デリバティブの取引を取引基盤で行うとき、取引を所管当局へ報告するとき、顧客に商品を勧めるときに、金融商品市場指令(MiFID II)と金融商品市場規則(MiFIR)の条文を、投資会社や取引基盤の運営者、カウンターパーティが参照します。
何を求める規制か
MiFID II と MiFIR の目的は、それぞれの前文に書かれています。MiFID II の前文は、金融危機が金融市場の機能と透明性の弱点を示したと書き、店頭取引を含む市場の枠組みを強めて、透明性を高め、投資者を守り、信頼を高めることを挙げます1。MiFIR の前文は、取引の透明性の強化を挙げ、2009 年 4 月 2 日の G20 ロンドン首脳声明に触れます2。
EU の「規則」(Regulation)は加盟国に直接適用されます。「指令」(Directive)は、加盟国が国内法にして初めて、金融機関などに義務がかかります3。2 つの法令は同じ 2014 年 5 月 15 日付で、6 月 12 日に官報に載りました。日付は「施行と改正」の表にあります4。
2 つの法令は、2004 年の旧指令(Directive 2004/39/EC)を、一部は指令として作り直し、一部は規則に置き換えたものです。2 つを合わせて、投資会社、規制市場、データ提供サービスの事業者、第三国の事業者に適用される要件の枠組みになります5。デリバティブに関わる中心は、取引基盤での取引の義務、取引前後の透明性、取引報告、ポジションの制限、顧客の保護です。
根拠と所管
次の表は、2 つの法令の分担です。
| MiFID II(指令) | MiFIR(規則) | |
|---|---|---|
| 番号 | Directive 2014/65/EU | Regulation (EU) No 600/2014 |
| 法の形 | 加盟国が国内法にする。適用は国内法の措置から | 全体が拘束力を持ち、加盟国に直接適用される |
MiFID II が定める内容は、投資会社の認可と運営の条件、規制市場の認可と運営、データ提供サービス事業者の認可と運営、当局の監督と協力です6。MiFIR が定める内容は、取引データの公表、当局への取引報告、取引基盤でのデリバティブ取引、清算とベンチマークへの非差別的なアクセスです。商品介入と欧州証券市場監督機構(ESMA)のポジション管理、第三国の事業者の扱いも定めます。
デリバティブに関わる主な規定は、次の表のとおりです7。
| 法令 | 条 | 内容 |
|---|---|---|
| MiFID II | 第 4 条 | 定義 |
| MiFID II | 第 16 条 | 組織の要件 |
| MiFID II | 第 25 条 | 適合性と適切性 |
| MiFID II | 第 27 条 | 最良執行 |
| MiFID II | 第 57 条 | コモディティ・デリバティブのポジション制限 |
| MiFIR | 第 8a 条、第 10 条、第 21 条 | 透明性 |
| MiFIR | 第 26 条 | 取引報告 |
| MiFIR | 第 28 条から第 34 条 | デリバティブ |
| MiFIR | 第 40 条から第 45 条 | 商品介入とポジション管理 |
所管は、次の 3 つの主体に分かれます。
| 主体 | 役割 | 根拠 |
|---|---|---|
| ESMA | 規制技術基準(RTS)の案の作成と、取引義務の公開簿の維持 | MiFIR 第 32 条第 1 項、第 34 条 |
| ESMA | 一定の条件での、商品の販売の一時的な禁止や制限と、ポジションの縮小の要求 | MiFIR 第 40 条、第 45 条 |
| 欧州委員会 | ESMA の案の RTS としての採択と、第三国の取引基盤を同等と認める決定 | MiFIR 第 32 条第 1 項、第 28 条第 4 項 |
| 加盟国の所管当局 | 取引報告の受領、ポジションの上限の設定と適用。自国での商品の販売を禁止または制限できる | MiFIR 第 26 条第 1 項、第 42 条第 1 項、MiFID II 第 57 条第 1 項 |
規制技術基準(RTS)は、法令の細目を定める委任の規則です。取引義務の対象になるデリバティブの種類も、RTS で決まります8。
条文は 2026 年 10 月 3 日時点で公開されている版(2024 年 3 月 28 日に発効した改正まで)を確かめました9。
対象になる取引と者
金融商品の範囲
MiFID II の定義は、「金融商品」を付属書 I の C 節の商品と定めます。デリバティブは、C 節の 4 番から 10 番に入ります(2014 年の採択時の本文)。
| 区分 | C 節の番号 | 中身 |
|---|---|---|
| 有価証券、通貨、金利、利回り、排出枠、金融指数などを参照するデリバティブ | 4 | オプション、先物、スワップ、金利先渡契約など。現物でも現金でも決済できる |
| 現金決済のコモディティ・デリバティブ | 5 | 現金で決済しなければならない、または当事者の選択で現金決済できるもの |
| 現物決済のコモディティ・デリバティブ(取引基盤で取引されるもの) | 6 | 取引基盤で取引されるもの。組織的取引ファシリティ(OTF)で取引される卸売エネルギー商品で、現物決済が必要なものを除く |
| 現物決済のコモディティ・デリバティブ(6 以外) | 7 | 商業目的でなく、ほかのデリバティブの性質を持つもの |
| 信用リスクを移転するデリバティブ | 8 | |
| 差金決済取引(CFD) | 9 | |
| 気象、運賃、インフレ率などを参照するデリバティブ | 10 | 現金で決済しなければならない、または当事者の選択で現金決済できるもの |
10 番には、ほかの号にない資産、権利、義務、指数、尺度を参照するもので、ほかのデリバティブの性質を持つものも含まれます。C 節の 11 番は排出枠です10。
取引基盤と投資会社の区分
MiFID II は、取引を行う場を 4 つに分けて定義します。規制市場、MTF、OTF の 3 つを合わせて「取引基盤」(trading venue)と呼びます。
| 区分 | 定義の要点 | MiFID II の条 |
|---|---|---|
| 規制市場(regulated market) | 市場運営者が運営し、第三者の売買の意向を、非裁量的なルールに従って契約に至る形で引き合わせる多角的システム | 第 4 条第 1 項(21) |
| MTF(多角的取引ファシリティ) | 投資会社か市場運営者が運営し、第三者の売買の意向を、非裁量的なルールに従って契約に至る形で引き合わせる多角的システム | 第 4 条第 1 項(22) |
| OTF(組織的取引ファシリティ) | 規制市場でも MTF でもない多角的システムで、債券、仕組み債、排出枠、デリバティブの売買の意向が契約に至る形で交わる | 第 4 条第 1 項(23) |
| 取引基盤 | 規制市場、MTF、OTF | 第 4 条第 1 項(24) |
規制市場と MTF の定義は、非裁量的なルールに従うことを要件に書きます。OTF の定義には、この要件がありません11。
システマティック・インターナライザー(SI)は、取引基盤の外で、多角的システムを運営せずに、顧客の注文を自己勘定で執行する投資会社です。2014 年の採択時の定義は、これを組織的、頻繁、体系的、実質的に行う投資会社でした12。ESMA の掲載版の SI の定義は、自己勘定の取引を株式型の商品(equity instruments)に限り、SI の地位を自分で選んで取る場合も含めます。ESMA は 2024 年 3 月 27 日の声明で、SI かどうかを判定する量的な基準を MiFID II の改正が外したこと、その変更は国内法化の後に適用されることを書いています13。
義務を負う者
MiFIR は、MiFID II の認可を受けた投資会社、Directive 2013/36/EU の認可を受けた信用機関(投資サービスを提供するとき)、市場運営者に適用されます。第 5 編のデリバティブの規定は、欧州市場インフラ規則(EMIR)の金融カウンターパーティと、EMIR の条件を満たす非金融カウンターパーティにも適用されます(2014 年の採択時の本文)14。金融カウンターパーティと非金融カウンターパーティの区分は、EMIRで扱います。
求められること
次の表は、デリバティブに関わる義務を、誰に何を求めるかで並べたものです。
| 項目 | 誰に | 求めること | 条 |
|---|---|---|---|
| 取引義務 | 清算義務の対象の金融カウンターパーティと非金融カウンターパーティ | 対象のデリバティブを、規制市場、MTF、OTF、同等と認められた第三国の取引基盤だけで取引する | MiFIR 第 28 条、第 32 条、第 34 条 |
| 取引前の透明性 | 取引基盤の運営者 | 指値の価格と数量を公表する。対象は、上場デリバティブと一部の店頭デリバティブ | MiFIR 第 8a 条第 1 項、第 2 項 |
| 取引後の透明性(取引基盤) | 取引基盤の運営者 | 約定の価格、数量、時刻を公表する。対象は、取引前と同じ範囲 | MiFIR 第 10 条第 1 項 |
| 取引後の透明性(取引基盤の外) | 投資会社 | 約定の価格、数量、時刻を公表する。対象は、第 8a 条第 2 項の店頭デリバティブ | MiFIR 第 21 条第 1 項 |
| 取引報告 | 投資会社 | 取引の詳細を、翌営業日の終わりまでに所管当局へ報告する | MiFIR 第 26 条第 1 項 |
| ポジション制限 | 加盟国の所管当局(上限を設ける) | 農産物と "critical or significant" のコモディティ・デリバティブの純ポジションに上限を設ける | MiFID II 第 57 条第 1 項 |
| ポジション管理 | ESMA | 市場の秩序や金融システムの安定への脅威に対し、所管当局の措置が足りないとき、ポジションの情報と縮小を求める | MiFIR 第 45 条第 1 項、第 2 項 |
| 商品介入 | ESMA、所管当局 | ESMA は EU 全体で一時的に、所管当局は自国で、金融商品の販売を禁止または制限できる15 | MiFIR 第 40 条第 1 項、第 42 条第 1 項 |
| 適合性 | 投資会社 | 助言とポートフォリオ管理で、顧客の知識、財務状況、目的に合う商品を勧める | MiFID II 第 25 条第 2 項 |
| 適切性 | 投資会社 | 原則としてそれ以外のサービスで、顧客の知識と経験から、適切かを評価する | MiFID II 第 25 条第 3 項、第 4 項 |
| プロダクト・ガバナンス | 投資会社 | 提供または販売する金融商品が、対象の顧客層のニーズに合い続けているか、販売の戦略が適切かを、定期的に見直す | MiFID II 第 16 条第 3 項 |
| 最良執行 | 投資会社 | 顧客の注文の執行で、最善の結果を得るために十分な手を尽くす | MiFID II 第 27 条第 1 項 |
取引義務と EMIR の清算義務
取引義務は、EMIR の清算義務の対象の取引に、取引の場の条件を足す義務です。対象者は、EMIR の清算義務を負う金融カウンターパーティと非金融カウンターパーティで、その相手は、同じく清算義務を負う金融カウンターパーティか非金融カウンターパーティです。取引義務の対象と宣言され、公開簿に載るデリバティブの種類は、規制市場、MTF、OTF、同等と認められた第三国の取引基盤だけで取引します。清算義務の対象にならない、または免除される取引は、取引義務の対象外です16。
取引義務が効力を持つには、次の 2 つが要ります。そのデリバティブの種類が、少なくとも 1 つの取引基盤で取引されていること。第三者の売買の意向が十分にあり、取引基盤だけで取引できる程度に流動性があること17。ESMA は、流動性を取引の頻度と規模、参加者の数と種類、スプレッドの平均で判断し、対象と開始日を定める RTS の案を作ります。欧州委員会が RTS として採択します。
流動性への悪影響や金融の安定への脅威を避ける必要があるときは、ESMA の要請で、欧州委員会が取引義務を一時的に停止できます。加盟国の所管当局の要請で、特定の金融カウンターパーティについて停止する仕組みもあります18。
ESMA は、取引義務の対象のデリバティブ、それが取引される取引基盤、義務が効力を持つ日を、公開簿に載せます19。ESMA が 2023 年 9 月 4 日付で公表した公開簿の版の対象は、次の 2 種類です。
| 種類 | 通貨 | 内容 |
|---|---|---|
| 固定対変動の金利スワップ | EUR | 変動金利の参照が EURIBOR の 6 か月物。期間は 2〜10 年、12 年、15 年、20 年、30 年 |
| 固定対変動の金利スワップ | EUR | 変動金利の参照が EURIBOR の 3 か月物。期間は 2〜7 年、10 年、15 年、20 年、30 年 |
| 指数 CDS | EUR | iTraxx Europe Main と iTraxx Europe Crossover。直近の系列と 1 つ前の系列の 5 年物 |
GBP と USD の金利デリバティブは、すでに対象から外れています20。
取引義務の対象かの判定の流れと例
図の説明
取引義務の対象かどうかを、4 つの質問で確かめる図です。
E 証券が、清算義務を負う金融カウンターパーティと結ぶ取引で、公開簿が定める義務の効力を持つ日が過ぎている架空の例で考えます。E 証券も、清算義務を負う金融カウンターパーティです。
| 例 | 取引 | 効いた条件 | 結論 |
|---|---|---|---|
| 1 | EUR の固定対変動の金利スワップ。変動金利の参照は EURIBOR の 6 か月物で、期間は 5 年 | 清算義務の対象で、免除なし。公開簿の版の 6 か月物、期間 2〜10 年に当てはまる20 | すべての質問が「はい」で、原則として取引義務の対象 |
| 2 | 例 1 と同じ条件の金利スワップで、清算義務の免除を受けている | 清算義務の対象にならない、または免除される取引は、取引義務の対象外16 | 2 番目の質問が「いいえ」で、対象外 |
| 3 | GBP の固定対変動の金利スワップ。清算義務の対象で、免除なし | 公開簿の版は、GBP の金利デリバティブがすでに対象から外れたと書く20 | 3 番目の質問が「いいえ」で、対象外 |
例 1 は、スポット開始、オプションなし、元本一定、固定側の支払頻度など、ほかの条件も公開簿の表のクラス 1.1 と同じものとします。
透明性
2024 年の改正は、デリバティブの透明性の範囲を、上場デリバティブと一部の店頭デリバティブに限りました21。
取引前の透明性は、中央指値注文板(central limit order book)か定期的なオークションを使う場合の義務です。規制市場の運営者は、上場デリバティブの指値の価格と数量を公表します。MTF と OTF を運営する市場運営者と投資会社は、次の表の店頭デリバティブについて公表します22。
| 条件 | 対象の店頭デリバティブ |
|---|---|
| 通貨が EUR、JPY、USD、GBP のいずれかで、清算義務の対象で、中央清算機関(CCP)で清算される | 金利デリバティブでは、契約上の期間が 1、2、3、5、7、10、12、15、20、25、30 年のいずれか |
| 通貨が EUR、JPY、USD、GBP のいずれかで、CCP で清算される | グローバルなシステム上重要な銀行を参照する単一名の CDS |
| 通貨が EUR、JPY、USD、GBP のいずれかで、CCP で清算される | そうした銀行を含む指数を参照する CDS |
取引後の透明性では、取引基盤の運営者が、上場デリバティブと上の表の店頭デリバティブについて公表します。取引基盤の外の取引では、投資会社が、上の表の店頭デリバティブについて、承認公表機関(APA)を通じて公表します23。適用の時点は「施行と改正」の表にあります。
SI については、2024 年 3 月 28 日から、非株式型の商品(デリバティブを含む)についての SI の呼値の義務が適用されません。改正がその義務を定めた条を削ったためです24。
取引報告と EMIR の報告
取引報告は、報告を投資会社自身、投資会社に代わる承認報告機関(ARM)、取引が成立した取引基盤のいずれかが行うことを認めます25。
改正後の条文が対象にする商品は、取引基盤で取引される商品(取引基盤の外での取引を含む)、その原資産が取引基盤で取引される商品、指数やバスケットを原資産とする商品です。店頭デリバティブは、取引基盤で行った取引が報告の対象です。MTF と OTF の運営者が取引前に公表する店頭デリバティブは、取引基盤の外の取引も対象です26。適用の時点は「施行と改正」の表にあります。
ESMA の 2024 年 3 月 27 日の声明は、改正が、取引基盤の外で行った取引の一部を報告の対象から外したと書いています。報告事項には、有効日、報告義務を負う主体の識別、取引の識別コードが加わり、免除の指定と空売りの印が外れます。
MiFIR の取引報告は、EMIR の報告とは別の義務です。MiFIR の義務は、投資会社と取引基盤の運営者が、所管当局に報告するものです27。EMIR の報告は、取引の当事者と中央清算機関(CCP)が、取引情報蓄積機関に報告するものです28。
2 つの義務の重なりには調整があります。EMIR に従って取引情報蓄積機関に報告した取引は、次の 3 つがそろうとき、投資会社の MiFIR の取引報告の義務を果たしたとみなします29。
- その機関が ARM として承認されている。
- 報告が MiFIR の取引報告に必要な事項を含む。
- 報告が期限内に所管当局へ送られる。
ポジション、商品介入、顧客の保護
ポジション制限には、表にない条件が 3 つあります30。
- "critical or significant" は、取引基盤で取引されるものと、経済的に同等の店頭契約のうち、建玉の規模が大きいものです。規模は、最終的にポジションを持つ者(end position holders)の純ポジションの合計で測り、1 年間の平均で 30 万ロット以上が当たります。
- 上限は、グループ全体で合算したポジションで設定します。目的は、市場の不正の防止と、秩序ある価格形成と決済の支援です。
- 非金融事業体が、自らの商業活動に直接関わるリスクを客観的に減らしているポジションは、上限の対象外です。
ESMA のポジション管理は、次の 2 つの条件がそろうときに使えます。市場の秩序や金融システムの安定への脅威があること。所管当局が、その脅威に対する措置を取っていないか、取った措置が足りないこと。ESMA は、情報の要求と縮小または解消の要求ができ、最後の手段としてコモディティ・デリバティブの取引を制限することもできます31。
顧客の保護の 4 つの規定は、上の表のとおりです323334。最良執行は、価格、費用、速度などを考えるもので、顧客の具体的な指示があればそれに従います。
施行と改正
次の表は、官報への掲載、発効、適用開始などを分けた日付です。
| 日付 | 何の日付か | 資料 |
|---|---|---|
| 2014 年 5 月 15 日 | 法令に付く日付。MiFID II と MiFIR のどちらも、欧州議会と理事会の法令としての日付 | MiFID II、MiFIR の採択版の題 |
| 2014 年 6 月 12 日 | 官報(OJ L 173)への掲載 | MiFIR 採択版の改正条項の脚注 |
| 2014 年 7 月 2 日 | 発効。官報への掲載の日から 20 日後と定める35 | MiFIR 第 55 条、MiFID II 第 96 条(採択版) |
| 2017 年 7 月 3 日 | 加盟国が MiFID II の国内法を採択して公表する期限 | MiFID II 第 93 条(ESMA の掲載版) |
| 2018 年 1 月 3 日 | 適用開始。MiFIR の適用が始まり、加盟国は MiFID II の国内法を同じ日から適用する | MiFIR 第 55 条第 2 項、MiFID II 第 93 条(ESMA の掲載版) |
| 2024 年 2 月 28 日 | 改正の 2 法令(規則 (EU) 2024/791 と指令 (EU) 2024/790)に付く日付 | ESMA の声明の脚注 |
| 2024 年 3 月 28 日 | 規則 (EU) 2024/791 の発効 | ESMA の声明、ESMA のページ |
| 2025 年 9 月 29 日 | 指令 (EU) 2024/790 の国内法化の期限 | ESMA のページ |
2014 年の採択時の本文は、MiFIR の適用開始を 2017 年 1 月 3 日、MiFID II の国内法の適用を同じ日と書いていました。ESMA の掲載版は 2018 年 1 月 3 日です36。
2024 年の改正は、規則 (EU) 2024/791 が MiFIR を、指令 (EU) 2024/790 が MiFID II を改めました。規則の題は、データの透明性を高めること、統合テープ(consolidated tape)の障害を取り除くこと、取引義務を最適化すること、注文フローへの対価の受け取りを禁じることを挙げています37。デリバティブに関わる主な変更は、次のとおりです。
| 変更 | 内容 | 適用 |
|---|---|---|
| 取引前の透明性(第 8a 条) | 上場デリバティブと一部の店頭デリバティブに限る | 2024 年 3 月 28 日 |
| 取引義務(第 28 条第 5 項、RTS 5) | 適用しない | 2024 年 3 月 28 日 |
| 取引義務(第 28 条第 2a 項) | 清算義務の対象でない、または免除される取引を、取引義務の対象外とする | 資料に記載なし |
| SI の呼値の義務(第 18 条) | 非株式型の商品についての義務を削る | 2024 年 3 月 28 日 |
| SI の量的な判定(MiFID II 第 4 条) | 量的な基準を外す | 国内法化の後 |
| 取引後の透明性(第 10 条、第 21 条第 4 項、第 4a 項) | 範囲を改める | 改正された RTS 2 の適用開始から |
| 取引後の透明性(第 21 条の残り) | 範囲を改める | 2024 年 3 月 28 日 |
| 取引報告(第 26 条) | 範囲と報告事項を改める | 改正された RTS 22 の適用開始から |
改正された RTS 2 と RTS 22 の適用開始までは、取引後の透明性と取引報告の該当する規定は、改正前の規定が適用されます38。
legislation.gov.uk の掲載版(contents のページ)は、EU 離脱後の英国の法として改訂された本文です。取引場所を「UK、ジブラルタル、EU の取引基盤」と書き、技術基準を定める主体を英国金融行為監督機構(FCA)としています39。
実務への影響
取引義務の対象のデリバティブは、清算義務を負う金融カウンターパーティと非金融カウンターパーティが、同じく清算義務を負う相手と取引するとき、取引基盤(同等と認められた第三国の取引基盤を含む)だけで取引します。清算義務の対象にならない、または免除される取引は対象外です16。投資会社は、取引の詳細を翌営業日の終わりまでに所管当局へ報告します25。EMIR に従って取引情報蓄積機関に報告した取引は、3 つの条件がそろえば、この取引報告の義務を果たしたとみなされます29。最良執行は顧客の注文を執行するときの義務で、適合性は助言とポートフォリオ管理、適切性は原則としてそれ以外のサービスで評価します3234。
この記事が書いていないこと
適切性の条件付きの例外(注文の執行、または受付と伝達だけのサービス)は、この記事では扱いません。2024 年の改正前の細目、改正の 2 法令の官報への掲載日、改正された RTS の適用開始日、取引義務の第 2a 項の適用日は、この記事では扱いません。
注
-
MiFID II 採択版の前文 (4)。 ↩
-
MiFIR 採択版の前文 (1)。 ↩
-
ESMA の Interactive Single Rulebook の MiFIR 第 55 条の最後の項(全体が拘束力を持ち、直接適用)。同 MiFID II 第 93 条第 1 項(国内法の措置の採択、公表、適用)。 ↩
-
MiFID II は OJ L 173, 12.6.2014, p. 349、MiFIR は OJ L 173, 12.6.2014, p. 84。legislation.gov.uk の採択版の題と、MiFIR の改正条項の脚注。 ↩
-
MiFID II 採択版の前文 (7)。 ↩
-
MiFIR 採択版の第 1 条第 1 項 (a) から (f)。MiFID II 採択版の第 1 条第 2 項 (a) から (e)。 ↩
-
MiFID II 第 4 条、第 16 条、第 25 条、第 27 条、第 57 条(ESMA の掲載版)。 ↩
-
MiFIR 第 32 条第 1 項(ESMA が RTS の案を作り、欧州委員会が欧州議会・理事会規則 (EU) No 1095/2010 の第 10 条から第 14 条の手続で採択する)。 ↩
-
2014 年の採択版は legislation.gov.uk、2024 年の改正を反映した版は ESMA の Interactive Single Rulebook。 ↩
-
MiFID II 採択版の付属書 I の C 節 (4) から (11)。(6) の除外は、OTF で取引される卸売エネルギー商品で現物決済が必要なもの。第 4 条第 1 項(15)(ESMA の掲載版)は、金融商品を「付属書 I の C 節の商品」と定義。 ↩
-
MiFID II 第 4 条第 1 項(21) から(24)(ESMA の掲載版)。OTF の定義の適用範囲は、"bonds, structured finance products, emission allowances or derivatives"。 ↩
-
MiFID II 採択版の第 4 条第 1 項(20)("on an organised, frequent systematic and substantial basis")。 ↩
-
MiFID II 第 4 条第 1 項(20)(ESMA の掲載版。"equity instruments" と、SI の地位を選ぶ場合)。ESMA の 2024 年 3 月 27 日の声明(ESMA74-2134169708-7163)の 5 ページ。 ↩
-
MiFIR 採択版の第 1 条第 2 項(投資会社、信用機関、市場運営者)と第 3 項(第 5 編は、EMIR 第 2 条(8) の金融カウンターパーティと、EMIR 第 10 条第 1 項(b) の非金融カウンターパーティにも適用)。 ↩
-
MiFIR 第 40 条第 1 項(2014 年の採択版)、第 42 条第 1 項(ESMA の掲載版)。 ↩
-
MiFIR 第 28 条第 1 項、第 2a 項、第 3 項、第 4 項(ESMA の掲載版)。第 1 項は清算義務を負う金融カウンターパーティと非金融カウンターパーティ、第 4 項は第三国の取引基盤の同等性の決定。 ↩ ↩2 ↩3
-
MiFIR 第 32 条第 1 項から第 3 項(ESMA の掲載版)。第 1 項 (a) は対象の種類を定める RTS、第 3 項は流動性の基準。 ↩
-
MiFIR 第 32 条第 4a 項、第 4b 項、第 4d 項(ESMA の要請による停止)と、第 32a 条第 1 項(所管当局の要請による、特定の金融カウンターパーティの停止)。ESMA の掲載版。 ↩
-
MiFIR 第 34 条(ESMA の掲載版)。 ↩
-
ESMA「Public Register for the Trading Obligation for derivatives under MiFIR」(ESMA70-156-3921、2023 年 9 月 4 日付)の 1 ページと、3 ページの Table 1、Table 2。 ↩ ↩2 ↩3
-
ESMA の 2024 年 3 月 27 日の声明(ESMA74-2134169708-7163)の 4 ページ「Transparency regime for derivatives」。 ↩
-
MiFIR 第 8a 条第 1 項、第 2 項 (a) から (c)(ESMA の掲載版)。適用日は掲載版の注記。 ↩
-
MiFIR 第 10 条第 1 項、第 21 条第 1 項(ESMA の掲載版)。第 10 条の注記は、改正された RTS 2 の適用開始までの扱い。 ↩
-
MiFIR 第 18 条。ESMA の 2024 年 3 月 27 日の声明の 5 ページ「Non-equity」。採択版の第 18 条第 1 項は、デリバティブなどについて SI の確定した呼値の公表を求める内容。 ↩
-
MiFIR 第 26 条第 2 項 (a) から (d)(ESMA の掲載版)。ESMA の 2024 年 3 月 27 日の声明の 6 ページ「Transaction reporting」。 ↩
-
MiFIR 第 26 条第 1 項、第 5 項(取引基盤の運営者は、MiFIR の対象でない会員などが取引基盤で行った取引を報告する)。ESMA の掲載版。 ↩
-
EMIR 第 9 条第 1 項(取引の当事者と CCP が、取引情報蓄積機関に報告)。ESMA の Interactive Single Rulebook。 ↩
-
MiFIR 第 26 条第 7 項の後段(取引情報蓄積機関を ARM として承認できること、EMIR 第 9 条に従って報告した取引についての項)。ESMA の掲載版。 ↩ ↩2
-
MiFID II 第 57 条第 1 項(ESMA の掲載版。"at a minimum of 300 000 lots on average over a one-year period" と、同項第 2 段落 (a) の非金融事業体のポジションの除外)。 ↩
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MiFIR 第 45 条第 1 項、第 2 項(ESMA の掲載版)。第 1 項 (a) から (c) が措置、第 2 項が 2 つの条件。 ↩
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MiFID II 第 16 条第 3 項の第 2 段落以降(ESMA の掲載版)。 ↩
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MiFIR 第 55 条(ESMA の掲載版)と MiFID II 第 96 条(採択版)の、公布の日の 20 日後という発効の定め。 ↩
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MiFIR 第 55 条第 2 項と MiFID II 第 93 条第 1 項。採択版と ESMA の掲載版で日付が異なる。 ↩
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ESMA の 2024 年 3 月 27 日の声明(ESMA74-2134169708-7163)の 1 ページの本文と脚注 1(規則 (EU) 2024/791 の題)。 ↩
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ESMA の 2024 年 3 月 27 日の声明の 1 ページと 5 ページ。ESMA「MiFID II and MIFIR review」のページ。第 8a 条と第 28 条は ESMA の掲載版の注記。 ↩
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legislation.gov.uk「Regulation (EU) No 600/2014」の contents のページの第 26 条第 2 項と第 9 項。 ↩
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MiFID II 第 16 条第 6 項、第 7 項(ESMA の掲載版)。 ↩
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MiFIR 第 26 条第 7 項(ESMA の掲載版)。 ↩
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MiFIR 第 26 条第 3 項、第 4 項、第 6 項(ESMA の掲載版)。 ↩