カナダの銀行や運用会社と店頭デリバティブを結ぶ業務では、取引を報告する側がどちらか、清算の対象か、担保を交換する相手かを、相手の所在地と種類から確かめます。

カナダのデリバティブ規制の位置づけ

カナダの証券とデリバティブの規制は、州と準州の証券規制当局が担います。この規制が求めるのは、デリバティブ・ディーラーなどへの行為規則と、現地の当事者への清算義務と取引情報の報告です。非清算取引の証拠金は、証券規制当局の規則ではなく、連邦のカナダ金融機関監督庁(OSFI)の指針が、銀行などに求めます。

13 の当局がカナダ証券管理局を作り、全国で調整した規則を作ります1。

根拠の規則と所管

オンタリオのオンタリオ証券委員会(OSC)、ケベックのケベック金融市場庁(AMF)、ブリティッシュ・コロンビアのブリティッシュ・コロンビア証券委員会(BCSC)などが、それぞれの州の当局です。カナダ証券管理局が公表した規則は、各州と準州が自分の法令の手続で採用します。オンタリオでは、OSC が定めた規則や改正を財務大臣が承認し、告示された日に施行されます2。

規則の形は地域で分かれます。デリバティブの範囲と取引情報の報告は、オンタリオ、マニトバ、ケベックがそれぞれの規則を持ち、残りの州と準州は共通の Multilateral Instrument(MI)を使います3。マニトバの規則は Manitoba Securities Commission(MSC)が定めます。

内容 オンタリオ マニトバ ケベック 残りの州・準州
デリバティブの範囲 OSC Rule 91-506 MSC Rule 91-506 Regulation 91-506 respecting derivatives determination MI 91-101
取引情報の報告 OSC Rule 91-507 MSC Rule 91-507 Regulation 91-507 respecting Trade Repositories and Derivatives Data Reporting MI 96-101

行為規則の NI 93-101、清算義務の NI 94-101、顧客の清算の NI 94-102 は、National Instrument(NI)として全国で共通の形です。条文の中で、オンタリオ、マニトバ、ケベックには上の表の規則を、残りの州と準州には MI 91-101 の定義を当てはめます4。

規則 内容 施行(オンタリオ)
OSC Rule 91-506、91-507 デリバティブの範囲、取引情報の報告 2013 年 12 月 31 日5
NI 94-101 清算義務 2017 年 4 月 4 日6
NI 94-102 顧客の清算と担保の保護 2017 年 7 月 3 日7
NI 93-101 行為規則 2024 年 9 月 28 日8
OSC Rule 91-507 の改正 報告の項目と期限の見直し 2025 年 7 月 25 日9
NI 94-101 の改正 清算の対象の見直し 2026 年 3 月 25 日10

内容は、次の版に基づきます。NI 94-101 は 2026 年 1 月 19 日までの非公式の統合版です。NI 93-101 は 2025 年 2 月 20 日、OSC Rule 91-507 は 2025 年 7 月 25 日、NI 94-102 は 2023 年 9 月 13 日までの統合版です。OSC Rule 91-506 は 2015 年 4 月 30 日の統合版、OSFI の Guideline E-22 は 2020 年 4 月 30 日付の版です。

デリバティブの範囲と行為規則

デリバティブの範囲

デリバティブの定義は各州の証券法令にあります。その定義に当たる契約のうち、デリバティブとして扱わないものを、商品の決定の規則が決めます11。オンタリオの OSC Rule 91-506 は、次の契約をデリバティブから外します12。

外れる契約 主な条件
賭博の契約 賭博規制の法令(カナダ、または一定の外国)の対象になる契約
保険と年金の契約 免許を持つ保険会社と結び、保険として規制される契約
通貨の売買 2 営業日以内に受渡しで決済する意図で、ロールオーバーできない
現物を受け渡す商品の契約 現物の受渡しで決済する意図で、現金決済に替えられない
預金の証書 銀行法の銀行などが発行する証書
取引所で取引される契約 認可か免除を受けた取引所、IOSCO の覚書の署名当局が規制する取引所で取引される契約

最後の行の取引所には、デリバティブ取引ファシリティを含みません。

通貨の売買のうち短期の取引は、行為規則の NI 93-101 で別に扱います。対象は、NI 93-101 の施行後に、月末の想定元本の残高が一度でも 5,000 億13を超えたことがあるカナダの金融機関のディーラーです。この者には、機関投資家向けの為替市場で結ぶ短期の為替にも、公正な取引、利益相反、苦情の処理、遵守の体制の規定が及びます14。

ディーラーの登録と行為規則

登録が必要かは、各州の証券法令が決めます。証券やデリバティブの取引や助言を業として行う者や、そう名乗る者は、免除がなければ登録が必要です15。デリバティブに特化した登録の規則 NI 93-102 は、2018 年 4 月に案が公表されました。2026 年 10 月 23 日時点で、OSC のサイトにある NI 93-102 の文書は、2018 年の案の公表文と、同じ年の円卓会議の議事録です16。

NI 93-101 は、デリバティブ・ディーラーとデリバティブ・アドバイザーに適用される行為規則です。登録の有無にかかわらず適用され、連邦の規制を受けるカナダの金融機関も対象です。ケベックは、ディーラーとアドバイザーの定義を Derivatives Act(ケベック)に置きます17。

相手は、適格な相手(eligible derivatives party)とそれ以外に分かれ、求められる義務が違います。適格な相手には、カナダの金融機関、Business Development Bank of Canada、登録されたディーラーやアドバイザー、OSFI や州の当局が規制する年金基金などが入ります18。

相手 主な義務
適格な相手(全般) 公正な取引、利益相反への対応、相手の確認、苦情の処理、抱き合わせの強要の禁止
適格な相手(取引と社内) 取引の確認書の交付、相手の資産の分別、遵守の体制、上級管理者の指定、重大な違反の報告、記録
適格でない相手 上の義務に加えて、相手のニーズの把握、適合性、紹介の取り決めの条件、関係と取引前の開示、毎営業日の時価の提供

個人と、事業のリスクをヘッジする者(commercial hedger)は、適格な相手になれます。ディーラーの義務が外れるのは、その相手が規則の保護を放棄すると書いた書面を出したときだけです19。

規則の適用が外れる主な場合は、次の 4 つです20。

  • 登録された者を除き、次のすべてに当たる者は、規則の適用が外れます。適格でない相手と取引も助言もしないこと、マーケット・メイクと仲介を定期的にしないこと、他者のデリバティブの清算を取り次がないことです。清算の取次ぎは、回数を問わず、1 回でもあると外れません。
  • 本店が NI 93-101 の付録 A の国にあるディーラーは、現地の相手が適格な相手だけで、その国で登録などを受けて活動するとき、規則の適用が外れます。日本は付録 A の国に入るため、日本に本店があるディーラーも、この条件を満たせば適用が外れます。
  • カナダの金融機関のディーラーは、健全性の監督者の対応する行為の規定に従い、重大な違反を当局に通知するとき、NI 93-101 の付録 C の規定の適用が外れます。
  • 適格でない相手と取引せず、直近 24 か月の月末の想定元本の合計が、関連会社と合わせて 2 億 5,000 万を超えないディーラーは、規則の適用が外れます。ただし、公正な取引、利益相反、取引情報の交付の規定は残ります。

ブリティッシュ・コロンビアは、一部の適用除外と免除の文言が別になっています21。

清算義務と清算機関

清算義務

NI 94-101 は、カナダの現地の当事者に、一定のデリバティブを清算機関に提出することを求めます22。現地の当事者は、その法域で設立された個人以外の者、本店か主たる営業所がある個人以外の者と、その債務のほぼすべてをこれらの者が負う関連会社です。

提出が必要なのは、取引の双方が、それぞれ次のどれかに当たるときです23。

  • 清算機関の参加者で、その種類の清算サービスを使っている。
  • 参加者の関連会社で、取引を結ぶ年度(9 月 1 日から翌年 8 月 31 日)の前の 3〜5 月の、月末の想定元本の平均が 10 億を超える。
  • カナダの現地の当事者で、直前の 12 か月の月末の想定元本が、現地の関連会社と合わせて 5,000 億を超え、同じ 3〜5 月の平均も 10 億を超える。

1 つ目に当たらず、3 つ目に当たる者は、基準を初めて超えた月の末から数えて 90 日目より前に結んだ取引を、提出しなくてかまいません。

提出の期限は、約定した日の終わりです。清算機関の営業時間の後に約定したときは、次の営業日の終わりです24。清算機関の仕組みは清算機関(JSCC、LCH、CME など)で扱います。

次の場合は、義務が外れます25。

  • 政府、政府が債務を負う国営企業など、カナダ銀行などの中央銀行、国際決済銀行(BIS)、IMF が当事者の取引です。
  • 関連会社の間の取引で、リスク管理の体制と書面の合意があるものです。
  • 独立した第三者が行う多者間のポートフォリオ圧縮の結果の取引で、元の取引が清算されていないものです。
  • 現地の当事者に当たる理由が、現地の親会社が債務を負うことだけの者が、EU、英国、米国の法令に従って清算する取引です。

2025 年 9 月 25 日に公表された改正は、対象の種類を、LIBOR の後の指標金利に合わせて入れ替えました。2024 年 6 月 28 日に公表を終えた CDOR と、USD LIBOR、GBP LIBOR、EONIA を参照する種類を外し、代わりの指標金利を参照する種類を、次の表のとおり加えています26。

NI 94-101 の付録 A の対象は、次のとおりです27。

種類 指標または銘柄 通貨または地域 期間
固定変動スワップ EURIBOR ユーロ 28 日〜50 年
固定変動スワップ BBSW 豪ドル 28 日〜30 年
ベーシス・スワップ EURIBOR ユーロ 28 日〜50 年
OIS CORRA カナダ・ドル 7 日〜30 年
OIS FedFunds 米ドル 7 日〜3 年
OIS SOFR 米ドル 7 日〜50 年
OIS €STR ユーロ 7 日〜3 年
OIS SONIA 英ポンド 7 日〜50 年
FRA EURIBOR ユーロ 3 日〜3 年
CDS インデックス CDX.NA.IG 北米 5 年と 10 年(Series 47 以降)
CDS インデックス CDX.NA.HY 北米 5 年(Series 47 以降)
CDS インデックス iTraxx Europe 欧州 5 年(Series 46 以降)
はいいいえNI 94-101 の付録 A の種類か対象外はいいいえカナダの現地の当事者が含まれるか対象外いいえはい免除(政府や国営企業など、関連会社間、圧縮、外国法令での清算)に当たるか対象外はいいいえ双方が清算義務の 3 条件のどれかに当たるか対象外清算機関への提出が必要になる
図 1清算義務の対象かの判定
図の説明

質問は、対象の種類、当事者の所在、免除、当事者の条件の順です。免除の質問だけ「はい」で対象外に出て、ほかの質問は「いいえ」で出ます。4 つの質問を通ると、清算機関への提出が必要です。3 条件は本文の「清算義務」の節にあります。条件の質問は、3 つ目の条件の 90 日の猶予を過ぎた後を問います。

清算を仲介する者(clearing intermediary)には、NI 94-102 が顧客の保護を求めます。顧客のポジションと担保を、自己とほかの者の財産から分けること、顧客の担保を、認められた預託機関に開く、顧客の担保と分かる口座で保管することです。清算機関も、顧客のポジションと担保を自己の財産から分けます。間接の仲介者を通じて清算する顧客のためには、仲介者が不履行になったときなどに、ほかの仲介者へ移す仕組みも必要です28。

清算機関の監督

カナダ銀行は、支払・清算・決済法に基づき、システミックなリスクを持つ金融市場インフラを指定して監督します。2025 年の年次報告(2026 年 3 月)の時点で、指定の対象のうちデリバティブの清算機関は、次の 2 つです29。

システム 運営者 指定 清算する取引
CDCS カナダ・デリバティブ・クリアリング・コーポレーション(CDCC) 2012 年。システミックに重要 モントリオール取引所のデリバティブ、一部の固定利付証券、レポ、店頭の株式デリバティブ
SwapClear LCH Limited 2013 年。システミックに重要 金利スワップなどの店頭金利デリバティブ(カナダ・ドルを含む複数の通貨)

CDCC はモントリオール取引所の完全子会社で、カナダの上場デリバティブの清算機関です30。CDCC は AMF と OSC の承認と規制も受けます29。

OSC は、清算機関を承認する場合と、承認を免除する場合に分けます。2026 年 10 月 23 日時点の OSC のサイトで、オンタリオで承認されている清算機関は 4 つあります。Canadian Depository for Securities Limited、CDCC、FundSERV Inc.、LCH Limited です31。免除されている清算機関には、Chicago Mercantile Exchange Inc.、ICE Clear Credit LLC、Eurex Clearing AG、日本証券クリアリング機構(JSCC)などがあります32。

取引情報の報告

オンタリオでは、取引情報蓄積機関に取引情報を報告します。2026 年 10 月 23 日時点の OSC のサイトでは、OSC が指定している機関は、次の 4 つです33。

  • KOR Reporting Inc.
  • Chicago Mercantile Exchange Inc.
  • DTCC Data Repository (U.S.) LLC
  • ICE Trade Vault, LLC

OSC Rule 91-507 は、改正で題が「Derivatives: Trade Reporting」に変わりました。国際的に調和した項目(UTI、UPI など)に合わせ、カナダ独自の項目は 5 つに絞りました。OSC は、マニトバ、ケベック、MI 96-101 の各規則の改正と調整して公表しました34。

報告する側は、取引の種類で順に決まります35。

順 取引 報告する側
1 清算機関で清算される取引 清算機関
2 ISDA の多者間契約の当事者であるディーラーの間の、清算されない取引 その契約の方法で決まるディーラー
3 金融機関であるディーラーと、そうでないディーラーの取引 金融機関のディーラー
4 金融機関であるディーラーの間の取引 双方
5 ディーラーと、ディーラーでない者の取引 ディーラー
6 上のどれにも当たらない取引 取引前か取引時の書面の合意で決めた側
7 それ以外 現地の当事者の双方

報告の期限は、報告する側の種類で違います36。報告する側がディーラー、清算機関、またはその関連会社のときは、約定の作成データをリアルタイムで報告します。技術的に難しければ、次の営業日の終わりまでです。ライフサイクルの変更は、その営業日の終わりまでに報告します。それ以外の報告する側は、約定から 2 営業日目の終わりまでです。ディーラーと清算機関は、毎営業日に時価と担保、証拠金のデータも報告します。

取引を誤って報告したときは、気づいた日の翌営業日の終わりまでに、誤りを蓄積機関に報告します。報告する側でない現地の当事者が、データの誤りや漏れに気づいたときも、翌営業日の終わりまでに報告する側へ知らせます。報告したデータは、ディーラーと清算機関が 30 日ごとに、NI 93-101 の少額の適用除外を使うディーラーが四半期ごとに、誤りや漏れがないかを確かめます37。

報告しなくてよい場合もあります。次のものです38。

  • 商品デリバティブで、ディーラー、清算機関、その関連会社のどれでもない現地の当事者が、直近の 12 か月、月末の想定元本の合計をいつも 2 億 5,000 万以下に保っている場合です。
  • 関連会社の間の取引で、どちらもディーラー、清算機関、その関連会社でない場合です。
  • 非居住のディーラーと、現地の当事者でない者の取引です。オンタリオに住む個人が当事者のときは除きます。

非清算取引の証拠金

カナダ証券管理局は、非清算の店頭デリバティブの証拠金の規則を作っていません。2019 年 8 月の CSA スタッフ通知 95-301 で規則の提案を遅らせると決め、2021 年 4 月の 95-302 でさらに遅らせるとしました41。OSC の規則と方針の一覧にも、証拠金の規則はありません42。

OSFI は、連邦の金融機関と年金制度を規制し、監督する連邦の機関です。OSFI 法は、金融機関の財務の健全性と、法令や監督上の要件の遵守を監督することを OSFI の目的に挙げます43。

証拠金規制は、OSFI の Guideline E-22 が、連邦の規制を受ける金融機関(銀行、外国銀行の支店、信託・貸付会社、保険会社など)に求めます。指針は BCBS-IOSCO の枠組みに基づく最低基準です44。国際基準はBCBS-IOSCO の証拠金規制で扱います。2020 年 4 月 30 日付の指針の主な定めは、次のとおりです45。

項目 指針の定め
対象の取引 清算されないデリバティブ。現物決済の為替予約と為替スワップは除く
対象の相手 金融機関で、所属グループの非清算デリバティブの想定元本が、3〜5 月の月末の平均で 120 億を超える者
対象外 国、中央銀行、公的機関、一部の国際開発金融機関、BIS、清算機関。グループ内の取引
変動証拠金 時価の全額
当初証拠金 閾値は連結グループ単位で 7,500 万以下。双方向
最低受渡額 当初と変動の合計で 75 万以下
計算と授受 約定から 2 営業日以内に計算して請求し、その後は毎日。請求の 2 営業日後までに授受
当初証拠金の計算 標準表か内部のモデル。モデルは 99% の片側、10 日以上の期間
開始時期 2016 年 9 月 1 日から段階的。2022 年 9 月 1 日以降は 120 億の基準
新たに対象になった相手 その年の 9 月 1 日から授受。それ以前に結んだ取引は対象外

指針の名宛人は、連邦の規制を受ける金融機関です。名宛人は、取引の前に相手が対象かを確かめます。相手が連邦の規制を受けない金融機関でも、対象の条件に当たれば、証拠金を授受する相手になります46。外国の相手との取引は、相手の法域の証拠金の規則に従い、その規則が BCBS-IOSCO の枠組みと比較できると示す書類があれば、指針を満たしたとみなされます47。

判定の例

次の例は架空の取引で、実際の判定は取引の条件と当局の運用で変わります。

オンタリオに本店を置く C 銀行と D 社が、期間 7 年の CORRA の OIS を結ぶ架空の例で考えます。C 銀行と D 社は、どちらも清算機関の参加者で、CORRA の OIS の清算サービスを使っています。取引は NI 94-101 の付録 A の CORRA の OIS(7 日〜30 年)に当たり、両者が現地の当事者で、政府や中央銀行ではありません。双方が参加者の条件に当たるため、C 銀行と D 社は、約定した日の終わりまでに(営業時間後なら次の営業日の終わりまでに)清算機関に提出する必要があります。同じ取引で、D 社が清算機関の参加者でも参加者の関連会社でもない事業会社で、想定元本が 5,000 億に遠く及ばないなら、D 社は 3 つの条件のどれにも当たりません。清算機関の参加者である C 銀行だけが条件に当たるため、双方が当たるという要件を満たさず、この取引に清算義務は生じません。

オンタリオで、C 銀行(金融機関であるディーラー)と、ディーラーでない D 社が、清算されない金利スワップを結ぶ場合は、報告する側の表の 5 番目に当たり、C 銀行が報告する側です。C 銀行は作成データをリアルタイムで報告し、毎営業日に時価と担保のデータも報告します。D 社は、報告された情報に誤りを見つけたら、翌営業日の終わりまでに C 銀行へ知らせます。

D 社が運用会社で、D 社の所属グループの清算されないデリバティブの想定元本が、ある年の 3 月、4 月、5 月の月末の平均で 150 億あった場合を考えます。金融機関で、平均が 120 億を超えるため、D 社は E-22 の対象の相手です。OSFI の規制を受ける C 銀行も、所属グループの平均が 120 億を超えるなら、その年の 9 月 1 日から、D 社との取引に証拠金の授受をします。9 月 1 日より前に結んだ取引は、指針の対象になりません。

所在地と区分の確認、記録の保存

取引相手は、所在地と区分の 2 つで確かめます。所在地は報告と清算で現地の当事者に当たるかを、区分は行為規則で適格な相手かを決めます。オンタリオの報告の規則では、オンタリオで取引を業とするディーラーも現地の当事者です48。

記録の保存は、規則ごとに期間が違います49。

規則 保存する記録 期間
OSC Rule 91-507 報告する側が報告した取引の記録 満期か終了から 7 年
NI 94-101 清算の免除の条件を満たしたことを示す記録(免除を使った現地の当事者) 満期か終了から 7 年(マニトバは 8 年)
NI 93-101 行為規則の記録 作成から 7 年(マニトバは 8 年)

この記事が書いていないこと

ケベックの Derivatives Act と Regulation の条文、マニトバの規則の条文、MI 91-101 と MI 96-101 の本文、ブリティッシュ・コロンビアの行為規則の適用除外の細目は、この記事では扱いません。

取引情報の公開と当局への提供の規則、取引執行施設の規制、モントリオール取引所の規制、E-22 の適格担保とヘアカット、標準表の計算、OSFI の資本規制、罰則と執行は、この記事では扱いません。

注

  1. OSC「Domestic engagement」(外部サイト)の "Canadian Securities Administrators (CSA)" の項。13 の州・準州の証券規制当局の協議の場と書かれています。 ↩

  2. 財務大臣の承認の通知(外部サイト)は証券法(オンタリオ)第 143.3 条、NI 93-101 の施行の通知(外部サイト)は同法第 143.4 条に基づきます。 ↩

  3. NI 94-101(外部サイト) の第 1 条第 4 項と第 2 条。報告はOSC の改正の公表文(外部サイト)の "Canadian Trade Reporting Rules" の段落。 ↩

  4. NI 94-101(外部サイト) の第 1 条第 4 項と第 2 条。NI 93-101(外部サイト) の第 3 条、NI 94-102(外部サイト) の第 2 条も同じ形です。 ↩

  5. OSC の改正の公表文(外部サイト)の "Background"。2013 年 12 月 31 日に施行されたと書かれています。 ↩

  6. NI 94-101(外部サイト) の第 14 条第 1 項。 ↩

  7. NI 94-102(外部サイト) の第 50 条。 ↩

  8. NI 93-101(外部サイト) の第 53 条第 1 項と、OSC の施行の通知(外部サイト)。 ↩

  9. OSC の施行の通知(外部サイト)。2025 年 7 月 25 日に施行と書かれています。 ↩

  10. 財務大臣の承認の通知(外部サイト)。2025 年 11 月 21 日に承認され、2026 年 3 月 25 日に施行と書かれています。 ↩

  11. Companion Policy 91-506CP(外部サイト) の Part 1 "Introduction"(用語は証券法令の意味を使う)。 ↩

  12. OSC Rule 91-506(外部サイト) の第 2 条第 1 項(a)〜(g)、第 2 項。通貨は同項(c)、取引所は(g)。 ↩

  13. NI 93-101(外部サイト) の第 4 条第 1 項は、金額を "$500 000 000 000" のように「$」で書いています。この記事の金額は、NI 94-101(外部サイト)、OSC Rule 91-507(外部サイト)、OSFI の Guideline E-22(外部サイト) も含め、資料の「$」の表記のままで、通貨は資料に明記されていません。 ↩

  14. NI 93-101(外部サイト) の第 4 条第 1 項と第 2 項(第 9、10、12 条と第 5 部の第 1 節)。 ↩

  15. CSA の公表文(外部サイト)の Annex B の "CSA Response"(登録の要件は証券法令に定められ、"business trigger" で判断する)。 ↩

  16. OSC の 93-102 のページ(外部サイト)の文書の一覧。2018 年 4 月 19 日の案の公表文と、2018 年 9 月 20 日の円卓会議の議事録の 2 件です。 ↩

  17. NI 93-101(外部サイト) の第 2 条と第 1 条第 1 項の "derivatives dealer"、"derivatives adviser"(ケベックは(b))。CSA の公表文(外部サイト)の "Structure of the Instrument" に、連邦の金融機関も対象とあります。 ↩

  18. NI 93-101(外部サイト) の第 1 条第 1 項の "eligible derivatives party" の(a)(b)(d)(e)。 ↩

  19. NI 93-101(外部サイト) の第 8 条第 1 項〜第 3 項。第 8 条第 3 項の義務は、適格な相手にも残ります。 ↩

  20. NI 93-101(外部サイト) の第 38 条第 1 項(a)〜(e)と第 2 項、第 39 条と付録 A(日本を含む)、第 42 条、第 44 条第 1 項。(c)(d)は "regularly" の限定があり、(e)の清算の取次ぎにはありません。 ↩

  21. NI 93-101(外部サイト) の第 6 条第 2 項、第 38 条、第 39 条第 1.1 項、第 42 条第 2 項。 ↩

  22. NI 94-101(外部サイト) の第 3 条第 1 項と、第 1 条第 1 項の "local counterparty"、"mandatory clearable derivative" の定義。 ↩

  23. NI 94-101(外部サイト) の第 3 条第 1 項(a)〜(c)と第 1 条第 1 項の "reference period"。第 3 条第 2 項は、(a)に当たらず(c)に当たる者の取引のうち、(c)の基準を初めて超えた月の末から 90 日目より前に結んだものを外します。 ↩

  24. NI 94-101(外部サイト) の第 3 条第 3 項。 ↩

  25. NI 94-101(外部サイト) の第 6 条(a)〜(f)、第 7 条、第 8 条、第 3 条第 5 項と付録 B(EU、英国、米国)。 ↩

  26. CSA の公表文(外部サイト)の "Substance and purpose"。施行は財務大臣の承認の通知(外部サイト)。 ↩

  27. NI 94-101(外部サイト) の付録 A。2026 年 1 月 19 日までの統合版で、2025 年の改正の内容です。 ↩

  28. NI 94-102(外部サイト) の第 3 条、第 4 条、第 29 条、第 47 条。 ↩

  29. カナダ銀行の 2025 年の年次報告(外部サイト)の "Regulatory framework" と Table 1。CDCC が AMF と OSC の規制を受けることは脚注 2。 ↩ ↩2

  30. CDCC「About CDCC」(外部サイト)の "About CDCC"。 ↩

  31. OSC「Recognized clearing agencies」(外部サイト)。 ↩

  32. OSC「Exempted clearing agencies」(外部サイト)。 ↩

  33. OSC「Trade repositories」(外部サイト)の "Designated trade repositories"。 ↩

  34. OSC の改正の公表文(外部サイト)の "Substance and Purpose" と "Canadian Trade Reporting Rules"。題の変更は施行の通知(外部サイト)の改正の本文。 ↩

  35. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 25 条第 1 項と第 2 項。ISDA の多者間契約は同条第 3 項(b)。 ↩

  36. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 31 条、第 32 条、第 33 条第 1 項と、第 1 条第 1 項の "qualified reporting counterparty"。 ↩

  37. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 26.1 条(確認の頻度)、第 26.2 条(誤った報告)、第 26.3 条第 1 項(誤りや漏れの通知)。 ↩

  38. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 40 条、第 41.1 条、第 41.2 条。 ↩

  39. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 29 条第 2 項(a)〜(d)、第 6 項、第 8 項。 ↩

  40. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 28.1 条(LEI)と第 30 条第 1 項(UPI)。 ↩

  41. CSA スタッフ通知 95-302(外部サイト) の "Background" と "Plan for Implementation of Margin Requirements"。 ↩

  42. OSC の規則と方針の一覧(外部サイト)の 95 の番号の文書(95-301、95-302、95-401)。 ↩

  43. OSFI 法(外部サイト)の第 3.1 条と第 4 条第 2 項(a)。 ↩

  44. OSFI の Guideline E-22(外部サイト) の冒頭の説明と、第 1 項、第 2 項、第 12 項、第 20 項、脚注 1。 ↩

  45. OSFI の Guideline E-22(外部サイト) の第 2〜4 項、第 15 項、第 20 項、第 22 項、第 25〜26 項、第 29 項、第 31〜33 項、第 43 項、第 70〜71 項。 ↩

  46. OSFI の Guideline E-22(外部サイト) の第 14 項。 ↩

  47. OSFI の Guideline E-22(外部サイト) の第 11 項、第 18 項。 ↩

  48. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 1 条第 1 項の "local counterparty"(b)。 ↩

  49. OSC Rule 91-507(外部サイト) の第 36 条第 1 項、NI 94-101(外部サイト) の第 9 条、NI 93-101(外部サイト) の第 36 条第 1 項。 ↩