の定義に当たらないいいえはい損害保険や、仕組預金でない預金などの適用除外の商品か適用除外はいいいえ小口投資家に助言または販売される商品か規則の対象にならないPRIIP に当たりうる商品
図 1PRIIP に当たりうる商品かの判定
図の説明

質問は 3 つで、PRIIP の定義に当たるか、適用除外の商品か、小口投資家向けかを順に確かめます。直接保有する株式や国債は 1 つ目、損害保険や、仕組預金を除く預金などは 2 つ目(質問への答えが「はい」)、機関投資家向けのファンドなどは 3 つ目で外れます。すべて通ると、PRIIP に当たりうる商品です。

F 銀行が小口投資家に提供する 2 つの商品の架空の例で考えます。

  • F 銀行が、満期に受け取る金額が特定の株価指数の値で変わる債券を、小口投資家に売り出します。受け取る金額は参照する値で変わり、小口投資家に売られます。表の適用除外に当たらないとすると、図 1 の 3 つの質問を通り、PRIIP に当たりうる商品です。その場合は、作成者に KID の作成と公表、販売者に契約の前の提供が求められます。
  • F 銀行が、決まった金利で元本と利息を支払う、仕組預金でない通常の預金を、小口投資家に提供します。受け取る金額が参照する値で変わらないため、図 1 の 1 つ目の質問で外れます。参照する値で変わる預金があるとしても、仕組預金を除く預金は適用除外に当たり、2 つ目の質問で外れます。

KID の中身と、作成者・販売者の義務

KID の様式と中身

KID は、契約の前の情報です。内容は正確、公正、明確で、誤解を招かないものとし、拘束力のある契約書類や募集書類、商品の条件と食い違ってはいけません。マーケティングの資料とは別の、独立した書類にします。印刷したとき A4 で最大 3 面に収めます17。

KID は、決まった見出しの順に書きます18。冒頭の見出しは「Key Information Document」です。その直下には、定型の説明文を置きます。説明文は、この書類がマーケティングの資料ではなく、法律が求める情報であることを述べます。商品の性質、リスク、費用、損益の可能性の理解と、ほかの商品との比較に役立つことも述べます19。商品が単純でなく理解が難しい場合は、「購入しようとしているのは単純な商品ではなく、理解が難しい可能性がある」旨の注意(理解度への警告)を示します20。

見出し(原文) 書くこと
What is this product? 商品の種類、目的とその達成の手段、参照する原資産や値、想定する小口投資家、期間
What are the risks and what could I get in return? リスクの総合指標、最大の損失、成績のシナリオ、収益に付く条件や上限
What happens if [作成者] is unable to pay out? 作成者が支払えないとき、投資者補償か保証の制度が損失をカバーするか
What are the costs? 一時の費用と継続的な費用を含む総費用を、金額と割合で
How long should I hold it and can I take money out early? 推奨の保有期間、必要なら最低の保有期間、満期前の解約の条件と費用
How can I complain? 商品や作成者、販売者の行為についての苦情の申し立て方
Other relevant information 契約の前後に渡す追加の書類

商品名、作成者の名前と連絡先、作成者の所管当局、書類の日付は、冒頭に書きます21。

作成者と販売者に求められること

誰が 求められること 根拠
作成者 小口投資家に提供する前に KID を作り、自社のウェブサイトで公表する 第 5 条第 1 項
作成者 KID の情報を定期的に見直し、必要なら改訂し、改訂版を速やかに入手できるようにする 第 10 条第 1 項
作成者と販売者 小口投資家が作成者に苦情を申し立てる実効的な方法と、KID についての苦情への実質的な回答、国をまたぐ紛争での救済の手続を整える 第 19 条
販売者 小口投資家が契約や申込みに拘束される前に、十分な時間をもって KID を提供する 第 13 条第 1 項
販売者 KID を無料で、紙、紙以外の耐久媒体、ウェブサイトのいずれかで提供する 第 14 条第 1 項、第 2 項
名宛人の記載なし マーケティングの資料に、KID と矛盾する記述や KID の意義を弱める記述を入れない。KID があることと入手先を示す 第 9 条

紙以外の媒体で渡すには条件があります。対面では、投資家が別の方法を求める場合を除き、紙が原則です22。

KID を契約の後に渡せる場合は限られます。次の条件がすべて満たされたときだけ、販売者は取引の後に遅滞なく KID を渡せます23。

条件は、小口投資家が自分から遠隔の通信手段で連絡して契約したこと、事前の提供ができないこと、事前に受け取るため取引を遅らせられると説明を受けたこと、遅らせずに後で受け取ることに同意したことです。

同じ商品を続けて取引するとき、提供義務が最初の取引と KID の改訂後の最初の取引だけになるのは、投資家が最初の取引の前に販売者へ出した指示に従って取引する場合です24。

作成者の責任も定められています。作成者は、KID だけを理由に民事責任を負うことはありません。ただし、KID が誤解を招く、不正確である、または拘束力のある契約書類や KID の様式と中身の要件と食い違うときは別です。そのとき、KID を信頼して投資し損失を示した小口投資家は、国内法に従って損害賠償を請求できます。この義務は、契約条項で制限も放棄もできません25。

制裁は加盟国の所管当局が科します。当局には、少なくとも、商品の販売の禁止や停止、違反した者と違反の内容を示す公表、要件に合わない KID の提供の禁止と新版の公表の要求、行政上の罰金の権限が与えられます。罰金の上限は、法人について、規則が 3 つ並べて挙げています。500 万ユーロ、年間の総売上高の 3%、違反で得た利益や避けた損失の 2 倍です26。加盟国は、これより重い制裁や高い罰金を定めてもかまいません27。

リスクの総合指標とデリバティブを含む商品

2017 年の技術基準(委員会委任規則 (EU) 2017/653)の附属書では、リスクの総合指標(SRI)は、KID の「リスクと得られる金額」の節に 1 から 7 の数字で示す、商品のリスクの区分です。数字が大きいほどリスクが高い区分です28。区分は、市場リスクと信用リスクの 2 つから決めます。

市場リスクの区分

市場リスクは、推奨保有期間に対する信頼水準 97.5% のバリュー・アット・リスク(VaR)に当たる年率の変動率(VEV)で測ります。次の表で、市場リスクの区分(MRM)に当てはめます29。

MRM の区分 VEV
1 0.5% 未満
2 0.5% から 5.0%
3 5.0% から 12%
4 12% から 20%
5 20% から 30%
6 30% から 80%
7 80% 超

ESAs が 2020 年 6 月 30 日に示した改正案も、同じ区分の幅を示しています30。

商品は 4 つの分類に分かれ、分類ごとに VEV の求め方が違います31。デリバティブを含む商品に関わるのは、主に次の 3 つです。

  • 分類 1 のうち、投資家が投資額を超えて損失を被りうる商品(第 4 項 (a))と、MiFID II の附属書 I の C 節の項目 4 から 10 に当たる商品((b))は、市場リスクの区分が 7 です。価格が月次より少ない頻度でしか付かない商品や、適切な代替の指標がない商品など((c))は、同じ分類 1 でも区分が 6 です。規制市場で取引される先物、コール・オプション、プット・オプションである商品は、技術基準が分類 1 として別の定めを置いています。
  • 分類 2 は、原資産の価格にそのまま、または一定の倍率で連動する商品です。過去の価格の分布から VaR を求めます。
  • 分類 3 は、値が原資産の価格の一定の倍率ではない形で決まる商品です。原資産の価格を 10,000 回以上シミュレーションし、推奨保有期間の終わりの商品の価値の分布から VaR を求めます。シミュレーションは、過去 5 年の収益率を復元抽出して行います。

原資産の価格と商品の価値が比例しない商品(オプションを組み込んだ仕組債など)は、分類 3 の定義に当たりえます。個々の商品がどの分類になるかは、技術基準の条件に照らして作成者が判断します。

信用リスクの区分と総合指標

信用リスクは、1 から 6 の区分(CRM)に分けます。商品の請求権が発行体のシニアの債権者の請求権に劣後する場合は、CRM を 2 区分引き上げます。商品が発行体の自己資本の一部に当たる場合は、3 区分引き上げます32。総合指標は、MRM と CRM の組み合わせから、次の表で決まります。

MRM の区分 CRM が 1 か 2 CRM が 3 CRM が 4 か 5 CRM が 6
1 1 3 5 6
2 2 3 5 6
3 3 3 5 6
4 4 4 5 6
5 5 5 5 6
6 6 6 6 6
7 7 7 7 7

表の値は、総合指標(SRI)の区分です。技術基準の附属書 II 第 3 部の対応表は、CRM の 6 つの区分ごとに MRM の 7 つの区分を並べます。上の表は、その表で値が同じになる CRM の 1 と 2、4 と 5 を 1 列にまとめて、向きを入れ替えたものです33。

ある銀行が発行する仕組債で、原資産の VEV が 15%、信用リスクの区分が 3 の架空の例で考えます。VEV は 12% から 20% の幅に入るため、MRM は 4 です。MRM が 4、CRM が 3 の組み合わせは 4 になり、SRI は 4 です。同じ債券の請求権が発行体のシニアの債権者に劣後する場合、CRM は 2 区分上がって 5 になり、MRM が 4 のとき SRI は 5 です。

成績のシナリオ(2017 年の技術基準)

2021 年の改正で成績のシナリオの方法は改められました。適用日は「施行、経過措置、見直し」の節の表のとおりです。以下は 2017 年の技術基準の方法で、改正後の値ではありません。

KID には、有利、中立、不利、ストレスの 4 つの成績のシナリオを示します34。推奨保有期間の終わりの値は、不利が 10 パーセンタイル、中立が 50 パーセンタイル、有利が 90 パーセンタイルの値です。ストレスは、保有期間が 1 年なら 1 パーセンタイル、それ以外なら 5 パーセンタイルに当たる極端な値を使う方法で求めます。成績は、費用を差し引いた後の値で示します35。

途中の時点の成績も示します。推奨保有期間が 1 年を超えて 3 年未満なら、1 年後と期間の終わりの 2 つの時点です。3 年以上なら、1 年後、期間の半分(年の単位に切り上げ)、期間の終わりの 3 つの時点です36。たとえば、推奨保有期間が 5 年の仕組債では、半分の 2.5 年を切り上げた 3 年後を含めて、1 年後、3 年後、5 年後に示します。

規制市場で取引される先物、コール・オプション、プット・オプションの場合は、シナリオを損益の構造のグラフで示し、途中の時点の成績は示しません。SRI の説明文は、指標の目的を述べる文、区分を述べる文、該当すれば元本の保護がないことを述べる文に絞られます37。

施行、経過措置、見直し

EU の規則と技術基準の主な日付は、次のとおりです38。

日付 出来事
2014 年 11 月 26 日 欧州議会と理事会が規則 (EU) No 1286/2014 を採択
2017 年 3 月 8 日 欧州委員会が委任規則 (EU) 2017/653 を採択
2018 年 1 月 1 日 規則と技術基準の適用が開始
2021 年 12 月 20 日 委任規則 (EU) 2021/2268 を公表
2023 年 1 月 1 日 委任規則 (EU) 2021/2268 による新しい規則を適用する予定の日(欧州委員会の声明が示した意図)

規則の採択時の本文は適用開始を 2016 年 12 月 31 日としていましたが、規則 (EU) 2016/2340 が 2018 年 1 月 1 日に改めました39。

集団投資スキームのうち、UCITS(譲渡性のある証券への集団投資の事業体)の運用会社と販売者には、経過措置があります。採択時の本文は、2019 年 12 月 31 日までこれらの者を規則の義務から外していました40。期限は、EU の規則 (EU) 2019/1156 で 2021 年 12 月 31 日まで延びました41。ESMA が 2022 年 6 月 24 日に公表した欧州委員会の声明は、2022 年 12 月 31 日まで技術基準の従来の規則を続ける意図を示しました。UCITS を選択肢として提供する商品では、UCITS の投資者向け重要情報書類(KIID)で個別の情報を示せる意図も述べています42。

EU の規則には、見直しの動きがあります。欧州委員会は、2023 年 5 月 24 日に小口投資戦略を採択し、PRIIPs 規則を改正する規則案を含めました43。欧州議会は、2025 年 12 月 18 日に理事会との暫定合意の成立を公表したとされています。その内容は、KID に現実的なデータと妥当な仮定にもとづく将来を見据えた成績のシナリオを示すことを含み、暫定合意は欧州議会と理事会が承認して初めて発効するという説明です44。

英国の扱い

英国は、EU 離脱後も同じ名前の規則を英国の国内法の一部として持ち、英国が別に改正しました。英国の版は、次の点が EU の採択時の本文と違います45。

項目 EU の規則(採択時の本文) 英国の版(2024 年 11 月 22 日時点)
適用の範囲 PRIIP の作成者と、助言または販売する者 英国の小口投資家に提供される(される予定の)商品の作成者と、助言または販売する者
当局 加盟国が指定する所管当局 英国金融行為監督機構(FCA)が、技術基準の制定などの条で名指しされる
技術基準 欧州委員会が ESAs の案をもとに採択 FCA が定めることができる
制裁の条(第 22 条から第 28 条) 規則に置く 2020 年 12 月 31 日に削除
UCITS の適用除外 2019 年 12 月 31 日まで 2026 年 12 月 31 日まで(廃止前の期限)
適用除外の追加 採択時の本文にはない 英国で上場するクローズドエンド型の投資会社の株式(2024 年 11 月 22 日から)

英国の UCITS の適用除外の期限を延ばしたのは、2021 年の英国の規則(S.I. 2021/1149)です。期限は 2021 年 12 月 31 日から 2026 年 12 月 31 日になりました46。

英国の PRIIPs 規則は、2026 年 4 月 6 日に廃止されました。廃止は、2023 年金融サービス・市場法(Financial Services and Markets Act 2023)と S.I. 2025/1078 によります47。FCA は、消費者向け複合投資商品(CCI)の制度を設け、2025 年 12 月に最終規則(PS25/20)を公表しました。製造者は、2026 年 4 月 6 日から、商品要約を作るか、従来の開示の要件に従うかを選べます。新しい規則は 2027 年 6 月 8 日に効力を持ちます48。

実務への影響

作成者の主な業務は、小口投資家に提供する前の KID の作成と公表、その後の定期的な見直しと、必要なときの改訂です。販売者の主な業務は、契約や申込みの前に KID を無料で渡すことです。マーケティングの資料には、KID と矛盾する記述を入れないことも求められます。KID が誤解を招くなどのときは、損失を示した小口投資家が作成者に損害賠償を請求できます。義務に違反した者には、加盟国の所管当局が制裁を科せます。

この記事が書いていないこと

2021 年の改正後の技術基準の附属書と、EU の現在の UCITS の扱いは、この記事では扱いません。小口投資戦略の暫定合意の後の承認と官報の掲載、英国の CCI の制度の中身は、この記事では扱いません。日本の金融機関と日本の規制への影響は、この記事では扱いません。

注

  1. Regulation (EU) No 1286/2014(採択時の版、legislation.gov.uk)第 1 条。以下、同規則の脚注は断りのない限りこの版。 ↩

  2. 規則 (EU) No 1286/2014 前文 (6)。 ↩ ↩2

  3. 規則 (EU) No 1286/2014 第 5 条第 1 項、第 13 条第 1 項。 ↩

  4. 規則 (EU) No 1286/2014 前文 (5)。 ↩

  5. 規則 (EU) No 1286/2014 の冒頭と第 34 条(拘束力と直接適用)。 ↩

  6. 規則 (EU) No 1286/2014 の Chapter I から VI の見出しと、各章の条。 ↩

  7. 規則 (EU) No 1286/2014 第 8 条第 5 項。 ↩

  8. 規則 (EU) No 1286/2014 第 4 条第 8 項、第 20 条第 2 項、第 24 条第 2 項。 ↩

  9. 規則 (EU) No 1286/2014 第 15 条第 1 項と第 2 項、第 16 条第 1 項、第 17 条第 1 項。 ↩

  10. European Commission の PRIIPs のページ(2021/2268 の目的、2022/975 の官報の公表日 6 月 24 日)、ESMA の 2022 年 6 月 24 日の公表、European Commission の 2022/975 のページ(掲載日 8 月 2 日)。ページの題は sources のとおり。 ↩

  11. 規則 (EU) No 1286/2014 第 2 条第 1 項。 ↩

  12. 規則 (EU) No 1286/2014 第 4 条 (4)、(5)。 ↩

  13. 規則 (EU) No 1286/2014 第 4 条 (1) から (3)。 ↩

  14. 規則 (EU) No 1286/2014 前文 (7)。 ↩

  15. 規則 (EU) No 1286/2014 第 2 条第 2 項 (a) から (g)。表では、(e) から (g) を年金商品にまとめています。 ↩

  16. 規則 (EU) No 1286/2014 第 4 条 (6)。 ↩

  17. 規則 (EU) No 1286/2014 第 6 条第 1 項、第 2 項、第 4 項。 ↩

  18. 規則 (EU) No 1286/2014 第 8 条第 3 項 (c) から (i)。 ↩

  19. 規則 (EU) No 1286/2014 第 8 条第 1 項、第 2 項。 ↩

  20. 規則 (EU) No 1286/2014 第 8 条第 3 項 (b)。警告文の日本語は意味を訳したものです。 ↩

  21. 規則 (EU) No 1286/2014 第 8 条第 3 項 (a)。 ↩

  22. 規則 (EU) No 1286/2014 第 5 条第 1 項、第 9 条、第 10 条第 1 項、第 13 条第 1 項、第 14 条第 1 項と第 2 項、第 19 条。 ↩

  23. 規則 (EU) No 1286/2014 第 13 条第 3 項 (a) から (d)。 ↩

  24. 規則 (EU) No 1286/2014 第 13 条第 3 項、第 4 項。 ↩

  25. 規則 (EU) No 1286/2014 第 11 条第 1 項、第 2 項、第 5 項。 ↩

  26. 規則 (EU) No 1286/2014 第 24 条第 1 項、第 2 項 (a) から (e)。違反の対象は同条第 1 項の列挙。 ↩

  27. 規則 (EU) No 1286/2014 第 24 条第 3 項。 ↩

  28. Commission Delegated Regulation (EU) 2017/653(採択時の版、legislation.gov.uk)第 3 条第 2 項 (a)。以下、技術基準の脚注は断りのない限りこの版。 ↩

  29. 委任規則 (EU) 2017/653 附属書 II 第 1 部の第 1 項、第 2 項。VEV の表の境界は、原文では範囲を「0,5 % - 5,0 %」のように示します。 ↩

  30. ESAs の最終報告 JC 2020 66(2020 年 6 月 30 日)の附属書 II の改正案、PDF の 66 ページ。案であり、採択された規則ではありません。 ↩

  31. 委任規則 (EU) 2017/653 附属書 II 第 1 部の第 3 項から第 7 項。分類 1 は第 4 項、分類 2 は第 5 項、分類 3 は第 6 項。上場の先物とオプションは附属書 IV 第 25 項。 ↩

  32. 委任規則 (EU) 2017/653 附属書 II 第 2 部の第 44 項、第 50 項、第 51 項。 ↩

  33. 委任規則 (EU) 2017/653 附属書 II 第 3 部の第 52 項の対応表。 ↩

  34. 委任規則 (EU) 2017/653 第 3 条第 3 項、附属書 IV の第 1 項。 ↩

  35. 委任規則 (EU) 2017/653 附属書 IV の第 5 項から第 8 項、第 10 項から第 13 項、第 30 項、第 31 項。 ↩

  36. 委任規則 (EU) 2017/653 附属書 IV の第 19 項から第 21 項。 ↩

  37. 委任規則 (EU) 2017/653 第 3 条第 5 項、附属書 III の第 6 項、附属書 IV の第 25 項。 ↩

  38. 規則 (EU) No 1286/2014 と委任規則 (EU) 2017/653 の署名の日付、2017/653 の第 18 条。2021 年 12 月 20 日は European Commission、2023 年 1 月 1 日は ESMA の公表によります。 ↩

  39. Regulation (EU) No 1286/2014(英国の版。2024 年 11 月 22 日時点、legislation.gov.uk)第 34 条と、その注 F85。採択時の本文の第 34 条は、適用開始を 2016 年 12 月 31 日としていました。 ↩

  40. 規則 (EU) No 1286/2014 第 32 条第 1 項。 ↩

  41. S.I. 2021/1149(UCITS Exemption Amendment Regulations 2021)の Explanatory Note の脚注。規則 (EU) 2019/1156 第 17 条第 1 項が期限を延ばしたと書かれています。 ↩

  42. ESMA「ESAs refer stakeholders to Commission statement on the application date of new PRIIPs rules」(2022 年 6 月 24 日)。欧州委員会の声明の引用によります。 ↩

  43. European Commission「Retail investment strategy」。採択日は 2023 年 5 月 24 日。 ↩

  44. European Parliament「Deal on new measures to boost citizens' investments in financial markets」(2025 年 12 月 18 日)。 ↩

  45. 規則 (EU) No 1286/2014 の採択時の版と英国の版(2024 年 11 月 22 日時点)の第 2 条、第 4A 条、第 8 条第 5 項、第 15 条第 2 項、第 17 条第 1 項、第 22 条から第 28 条、第 32 条。FCA の定義は英国の版の第 4 条。 ↩

  46. The Packaged Retail and Insurance-based Investment Products (UCITS Exemption) (Amendment) Regulations 2021(S.I. 2021/1149)第 2 条。 ↩

  47. 規則 (EU) No 1286/2014(英国の最新の版、legislation.gov.uk)の冒頭の注 F1。2023 年金融サービス・市場法第 86 条第 3 項、S.I. 2025/1078 第 7 条 (b)。 ↩

  48. FCA「PS25/20」のページ(法律の施行 2026 年 4 月 6 日、新しい規則の効力 2027 年 6 月 8 日、製造者の選択)。公表は同ページの経過の図で 2025 年 12 月 8 日。 ↩

  49. 規則 (EU) No 1286/2014 第 10 条第 2 項 (d)、第 9 条。 ↩