対象のスワップを清算機関に提出する、取引と価格を公開する、取引の詳細を報告する、取引基盤で執行する。米国のスワップを扱う業務では、こうした手続のどれが、どの条件で求められるかが問われます。
3 つの義務と根拠
米国のスワップには、商品取引所法(CEA)に基づく、清算、報告、取引基盤での執行の 3 つの義務があります。
清算が求められるスワップは、登録されたデリバティブ清算機関(DCO)か、登録を免除された DCO に提出して清算します1。その清算義務の対象のスワップは、指定契約市場(DCM)かスワップ執行ファシリティ(SEF)で執行します2。
取引と価格のデータは公開され、すべてのスワップはスワップ・データ・リポジトリ(SDR)に報告されます3。
これらは、米国商品先物取引委員会(CFTC)が所管するスワップの義務です。証券ベースのスワップには、米国証券取引委員会(SEC)の管轄が及びます4。3 つの義務の概要はドッド・フランク法第7編で扱います。
| 義務 | CEA の根拠 | CFTC の規則 | 義務を負う者 |
|---|---|---|---|
| 清算 | 第 2(h)(1) 条 | 17 CFR 第 50 部 | 例外に当たらない対象のスワップを執行するすべての者5 |
| 取引と価格の公開報告 | 第 2(a)(13) 条 | 第 43 部 | SEF か DCM で執行したなら、その SEF か DCM、清算で生じるなら DCO、それ以外は報告を負う当事者6 |
| SDR への報告 | 第 2(a)(13)(G) 条 | 第 45 部 | 公開報告と同じ(SEF、DCM、報告を負う当事者、DCO)7 |
| 取引基盤での執行 | 第 2(h)(8) 条、第 5h 条 | 第 37 部 | 取引の当事者。SEF の側は第 37 部が執行の方法を定める8 |
SDR は、第三者が結んだスワップの取引、建玉、条件の情報や記録を集め、スワップの記録を一元的に置く場を提供する者です。DCM は、CFTC が第 38 部に従って指定した取引所です9。
連邦規則集(CFR)の条文は、2026 年 10 月 1 日時点の eCFR を確かめました。
清算義務の対象と例外
対象の決め方と指定されている区分
CFTC は、スワップの区分を清算義務の対象にするかを、継続的に審査します。DCO が清算を予定するスワップを CFTC に提出する経路もあり、どちらも 30 日以上の意見公募を置きます10。判断では、未決済の想定元本、取引の流動性と価格データ、清算の枠組みと容量、システミック・リスクの低減への効果、競争への影響、清算機関や清算会員が破綻したときの法的な確実性を考慮します11。
清算義務の対象の金利スワップは、固定対変動、ベーシス、FRA、OIS の 4 種類で、ほかに CDS の指数があります。固定対変動と OIS は通貨が多いため、次の表では 2 行に分けています。2026 年 10 月 1 日時点の eCFR では、区分は次のとおりでした12。
| 区分 | 通貨と変動金利の指標 |
|---|---|
| 金利スワップの固定対変動(1) | AUD(BBSW)、CAD(CDOR)※、EUR(EURIBOR)、HKD(HIBOR) |
| 金利スワップの固定対変動(2) | MXN(TIIE-BANXICO)※、NOK(NIBOR)、PLN(WIBOR)、SEK(STIBOR) |
| 金利スワップのベーシス | AUD(BBSW)、EUR(EURIBOR) |
| 金利スワップの FRA | EUR(EURIBOR)、PLN(WIBOR)、NOK(NIBOR)、SEK(STIBOR) |
| 金利スワップの OIS(1) | AUD(AONIA-OIS)、CAD(CORRA-OIS)、EUR(€STR)、SGD(SORA) |
| 金利スワップの OIS(2) | GBP(SONIA)、CHF(SARON)、USD(FedFunds、SOFR)、JPY(TONA) |
| CDS の指数(北米) | CDX.NA.IG、CDX.NA.HY |
| CDS の指数(欧州) | iTraxx Europe、iTraxx Europe Crossover、iTraxx Europe HiVol |
※ CAD(CDOR)と MXN(TIIE-BANXICO)の固定対変動の行は、2026 年 10 月 8 日時点の eCFR の第 50.4 条にありません。
CDS の指数は、いずれも条文が定める期間と系列で、トランシェはありません。各区分には、期間の範囲も定められています。円は OIS だけが対象で、TONA を参照する、期間 7 日〜30 年、オプション性のないスワップです13。米ドルの固定対変動は、この表の区分にありません。
2026 年 9 月 8 日公表の改正は、金利スワップの区分を改めるものでした。CAD の CDOR から CORRA への移行と、MXN の TIIE から TIIE de Fondeo(F-TIIE)への移行に合わせた改正で、効力発生日は 2026 年 10 月 8 日でした14。
清算の提出先と遵守日
対象のスワップを執行した者は、受け入れる適格な DCO に、技術的に可能になり次第、遅くとも約定日の終わりまでに提出します。清算会員でない者は、先物取引業者や清算会員に同じ期限で提出すれば、義務を果たしたものとされます。約定が現地時間の午後 4 時より後か、営業日でない日なら、その当事者については翌営業日の約定とみなされます。対象かどうかを確かめる合理的な努力も、義務に含まれます15。DCO は、清算を受け入れるスワップのリストをウェブサイトで公表し、CFTC は、清算が求められるスワップと適格な DCO の最新のリストを維持します16。
スワップ・ディーラーか主要スワップ参加者(MSP)が清算義務の対象のスワップを結ぶとき、清算機関の選び方は相手方で決まります。相手方がスワップ・ディーラー、MSP、証券ベースのスワップ・ディーラー、主要な証券ベースのスワップ参加者のどれでもなければ、清算機関を選ぶ唯一の権利は相手方にあります17。
遵守日は、CFTC が区分ごとに定めます。決定の公表から、区分 1 の事業体どうしのスワップは 90 日、区分 2 の事業体が関わるスワップは 180 日、どの当事者も例外を選べないそのほかのスワップは 270 日を期限にできます18。
区分 1 はスワップ・ディーラー、MSP、取引の多いファンドなど、区分 2 は商品プール、そのほかのファンド、銀行業や金融の活動を主にする者などです19。実際の遵守日は規則の表にあり、一部は次のとおりです20。
| 区分と指標 | 遵守日 |
|---|---|
| 固定対変動の EUR(EURIBOR)、区分 1 | 2013 年 3 月 11 日 |
| 固定対変動の EUR(EURIBOR)、区分 2 以外の者 | 2013 年 6 月 10 日(区分 1 には別の日付がある) |
| 固定対変動の EUR(EURIBOR)、区分 2 | 2013 年 9 月 9 日 |
| 固定対変動の AUD(BBSW) | すべての者が 2016 年 12 月 13 日 |
| OIS の JPY(TONA)、CHF(SARON) | すべての者が 2022 年 9 月 23 日 |
| OIS の USD(SOFR) | すべての者が 2022 年 10 月 31 日 |
清算義務の例外
清算義務には、次の例外と免除があります。いずれも条件を満たす場合に限ります。表に出る金融事業体(financial entity)には、スワップ・ディーラー、MSP、商品プール、私募ファンド、従業員給付制度、銀行業や金融の活動を主にする者が含まれます21。
| 例外 | 規則 | 主な条件 |
|---|---|---|
| 非金融の最終利用者 | 第 50.50 条 | 金融事業体でなく、商業リスクのヘッジや軽減に使い、金融上の義務を果たす方法を SDR に提供すること22 |
| 小規模な銀行など | 第 50.53 条 | 総資産が 100 億ドル以下で、ヘッジ目的で、SDR に報告するもの23 |
| 銀行持株会社、貯蓄貸付組合持株会社 | 第 50.78 条、第 50.79 条 | 子会社を含む総資産が 100 億ドル以下で、ヘッジ目的で、SDR に報告するスワップ24 |
| 協同組合 | 第 50.51 条 | 組合員への貸付に関連するスワップと、そのヘッジ25 |
| 地域開発金融機関(CDFI) | 第 50.77 条 | 米ドルの固定対変動か FRA で、ヘッジ目的で SDR に報告するもの。数量の条件は表の後に示す26 |
| 関連会社の間 | 第 50.52 条 | 過半数の所有と連結財務諸表があり、双方が清算しないことを選ぶこと。そのほかの条件は表の後に示す27 |
| 中央銀行、国家 | 第 50.75 条 | 清算義務が免除される。中央銀行には、BIS と米国の連邦準備銀行を含む28 |
| 国際金融機関 | 第 50.76 条 | 清算義務が免除される。条文が機関を列挙する29 |
小規模な銀行などの対象は、銀行と貯蓄金融機関(ともに預金保険の対象)、農業信用制度の機関、保険に加入した信用組合で、総資産は直近の事業年度末の値です。この例外に当たる者は、金融事業体の定義から外れ、最終利用者の例外を選べます。
地域開発金融機関(CDFI)の例外には、直近 365 日の想定元本の合計が 2 億ドル以下で、365 日の取引が 10 件以下という条件があります。関連会社の間の例外には、集中したリスク管理の仕組みなどを備えることも条件で、第三者との対象のスワップには別の条件があります。
最終利用者の例外を使うかどうかは、条件を満たす当事者だけが決めます30。
図の説明
区分の表と期間、区分の遵守日、例外や免除の取引かどうかを順に確かめます。最初の 2 つは「いいえ」なら対象外で、最後の質問だけは「はい」(例外か免除の取引)で対象外になります。すべてを通ると、原則として対象です。遵守日は、区分と当事者の種類で違う場合があり、規則の表で決まります。
T 銀行と Q 社が米国人どうしで、域外適用の条件を置かず、約定が遵守日より後の架空の例で考えます。例 1 と例 3 の円の OIS は、オプション性がなく、二重通貨でも条件付きの想定元本でもなく、区分のほかの仕様も満たすものとします。
| 例 | 取引 | 効いた条件と結論 |
|---|---|---|
| 1 | TONA を参照する、期間 5 年の円の OIS。例外は選ばない | 区分の表にあり、遵守日(2022 年 9 月 23 日)の後なので、原則として対象 |
| 2 | 米ドルの固定対変動の金利スワップ。例外は選ばない | 区分の表にないので、対象外 |
| 3 | 例 1 の円の OIS で、Q 社が最終利用者の例外を選ぶ | 例外を選んだ取引なので、対象外。取引執行義務の対象外でもある |
例 3 の Q 社は、金融事業体でなく、商業リスクのヘッジに使い、金融上の義務を果たす方法を SDR に提供するものとし、例外のほかの条件は置きません。
報告義務:公開報告と SDR への報告
報告は 2 層です。第 43 部は、取引と価格のデータを SDR が公開して価格形成を助けるための報告で、第 45 部は、スワップの詳細を SDR に集めるための報告です33。
| 公開報告(第 43 部) | SDR への報告(第 45 部) | |
|---|---|---|
| 対象 | 対等な立場の取引で、市場リスクの持ち高が変わる約定、または価格が変わる終了や修正など(公開の対象の取引)34 | すべてのスワップ(清算されるかを問わない)35 |
| 期限 | 約定後、原則として技術的に可能になり次第36 | 作成データの期限は、報告者ごとに異なる(表の後に示す)7 |
| 約定後の変更 | 対象は上の欄のとおり | ライフサイクル・イベントの期限は、報告を負う当事者ごとに異なる(表の後に示す)37 |
作成データは、SEF、DCM、スワップ・ディーラー、MSP、DCO が報告するなら約定日の翌営業日の終わりまで、そのほかの報告者は 2 営業日の終わりまでに報告します。ライフサイクル・イベントは、報告を負う当事者がスワップ・ディーラー、MSP、DCO なら翌営業日の終わりまで、そのほかは 2 営業日の終わりまでです。
ただし、報告を負わない側の企業イベントに関するデータは、報告を負う当事者がスワップ・ディーラー、MSP、DCO でも、2 営業日の終わりまでです37。価格が約定後に決まるスワップは、報告を負う当事者が、価格が決まるか、米国東部時間の約定日の午後 11:59:59 になるかの早いほうまで、報告を遅らせてよいとされています。約定日の午後 11:59:59(米国東部時間)までに価格が決まらなければ、価格と、そのほかまだ決まっていないデータを除く取引と価格のデータは、その時刻までに報告します38。
公開報告のデータは SDR が公開し、CEA は、公開の情報が参加者を特定しないことを求めます39。公開の対象から外れる例として、規則は、全額出資の子会社の間の内部取引、ポートフォリオ圧縮、DCO が清算会員の破綻を処理するスワップを挙げます34。公開される想定元本は、丸められ、区分ごとの上限(cap size)で頭打ちになります40。
報告を負う当事者がスワップ・ディーラー、MSP、DCO なら評価のデータを、スワップ・ディーラーか MSP なら担保のデータも、SDR に毎営業日報告します41。
図の説明
「報告する者」は、SEF か DCM で執行したスワップならその SEF か DCM、そうでなければ報告を負う当事者などです。公開報告と作成データの報告は別の義務のため、矢印の順に起きるとは限りません。
報告を負う当事者
SEF か DCM で執行したスワップは、その SEF か DCM が報告します。それ以外のスワップで、どの当事者が報告するかは、次の表で決まります42。公開報告では、当事者の合意がなければ、スワップ・ディーラーと MSP を先にし、どちらもいなければ当事者が約定前に指定します43。
| 条件 | 報告を負う当事者 |
|---|---|
| 一方だけがスワップ・ディーラー | そのスワップ・ディーラー |
| スワップ・ディーラーがおらず、一方だけが MSP | その MSP |
| 双方がスワップ・ディーラー、MSP、DCO のどれでもなく、一方だけが金融事業体 | その金融事業体 |
| 双方が同じ区分 | 当事者が、スワップの条件の 1 つとして合意する |
| 双方がどれでもなく、一方だけが米国人 | その米国人(金融事業体の条件より優先する) |
| 清算で生じるスワップ | DCO |
表の「米国人」(U.S. person)は、第 45.8 条の語で、第 45 部の条文に定義はありません。CFTC のスワップ・ディーラーなどの規則(第 23.23 条)では、米国人に、米国に居住する自然人のほか、米国の法に基づいて設立されたか、主たる事業所が米国にある法人、信託、投資ビークルなどを含めます44。
同じスワップのデータは、最初に報告した SDR 1 つに報告し続けます。報告を負う当事者が SDR を変更する場合は別です45。
ブロック取引と大口の取引の扱い
大口の取引は、公開を遅らせます。CEA は、公開が市場の流動性を大きく減らすかを考慮して、大口の取引の基準と、公開の適切な遅延時間を、CFTC が規則で定めるよう求めています48。
第 43 部には、2 つの類型があります。ブロック取引は、SEF か DCM に上場するスワップで、SEF の注文板でないシステムで執行されるか、SEF や DCM の外でその市場の規則と手続に従って執行され、想定元本が最低規模以上のものです。大口のオフ・ファシリティ取引(large notional off-facility swap)は、SEF や DCM の外で結ばれ、想定元本が最低規模以上で、ブロック取引でないものです49。どちらも、当事者が選んだときに公開の遅延を受けます。ブロック取引では報告を負う当事者が SEF か DCM に、大口のオフ・ファシリティ取引では SDR に、選んだことを伝えます50。
公開の遅延は、取引の種類で次のように決まります51。
| 取引 | 公開の遅延(約定から) |
|---|---|
| SEF か DCM でのブロック取引 | 15 分 |
| 清算義務の対象の大口のオフ・ファシリティ取引で、少なくとも一方がスワップ・ディーラーか MSP | 15 分 |
| 清算義務の対象の大口のオフ・ファシリティ取引で、どちらもスワップ・ディーラーでも MSP でもない | 1 時間 |
| 清算義務の対象でないか例外を選んだ大口のオフ・ファシリティ取引(金利、クレジット、為替、株式)で、少なくとも一方がスワップ・ディーラーか MSP | 30 分 |
| 清算義務の対象でないか例外を選んだ大口のオフ・ファシリティ取引(その他のコモディティ)で、少なくとも一方がスワップ・ディーラーか MSP | 2 時間 |
| 清算義務の対象でないか例外を選んだ大口のオフ・ファシリティ取引で、どちらもスワップ・ディーラーでも MSP でもない(すべての資産クラス) | 24 営業時間 |
最低規模は、CFTC がスワップの区分ごとに定め、ウェブサイトで公表します。少なくとも年に 1 回更新し、CFTC のサイトに別の指示がなければ、公表の翌々月の初日から効力が生じます。株式のスワップには最低規模がなく、ブロック取引と大口のオフ・ファシリティ取引になりません。最低規模をゼロとする区分もあります52。
深掘り最低規模を決める 67% の計算
CFTC が最低規模を更新するとき、規則が指定する区分では、1 年分の SDR のデータに、次の手順の「67% 想定元本の計算」を使います53。
- 区分ごとに、1 年以上の信頼できる SDR のデータを選び、通貨や単位をそろえ、トリムしたデータの集合(trimmed data set)を作ります。これは、想定元本が並外れて大きい取引を、対数にした値の平均から標準偏差の 2 倍か 3 倍を超えるものとして除いた集合です(資産クラスが「その他のコモディティ」なら 2 倍、そのほかの資産クラスは 3 倍)54。
- 集合の想定元本の合計に 67% を掛けた値を求めます。
- 取引を想定元本の小さい順に並べ、累計が手順 2 の値以上になるまで足します。
- 累計が届いた取引の想定元本を、有効数字 2 桁に切り上げて、最低規模とします。
同じ手順で 67% を 75% や 50% に置き換えた計算も定められています53。
取引執行義務:MAT、SEF、DCM
取引可能の判定(MAT)
清算義務の対象のスワップは、当事者が、DCM か、SEF(登録を免除された SEF を含む)で執行します。ただし、どの DCM や SEF も取引可能にしていないスワップと、最終利用者などの清算の例外を選んだスワップは、この義務の対象外です55。
スワップを取引可能にする判定を、略して MAT(made available to trade)といいます。規則の用語は、スワップを取引可能にする(make a swap available to trade)です。SEF が判定するには、判定を第 40 部の手続で規則として CFTC に提出し、そのスワップを自らの取引システムに上場している必要があります。考慮する要素は、取引する意思と用意のある売り手と買い手がいるか、取引の頻度や規模、取引量、参加者の数と種類、売買の気配の差、常時出ている確定か参考の気配の数です56。
1 つの SEF や DCM のスワップが取引可能と判定されると、ほかの SEF と DCM も、そのスワップの上場や提供で義務に従います。CFTC は、どの SEF も DCM も上場していないと判断したときに、取引可能の判定を取り消せます57。義務は、第 50.25 条の遵守の期限と、判定が承認か認証されたとみなされた 30 日後のうち、遅いほうから始まります58。
SEF と DCM の登録
複数の参加者が複数の相手とスワップを取引できる施設を運営する者は、SEF か DCM として登録しなければなりません。SEF は、最低限、注文板を備えます59。
執行の方法
取引執行義務の対象の取引(規則の用語は Required Transaction)のうち、ブロック取引でないものは、SEF で次のどちらかの方式で執行します60。
| 方式 | 中身 |
|---|---|
| 注文板 | 参加者が複数の売り気配と買い気配を出せて、ほかの参加者の気配を見て取引できる仕組み |
| 見積り要求(注文板と併設) | 依頼者が、3 者以上の参加者に気配を求める仕組み。条件は表の下に示す |
見積り要求には、次の条件があります。3 者は、依頼者とも互いにも関連会社でないこと。依頼者が最初の応答を受けるときに、注文板の確定した気配も示され、注文板の気配に対しても執行できること。参加者が、依頼と応答で平等な優先順位を持つこと。
取引執行義務の対象の取引を注文板で執行するとき、ブローカーやディーラーが事前の取り決めに基づいて顧客の注文の相手になる取引では、SEF は、2 つの注文の間に 15 秒以上の遅延を置くよう求めます。2 つの顧客の注文を合わせる取引も同じです。SEF は、スワップの流動性などに応じて 15 秒を変えられます61。義務の対象でないスワップは、どんな執行方法も使えます62。複数の取引を 1 つの価格で同時に執行するパッケージ取引は、構成のしかたで、一部の取引にこの方式の制限が適用されない場合があります63。
域外適用の考え方
第 7 編が加えたスワップの規定は、米国外の活動には適用されません。ただし、次の 2 つの場合は適用されます。(1) その活動が、米国の商業の活動、または米国の商業への影響と、直接かつ重大な関係がある。(2) CFTC が回避を防ぐために定める規則に反する66。
報告を負う当事者を決める規則は、双方が米国人でなくても、当事者の合意で報告を負う側を決める場合を定めています。SEF か DCM で執行されるか、米国内で執行されるか、DCO で清算されるスワップが対象です67。
関連会社の間の清算の例外は、各関連会社が第三者と対象のスワップを結ぶとき、次のどれかに従うことを条件にします。米国の清算義務、CFTC が米国の義務と比較可能で包括的と判断した外国の清算義務、例外や免除、または適格な清算機関での清算です。関連会社の一方が、オーストラリア、カナダ、EU、香港、日本、メキシコ、シンガポール、スイス、英国のどれかにあるとします。各関連会社(または双方の過半数の持分を直接か間接に持つ第三者)が、関連会社の間のすべてのスワップについて、毎日全額の変動証拠金を払い、受け取るなら、この条件を満たしたものとされます68。
日本の金融機関の取引への当てはまりでは、円の OIS(TONA)が米国の清算義務の対象の区分で、遵守日は 2022 年 9 月 23 日でした。
この記事が書いていないこと
DCM の取引の方式は、この記事では扱いません。現在、取引可能と判定されているスワップの一覧は、この記事では扱いません。CFTC の域外適用の解釈と、日本の制度との比較可能性の判断は、この記事では扱いません。公開報告の約定後の変更の期限は、この記事では扱いません。
注
-
7 U.S.C. § 2(h)(1)(A)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(h)(8)(A)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(a)(13)(A)〜(C)(公開報告)、(G)(SDR への報告)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(a)(1)(G)(i)(SEC が、証券ベースのスワップなどについて持つ管轄を、この項が制限しないとする)。 ↩
-
17 CFR § 50.2(a)。 ↩
-
17 CFR § 43.3(a)(2)、(3)、(5)。 ↩
-
17 CFR § 37.1(第 37 部は、CEA 第 5h 条に基づく SEF に適用)、§ 37.9(a)。 ↩
-
17 CFR § 1.3 の "Swap data repository"、"Contract market; designated contract market"。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(h)(2)(A)、(B)。審査の経路ごとに 30 日以上の意見公募((A)(ii)、(B)(iii)(III))。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(h)(2)(D)(ii)(I)〜(V)。 ↩
-
17 CFR § 50.4(a) の Table 1〜4、(b)。 ↩
-
17 CFR § 50.4(a) の Table 4(OIS)。Yen (JPY) の TONA は期間 7 日〜30 年で、オプション性、二重通貨、条件付きの想定元本のいずれも No です。 ↩
-
Federal Register の文書 2026-18212(91 FR 57063。2026 年 9 月 8 日公表、効力発生日は 2026 年 10 月 8 日)。 ↩
-
17 CFR § 50.2(a)〜(c)、§ 50.1 の "Day of execution"。 ↩
-
17 CFR § 50.3(a)、(b)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(h)(7)(E)(i)。 ↩
-
17 CFR § 50.25(b)(1)〜(3)。 ↩
-
17 CFR § 50.25(a)、(b)。(b) は、CFTC が決定にあたり、この遵守のスケジュールを適用できると定めています。 ↩
-
17 CFR § 50.26(a) の Table 1(金利スワップ)。EUR、AUD、CHF、JPY、USD の行を使います。CDS の区分の遵守日は同条 (b) の Table 2。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(h)(7)(C)(i)(I)〜(VIII)。 ↩
-
17 CFR § 50.50(a)、(b)(1)、(c)。CEA 第 2(h)(7)(A) 条に対応します。 ↩
-
17 CFR § 50.53(a)〜(d)。 ↩
-
17 CFR § 50.78(b)、§ 50.79(b)。 ↩
-
17 CFR § 50.51(a)〜(c)。 ↩
-
17 CFR § 50.77(b)。 ↩
-
17 CFR § 50.52(a)、(b)。 ↩
-
17 CFR § 50.75(a)、(b)。 ↩
-
17 CFR § 50.76(a)、(b)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(h)(7)(B)。 ↩
-
17 CFR § 50.50(b)(1)、(b)(2)、(b)(3)。報告を負う当事者は § 45.8 で決まります。 ↩
-
17 CFR § 45.2(b)。 ↩
-
17 CFR § 43.1(a)(透明性と価格発見の向上)、7 U.S.C. § 2(a)(13)(B)、(G)。 ↩
-
17 CFR § 43.2 の "Publicly reportable swap transaction"。除外の例は同条の (2)、(3)。 ↩ ↩2
-
7 U.S.C. § 2(a)(13)(G)。 ↩
-
17 CFR § 43.3(a)(1)、(b)(1)。 ↩
-
17 CFR § 43.3(a)(4)(i)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(a)(13)(E)(i)、17 CFR § 43.3(b)(1)。 ↩
-
17 CFR § 43.4(e)(丸めと cap size)、§ 43.2 の "Cap size"。 ↩
-
17 CFR § 45.4(c)(2)。 ↩
-
17 CFR § 45.8(a)〜(e)、(i)。(e) は (a)〜(d) より優先します。 ↩
-
17 CFR § 43.3(a)(3)(i)〜(v)。 ↩
-
17 CFR § 23.23(a)(23)。第 45.8 条は "U.S. person" を使いますが、第 45 部の条文に定義はありません。 ↩
-
17 CFR § 45.10 の前文、(a)(2)、(b)(2)。 ↩
-
17 CFR § 45.14(a)(1)(i)、(a)(2)。 ↩
-
17 CFR § 45.14(b)(1)、(b)(4)、(b)(5)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(a)(13)(E)(ii)、(iii)、(iv)。 ↩
-
17 CFR § 43.2 の "Block trade"、"Large notional off-facility swap"。 ↩
-
17 CFR § 43.6(h)(1)、(2)。 ↩
-
17 CFR § 43.5(d)、(e)、(f)、(g)、(h)。(e)(1) は、例外を選んだスワップと、清算義務の対象だが清算されないスワップに (e) を適用しないとしています。 ↩
-
17 CFR § 43.6(a)〜(c)、(e)、(g)(1)、(g)(4)〜(6)。 ↩
-
17 CFR § 43.6(d)(1)(67% 想定元本の計算)、(d)(2)、(d)(3)(75%、50%)、(g)(2)(post-initial の区分への適用)。 ↩ ↩2
-
17 CFR § 43.2 の "Trimmed data set"、§ 43.6(d)(1)(ii)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(h)(8)(A)、(B)。 ↩
-
17 CFR § 37.10(a)、(b)。 ↩
-
17 CFR § 37.10(c)、(d)(1)。 ↩
-
17 CFR § 37.12(a)。 ↩
-
17 CFR § 37.3(a)(1)〜(3)。 ↩
-
17 CFR § 37.9(a)(2)(i)、(a)(3)、§ 37.3(a)(3)。 ↩
-
17 CFR § 37.9(b)(1)、(2)。 ↩
-
17 CFR § 37.9(c)。 ↩
-
17 CFR § 37.9(d)。 ↩
-
17 CFR § 45.8(h)(1)、(2)。 ↩
-
17 CFR § 37.9(e)(2)(i)(A)、(B)。 ↩
-
7 U.S.C. § 2(i)(1)、(2)。 ↩
-
17 CFR § 45.8(f)。 ↩
-
17 CFR § 50.52(b)(4)(i)、(ii)。 ↩