与信の担当者が相手ごとの枠の使い方を考える場面や、相手の信用リスクを取引の評価に織り込む担当者がエクスポージャーの形を使う場面で、商品ごとのエクスポージャーの形の違いが出てきます。

商品ごとの形の違い

カウンターパーティ・クレジットリスクでは、取引の相手が破綻したときに失いうる額をエクスポージャーといいます。デリバティブでは、取引の時価(再構築コスト)が自分にとってプラスのときにエクスポージャーがあり、マイナスのときはありません1。将来の時点の時価は市場の値の動きで決まります。そこで、時点ごとのエクスポージャーの平均を期待エクスポージャー(EE)、高い信頼水準で見た値をポテンシャル・フューチャー・エクスポージャー(PFE)で表します。時点ごとの EE と PFE の並びをプロファイルといい、その形を商品ごとに比べます。指標の定義と求め方はエクスポージャーの種類と計測で扱います。

形は、市場の値(金利、為替相場)が動く幅と、その時点で残っている受け払いの大きさの組み合わせで決まります。金利の差額だけを受け払う金利スワップと、満期に全額を交換する為替予約とでは、この組み合わせが違います。

商品 エクスポージャーの形 形の理由
金利スワップ 途中で山になり、満期で 0 になる 金利の動く幅は広がるが、残りの受け払いが減る2
通貨スワップ(満期に元本を交換) 満期の元本の交換まで大きいまま残る 元本の支払いも相場の動きを受ける34
為替予約 満期に向けて大きくなり、決済で 0 になる 途中の受け払いがなく、満期に全額を交換する5
オプションの買い 買い手の側にだけ出る 買い手から見た時価はマイナスにならない6
オプションの売り プレミアムを受け取った後は出ない 売り手が受け取るものが残っていない6
クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)のプロテクションの買い 売り手に対して出る クレジット・イベントのときに売り手から受け取る7

形を決める 2 つの効果と近似の式

金利スワップの将来の時点の時価は、その時点の市場のスワップ金利と約定した固定金利の差を、残りの期間について想定元本に掛け、現在価値にした額です8。時間がたつほど金利が動く幅は広がり、時価の散らばりを大きくします。一方で、支払日を迎えるたびに残りの受け払いが減り、時価の散らばりを小さくします9。為替予約には途中の受け払いがないため、2 つ目の効果が満期まで働きません。

2 つの効果の大きさは、割引と金利の平均回帰を無視した近似の式で比べられます。想定元本を NN、期間を TT 年、金利の年あたりのボラティリティ(金利の変化の幅で測ったもの)を σr\sigma_r とします。年 1 回払いのスワップの支払日の直後の時点 tt(年)では、残りの受け払いは T−tT - t 回です。固定払いの側から見た EE はおよそ次のとおりです。

EE(t)≈0.3989×N×σrt×(T−t)\mathrm{EE}(t) \approx 0.3989 \times N \times \sigma_r \sqrt{t} \times (T - t)

為替予約の買い(外貨を受け取り、円を払う)では、為替相場の年あたりのボラティリティを σFX\sigma_{FX} として、次のとおりです。

EE(t)≈0.3989×N×σFXt\mathrm{EE}(t) \approx 0.3989 \times N \times \sigma_{FX} \sqrt{t}

0.3989 は、平均 0 の正規分布に従う値のうちプラスの部分の平均が、標準偏差の何倍かを表す係数です。スワップの式は t\sqrt{t} で大きくなり T−tT - t で小さくなるため、途中で山になります。t(T−t)\sqrt{t}(T - t) が最大になるのは t=T/3t = T/3 で、近似では山の頂点は期間の 3 分の 1 の時点です(導き方は下の深掘り)10。為替予約の式には小さくする項がなく、満期まで t\sqrt{t} に比例して大きくなります。

計算例として、想定元本 100 億円、期間 5 年の固定払いのスワップで、金利のボラティリティを 0.80%(80bp)とします。係数は 0.3989 × 100 億円 × 0.008 = 0.3191 億円です。

時点(年) t\sqrt{t} 残りの受け払い(回) EE の近似(億円)
1 1.0000 4 1.28
2 1.4142 3 1.35
3 1.7321 2 1.11
4 2.0000 1 0.64

同じ想定元本 100 億円の為替予約で、為替のボラティリティを 10% とすると、係数は 0.3989 × 100 億円 × 0.10 = 3.989 億円です。EE の近似は 1 年で 3.99 億円、1.75 年で 3.989 × 1.3229 = 5.28 億円になります。金利スワップが金利の差額だけを受け払うのに対し、為替予約は元本に当たる全額を交換するため、同じ想定元本でもエクスポージャーが大きくなります。

EE の近似(億円)固定払いの金利スワップ(期間 5 年)為替予約の買い0246810012345時点(年)
図 1金利スワップと為替予約の EE の形の比較(近似の式)
図の説明

どちらも想定元本 100 億円で、前の計算例の近似の式から求めた EE です。金利のボラティリティは 0.80%、為替のボラティリティは 10% で、点を直線で結んでいます。金利スワップは 1 年の 1.28 億円から 2 年の 1.35 億円まで上がり、その後は 3 年に 1.11 億円、4 年に 0.64 億円と下がって、5 年に 0 になります。為替予約は 1 年の 3.99 億円から 2 年に 5.64 億円、3 年に 6.91 億円、4 年に 7.98 億円と大きくなり続け、5 年の決済の直前で 8.92 億円です(決済のあとは 0)。為替予約の 2 年以降の値は、近似の式を同じ形のまま延ばした値です。

深掘り近似の式の導き方

平均 0、標準偏差 ss の正規分布に従う値 XX について、プラスの部分の平均は次の式になります。

E[max⁡(X,0)]=s2π≈0.3989×sE[\max(X, 0)] = \frac{s}{\sqrt{2\pi}} \approx 0.3989 \times s

割引を無視すると、固定払いのスワップの時点 tt の時価は、その時点のスワップ金利 sts_t と固定金利 KK の差を使って、およそ N(st−K)(T−t)N (s_t - K)(T - t) です。金利の変化が正規分布に従い、平均回帰がなければ、st−Ks_t - K の標準偏差は σrt\sigma_r \sqrt{t} なので、時価の標準偏差は Nσrt(T−t)N \sigma_r \sqrt{t}(T - t) になり、上の式に当てはめるとスワップの近似の式が出ます。

為替予約の時価は、約定した相場からの相場の変化率を xtx_t として、およそ NxtN x_t です。変化率の標準偏差を σFXt\sigma_{FX} \sqrt{t} とみなすと、為替予約の近似の式が出ます。どちらの式も、割引、金利の平均回帰、為替相場の分布のゆがみ、金利の差による予約相場の傾きを入れていません。

スワップの山の頂点は、t(T−t)\sqrt{t}(T - t) を tt で微分して 0 とおいた T−t=2tT - t = 2t、つまり t=T/3t = T/3 です。

金利スワップは途中で山になる

近似の式のとおり、金利スワップのエクスポージャーは途中で山になり、満期に向けて小さくなります2。元本を交換しないため、元本を受け払う取引よりも信用リスクはずっと小さくなります8。支払日には残りの受け払いが 1 回分減るため、エクスポージャーはそのたびに下がり、その下がり幅は満期に近い支払日ほど大きくなります9。

固定払いの側は金利が上がると時価がプラスになり、固定受けの側は金利が下がるとプラスになります8。イールドカーブが平らで、先の金利の上げ下げを見込まないときは、2 つの側のエクスポージャーはほぼ対称になり、どちらかの側だけが大きくなることはありません11。右上がりのカーブでは、先の変動金利ほど高く見込まれるため、固定払いの側の時価がプラスに傾き、固定払いの側のエクスポージャーが大きくなります1213。

為替予約と通貨スワップの形

為替予約は、約定から満期まで受け払いがなく、満期に外貨と円を全額交換します。PFE は満期に向けて大きくなり続けて満期で最大になり、決済が済むと 0 になります5。

満期に元本を交換し戻す通貨スワップでは、金利の交換に加えて、元本の支払いにも取引の相手の信用リスクがあります3。金利の交換の分のエクスポージャーは、支払日ごとに下がります。ただし満期の元本の交換が残るため、全体の形は金利スワップと違って、満期の直前まで大きいまま残ります4。

シミュレーターで比べるスワップと為替予約

下のシミュレーターは、取引 A(想定元本 100 億円、期間 5 年の固定払いの金利スワップ)に、取引 B として期間 2 年の為替予約の買い(想定元本 100 億円)を組み合わせた設定で始まります。「ネッティング」と担保はなしにしてあり、一括清算(クローズアウト・ネッティング)で差し引かないため、画面の EE と PFE は 2 つの取引のエクスポージャーを足した値です。EE は為替予約の満期の直前の 1.75 年に 6.45 億円まで大きくなり、為替予約の決済が済んだ 2 年に 1.18 億円へ下がります。1.75 年の 6.45 億円のうち、為替予約の分を近似の式で見積もると 5.28 億円ほどです。

2 年より後は取引 A のスワップだけが残ります。EE は 2.75 年の 1.33 億円から支払日の 3 年に 1.03 億円へ下がり、3.75 年の 1.10 億円から支払日の 4 年に 0.62 億円へ下がって、満期の 5 年に 0 になります。支払日の直後の 2 年、3 年、4 年の EE(1.18 億円、1.03 億円、0.62 億円)は、計算例の近似(1.35 億円、1.11 億円、0.64 億円)より少し小さくなります。近似の式は割引と金利の平均回帰を入れていないため、値が大きめに出ます。

この設定では、満期までの EE の平均である期待エクスポージャーの平均(EPE)は 2.22 億円、最初の 1 年で求める実効 EPE は 3.07 億円です。95% の PFE は 1.75 年に最大の 23.31 億円になります。取引 B を期間 5 年の固定受けのスワップに替え、「ネッティング」をなしのままにすると、EPE は 1.88 億円になります。シミュレーターのカーブは平らなため、固定払いは金利が上がった経路で、固定受けは下がった経路でエクスポージャーを持ち、一括清算で差し引かなければ 2 つは打ち消し合わずに足し合わされます。ネッティングと担保で形がどう変わるかは、ネッティングと担保による削減効果で扱います。

シミュレータースワップと為替予約のエクスポージャーの形
入力
取引 B
年
年
%
%
%
bp
ネッティング
担保
PFE の信頼水準
本
0510152025012345エクスポージャー(億円)年数
  • EE(期待エクスポージャー)
  • PFE(95%)
EPE(EE の満期までの平均、億円)
2.22
実効 EPE(最初の 1 年、億円)
3.07
PFE(95%)の最大(億円)
23.31

単純化している点

  • 金利は 1 ファクターのハル・ホワイト・モデルで、初期のカーブはフラットです。スワップは年 1 回の支払いで、固定金利は時点 0 の時価が 0 になるパーレートです。
  • 為替予約は、為替レートを幾何ブラウン運動で動かし、金利は一定とします。為替と金利の相関は考えません。約定の相場は時点 0 の先物相場です。
  • 想定元本はどの取引も 100 億円です。時点は四半期ごとで、EE と PFE はその時点の価値のまま(割り引かずに)示します。
  • 変動証拠金は双方向で、MPOR だけ前の時価から決め、当初証拠金は考えません。MPOR の間に支払いや決済があると、その時点のエクスポージャーが跳ね上がります。
  • 規制上の計算(SA-CCR の EAD)は出しません。

このシミュレーターは学習のために単純化した計算で、実際の取引の評価やリスク管理には使えません。(免責事項)

シミュレーターの説明

取引 B(なし、固定受けのスワップ、為替予約の買い)とその期間、金利と為替のボラティリティを変えると、時点ごとの EE と PFE のグラフ、EPE、実効 EPE が変わります。為替予約の期間を延ばすと、EE と PFE は延ばした満期の直前で最大になります。2 年より後のスワップだけの部分では、EE が支払日ごとに下がり、満期の 5 年に 0 になります。

シミュレーターは、カーブを平らにし、為替と金利の相関を考えず、為替相場を幾何ブラウン運動で動かしています。スワップのエクスポージャーの形は、金利の水準、カーブの傾き、金利のボラティリティで変わるため14、実際の取引では、この設定の数値のとおりにはなりません。期間の長い取引では、金利の平均回帰を入れないと、先の時点のエクスポージャーが大きすぎる値になるおそれがあります15。

オプションと CDS は片側に出る

オプションの買い手は、取引の始めにプレミアムを払い、その後は権利を持つだけで払うものが残りません。そのため、買い手から見たオプションの時価は、プレミアムに当たるプラスの値で始まり、市場が動いて下がってもマイナスにはなりません6。買い手はオプションに価値がある限り売り手へのエクスポージャーを持ち、プレミアムを受け取った売り手はエクスポージャーを持ちません。ただし売り手も、プレミアムの受け取りを待つ間は決済のリスクを負います6。期間の長いオプションは、金利スワップと違って、エクスポージャーが一方の当事者にだけ大きく出る取引の例です13。

CDS のプロテクションの買い手は、参照組織にクレジット・イベントが起きたときに売り手から支払いを受けるため、売り手に対してエクスポージャーを持ちます。相対の取引では、売り手が破綻すると買い手は支払いを受けられないおそれがあります7。

与信枠と CVA での使われ方

2003 年ごろの実務では、与信の担当者は時点ごとの PFE に与信枠を設けていました。枠は短い期間ほど広く、長い期間ほど狭くする傾向がありました。新しい取引を承認するときは、その取引を加えて相手ごとの PFE のプロファイルを計算し直し、枠と比べていました16。金利スワップのエクスポージャーは途中の山の後に小さくなりますが2、為替予約の PFE は満期に向けて大きくなり、満期で最大になります5。そのため為替予約は、想定元本と期間が同じ金利スワップよりも、満期に近い時点で枠を多く使います。

たとえば H 社が同じ相手と、想定元本 100 億円で期間 5 年の固定払いのスワップと、満期 5 年の為替予約の買いを持つとします。形を見るために、「形を決める 2 つの効果と近似の式」の節の近似の EE(スワップは表の値、為替予約は 3.989 × √t)を足し合わせます。1 年後は 1.28 + 3.99 = 5.27 億円、4 年後は 0.64 + 3.989 × √4 = 0.64 + 7.98 = 8.62 億円です。スワップの分は 4 年後に 1 年後の半分ほどまで下がりますが、為替予約の分は 2 倍ほどに増え、合計も増えます。EE は一括清算で差し引かない場合の足し算で、実際の枠は PFE と比べます。金利が下がった経路では固定払いのスワップの時価がマイナスになり、その経路のエクスポージャーは 0 です。EE は、この 0 を含めて全経路で平均した値です。

エクスポージャーが相手の信用力と関係なく動くとみなせるときは、取引の評価に相手の信用リスクを織り込む信用評価調整(CVA)の計算に、EE のプロファイルをそのまま使えます16。そのため、同じ相手と同じ想定元本でも、EE の形が違う商品では CVA の大きさが変わります。ただし、相手の信用力が悪くなるほどエクスポージャーが大きくなる関係もあり、これを誤方向リスク(wrong-way risk)といいます。このときの損失の見込みは、関係がないときより大きくなりえます17。

注

  1. Board of Governors of the Federal Reserve System「Trading and Capital-Markets Activities Manual」の Section 2020.1(1999 年 9 月)の "Presettlement Risk"(Page 3)。 ↩

  2. Ian Bond、Gareth Murphy、Gary Robinson「Potential Credit Exposure on Interest Rate Swaps」(Bank of England Working Paper No. 25、1994 年 8 月)の Figure 1 の説明(12 ページ)。10 年のスワップの 95% の分位点の経路での図。 ↩ ↩2 ↩3

  3. Board of Governors of the Federal Reserve System「Trading and Capital-Markets Activities Manual」の Section 4335.1 "Currency Swaps"(1998 年 2 月)の "Credit Risk"(Page 4)。 ↩ ↩2

  4. R. Sathis Kumar「Understanding Credit Risk Profiles of Over-the-Counter Derivative Transactions」の "PFE Profiles for Cross Currency Swaps"(13 ページ)。5 年の通貨スワップの 99% の PFE の図。 ↩ ↩2

  5. 同ホワイトペーパーの "PFE Profiles for Forward Contracts"(6 ページ)。 ↩ ↩2 ↩3

  6. Board of Governors of the Federal Reserve System「Trading and Capital-Markets Activities Manual」の Section 2020.1(1999 年 9 月)の "Presettlement Risk"(Page 3)のオプションの段落。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  7. 吉井一洋「クレジット市場における検討課題」(金融庁金融研究研修センター、2009 年)の「5.2.1 2008 年金融危機と集中清算機関設立の提言」(47 ページ)。 ↩ ↩2

  8. Board of Governors of the Federal Reserve System「Trading and Capital-Markets Activities Manual」の Section 4325.1 "Interest-Rate Swaps" の "Credit Risk"(Page 10(2001 年 4 月)と Page 11(2003 年 4 月))。 ↩ ↩2 ↩3

  9. R. Sathis Kumar「Understanding Credit Risk Profiles of Over-the-Counter Derivative Transactions」の "PFE Profiles for Interest Rate Swaps"(9〜10 ページ)。 ↩ ↩2

  10. 近似の式は資料の式ではなく、正規分布のプラスの部分の平均(1/2π≈0.39891/\sqrt{2\pi} \approx 0.3989)と、スワップの時価を金利の差と残りの期間の積とみなす扱い(Section 4325.1)から導いたもの。計算例の値は小数第 3 位で四捨五入。 ↩

  11. Ian Bond、Gareth Murphy、Gary Robinson「Potential Credit Exposure on Interest Rate Swaps」の Figure 5 の説明(21 ページ)。 ↩

  12. 同論文の Figure 7 の説明(25 ページ)。 ↩

  13. Eduardo Canabarro、Darrell Duffie「Measuring and Marking Counterparty Risk」(Euromoney Books、2003 年)の "Market valuation of credit exposures" の節(128 ページ)。 ↩ ↩2

  14. Ian Bond、Gareth Murphy、Gary Robinson「Potential Credit Exposure on Interest Rate Swaps」の Abstract(1 ページ)。 ↩

  15. Eduardo Canabarro、Darrell Duffie「Measuring and Marking Counterparty Risk」の "Simulation engine" の節(125 ページ)。 ↩

  16. 同書の "Applications of exposure modeling" の節(127 ページ)。 ↩ ↩2

  17. 同書の "Definitions" の節(123 ページ)。 ↩

  18. 同書の "PFE models: an overview" の節(124 ページ)と "Trade pricing" の節(126 ページ)。 ↩ ↩2