銀行事業体(銀行や銀行持株会社など)のトレーディング・デスクがスワップなどのデリバティブを売買するときに出てきます。その売買が自己勘定取引の禁止に当たるのか、マーケットメイキングやヘッジの例外として許されるのかを、規則の要件に当てはめて確かめる場面です。

何を求める規制か

ボルカールールは、銀行事業体に 2 つのことを求めます。1 つは、自己勘定取引をしないこと。もう 1 つは、ヘッジファンドとプライベート・エクイティ・ファンドの持分を取得したり保有したりせず、これらのファンドを後援しないことです。法律は、別の定めがある場合を除いて、この 2 つを禁じています1。

この規制は、2010 年 7 月 21 日に成立したドッド・フランク法(Dodd-Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act。Public Law 111-203)の第 6 編に入っています。第 6 編の 1 つの条が、銀行持株会社法(Bank Holding Company Act of 1956。BHC 法)に新しい条を加えました2。合衆国法典では 12 U.S.C. § 1851 です3。デリバティブの清算、取引執行、報告などを定める第 7 編は、ドッド・フランク法第7編で扱います。

法律は、金融安定監督評議会(Financial Stability Oversight Council)に、この条の実施について研究して勧告するよう求めました。その研究の目的には、銀行事業体の健全性を高めること、預金保険や流動性供給の連邦の補助が規制されていない主体に移ることを抑えること、銀行事業体の自己の利益と顧客の利益の利益相反を減らすことなどが挙がっています4。

根拠と所管

規則は、5 つの当局が、所管する銀行事業体ごとに作りました。法律は、預金保険の対象機関については連邦銀行当局が共同で規則を定めると書きます。預金保険対象機関を支配する会社などについては連邦準備制度理事会(理事会)が定めます。米国商品先物取引委員会(CFTC)か米国証券取引委員会(SEC)が主たる金融規制当局である事業体については、それぞれの委員会が定めます5。規則は、連邦銀行当局を、理事会、通貨監督庁(OCC)、連邦預金保険公社(FDIC)と定めます6。

法律は、当局どうしで協議し、規則が比べられるものになるよう求めています。規則の調整は、金融安定監督評議会の議長が担います5。

5 つの当局の規則は、題が同じで、連邦規則集の別の部に載っています。

当局 連邦規則集 規則が対象にする銀行事業体
OCC 12 CFR Part 44 国法銀行、連邦支店と連邦代理店、連邦貯蓄組合、連邦貯蓄銀行と、それらの子会社など7
理事会 12 CFR Part 248(Regulation VV) 州法銀行のうち連邦準備制度の加盟銀行、銀行持株会社、貯蓄貸付組合持株会社、国際銀行法第 8 条の下で銀行持株会社として扱われる会社と、それらの子会社など8
FDIC 12 CFR Part 351 FDIC が適切な連邦銀行当局である預金保険対象機関と、その子会社の一部9
CFTC 17 CFR Part 75 CFTC が主たる金融規制当局である銀行事業体10
SEC 17 CFR Part 255 SEC が主たる金融規制当局である銀行事業体11

規則の中身は、理事会の 12 CFR Part 248 で書きます。スワップと証券ベースのスワップの定義や、CFTC と SEC の役割は、CFTC と SEC の役割分担で扱います。

条文は 2026 年 10 月 1 日時点で公開されている版(最終改正 2021 年 3 月 1 日)を確かめました12。

対象になる者と取引

銀行事業体

法律の「銀行事業体」(banking entity)は、預金保険の対象機関、それを支配する会社、国際銀行法の下で銀行持株会社として扱われる会社、これらの関連会社と子会社です。規則も同じ並びで定めます1314。規則は、次のものを銀行事業体から除きます。

除かれるもの 条件
カバード・ファンド それ自体が、上の定義に当たる事業体ではないとき
投資先の会社 BHC 法第 4 条 (k)(4) の (H) か (I) に基づいて保有する会社と、小規模事業投資会社が支配する投資先で、それ自体が銀行事業体でないとき
FDIC 公社としての立場、または管財人や保全管理人の立場で行動するとき

預金保険の対象機関のうち、機関と、それを支配するすべての会社の連結総資産が 100 億ドル以下で、取引資産と取引負債の合計が連結総資産の 5% 以下のものは、規則の「預金保険対象機関」の定義から除かれます15。この除外は、経済成長・規制緩和・消費者保護法(EGRRCPA)による法律の改正を反映した規則の改正で入り、改正は 2019 年 7 月 22 日に発効しました16。

自己勘定取引とトレーディング勘定

規則は、自己勘定取引を、銀行事業体が本人としてトレーディング勘定のために、1 つ以上の金融商品を売り買いすることと定めます17。トレーディング勘定は、次の 3 つのどれかに当たる勘定です18。

区分 内容
目的による区分 短期の転売、短期の値動きから得る利益、短期の裁定の利益を主な目的とする売買と、そこから生じた持ち高のヘッジに使う勘定
市場リスク資本規則による区分 市場リスク資本規則の対象で、取引の持ち高(またはそのヘッジ)の売買に使う勘定
登録業者による区分 ディーラー、スワップ・ディーラー、証券ベースのスワップ・ディーラーの業務に関わる売買に使う勘定

2 つ目の区分は、銀行事業体か連結される関連会社が、この規則でリスクベースの自己資本比率を計算するときに当たります。3 つ目の区分は、銀行事業体がディーラーなどとして免許か登録を受けている(受けるべき)ときに当たり、米国外で同じ業務をする場合も同じです。

2 つ目の区分が当たる銀行事業体は、1 つ目の目的による区分を適用しません。市場リスク資本規則を使わない銀行事業体も、2 つ目の区分を選んで適用できます19。目的による区分では、売買した金融商品を 60 日以上持ち、60 日以内にリスクの大部分を移していなければ、その売買はトレーディング勘定のものでないと推定されます20。

デリバティブの扱い

規則の「金融商品」は、証券(証券のオプションを含む)、デリバティブ(デリバティブのオプションを含む)、商品の先物契約とそのオプションです。貸出と、外国為替や通貨そのものは含まれません21。

規則の「デリバティブ」には、商品取引所法(Commodity Exchange Act。CEA)が定義するスワップと、証券取引所法(Securities Exchange Act of 1934。Exchange Act)が定義する証券ベースのスワップが入ります。ほかに、現物での決済を予定した、繰延べの受渡しの商品の売買、為替フォワードと為替スワップなども入ります。CFTC と SEC が共同で、スワップに当たらないと定めた取引と、法令が定める銀行商品の一部は、デリバティブから除かれます22。

デリバティブについては、「売る」「買う」の範囲が広く定められています。満期前の解約、譲渡、交換など、権利や義務を消す取引も、売買に含まれます23。

規則は、次のような売買を、自己勘定取引から除きます24。

除かれる売買 主な条件
レポ取引、リバース・レポ取引 同じ相手方と、書面で、買いと売りを同時に約束しているもの
証券の貸借 書面の貸借契約で、貸し手が所有者の経済的な持分を持ち、解約と回収の権利を持つもの
流動性の管理 文書にした流動性管理の計画に基づき、証券、為替フォワード、為替スワップ、通貨スワップを、主に流動性の管理のために売買するもの
清算に関わる売買 デリバティブ清算機関や清算機関が、金融商品の清算に関わって行うもの。清算機関の会員による、顧客の誤りの訂正や債務不履行の処理など
顧客が主導するスワップと、対応するスワップ 同時に結び、銀行事業体が負う価格リスクが最小限にとどまり、登録されたディーラー、スワップ・ディーラー、証券ベースのスワップ・ディーラーでないもの
代理人、ブローカー、保管機関としての売買 単に代理人などとして行うもの

規則は、ほかにも、受渡し義務を満たす売買、従業員の年金の枠組みでの売買、貸付金の回収、誤りの訂正などを除いています。

求められること

許される活動

法律は、禁止の例外として、「許される活動」を挙げます25。規則は、そのうち自己勘定取引に関わるものを、次のように定めます262728。トレーディング・デスクの定義は、マーケットメイキングとヘッジの要件で説明します。

活動 規則の条 主な要件
引受 12 CFR 248.4(a) 証券の売出しの引受業者として持つ、売出しに関係する持ち高
マーケットメイキング関連 12 CFR 248.4(b) トレーディング・デスクが、売りと買いの気配を日常的に出す活動
リスク軽減のヘッジ 12 CFR 248.5 銀行事業体の個別か集計した持ち高に関わり、特定のリスクを減らすよう設計されたヘッジ
米国政府、政府機関、州と地方政府の債務 12 CFR 248.6(a) 米国債、米国の政府機関と政府関連機関(GNMA、FNMA、FHLMC など)の債務、州と地方政府の債務の売買
外国政府の債務 12 CFR 248.6(b) 外国銀行系の事業体の米国での売買と、米国の銀行事業体の外国の関連会社の売買に、それぞれ条件がある
顧客のための取引 12 CFR 248.6(c) 受託者としての取引(実質的な所有権を持たない)と、顧客の注文を受けて自己の勘定で反対売買する取引(リスクレス・プリンシパル)
保険会社の取引 12 CFR 248.6(d) 保険会社の一般勘定か別勘定のための売買で、所在州の投資の法令に従うもの
外国銀行事業体の米国外の取引 12 CFR 248.6(e) 銀行持株会社法第 4 条 (c) の (9) か (13) に基づいて米国外で行うなどの条件を満たすもの

引受では、持ち高の量と種類が、顧客などの合理的に見込まれる近い将来の需要を超えないよう設計され、合理的な期間内に減らす努力をすることが求められます。マーケットメイキング関連では、トレーディング・デスクが、相場の循環を通して、商業的に合理的な量で、売りと買いの気配を出す用意を日常的に持ちます。活動は、近い将来の需要を超えないよう設計されなければなりません。どちらも、報酬が自己勘定取引を促さないことと、免許か登録を持つことが要件です。

規則は、適格外国除外ファンド(qualifying foreign excluded fund)の売買も許します29。

許される活動でも、次のどれかに当たる取引、取引の種類、活動は許されません。顧客などとの間に重大な利益相反を生む、重大な高リスクの資産か取引戦略の保有につながる、銀行事業体の健全性か米国の金融の安定を脅かすものです30。重大な利益相反は、事前の明確で適時の開示か、情報の遮断の体制の整備によって、許される形に整えられます31。

禁止と例外の判定の順番

ここまでの条件を、取引ごとに順に当てはめる流れにすると、次のようになります。

はいいいえ銀行事業体が本人として売買するか自己勘定取引に当たらないはいいいえ金融商品(証券、デリバティブ、商品先物)の売買か金融商品でない(貸出など)はいいいえトレーディング勘定のための売買か自己勘定取引に当たらないいいえはいレポ取引など規則が除く売買か自己勘定取引から除かれるいいえはい許される活動の要件を満たす場合か許される活動の例外原則として禁止の対象
図 1自己勘定取引の禁止に当たるかを確かめる質問の順番
図の説明

自己勘定取引の禁止に当たるかを、5 つの質問で順に確かめる図です。質問 1 から 3 は「いいえ」で、自己勘定取引に当たらない側(質問 2 は金融商品でない側)へ出ます。質問 4 と 5 は「はい」で、規則が除く売買か許される活動の例外へ出て、「いいえ」で次へ進みます。すべて通ると、原則として禁止の対象です。許される活動でも許されない取引とカバード・ファンドの制限は、図に含みません。

次の例は架空の取引で、実際の判定は取引の条件と当局の運用で変わります。

例 1 では、規則の銀行事業体に当たる E 銀行が、トレーディング勘定でスワップを、短期の値動きから得る利益を主な目的に、自己のために売り買いします。顧客の注文に応じた取引でもヘッジでもなく、E 銀行は市場リスク資本規則を使う銀行事業体ではないものとします。短期の値動きから得る利益が主な目的なので、トレーディング勘定の目的による区分に当たります。スワップはデリバティブで金融商品に入り、規則が除く売買にも、許される活動の要件にも当たる事実がありません。このため、原則として禁止の対象になりえます171821。

例 2 では、E 銀行のトレーディング・デスクが、トレーディング勘定でスワップを、顧客の需要に応じて売りと買いの気配を日常的に出す形で売買します。マーケットメイキング関連の活動の要件(たとえば、相場の循環を通した気配、近い将来の需要を超えない設計、報酬が自己勘定取引を促さないこと、免許か登録)と、ほかの要件も満たすものとします。この活動は許される活動の要件を満たすので、マーケットメイキング関連の活動として禁止の例外になりえます26。

例 3 では、E 銀行が、トレーディング勘定でレポ取引を、同じ相手方と、書面で、定めた資産を、定めた価格と日付で、買いと売りを同時に約束して行います。この約束は、規則が除く売買の条件に当たります。このため、自己勘定取引から除かれる売買に当たりえます24。

マーケットメイキングとヘッジの要件

マーケットメイキング関連の活動の要件は、金融商品を対象にします。規則の「金融商品」にデリバティブが入るため、マーケット・メイカーとしてトレーディング・デスクがスワップなどの気配を出し続ける活動にも、この要件が当てはまります。引受は、証券の売出しが対象です32。規則の「トレーディング・デスク」は、市場リスク資本規則を使わない銀行事業体では、1 つの明確な戦略のために構成され、共通の限度で運用され、取引を一緒に記帳する単位です。市場リスク資本規則を使う銀行事業体では、その規則の計算のために、銀行事業体か関連会社が設けた単位がデスクになります33。

要件の中の「顧客」は、そのデスクの市場づくりのサービスを使う市場参加者です。取引資産と取引負債が 500 億ドル以上の別の銀行事業体のデスクなどは、原則として顧客に数えません。例外は、デスクがその相手を顧客として扱う理由を文書にしたときと、幅広い参加者が取引できる取引所などでの匿名の売買です34。

デスクごとに、近い将来の需要を超えない内部の限度を定めて実施し、維持して執行している銀行事業体は、需要を超えないという要件を満たすと推定されます。理事会が、デスクの活動が顧客などの近い将来の需要に基づいていないと判断すれば、この推定を覆せます。限度を超えたときは、できるだけ早く是正することが、推定が続く条件です。限度の超過と引上げのどちらも、書面の承認の手続を守る必要があります35。超過した限度と、一時的か恒久的かを問わない引上げは、記録を残し、理事会の求めに応じて出せるようにします36。

リスク軽減のヘッジは、取引資産・負債が大きい銀行事業体と、そうでない銀行事業体で要件が分かれます。

重要な取引資産・負債を持つ(200 億ドル以上)銀行事業体の要件は、次のとおりです。

  • ヘッジに使える持ち高、手法、戦略についての方針と手続、内部統制、独立した検証を含むコンプライアンス・プログラムを持つ。
  • ヘッジは、開始時に、特定できるリスク(市場リスク、カウンターパーティ・リスクなどの信用リスク、為替リスク、金利リスク、商品価格リスク、ベーシスリスクなど)を減らすか、大きく和らげるよう設計される。
  • ヘッジ自体が、同時にヘッジされない重大な新しいリスクを生まず、継続して調整される。
  • 報酬が自己勘定取引を促さない。

それ以外の銀行事業体の要件は、ヘッジが開始時に、特定できるリスクを減らすか大きく和らげるよう設計され、必要に応じて継続して調整されることです。

重要な取引資産・負債を持つ銀行事業体には、ヘッジの売買を文書にする要件もあります。対象は、次の 3 つのどれかに当たるリスク軽減のヘッジの売買です。

  • ヘッジ対象の持ち高を持つデスクとは別のデスクが行う売買
  • その持ち高を持つデスクの方針に特定されていない手段による売買
  • 複数のデスクの持ち高をまとめて対象にする売買

これらは、売買と同時に、減らすリスク、戦略、ヘッジの責任を持つデスクか部門を文書にし、5 年以上保存します。デスクが日常的に使う手段の事前承認の一覧と、承認された限度の範囲内であれば、この文書化は要りません37。

カバード・ファンド

法律は、ヘッジファンドとプライベート・エクイティ・ファンドを、投資会社法(Investment Company Act of 1940)の適用除外がなければ投資会社になる発行体と定めます38。規則は、この定義を「カバード・ファンド」とし、一定の商品ファンド(commodity pool)と、米国と関係する銀行事業体に関連する外国のファンドを加えます39。

規則は、銀行事業体が本人として、カバード・ファンドの持分を取得し、保有し、または後援することを、例外を除いて禁じます。「後援」は、ファンドの無限責任組合員、運営の構成員、受託者になること、取締役などの過半数を選ぶか支配すること、ファンドと同じ名称か、その変形を使うことです40。銀行事業体と同じ名称をファンドが持つことの制限は、2019 年 7 月の改正で、投資顧問業者である銀行事業体が一定の条件で同じ名称を使えるよう緩和されました16。

許される形の 1 つが、銀行事業体が組成して募集するファンドへの出資です。銀行事業体と関連会社の出資は、設立後 1 年以内(理事会が認めれば、それより長く)に、ファンドの持分総数か総価値の 3% 以下に減らします。すべてのカバード・ファンドへの出資の合計は、銀行事業体の Tier 1 資本の 3% を超えられません。資産担保証券の発行体であるファンドには、別の定めがあります41。

銀行事業体が、カバード・ファンドの投資運用者、助言者、後援者の立場にあるときは、原則として、そのファンドとの間で、連邦準備法の「カバード・トランザクション」に当たる取引をしてはなりません。例外として、たとえば、規則の要件を満たすファンドへの出資や、一定の条件を満たすプライム・ブローカレッジ取引は認められます。連邦準備法の関連会社との取引に関する別の規定も、銀行事業体を加盟銀行、ファンドをその関連会社とみなして適用されます42。

コンプライアンス・プログラムと報告

限定的な銀行事業体など(適格外国除外ファンドを含む)を除く銀行事業体は、活動の種類、規模、複雑さに応じたコンプライアンス・プログラムを持ちます43。規則は、取引資産・負債の規模で、求める内容を 3 段階に分けます。規模は、関連会社と子会社を含めた取引資産と取引負債の合計を、直近 4 四半期の各期末で測った平均で見ます。米国政府と政府機関などの債務の売買に当たる分は、この計算から除きます44。

区分 取引資産・負債(4 四半期平均) 求められること
重要(significant) 200 億ドル以上(理事会が指定した場合も含む) 方針と手続、内部統制、責任を明確にした管理の枠組み、独立した検証と監査、研修、5 年以上の記録を含むプログラム45
中程度(moderate) 重要でも限定的でもない 既存の方針と手続に、規則への参照を含め、活動の規模に応じて調整すればよい46
限定的(limited) 10 億ドル未満(理事会が指定した場合を除く) 規則に従っていると推定され、継続して示す義務がない47

重要の区分では、最高経営責任者(CEO)が毎年 3 月 31 日までに理事会に書面で確認を出します。付録 A の報告も、四半期ごとに、四半期末から 30 日以内に出します45。限定的の区分でも、検査などで規則に反する取引が見つかれば、理事会が推定を覆せます47。

はいいいえ取引資産・負債(4 四半期平均)は 200 億ドル未満か重要の区分はいいいえ同じ平均は 10 億ドル未満か中程度の区分限定的(規則に従っていると推定される)
図 2コンプライアンス・プログラムの区分を決める質問の順番
図の説明

取引資産・負債の 4 四半期平均で、コンプライアンス・プログラムの区分を決める図です。1 つ目が「いいえ」なら重要の区分、2 つ目が「いいえ」なら中程度の区分で、どちらも「はい」なら限定的です。限定的は、規則に従っていると推定される区分です。理事会が区分を指定する場合は、図に表れません。

外国銀行組織とその子会社は、米国での業務を合算した取引資産・負債で測ります44。理事会は、重要でない銀行事業体にも、取引や投資の規模や複雑さ、規則を回避するおそれがある場合には、中程度か重要な銀行事業体に求める事項を求められます48。

付録 A の報告は、デスクごとの指標の組です。内部の限度と使用状況、バリュー・アット・リスク、損益の総合的な要因分解、持ち高、取引量の 5 つを、デスクの情報や指標の識別情報とあわせて出します49。

規則に反する活動や投資を見つけた銀行事業体は、見つけ次第、速やかにその活動をやめ、投資を処分しなければなりません。理事会は、合理的な理由があるとき、活動の制限や終了、投資の処分を指示するなど、法が認める措置を取れます50。

施行と経過措置

条文の発効、規則の発効、遵守の開始は別の日です。2015 年 7 月 21 日の行は理事会が延ばした後の適合期間の期限です。

日付 区分 出来事
2010 年 7 月 21 日 成立 ドッド・フランク法が成立した51
2012 年 7 月 21 日 法の効力 第 13 条の禁止と制限が効力を持った。法は、銀行事業体に、この日から 2 年の適合期間(2014 年 7 月 21 日まで)を与えた52
2014 年 1 月 31 日 官報掲載 OCC、理事会、FDIC、SEC の最終規則(79 FR 5536)と、CFTC の最終規則(79 FR 5808)が掲載された53
2014 年 4 月 1 日 規則の発効 2013 年の最終規則が発効した53
2015 年 7 月 21 日 適合期間の期限(延長後) 理事会が、最終規則に合わせた別の決定で適合期間を 1 年延ばした52
2019 年 7 月 22 日 規則の発効 経済成長・規制緩和・消費者保護法を反映した改正が発効した16
2020 年 1 月 1 日 規則の発効 2019 年 11 月 14 日に官報に載った改正が、OCC、理事会、FDIC、CFTC で発効した。SEC は同月 13 日54
2020 年 10 月 1 日 規則の発効 2020 年 7 月 31 日に官報に載った、カバード・ファンドの規定の改正が発効した55
2021 年 1 月 1 日 遵守日 2019 年 11 月の改正(84 FR 61974)の遵守日54

2019 年 7 月の改正(84 FR 35008)に遵守日の定めはありません。2021 年 1 月 1 日までは、2013 年の規則が付録 Z として効力を保ちました。当局の技術的な準備を条件に、早めに自主的に従うことも認められました54。

法律は、この規制の効力が、最終規則の公表から 12 か月後と、法の成立から 2 年後のどちらか早い日に生じると定めます。適合期間は、効力が生じてから 2 年で、理事会は 1 年ずつ、合計で 3 年まで延ばせます。流動性の低いファンドには、理事会が、2010 年 5 月 1 日に有効だった契約上の義務を果たすために、1 回に限り最長 5 年の延長を認められます56。

2019 年 11 月の改正は、コンプライアンス・プログラムの要件を、取引活動の規模に応じて調整しました。2013 年の規則の付録 B にあった強化された要件はなくなりました。CEO の確認は、重要な取引資産・負債を持つ銀行事業体だけに求め、収集する指標の一部もなくしました57。

実務への影響

この規制で業務に加わる負担の例は、デスクごとの限度の運用、ヘッジの文書化、付録 A の指標の提出です。限度を超えたときは、速やかな是正と、書面の承認の手続を守ることが、需要を超えないという推定が続く条件です。超過した限度と引上げの記録の保存と提出は、別に求められます3536。重要な取引資産・負債を持つ銀行事業体には、一定のヘッジの売買の文書化と、付録 A の指標の提出が加わります375845。

この記事が書いていないこと

OCC、FDIC、CFTC、SEC の規則(12 CFR Part 44、Part 351、17 CFR Part 75、Part 255)の条文を、理事会の Part 248 と比べることは、この記事では扱いません。2015 年 7 月 21 日より後の適合期間の延長は、この記事では扱いません。

注

  1. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条 (a)(1)(A)、(B)(124 Stat. 1620)。 ↩

  2. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条(第 6 編。124 Stat. 1620 から 1631)。成立の日付は同法の冒頭の注記と末尾の "Approved July 21, 2010"。 ↩

  3. 12 CFR 248.1 (a)。規則が、この条を 12 U.S.C. 1851 と引く。 ↩

  4. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条 (b)(1)(A) から (G)(124 Stat. 1621)。 ↩

  5. 同じく第 13 条 (b)(2)(A)、(B)(i) から (iii)(124 Stat. 1621 から 1622)。 ↩ ↩2

  6. 12 CFR 248.2 (m)。 ↩

  7. 12 CFR 44.1 (c)。権限は同 Part 44 の Authority 欄。 ↩

  8. 12 CFR 248.1 (a)、(c)。 ↩

  9. 12 CFR 351.1 (c)。 ↩

  10. 17 CFR 75.1 (c)。 ↩

  11. 17 CFR 255.1 (c)。 ↩

  12. eCFR の改正履歴(Title 12、Part 248)。Part 248 の項目の最後の amendment_date は 2021-03-01(改正履歴の取得は 2026 年 10 月 3 日)。 ↩

  13. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条 (h)(1)(124 Stat. 1629)。本文の国際銀行法の下の扱いは、国際銀行法第 8 条。 ↩

  14. 12 CFR 248.2 (c)(1)、(2)。 ↩

  15. 12 CFR 248.2 (r)(2)。 ↩

  16. 連邦官報 84 FR 35008(2019 年 7 月 22 日)の Summary と Dates("These final rules are effective on July 22, 2019.")。 ↩ ↩2 ↩3

  17. 12 CFR 248.3 (a)。 ↩ ↩2

  18. 12 CFR 248.3 (b)(1)(i) から (iii)。市場リスク資本規則の定義は同 (e)(11)、(12)(OCC は 12 CFR Part 3、理事会は Part 217、FDIC は Part 324)。 ↩ ↩2

  19. 12 CFR 248.3 (b)(2)(i)、(ii)。 ↩

  20. 12 CFR 248.3 (b)(4)。 ↩

  21. 12 CFR 248.3 (c)(1)、(2)。 ↩ ↩2

  22. 12 CFR 248.2 (h)(1)(i) から (vi)、(2)(i)、(ii)。CEA 第 1a 条 (47)、Exchange Act 第 3 条 (a)(68) の定義。 ↩

  23. 12 CFR 248.2 (w)、(z)。 ↩

  24. 12 CFR 248.3 (d)(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(7)、(11)。そのほかの除外は (6)、(8) から (10)、(12)、(13)。 ↩ ↩2

  25. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条 (d)(1)(A) から (J)(124 Stat. 1623 から 1626)。 ↩

  26. 12 CFR 248.4 (a)(2)、(b)(2)。 ↩ ↩2

  27. 12 CFR 248.5 (a)。 ↩

  28. 12 CFR 248.6 (a)、(b)、(c)、(d)、(e)。 ↩

  29. 12 CFR 248.6 (f)。 ↩

  30. 12 CFR 248.7 (a)(1) から (3)。法律の根拠は BHC 法第 13 条 (d)(2)(A)。 ↩

  31. 12 CFR 248.7 (b)(2)(i)、(ii)。 ↩

  32. 12 CFR 248.4 (b)(2)(i)、(ii)、(4)、(5)。デリバティブが金融商品に入ることは 12 CFR 248.3 (c)(1)(ii)。 ↩

  33. 12 CFR 248.3 (e)(14)。 ↩

  34. 12 CFR 248.4 (b)(3)(i)(A)、(B)。取引資産・負債の測り方は同 248.2 (ee)。 ↩

  35. 12 CFR 248.4 (c)(1) から (4)。 ↩ ↩2

  36. 12 CFR 248.4 (c)(3)(i)、(ii)。 ↩ ↩2

  37. 12 CFR 248.5 (b)(1)、(b)(2)、(c)(1) から (4)。 ↩ ↩2

  38. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条 (h)(2)(124 Stat. 1630)。適用除外は投資会社法第 3 条 (c)(1) と (c)(7)。 ↩

  39. 12 CFR 248.10 (a)(1)、(b)(1)(i) から (iii)。 ↩

  40. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条 (h)(5)(124 Stat. 1630)。 ↩

  41. 12 CFR 248.12 (a)(2)(i) から (iii)。法律の根拠は BHC 法第 13 条 (d)(4)(B)(ii)。 ↩

  42. 12 CFR 248.14 (a)(1)、(2)、(b)。カバード・トランザクションは連邦準備法第 23A 条、関連会社との取引に関する別の規定は同法第 23B 条。法律の根拠は BHC 法第 13 条 (f)(1)、(2)。 ↩

  43. 12 CFR 248.20 (a)。 ↩

  44. 12 CFR 248.2 (ee)(1)、(2)、(3)、(s)(1)、(3)。除く売買は 12 CFR 248.6 (a)(1)、(2)。 ↩ ↩2

  45. 12 CFR 248.20 (b)(1) から (6)、(c)、(d)(1)、(2)。 ↩ ↩2 ↩3

  46. 12 CFR 248.20 (f)(2)。 ↩

  47. 12 CFR 248.20 (g)(1)、(2)。限定的の定義は同 248.2 (s)(1)。 ↩ ↩2

  48. 12 CFR 248.20 (h)。 ↩

  49. 12 CFR Part 248 付録 A の I の 1 から 3("Quantitative measurements"、"Trading desk information"、"Quantitative measurements identifying information")。 ↩

  50. 12 CFR 248.21 (a)、(b)。 ↩

  51. Public Law 111-203 の冒頭の注記("July 21, 2010")と、末尾の "Approved July 21, 2010."。 ↩

  52. 連邦官報 79 FR 5536(2014 年 1 月 31 日)の本文のうち、適合期間を述べた箇所(79 FR 5540。注 19 から 21)。理事会の別の決定は、同注 21 が引く理事会の命令。 ↩ ↩2

  53. 連邦官報 79 FR 5536 と 79 FR 5808(2014 年 1 月 31 日)の Dates("The final rule is effective April 1, 2014.")。 ↩ ↩2

  54. 連邦官報 84 FR 61974(2019 年 11 月 14 日)の Dates(Effective date と Compliance date)。 ↩ ↩2 ↩3

  55. 連邦官報 85 FR 46422(2020 年 7 月 31 日)の Summary と Dates("The final rule is effective October 1, 2020.")。 ↩

  56. Public Law 111-203 第 619 条が加える BHC 法第 13 条 (c)(1)、(2)、(3)(124 Stat. 1622 から 1623)。 ↩

  57. 連邦官報 84 FR 61974 の本文のうち、コンプライアンス・プログラムの要件を述べた箇所(付録 B の強化された要件の廃止、CEO の確認を重要な取引資産・負債を持つ事業体に限ること、指標の収集の要件の変更)。 ↩

  58. 12 CFR Part 248 付録 A の、報告の頻度と形式に関する節("A banking entity must calculate any applicable quantitative measurement for each trading day...")。 ↩ ↩2

  59. 12 CFR 248.20 (g)(2)、(i)(1) から (4)。 ↩