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デリバティブ・コンパス

理解度チェック: 削減と管理

最終確認日: 2026年9月26日

下書きです。公開前の確認のために表示しています。

「削減と管理」の章の内容を確かめる 6 問の問題です。選択肢を選んで「回答する」を押すと、正解と解説が出ます。「正解と解説」を開いて、先に答えを見ることもできます。

  1. 問 1

    架空の例として、ある銀行が、ある取引相手と 3 つの金利スワップを結んでいます。銀行から見た時価は 4 億円、−3 億円、1 億円です。3 つとも一括清算(クローズアウト・ネッティング)を約定した同じネッティング・セットに入っていて、担保の受け渡しはありません。取引相手が今破綻したとき、銀行のエクスポージャーはいくらですか。

    正解と解説

    正解: B

    エクスポージャーは 2 億円です。一括清算があると、エクスポージャーは取引の時価をすべて足した合計のプラスの部分になります。時価の合計は 4 − 3 + 1 = 2 億円で、プラスです。時価がマイナスの取引が、プラスの取引を打ち消します。

    5 億円は、一括清算がないときの額です。時価がマイナスの取引を 0 として、プラスの取引だけを足します(4 + 1)。8 億円は、マイナスの時価もプラスとして数えた値です(4 + 3 + 1)。時価がマイナスの取引は、銀行が取引相手に債務を負う側なので、失う額には入りません。

    取引相手から見ると、時価は −4 億円、3 億円、−1 億円で、合計は −2 億円です。取引相手のエクスポージャーは、一括清算があれば 0、なければ 3 億円です。2 つ目の取引の時価が −6 億円なら、合計は −1 億円で、銀行が取引相手に 1 億円の債務を負う形になり、銀行のエクスポージャーは 0 です。

    詳しくは: ネッティングと担保による削減効果

  2. 問 2

    架空の例として、銀行は取引相手と金利スワップを結び、クレジット・サポート・アネックス(CSA)で変動証拠金を毎日受け渡していて、閾値と最低受渡額は 0 です。取引相手の破綻で担保の受け渡しが止まったとき、時価と担保は 0 で、止まってから処理し終えるまでの期間(MPOR)に、ほかの市場の値は動きません。この間の利息の受け払いで銀行のエクスポージャーが跳ね上がるのはどの場合ですか。

    正解と解説

    正解: C

    跳ね上がるのは、銀行が払う場合です。担保は MPOR だけ前の時価で決まっていて、その時価には、これから払う額が負債として入っています。銀行が払い終えると負債が消え、時価はその額だけ上がりますが、担保は増えません。たとえば銀行が差し引き 0.4 億円を払うと、時価は 0.4 億円に上がり、担保は 0 のままなので、エクスポージャーは 0.4 億円になります。担保が時価に追いついていたので、増える額は払った額と同じです。

    取引相手が払う側なら、払われるはずの額は受け渡しが止まる前の時価に入っていて、その分の担保を受け取っているため、跳ね上がりは起きません。そのため、どちらが払っても払った額だけ跳ね上がるわけではありません。毎日担保を受け渡していても、MPOR の間の支払いで担保が追いつかない分は残ります。

    詳しくは: ネッティングと担保による削減効果

  3. 問 3

    2026 年 6 月改訂の米国の監督指針が示す望ましい実務では、金融機関が取引相手ごとの与信枠と比べる使用額は、基本としてどの値で測りますか。

    正解と解説

    正解: A

    使用額は、取引相手ごとの PFE の最大で測るのが基本です。PFE は、将来の各時点のエクスポージャーの分布の高い分位点(95% や 99% が多い)で、一番長い取引の満期まで時点ごとに計算し、そのうち最も大きい値を使います。高い分位点の値は、1 つの取引相手に対して受け入れるリスクの大きさを表すためです。

    EE は、多くの取引相手を合わせた信用リスクのモデルや CVA の計算に向く指標で、EPE(期待エクスポージャーの平均)はその EE を満期まで平均した値です。どちらも高い分位点の値ではないため、与信枠と比べる使用額には使いません。SA-CCR の PFE は、自己資本比率の規制でモデルを使わずに求める値です。想定元本と満期、資産の種類ごとに当局が決めた掛け目などから計算します。名前は同じ PFE でも、社内で与信枠に使う PFE の最大とは狙いが違い、同じ取引相手でも値は一致しません。

    詳しくは: 与信枠の管理

  4. 問 4

    架空の例として、ある銀行の事業会社への与信枠は 20 億円で、今の使用額は 12 億円です。新しい金利スワップは、既存の取引と同じ一括清算の契約の対象になります。約定の前の確認では、この取引だけの使用額は 10 億円、既存の取引に加えた後は 17 億円でした。与信枠の管理の手順に沿うと、確認の結果はどれですか。

    正解と解説

    正解: B

    フロントは約定できます。使用額は取引相手ごとのポートフォリオ全体で計算するため、新しい取引だけの値ではなく、既存の取引に加えた後の値で判断します。17 億円は枠の 20 億円に収まります(枠の 85% を使う)。

    22 億円は、既存の使用額と新しい取引だけの使用額を足した値です。一括清算があると使用額は小さくなるため、加えた後の使用額は、この和より小さくなることがあります(ここでは 17 億円)。10 億円は、既存の取引の 12 億円を見落とした値です。

    加えた後の使用額が 23 億円なら、枠を 3 億円超えるため、そのままでは約定できず、定められた上位の権限者に承認を求めます。約定の後も、リスク管理部門が少なくとも毎日使用額を計算し直します。新しい取引をしなくても、市場の動きで使用額が枠を超えることがあり(受動的な超過)、新しい取引による超過と同じ承認の手続きにかけます。

    詳しくは: 与信枠の管理

  5. 問 5

    架空の例として、銀行のマージン・アグリーメント付きのネッティング・セットで、時価の合計は銀行から見て 8 億円、閾値は 2 億円、最低受渡額は 0.5 億円です。銀行は変動証拠金を同じ通貨の現金で 6 億円受け入れ、当初証拠金はなく、PFE は 1 億円(式で求めない仮の値)とします。2026 年 9 月時点の告示の SA-CCR で求めたデフォルト時エクスポージャー(EAD)はいくらですか。

    正解と解説

    正解: D

    EAD は 4.9 億円です。SA-CCR の EAD は、1.4 ×(再構築コスト + PFE)です。マージン・アグリーメントがあるときの再構築コストは max⁡{V−C, TH+MTA−NICA, 0}\max\{V - C,\ TH + MTA - NICA,\ 0\} です。VV は時価の合計、CC は担保、THTH は閾値、MTAMTA は最低受渡額です。NICANICA は担保から変動証拠金を除いた額で、当初証拠金がないので 0 です。告示では、閾値は「信用極度額」、最低受渡額は「最低引渡担保額」、EAD は「与信相当額」と呼びます。現金の担保のボラティリティ調整率(ヘアカット)は 0% なので、担保は 6 億円のままです。

    V−CV - C は 8 − 6 = 2 億円です。TH+MTA−NICATH + MTA - NICA は 2 + 0.5 − 0 = 2.5 億円です。再構築コストは大きい方の 2.5 億円です。EAD は 1.4 × (2.5 + 1) = 4.9 億円です。

    4.2 億円は、再構築コストを V−CV - C の 2 億円だけで求めた値です(1.4 × (2 + 1))。閾値と最低受渡額の分は、担保で覆われないエクスポージャーとして再構築コストの下限になります。3.5 億円は、1.4 を掛け忘れた値です(2.5 + 1)。12.6 億円は、担保を引かずに時価の合計を再構築コストにした値です(1.4 × (8 + 1))。

    詳しくは: 規制上の扱いの概要(SA-CCR、内部モデル方式、CVA リスク)

  6. 問 6

    2018 年の寄稿によれば、先進的な金融機関では、ほかのトレーディング・デスクから独立したCVA デスクが CVA を一元的に管理しています。このとき CVA デスクが担う仕事はどれですか。

    正解と解説

    正解: C

    CVA デスクが担うのは、CVA のヘッジ、CVA のリスク管理、価格付けの機能、担保契約の見直しです。CVA は取引相手のデフォルトに備える費用を価格に載せる見方で、CVA デスクは、その費用が市場の動きで変わることへの手当てを一元的に引き受けます。

    与信枠の設定は、与信の管理の仕事です。枠は、取引部門から独立したリスク管理の部署が、取引相手の信用力や財務の状況を見て決めます。取引時点の CVA の費用は、CVA デスクではなく、取引を持ち込んだ部門に配賦されます。与信の管理と CVA の管理は、使う指標も上限の置き方も担い手も違うため、片方が他方の仕事を兼ねるとは限りません。

    なお、すべての金融機関が CVA デスクを置くわけではありません。

    詳しくは: クレジットリスクと XVA の関係