インドのルピーが絡む為替予約や金利スワップを、現地の顧客や海外の投資家と結ぶ業務では、相手が居住者か非居住者か、取引がヘッジのためかを確かめる場面があります。取引情報の報告や清算の手配でも、インドの規則を参照します。

インドのデリバティブ規制の位置づけ

インドのデリバティブ規制は、商品ごとの文書で定められています。為替デリバティブはマスター・ディレクション「Risk Management and Inter-Bank Dealings」、金利デリバティブと信用デリバティブはそれぞれ別のマスター・ディレクションです。マスター・ディレクションは、インド準備銀行(RBI)が分野ごとの指示を 1 つにまとめた文書で、RBI は通達(circular)でこれを改めます1。

文書が定めることは、商品を提供できる者、利用者の区分ごとの商品と目的、ヘッジの要件、報告です。為替デリバティブには、2026 年 10 月の通達が、再契約の禁止、準備金、非居住者向けの目的の制限を加えました。

根拠と所管

根拠は、法律、法律に基づく規則、RBI の指示の 3 層です。為替デリバティブの規則は、外国為替管理法(FEMA)に基づく RBI の規則と指示で、金利デリバティブと信用デリバティブの規則は、準備銀行法に基づく RBI の指示です2。

項目 根拠の文書 発出と施行3
為替デリバティブ FEMA の規則(FEMA 25)と為替のマスター・ディレクション 規則は 2000 年 5 月 3 日。マスター・ディレクションは 2016 年 7 月 5 日
為替デリバティブの改正 RBI の通達 25 号、26 号、27 号 2026 年 10 月 10 日と 12 日
金利デリバティブ ルピー金利デリバティブのマスター・ディレクション 2025 年 12 月 8 日発出、2026 年 3 月 1 日施行
信用デリバティブ 信用デリバティブのマスター・ディレクション 2026 年 6 月 25 日発出、同日施行
市場の担い手の行為 店頭デリバティブの市場の担い手のマスター・ディレクション 2021 年 9 月 16 日発出、2022 年 1 月 3 日施行
非清算の証拠金 非清算の店頭デリバティブの証拠金のマスター・ディレクション 2024 年 5 月 8 日発出、2024 年 11 月 8 日施行
電子取引基盤 電子取引プラットフォームのマスター・ディレクション 2025 年 6 月 16 日発出、即日施行
国際金融サービスセンター 国際金融サービスセンター庁法 2019 年 12 月 19 日に大統領が裁可

所管は、取引の場所と種類によって分かれます。次の表のうち、CCIL は、店頭デリバティブの清算と取引情報の蓄積を運営する機関です4。

場面 所管または運営
インド国内の認可ディーラーが提供する為替、金利、信用デリバティブ RBI
取引所の通貨デリバティブと金利デリバティブ RBI の認可と承認、SEBI の規則
国際金融サービスセンターの中の金融商品、サービス、機関 IFSCA
店頭デリバティブの取引情報の蓄積と、一部の清算 CCIL

SEBI は、RBI の指示の中で、取引所の通貨デリバティブの清算値段の決め方の承認、会員の規則、金利デリバティブの取引時間、信用デリバティブの取引手順の細則を委ねられています5。

取引所の為替デリバティブは、RBI の認可を受けた証券取引所と清算機関が扱います。商品は為替先物と為替オプション(ヨーロピアン)で、通貨の組は USD-INR、EUR-INR、GBP-INR、JPY-INR、EUR-USD、GBP-USD、USD-JPY、期間は 12 か月までです。ルピーが絡む契約は、確定したリスクのヘッジに使え、ルピーで現金決済し、最終の清算値段は Financial Benchmarks India Pvt. Ltd.(FBIL)の参照レートです6。

為替のマスター・ディレクションの本文は、通達 25 号から 27 号の内容を反映していません7。

指示と通達は 2026 年 10 月 23 日時点で公表されている版(為替のマスター・ディレクションは 2026 年 10 月 1 日更新、通達 25 号から 27 号は同年 10 月 10 日と 12 日の発出)を確かめました。

為替デリバティブの規則

利用者の区分と商品

為替デリバティブを提供する認可ディーラー(AD)は、利用者をリテールと非リテールに分けます。利用者は、居住者でも非居住者でも、認可ディーラー以外の者です8。非リテールになれるのは、次の者です9。

  • 全インド金融機関と、ノンバンク金融会社(単独プライマリー・ディーラーと住宅金融会社を含む)
  • 保険会社、年金基金、投資信託とオルタナティブ投資ファンド
  • 純資産が 500 クロール以上か、売上高が 1,000 クロール以上の居住者(1 クロール = 1,000 万ルピー)
  • 個人でない非居住者

これ以外の利用者はリテールです。非リテールになれる利用者はリテールを選べ、リテールの利用者は、利用者が求め、AD がリスク管理の能力を認めれば、非リテールになれます。居住者と非居住者の区分は FEMA の定義によります10。

提供できる商品は、区分で違います11。

利用者 提供できる為替デリバティブ
リテール 為替予約、為替スワップ、通貨スワップ、通貨オプションの買い、スプレッドの買い
非リテール リテールの商品、カバード・オプション、為替予約などを結ぶか取り消すオプション、そのほかの為替デリバティブ(レバレッジ商品などは除く)

目的の制限は、商品と通貨で決まります12。

取引 目的の制限
現金、トム、スポット 認められた経常取引か資本取引
ルピーが絡む受渡しありの為替デリバティブ ヘッジに限る
ルピーが絡まない為替デリバティブ 制限なし
外貨の金利デリバティブ 制限なし
通貨スワップでルピー負債を外貨負債に換える取引 居住者の個人でない者に提供できる。リテールの利用者には、自然ヘッジがあることが条件

ヘッジの要件と準備金

ヘッジは、将来見込まれる外貨のリスクか、すでに確定した外貨のリスクの影響を相殺するために、為替デリバティブを結ぶことです13。ルピーが絡む為替デリバティブでは(非居住者向けの NDDC を除きます)、AD が契約の期間中、次の点を確かめます14。

  • ほかのデリバティブで、同じリスクをすでにヘッジしていないか
  • 想定元本と期間が、ヘッジの対象の額と期間の範囲に収まっているか
  • 対象が小さくなるか無くなったとき、利用者が契約をそれに合わせているか
  • 対象の額が定まっていないとき、妥当な見積りで契約し、その見積りを定期的に検討しているか

見込まれるリスクをヘッジして生じた純益は、見込んだ取引のキャッシュフローが生じる時点になって、はじめて利用者に渡します15。

2026 年 10 月 10 日の通達 25 号は、この確認に 3 つの規則を重ねました。発出と同時に効力が生じ、ルピーが絡む為替デリバティブが対象です16。

  • AD のいずれかでキャンセルした契約は、利用者が結び直せません。満期でのロールオーバーは認められます。
  • 実需を示さずに持てる想定元本の上限(確定したリスクのヘッジ。全 AD の未決済額の合計)は、500 万ドル相当です。為替のマスター・ディレクションの本文は、通達の前の 1 億ドル相当のままです。
  • AD は契約を結ぶとき、同じ対象を別の AD でヘッジしていない旨の確約書を利用者から取り、保存します。

通達 26 号(10 月 10 日)と 27 号(10 月 12 日)は、AD に外国為替リスク準備金(FERR)を義務づけました。準備金は、想定元本のルピー相当額の 20% を、インド国内で RBI に現金で預け、契約が終わるまで毎日維持するものです。どの契約が対象になるかは、契約の相手で違います17。

条件 利用者との契約(26 号) AD 自身のヘッジの契約(27 号)18
契約 ルピーが絡む為替デリバティブ ルピーが絡む為替デリバティブ
目的 経常取引のヘッジ AD の資産と負債の通貨リスクのヘッジ
向き 利用者が外貨をルピーで買う AD が外貨をルピーで買う
想定元本 200 万ドル相当を超える 下限なし

26 号は、利用者が複数の取引で 200 万ドル相当の基準を避けようとする行為を、違反とします。AD は準備金の額を毎日 RBI のシステム(CIMS)で報告し、両方の号とも、発出の後に結ぶ契約が対象です。

はいいいえ利用者との契約で、ルピーが絡むか26 号の準備金の対象外はいいいえ経常取引のヘッジのためか26 号の準備金の対象外はいいいえ利用者が外貨をルピーで買う側か26 号の準備金の対象外はいいいえ想定元本は 200 万ドル相当を超えるか26 号の準備金の対象外準備金の対象(想定元本の20%)
図 1準備金(FERR)の対象になるか
図の説明

通達 26 号(利用者との契約)の判定を、4 つの質問で順に確かめます。ルピーが絡むか、経常取引のヘッジか、利用者が外貨を買う側か、想定元本が基準を超えるかの順で、1 つでも「いいえ」なら右の「対象外」に出ます。4 つとも「はい」のときだけ、準備金の対象になります。

ルピーの非受渡し契約(NDDC)

為替のマスター・ディレクションと通達 25〜27 号は NDF の語を使いません。元本を受け渡さず現金で決済する店頭の為替デリバティブ契約を、NDDC(non-deliverable foreign exchange derivative contract)と呼びます。NDDC と NDF の関係は、マスター・ディレクションに書かれていません19。NDF の商品の仕組みはNDFで扱います。

ルピーが絡む NDDC を提供できるのは、国際金融サービスセンターの銀行ユニット(IFSC Banking Unit。IBU)を運営する AD カテゴリー I の銀行と、AD カテゴリー III として認可された単独プライマリー・ディーラーです。銀行は、自社の代わりに、非居住の親銀行が IBU を運営していてもかまいません。居住者と非居住者のどちらにも提供できます20。NDS と NDO の商品はノンデリバラブルのスワップとオプション(NDS、NDO)で扱います。

項目 居住者向け 非居住者向け
決済 ルピー ルピーか外貨
目的 ヘッジに限る ヘッジに限る(2026 年 10 月 12 日から)
ヘッジの要件の確認 かかる かからない

非居住者向けの目的は、2026 年 10 月 12 日の通達の前は制限がありませんでした21。

オンショアとオフショアの区分

指示は、取引を提供する場所を、インド国内の AD と、AD の海外の事業体(海外支店、IBU、全額出資の子会社、合弁会社)に分けて書いています。ルピーが絡む為替デリバティブを非居住者に提供するとき、AD は直接取引するか、海外の事業体とのバック・ツー・バックで取引します。海外の事業体は、所在地の法令でディーラーかマーケット・メイカーとして取引できる必要があります。インドで設立した子会社と合弁会社は、銀行業を営む事業体に限られます22。

銀行間では、IBU を持つ AD カテゴリー I の銀行と単独プライマリー・ディーラーが、同じ立場の AD と海外の銀行との間で NDDC を取引できます。IBU、インド国内の支店、外国の支店のどれでも取引でき、決済はルピーか外貨です23。AD は、国内の営業時間の外でも、顧客と銀行間の取引ができます24。

金利デリバティブと信用デリバティブ

ルピー金利デリバティブ

ルピー金利デリバティブのマスター・ディレクションは、店頭と取引所の取引に適用されます。店頭では、取引の当事者の少なくとも一方が、市場の担い手(スケジュール銀行、単独プライマリー・ディーラー、上位層のノンバンク金融会社など)か、RBI が認めた清算機関でなければなりません25。

利用者の区分は、為替と同じ形で、リテールと非リテールに分かれます。リテールには、金利先渡し契約、金利スワップ、オプション、キャップ、フロアの買いなどを提供でき、カラーは、リテールがプレミアムの純受取人にならない形に限られます。非リテールには、スワップションなども提供できます26。目的の制限は、利用者で違います27。

利用者 目的の制限
居住者のリテールと、市場の担い手になれる資格のある非リテール ヘッジに限る
市場の担い手になれる資格のない居住者の非リテール 制限なし
非居住者の個人 ヘッジに限る
非居住者の個人以外 ヘッジ以外は PVBP の上限の範囲内

非居住者のヘッジ以外の取引には、上限があります。未決済の位置の PVBP(Price Value of a Basis Point)を、非居住者ごとに符号を無視して足した額が、1,000 クロールを超えない範囲です。上限に達すると、ヘッジ以外の取引は提供できません。CCIL が、上限の使用状況を毎日公表します。国債の金利デリバティブは、非居住者にはヘッジに限ります。MMIFOR(改定ムンバイ銀行間フォワード・アウトライト・レート)に基づく契約は、利用者にはヘッジに限ります28。

外貨で決済するルピー金利デリバティブ(FCS-IRD)は、AD カテゴリー I の銀行と単独プライマリー・ディーラーが、非居住者に提供できます。店頭の金利デリバティブが使う変動金利などの指標は、RBI が認可した管理者が算出するものです29。

信用デリバティブ

信用デリバティブのマスター・ディレクションは、2026 年 6 月 25 日に出て、2022 年の指示に代わりました。店頭と取引所の取引に適用され、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)とトータル・リターン・スワップ(TRS)を認めます。発端は、信用指数のデリバティブと社債の TRS の導入を挙げた 2026 年 2 月 6 日の金融政策声明です30。

市場の担い手になれるのは、スケジュール商業銀行(小規模金融銀行、決済銀行などを除く)、単独プライマリー・ディーラー、ノンバンク金融会社の上位層と中間層、輸出入銀行などの開発金融機関です。当事者の少なくとも一方は、市場の担い手か RBI が認めた清算機関です31。

CDS の保護の買い手と売り手には、次の制限があります32。

  • 買い手のうち、居住者のリテールで個人でない者は、ヘッジの目的に限って保護を買えます。非リテールの買いには、目的の制限がありません。
  • 売り手になれる非リテールは、保険会社、年金基金、投資信託、オルタナティブ投資ファンド、外国ポートフォリオ投資家(FPI)です。このうち保険会社、年金基金、投資信託、オルタナティブ投資ファンドは、それぞれの規制当局の承認を受けて売ります。
  • FPI 全体が売る保護の想定元本の合計は、社債の発行残高の 5% が上限です。CCIL が使用状況を公表し、上限に達すると、FPI はそれ以上売れません。
  • 個人には、CDS も TRS も提供できません。

参照事業体は居住者です。参照債務に使えるのは、短期金融市場の債務証券、格付のあるルピー建ての社債、インフラ会社が設立した特別目的会社の格付のないルピー建ての社債です。資産担保証券、住宅ローン担保証券、信用補完や保証の付いた債券、転換社債は、使えません。参照事業体が取引のどちらかの当事者の関連当事者(related party)にあたる取引は、結べません。ただし、政府関連事業体どうしは、関連当事者とみなしません33。

TRS を非居住者に提供できるのは、ヘッジの目的の場合か、非居住者が総収益の受取人で、参照資産の想定元本の全額を市場の担い手に払い込む全額払込みの形の場合です。後者の想定元本は、社債への外国投資の限度に数えます34。ヘッジの目的で買う利用者は、保有する参照債務の額面を超える額の契約を買えません。契約の期間は、参照債務の満期か、その直後にある標準の CDS・TRS の満期日までです。保有する参照債務を失ったら、1 か月以内に契約を解消します35。

決済は現金か現物で、CDS はオークションによる決済もできます。FPI でない非居住者の TRS は、現金決済に限ります。Fixed Income Money Market and Derivatives Association of India(FIMMDA)が設ける信用デリバティブ決定委員会の決定は、市場参加者を拘束します。取引所の CDS と信用指数先物は、RBI の事前の承認を受けた商品に限られ、取引の手順は SEBI が定めます36。

報告、清算、証拠金

取引情報蓄積機関への報告

AD と市場の担い手は、店頭デリバティブを、CCIL の取引情報蓄積機関(TR)へ報告します。CCIL のページ(日付の記載なし。2026 年 10 月 23 日に確認)によると、CCIL の TR は、2007 年 8 月にルピーの金利スワップのデータ収集を始めました。為替デリバティブの報告は、2012 年 7 月から 2013 年 12 月まで 4 段階で広げています37。報告の期限は、取引の種類で違います38。

取引 報告の期限
為替の銀行間でルピーが絡む契約(通貨スワップ、仕組み取引を除く) 毎時のまとめで、時刻の終了から 30 分以内
為替の銀行間でルピーが絡まない契約(通貨スワップ、仕組み取引を除く) 午後 5 時までの約定は、当日の午後 5 時 30 分まで
為替の銀行間の通貨スワップ、仕組み取引、外貨の金利デリバティブ 午後 5 時までの約定は、報告基盤の終了前
為替の顧客との契約 翌営業日の正午前
ルピー金利デリバティブ 約定から 30 分以内
信用デリバティブ 約定から 30 分以内

為替の銀行間取引のうち、ルピーが絡む契約は、報告基盤の終了の 30 分前より後と、終了後の約定が、翌営業日の午前 10 時までの報告です。ルピーが絡まない契約、通貨スワップ、仕組み取引、外貨の金利デリバティブは、午後 5 時より後の約定が、同じく翌営業日の午前 10 時までです。ルピー金利デリバティブでは、外貨で決済する非居住者との取引が翌営業日の正午前、仕組み取引が当日の TR の終了前です。

バック・ツー・バックの取引は、非居住者の顧客の情報を含めて報告します。海外の相手と顧客に報告や確認の義務はなく、AD と市場の担い手が報告の正確さに責任を負います。帳簿と TR の残高は、常に照合します。報告の様式は、CCIL が RBI の承認を得て定めます39。

ルピー金利デリバティブの市場の担い手は、海外の関連会社が世界で結んだ取引も、TR に報告します。報告する割合は、想定元本の合計の 80% 以上が 2027 年 1 月 1 日から、90% 以上が 2028 年 1 月 1 日からです40。電子取引基盤の運営者は、RBI の認可を受け、取引情報を RBI が定める TR か報告基盤へ報告します41。

清算

清算の範囲は、CCIL のページ(日付の記載なし。2026 年 10 月 23 日に確認)によると、次のとおりです。

為替予約は、CCIL が 2009 年 12 月 1 日に清算を始めました。残存期間が 36 か月までの銀行間取引が、保証付きの決済の対象で、2021 年 2 月からは、事業会社や FPI などの顧客も、清算参加者を通じて USD-INR の取引を清算できます42。

ルピーの金利スワップと金利先渡し契約では、MIBOR と MIOIS の指標に基づく契約を、残存期間 10 年まで清算します。MMIFOR に基づく契約は、AD の銀行が対象です。2008 年 11 月からは、保証のない多角的ネッティングによる決済も提供しています。CCIL は、適格中央清算機関(QCCP)の位置づけを受けていると説明しています43。

RBI の指示は、金利デリバティブと信用デリバティブの決済を、二者間か、RBI が承認した清算の仕組みで行うと定めています44。

非清算の店頭デリバティブの証拠金

非清算の店頭デリバティブの証拠金の指示は、2024 年 11 月 8 日以降に結ぶ非清算の為替、金利、信用デリバティブに適用されます。対象の事業体(対象事業体)は、未決済の想定元本の平均で決まります。この平均は、3 月末、4 月末、5 月末の未決済の想定元本の合計の単純平均で、その年の 9 月 1 日から翌年の 8 月 31 日まで使います45。

区分 変動証拠金 当初証拠金
金融当局が規制する国内の事業体 25,000 クロール以上 60,000 クロール以上
その他の国内の事業体 60,000 クロール以上 対象外
海外の金融事業体 30 億ドル以上 80 億ドル以上
海外のその他の事業体 80 億ドル以上 対象外

証拠金の交換のしかたは、次のとおりです46。

  • 国内の対象事業体は、国内か海外の対象事業体との取引で、証拠金を交換します。
  • 変動証拠金は毎日計算し、変動証拠金と当初証拠金のどちらも、約定か再計算の日から 3 営業日以内(T+3)に交換します。
  • 当初証拠金の閾値は 450 クロールまで、最低移転額は変動証拠金と当初証拠金を合わせて 4.5 クロールまでです。
  • 政府、外国の政府、中央銀行、国際決済銀行、多国間開発銀行を相手にする取引と、同じ連結グループの中の取引には、適用されません。
  • 物理決済の為替予約と為替スワップでは、証拠金を交換しないことを選べます。

GIFT シティ(IFSC)の位置づけ

GIFT シティの国際金融サービスセンター(IFSC)は、インドで最初の IFSC です。IFSC の金融商品、金融サービス、金融機関は、IFSCA が開発し、規制します。IFSCA は 2020 年 4 月 27 日に設立され、設立の前は RBI、SEBI、年金基金規制開発庁、保険規制開発庁が、IFSC の業務を規制していました47。

2019 年の官報原文の定義によると、IFSCA の法律は、金融商品に、証券、預金、信用の取り決めと、即時に決済する通貨の交換を除く外貨の契約を含めます48。RBI の FEMA に基づく権限と、SEBI の証券契約(規制)法に基づく権限は、IFSC の中で規制される金融商品、金融サービス、金融機関については、IFSC に及ばず、IFSCA が行います49。

デリバティブの規則では、IBU はルピーの NDDC を提供できる銀行の要件で、AD の海外の事業体として非居住者との取引の経路にもなります。IBU の規則として、IFSCA は「IFSCA (Banking) Regulations, 2019」を公表しています50。

判定の例

次の例は架空の取引で、実際の判定は取引の条件と当局の運用で変わります。

インドの輸入企業 U 社が、Z 銀行(AD カテゴリー I の銀行)と、6 か月後に 300 万ドルを買う為替予約を結ぶ架空の例で考えます。契約済みの輸入代金の支払を 1 ドル 90 ルピーでヘッジする取引で、U 社は同じ代金を別の AD でヘッジしていません。

ルピーが絡み、経常取引のヘッジで、U 社が外貨を買い、想定元本が 200 万ドルを超えるため、図の 4 つの質問はすべて「はい」で、通達 26 号の準備金の対象です。想定元本のルピー相当額は、この例では約定相場の 1 ドル 90 ルピーで換算すると仮定して、2 億 7,000 万ルピーです。Z 銀行は、その 20% にあたる 5,400 万ルピーを、契約が終わるまで RBI に現金で預け、毎日報告します。

300 万ドルは 500 万ドル以内で、他の AD にポジションもないため、U 社は結ぶときに実需の存在を示す必要がありません。ただし、求められれば示せる確定した代金は必要で、U 社は他の AD でヘッジしていない旨の確約書を Z 銀行に出します。

U 社が輸出代金の 300 万ドルを売る為替予約を結ぶなら、U 社は外貨を売る側で、準備金の対象になりません。想定元本と期間が輸出代金の額と期間を超えないといったヘッジの要件は、変わりません。

インド国外の運用会社(非居住者)が、ヘッジでなく、ルピー相場の損益を得るために、Z 銀行とルピーの NDDC を結ぼうとする例で考えます。Z 銀行は IBU を運営していますが、2026 年 10 月 12 日以降、非居住者向けの NDDC はヘッジの目的に限られるため、この取引は提供できません。通達の前には、目的の制限がありませんでした。

実務で確かめる点

AD の業務では、ヘッジの取引で受け取る確約書などの書類を、2 年以上保存します51。市場の担い手は、新しい商品をコンプライアンスとリスク管理の最高責任者と取締役会の承認を経て導入し、自分で値付けできない商品は、直接でもバック・ツー・バックでも取引しません52。帳簿と TR の残高の照合は、ルピー金利デリバティブでは継続的な監査(concurrent audit)の対象です53。

この記事が書いていないこと

FEMA と FEMA 25 の規則の本文、居住者と非居住者の判定の細目、罰則、違反への対応は、この記事では扱いません。

インド国外で非居住者どうしが結ぶルピーの NDF にインドの規則が及ぶか、NDF の清算、FBIL のフィキシングの算出は、この記事では扱いません。

外国ポートフォリオ投資家の債券投資の規則、国債の先渡し契約の指示、商品デリバティブ、税、清算の義務を定める規則、SEBI と IFSCA の個別の規則、IFSC の取引所の商品は、この記事では扱いません。

注

  1. RBI「Master Direction - Risk Management and Inter-Bank Dealings」(外部サイト)の冒頭の第 2〜4 段落(2016 年 7 月 5 日の発出)。 ↩

  2. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の冒頭(FEMA 第 47 条第 2 項(h)、第 11 条、準備銀行法第 45W 条)。金利デリバティブ(外部サイト)と信用デリバティブ(外部サイト)は、準備銀行法第 45W 条と第 45U 条に基づく。 ↩

  3. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の冒頭と Appendix I、通達の25 号(外部サイト)、26 号(外部サイト)、27 号(外部サイト)の日付。金利(外部サイト)は発出文と第 1.3 項、信用(外部サイト)は発出文と第 1 項(iii)、市場の担い手(外部サイト)は発出文と第 1.2 項、証拠金(外部サイト)は発出文と第 1 項(2)、電子取引(外部サイト)は発出文。IFSCA 法(外部サイト)は官報冒頭の裁可の日。 ↩

  4. CCIL「Derivatives(Trade Repository)」(外部サイト)、「Forex Forward」(外部サイト)、「Interest Rate Derivatives」(外部サイト)の Introduction。 ↩

  5. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 3.4 項(iii)と(v)。金利デリバティブ(外部サイト)の第 4.6 項。信用デリバティブ(外部サイト)の第 6.1 項(ii)。 ↩

  6. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 3.1 項〜第 3.4 項。清算値段は第 3.4 項(iii)。 ↩

  7. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 4 段落と、第 2.4 項(i)および第 3.4 項(i)の本文(1 億ドルのまま)。 ↩

  8. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 1 項(i)(r)(利用者は FEMA 第 2 条(u) の者のうち、AD 以外)。 ↩

  9. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.1 項(i)〜(v)。 ↩

  10. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 2.1 項(xxiv)と(xxviii)(FEMA 第 2 条(w)、(v))。為替のマスター・ディレクションも同じ法律の定義を使う。 ↩

  11. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.2 項(ii)と(iii)。スプレッドの買いは、コール・スプレッドとプット・スプレッド。 ↩

  12. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.3 項(i)、(ii)、(iv)、(v)、(vi)。 ↩

  13. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 1 項(i)(a)、(b)、(i)(見込まれるリスクと確定したリスク、ヘッジの定義)。 ↩

  14. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.4 項(i)(a)〜(e)。ヘッジの対象の市場価値の変動による差と、AD が重要でないと認める変化は、調整が要らない。 ↩

  15. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.4 項(ii)と(iii)(キャンセルと再契約、見込まれるリスクのヘッジの純益)。再契約は、通達 25 号が改めた。 ↩

  16. RBI の通達 25 号(外部サイト)の第 2 項(a)〜(d)(効力は発出と同時)。 ↩

  17. RBI の通達 26 号(外部サイト)の第 2 項〜第 5 項。 ↩

  18. RBI の通達 27 号(外部サイト)の第 2 項、第 3 項、第 4 項。 ↩

  19. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 1 項(i)(m)。NDF の語は、このマスター・ディレクションと通達 25〜27 号の本文に出てこない。 ↩

  20. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.2 項(vi)。 ↩

  21. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.2 項(vii)、第 2.3 項(iii)、第 2.4 項(i)の冒頭。非居住者向けの目的はRBI の通達 27 号(外部サイト)の第 2 項。 ↩

  22. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.4 項(vi)と(vii)(支払は、本国へ送金できる資金か、通常の銀行経路の送金で賄う)。 ↩

  23. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の Part C の第 3A 項。 ↩

  24. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の Part C の第 6 項。金利デリバティブの市場時間は金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.6 項(vi)。 ↩

  25. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 1.2 項、第 5.1 項。 ↩

  26. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.2 項、第 5.3 項(i)と(ii)。 ↩

  27. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.4 項(i)〜(iii)。 ↩

  28. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.5 項(b)、第 5.4 項(iii)のただし書きと(iv)。 ↩

  29. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.3 項(iii)、第 5.6 項(i)。 ↩

  30. 信用デリバティブ(外部サイト)の発出文の第 1 項、第 1 項(ii)(iii)、第 4.1 項。 ↩

  31. 信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.2.1 項。 ↩

  32. 信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.3.1 項(i)〜(vi)。TRS を個人に提供できない定めは第 4.3.2 項(iv)。 ↩

  33. 信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.4 項(i)〜(v)と、第 4.5.1 項(i)。 ↩

  34. 信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.3.2 項(iii)(a)〜(f)。 ↩

  35. 信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.5.2 項(i)と(iii)。 ↩

  36. 信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.5.1 項(v)、第 5 項、第 6.1 項(i)(ii)、第 6.2 項。 ↩

  37. CCIL「Derivatives」(外部サイト)の Introduction の Rate Derivatives と Forex Derivatives。 ↩

  38. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の Part E の B の(i)(a)〜(d)。金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.7 項(a)(i)。信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.5.5 項(i)。 ↩

  39. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の Part E の B の(ii)〜(vi)。 ↩

  40. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.5 項(a)と Annex-II の第 3 項。想定元本が 100 万ドル以下の契約は、報告しないことを選べる。 ↩

  41. 電子取引プラットフォームの指示(外部サイト)の第 3 項(RBI の事前の認可)と第 7 項の 3 つ目(取引情報の報告)。 ↩

  42. CCIL「Forex Forward」(外部サイト)の Introduction。 ↩

  43. CCIL「Interest Rate Derivatives」(外部サイト)の Introduction と Benefits。 ↩

  44. 金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.6 項(iii)。信用デリバティブ(外部サイト)の第 4.5.1 項(iv)。 ↩

  45. 証拠金の指示(外部サイト)の第 1 項、第 2 項(1)、第 4.3 項。 ↩

  46. 証拠金の指示(外部サイト)の第 4.1 項、第 4.2 項、第 4.4 項(1)〜(6)、第 5.1 項(2)、第 6 項(3)〜(5)。 ↩

  47. IFSCA のホームページ(外部サイト)の "About the IFSCA"。 ↩

  48. 国際金融サービスセンター庁法(外部サイト)の第 3 条第 1 項(d)(金融商品)と第 12 条第 1 項(開発と規制の責務)。2019 年の官報原文による。 ↩

  49. 国際金融サービスセンター庁法(外部サイト)の第 13 条第 1 項と、第 2 附則の FEMA 第 44A 条、証券契約(規制)法第 29B 条、準備銀行法第 57A 条の挿入。 ↩

  50. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の第 2.2 項(vi)と第 2.4 項(vi)。IFSCA の「IFSC Banking Units」(外部サイト)のページ。 ↩

  51. RBI の通達 25 号(外部サイト)の第 3 項(実需の存在を含む遵守は AD の責任で、書類を 2 年以上保存)。 ↩

  52. 市場の担い手の指示(外部サイト)の第 4.2.1 項、第 4.2.4 項、第 4.3.2 項、第 4.3.3 項。 ↩

  53. 為替のマスター・ディレクション(外部サイト)の Part E の B の(iv)。金利デリバティブ(外部サイト)の第 5.7 項(a)(vii)。 ↩