商品先物取引業の許可の取得、契約前の書面の交付と説明、勧誘の管理の場面で、この法律の規定が出てきます。商品の店頭取引を行う側は、その取引が商品デリバティブ取引から除かれるかどうかも確かめます(図 1)。

商品先物取引法が定めること

商品先物取引法の目的は、商品取引所の組織と商品市場の取引の管理を定めてその健全な運営を確保し、商品先物取引業者の業務の運営を適正にして、商品の取引と、商品市場の取引の受託などを公正にすることです。あわせて、商品の生産と流通を円滑にし、委託者等の保護に資することも目的に挙げています1。日本の規制全体の地図は日本のデリバティブ規制の全体像で扱います。

法律は 9 つの章に分かれ、商品の定義は第 1 章、商品取引所は第 2 章、商品先物取引業者は第 4 章、罰則は第 8 章が定めます2。

章 内容
第 1 章 総則(目的と定義)
第 2 章 商品取引所
第 3 章 商品取引清算機関等
第 4 章 商品先物取引業者
第 4 章の 2 商品先物取引仲介業者
第 5 章 商品先物取引協会
第 6 章 委託者保護基金
第 7 章 雑則
第 8 章 罰則

法律の所管は、主務大臣と主務省令の定めで決まります。商品先物取引業者、商品先物取引仲介業者、商品先物取引協会、委託者保護基金の主務大臣は、農林水産大臣と経済産業大臣の両方です。商品取引所と株式会社商品取引所の主要株主などの主務大臣は、扱う商品の区分で決まります。農林水産省関係商品だけなら農林水産大臣、経済産業省関係商品だけなら経済産業大臣で、両方を扱うときは両大臣です。主務省令は、農林水産省令と経済産業省令です3。

細目を定める法令は、次のとおりです。法律が「政令で定める」と委ねた事項は商品先物取引法施行令(令)に、「主務省令で定める」と委ねた事項は主務省令にあります。

法令 事項 規定
商品先物取引法 定義 第 2 条
商品先物取引法 商品取引所 第 5 条、第 6 条、第 9 条、第 78 条
商品先物取引法 商品先物取引業の許可 第 190 条、第 193 条
商品先物取引法 特定委託者と特定当業者 第 197 条の 3 から第 197 条の 9
商品先物取引法 行為規制 第 213 条から第 220 条の 4
商品先物取引法 監督 第 231 条から第 236 条
商品先物取引法 特定店頭商品デリバティブ取引 第 349 条
商品先物取引法 主務大臣 第 354 条
商品先物取引法 罰則 第 357 条ほか
商品先物取引法施行令 商品の指定の一部 第 1 条
商品先物取引法施行令 不招請勧誘が禁止される商品取引契約 第 30 条

条文は、2026 年 10 月 12 日時点で e-Gov 法令検索に公開されている版(商品先物取引法は 2026 年 1 月 1 日施行、同施行令は 2025 年 4 月 1 日施行)を確かめました4。

商品デリバティブ取引と商品の範囲

規制の対象になる「商品デリバティブ取引」は、商品市場における取引、外国商品市場取引、店頭商品デリバティブ取引の 3 つです。店頭商品デリバティブ取引のうち、当事者の保護に支障がない取引として政令が定めるものと、一定の相手方との取引は除かれます5。

対象の「商品」は、法律が 4 つの号で定めています6。

号 範囲
第 1 号 農産物、林産物、畜産物、水産物と、これらを原料や材料にして作った物品のうち飲食物であるもの。政令が定める物品(牛、豚、なたね、木材、天然ゴム、綿花など)も入る7
第 2 号 鉱業法が定める鉱物と、政令が定める鉱物(リチウム鉱、貴石など)。これらを製錬や精製して得た物品も入る7
第 3 号 国民経済上重要な原料や材料で、価格の変動が大きく先物取引に類似する取引の対象になりやすいものとして、政令が定める物品
第 4 号 電力。一定の期間の一定の電力を単位とする取引の対象になるものに限る

電力を商品に含める第 4 号は、2014 年 6 月 18 日に公布された改正法(平成 26 年法律第 72 号)の改正後の規定として、同法の附則が経過措置の前提にしています8。

商品の価格に基づく数値は「商品指数」といい、二つ以上の商品の価格の水準を総合的に表した数値や、二つの商品の価格の差に基づく数値などです9。

取引の型は、市場の取引(先物取引)と店頭の取引で、次の表のように同じ順に並びます。先物取引は、商品取引所の定める基準と方法に従って商品市場で行う取引です。店頭商品デリバティブ取引は、商品市場、外国商品市場、取引所金融商品市場のいずれによらずに行う取引です10。

取引の型 先物取引(第 3 項) 店頭商品デリバティブ取引(第 14 項)
将来の時期に商品と対価を授受する売買(転売や買戻しで差金決済ができるもの)。先物と先渡の型 第 1 号 第 1 号
約定した価格と将来の現実の価格の差に基づいて金銭を授受する取引 第 2 号 第 2 号(類似する取引を含む)
商品指数について約定した数値と現実の数値の差に基づいて金銭を授受する取引 第 3 号 第 3 号(類似する取引を含む)
一方の意思表示で上の取引を成立させる権利を付与し、対価を支払う取引。オプションの型 第 4 号 第 4 号と第 5 号(類似する取引を含む)
商品の価格や商品指数の変化率に基づく金銭を互いに支払う取引。スワップの型 第 5 号(商品の価格)、第 6 号(商品指数) 第 6 号(類似する取引を含む)
上に類似する取引で政令が定めるもの 第 7 号 第 7 号

商品取引所と商品市場

商品取引所は、会員商品取引所と株式会社商品取引所の 2 種類です。会員商品取引所は、会員組織の社団として法律に基づいて設立されます。株式会社商品取引所は、主務大臣の許可を受けて市場を開設する株式会社です11。設立の許可と、株式会社商品取引所になる許可は、どちらも主務大臣が出します12。

商品市場は、上場する物品や電力、または商品指数ごとに、商品取引所が開設します。商品取引所は、定款などで定める商品市場以外の市場を開けず、同じ上場商品について 2 つ以上の商品市場も開けません13。この法律でいう「上場商品」は、商品取引所が一つの商品市場で取引する物品や電力だけを指します。取引所で売買するデリバティブ全般(上場デリバティブ)の意味では使いません14。

商品や商品指数の先物取引に類似する取引をするための施設は、取引所金融商品市場を除き、だれも開設できません。当業者が自己の営業のために行う取引だけの施設など、一部の施設は適用が除かれています15。

商品市場の取引から生じる債務を引き受ける営業は、商品取引債務引受業です。主務大臣の許可か承認を受けた者が、商品取引清算機関です16。

総合取引所と金融商品取引法

金融商品取引所が商品の市場を開いても、その取引は金商法が扱います。金商法は、商品先物取引法の商品のうち、政令が定めるものを金融商品の 1 つとして位置づけています。金融商品市場で行うその商品の市場デリバティブ取引が、「商品関連市場デリバティブ取引」です17。金商法施行令は、対象を、商品先物取引法の商品のうち、金融庁長官が商品市場所管大臣と協議して指定するものと定めます(需給の均衡を図る施策が法令で講じられている商品を除く)18。金融商品取引所でありながら農産物も扱う大阪取引所のような取引所は、総合取引所と呼ばれます19。2025 年 3 月時点の商品取引所は堂島取引所と東京商品取引所の 2 つです19。

総合取引所の法的な位置づけは、次の 3 点です。

  • 商品先物取引法の側は、取引所金融商品市場を、商品市場類似施設の開設の禁止と店頭商品デリバティブ取引の定義から除きます15。
  • 金商法の側は、商品関連市場デリバティブ取引だけを行う市場を、「金融商品市場」の定義から除きます20。商品関連市場デリバティブ取引の取次ぎなどは、第一種金融商品取引業です21。
  • 金商法の権限を持つのは内閣総理大臣です。商品関連の一定の処分は、あらかじめ商品市場所管大臣に協議して同意を得る(金融商品取引所の免許など)か、通知する(一部の命令など)ことが必要です。商品市場所管大臣は、商品先物取引法が主務大臣の区分に応じて定める農林水産大臣と経済産業大臣です22。

商品先物取引業の許可と金商法の登録

商品先物取引業は、次の 5 つの行為のどれかを業として行うことです。顧客の注文の取次ぎなど、取引の受託に関する行為が中心です23。

号 行為
第 1 号 商品清算取引を除く商品市場の取引について、委託を受けるか、その委託の媒介、取次ぎ、代理をする
第 2 号 商品清算取引の委託の取次ぎの委託を受けるか、その委託の媒介、取次ぎ、代理をする
第 3 号 外国商品市場取引(商品清算取引に似た取引を除く)について、委託を受けるか、その委託の媒介、取次ぎ、代理をする
第 4 号 外国商品市場取引のうち、商品清算取引に似た取引について、第 2 号と同じ行為をする
第 5 号 店頭商品デリバティブ取引、またはその媒介、取次ぎ、代理をする

第 5 号では、自分が相手方になって取引を成立させる行為も、媒介などと並んで対象です。委託者等の保護に支障がないものとして政令が定めるものと、一定の相手方との店頭商品デリバティブ取引は、商品先物取引業から除かれます23。

商品先物取引業を行うには、主務大臣の許可が要ります。許可は 6 年ごとに更新を受けないと、期間が過ぎたときに効力を失います24。許可には、商品市場の秩序の維持や委託者等の保護に必要な最小限度の条件を付けられます25。

主務大臣は、許可の基準に適合すると認めるときでなければ許可しません。基準は次の 5 つです26。

  • 許可を申請する者が株式会社などであること
  • 財産的基礎があり、収支の見込みが良好であること。純資産額が主務省令の定める額を下回るときは、財産的基礎がないものとして扱われる
  • 知識、経験と社会的信用があり、業を行っても委託者等の保護に支障が出ないこと
  • 欠格事由に当たらないこと
  • 申請書に重要な事項の虚偽がないこと

許可を受けた商品先物取引業者は、勧誘などをする役員と使用人(外務員)について、主務大臣の登録を受けます27。

商品先物取引業者の委託を受けて媒介だけを業とする者は、商品先物取引仲介業者として、主務大臣の登録を受けます30。

金融商品取引法(金商法)の金融商品取引業は、商品先物取引業とは根拠の法律も登録の仕組みも別です。取引の場ごとに、適用される法律と必要な許可や登録が分かれます21。

取引の場 適用される法律 顧客の注文を取り次ぐなどの業
商品取引所の商品市場 商品先物取引法 商品先物取引業(主務大臣の許可)
金融商品取引所の市場で行う指定の商品の取引 金商法(商品関連市場デリバティブ取引) 第一種金融商品取引業(内閣総理大臣の登録)
取引所の市場によらない商品の取引 商品先物取引法(店頭商品デリバティブ取引) 商品先物取引業(主務大臣の許可)
取引所の市場によらない金融のデリバティブ取引 金商法(店頭デリバティブ取引) 第一種金融商品取引業(内閣総理大臣の登録)

金商法の登録とデリバティブ取引の定義は、金融商品取引法とデリバティブで扱います。

店頭商品デリバティブ取引の扱い

取引所の市場によらない商品の取引は、店頭商品デリバティブ取引です。原則として商品デリバティブ取引に入り、これを業として行う、または媒介などをするには商品先物取引業の許可が要ります。この場合は、外務員の登録と、商品先物取引業者の行為規制も適用されます23。

店頭商品デリバティブ取引のうち、次の 2 つは商品デリバティブ取引から除かれます。

  • 当事者の保護に欠けるおそれがないとして政令が定める取引。取引の内容による除外です。
  • 店頭商品デリバティブ取引に高度な能力を持つ者として主務省令が定める者か、資本金の額が主務省令の定める額以上の株式会社を相手方として行う取引(これらの者のために行う取引を含む)。相手方による除外で、法律はこれを「対象外店頭商品デリバティブ取引」と呼びます5。

商品先物取引業の定義でも、主務省令の者と株式会社を相手方とする取引は業から除かれます23。

店頭商品デリバティブ取引が商品デリバティブ取引に入るかは、取引の内容と相手方で決まります。図 1 は、この節の条件を、質問の順に並べたものです。

はいいいえ取引所の市場によらない、商品か商品指数の取引か店頭商品デリバティブ取引ではないいいえはい政令が定める除外の取引か商品デリバティブ取引から除かれるいいえはい相手方は、主務省令の者か、主務省令の額以上の資本金の株式会社か原則として除かれる商品デリバティブ取引(業として行うと許可が要る)
図 1店頭商品デリバティブ取引が商品デリバティブ取引から除かれるかの判定
図の説明

取引の内容か相手方が除外の条件に当たれば、原則として商品デリバティブ取引から除かれます。ただし、除かれる場合にも届出などの対象になる取引があります(相手方による除外では、次の段落)。どの除外にも当たらず最後まで進めば商品デリバティブ取引で、業として行うと商品先物取引業の許可が要ります。

対象外店頭商品デリバティブ取引でも、官報で公示された上場商品に当たる商品を対象にする取引と、公示された上場商品指数に当たるか、それに似た商品指数を対象にする取引は、規制の外に出ません。これらの店頭商品デリバティブ取引(特定店頭商品デリバティブ取引)を業として行う者は、主務大臣に届け出ます。主務大臣は、届出をした者の名簿を縦覧に供し、報告を求めて立入検査をし、運営を改善する命令を出せます。この法律、命令、処分に違反したときは、3 月以内の業務の停止も命じられます。損失補塡などの禁止も準用されます31。

取引所の市場によらない電力の取引を、K 商社と L 社が業として行う架空の例で考えます。

  • K 商社が、取引所の市場によらず、電力の価格に基づく金銭を互いに支払う取引を、L 社と業として行います。この取引は政令が定める除外の取引ではなく、L 社も、主務省令の定める者でも、主務省令の定める額以上の資本金の株式会社でもありません。どの除外にも当たらないので商品デリバティブ取引に入り、業として行う K 商社には商品先物取引業の許可が要ります。
  • K 商社が、同じ内容の取引を、別の時点で L 社と業として行います。この取引は政令が定める除外の取引ではなく、対象の電力は官報で公示された上場商品などに当たりません。一方、L 社は主務省令の定める額以上の資本金の株式会社です。相手方による除外に当たるので、対象外店頭商品デリバティブ取引として商品デリバティブ取引から除かれ、特定店頭商品デリバティブ取引の届出の対象にもなりません。

商品先物取引業者の行為規制

商品先物取引業者の行為規制は、法律の第 4 章(商品先物取引業者)に置かれています。主な規定は次のとおりです32。

規定 内容
第 213 条 業者と役員、使用人は、顧客に対して誠実かつ公正に業務を行う
第 213 条の 2 広告などに、商号、商品先物取引業者である旨、政令が定める重要事項を表示する。利益の見込みなどについて、著しく事実に相違する表示や著しく人を誤認させる表示をしない
第 214 条 禁止行為(次の表)
第 214 条の 3 損失補塡などの禁止(顧客の側にも禁止行為がある)
第 215 条 顧客の知識、経験、財産の状況と契約の目的に照らして不適当な勧誘を行って、委託者等の保護に欠けることのないよう業を行う(適合性の確保)
第 217 条 契約前に、取引の額が取引証拠金等の額を上回る可能性がある場合はその比率、損失が取引証拠金等の額を上回るおそれがある場合はその旨などを記載した書面を交付する
第 218 条 契約前に、第 217 条第 1 項の事項を、顧客の知識、経験、財産の状況と契約の目的に照らし、顧客が理解するために必要な方法と程度で説明する
第 219 条 契約前に、自己の行為が商品先物取引業の定義のどの号に当たるかを明らかにする
第 220 条 取引が成立したときは、遅滞なく、書面で委託者等に通知する
第 220 条の 2 取引証拠金等を受け取ったときは、直ちに、その旨を書面で交付する
第 220 条の 3 金融サービス提供法の第 7 条から第 10 条までを準用する

契約前の書面は、顧客の承諾を得れば、情報通信の技術を使った提供でもかまいません。店頭商品デリバティブ取引の注文を受けようとするときは、自己が相手方になるか、媒介などをするかも、あらかじめ明らかにします。

適合性原則と説明義務の考え方は、この表の適合性の確保と契約前の説明にも共通します。

禁止行為は、次の 10 の行為です33。

号 禁止される行為
第 1 号 不確実な事項について断定的判断を示すか、確実だと誤認させるおそれのあることを告げて、取引の委託などを勧誘する
第 2 号 商品取引契約の締結やその勧誘について、顧客に虚偽のことを告げる
第 3 号 数量や価格などについて顧客の指示を受けずに、取引の委託を受ける(商品投資顧問契約に係る業務など、主務省令が定めるものを除く)
第 4 号 顧客の委託を受けた後、その注文を出す前に、自己の計算で顧客の取引より有利な価格の同じ取引を成立させることを目的に、取引をする
第 5 号 取引を行わない旨や、勧誘を受けたくない旨を表示した顧客を、勧誘する
第 6 号 顧客に迷惑を覚えさせるような仕方で勧誘する
第 7 号 勧誘に先立って、自己の商号か名称と勧誘である旨を告げ、勧誘を受ける意思があるかを確かめずに勧誘する
第 8 号 特定の上場商品について、売付けか買付けと、損失を減らす対当する取引を、数量と期限を同一にして行うよう勧める
第 9 号 勧誘の要請をしていない顧客を訪問するか電話をかけて、政令が定める商品取引契約の締結を勧誘する(主務省令が定める行為を除く)
第 10 号 上のほか、委託者等の保護に欠け、取引の公正を害するものとして、主務省令が定める行為

第 9 号が禁じる勧誘は、不招請勧誘と呼ばれる勧誘です。呼び名は金商法の分野と共通で、商品先物取引法の条文には「不招請勧誘」の語は出ません(施行令の見出しが「不招請勧誘が禁止される商品取引契約」と書きます)34。禁止される契約は、施行令が定めます。個人の顧客が相手の契約で、次の 2 つです35。

  • 商品市場の取引、外国商品市場取引などの委託に関する契約のうち、損失が取引証拠金等の額を上回るおそれがあるもの
  • 店頭商品デリバティブ取引に関する契約

特定委託者と特定当業者

行為規制は、顧客の区分で適用が変わります。特定委託者と特定当業者が相手のときは、次の規定が適用されません。ただし、公益や顧客の保護に支障が生じるおそれがあるとして主務省令が定める場合は、この限りではありません36。

相手方の段階 適用されない規定
勧誘の相手方 広告の規制(第 213 条の 2)、第 214 条第 5 号、第 7 号、第 9 号、適合性の確保(第 215 条)
申込みを受けた相手方、契約を結んだ相手方 第 209 条、第 214 条第 8 号、契約前の書面と説明、事前の明示、取引成立の通知など(第 217 条から第 220 条の 3 まで)

特定委託者には、商品先物取引業者、商品投資顧問業者、国、日本銀行、商品取引所の会員等、委託者保護基金などが入り、商品デリバティブ取引の専門的知識と経験を有する者として主務省令が定める者も入ります37。特定当業者は、契約の取引対象の商品のすべてについて、売買、生産、加工、使用などを業として行う法人のうち、主務省令の要件に当たるものです。特定委託者に当たる法人は除かれます38。金商法の特定投資家に近い区分ですが、条文と対象は別です。

区分は、申出と承諾で変えられます。

顧客 申出の内容 規定
特定委託者のうち、外国の取引所に相当する施設の会員等や委託者保護基金など 一般顧客として扱うよう申し出る 第 197 条の 4
特定当業者 一般顧客として扱うよう申し出る 第 197 条の 8
特定委託者でも特定当業者でもない法人(ただし、取引対象の商品のすべてについて当業者に当たる法人を除く) 特定委託者として扱うよう申し出る。期限日は承諾日から 1 年を経過する日以前 第 197 条の 5
主務省令の要件に当たる個人 特定委託者として扱うよう申し出る 第 197 条の 6
取引対象の商品のすべてについて当業者に当たる法人 特定当業者として扱うよう申し出る 第 197 条の 9

違反の効果

違反の効果は、行政処分、罰則、民事の責任の 3 つに分かれます。

区分 規定 内容
行政処分 第 232 条 財産の状況や業の運営の改善に必要な措置を命じられる場合がある。一定の場合は 3 月以内の停止を命じられる場合がある41
行政処分 第 236 条 許可の取消し、または 6 月以内の取引や業の停止を命じられる場合がある42
罰則 第 357 条 無許可で商品先物取引業を行った者。3 年以下の拘禁刑か 300 万円以下の罰金(併科あり)43
罰則 第 362 条 顧客に虚偽のことを告げた者。1 年以下の拘禁刑か 300 万円以下の罰金(併科あり)44
罰則 第 367 条 書面の交付や通知の義務に違反した者。6 月以下の拘禁刑か 50 万円以下の罰金(併科あり)45
民事 第 218 条第 4 項、第 220 条の 3 断定的判断の提供などか、契約前の書面の事項(第 217 条第 1 項第 1 号から第 3 号)を説明しなかったとき、業者が顧客の損害を賠償する責任を負う46
  • 改善の命令は、主務大臣が商品市場の秩序の維持や委託者等の保護のために必要なときに出せます。停止の対象は、商品市場における取引や商品先物取引業です。
  • 許可の取消しや停止は、欠格事由に当たったとき、許可の基準の一部(株式会社などであること、純資産額)に適合しなくなったとき、この法律、命令、処分、許可の条件に違反したときなどに、主務大臣が命じられます。
  • 虚偽の告知の罰則は、禁止行為の第 2 号の違反が対象です。書面の義務の罰則は、契約前の書面、取引成立の通知、取引証拠金等の受領の書面の義務の違反が対象です。
  • 民事の責任は、断定的判断の提供などか、契約前の書面に記載する事項のうち第 1 号から第 3 号のものの説明をしなかったときに生じます。金融サービス提供法の、元本欠損額が損害額と推定される規定などが準用されます。

商品先物取引法の第 8 章には、勧誘の禁止(禁止行為の第 5 号から第 9 号)の違反を挙げる罰則の規定はありません。これらの違反は、この法律に違反したときの行政処分の対象です47。

この記事が書いていないこと

主務省令が定める者と額を含む主務省令の中身と、改正ごとの経過措置は、この記事では扱いません。

注

  1. 「商品先物取引法」第 1 条(目的)。 ↩

  2. 「商品先物取引法」の目次(第 1 章から第 8 章、第 4 章の 2)。 ↩

  3. 「商品先物取引法」第 354 条第 1 項第 1 号から第 3 号(主務大臣)と第 2 項(主務省令は農林水産省令、経済産業省令)。第 1 号は農林水産省関係商品のみを上場商品とする商品市場など、第 2 号は経済産業省関係商品のみを上場商品とする商品市場など、第 3 号は業者、協会、基金などを定める。 ↩

  4. e-Gov 法令検索の「商品先物取引法」(版 ID 325AC0000000239_20260101_506AC0000000056、令和 6 年法律第 56 号による改正)と「商品先物取引法施行令」(版 ID 325CO0000000280_20250401_506CO0000000306)。 ↩

  5. 「商品先物取引法」第 2 条第 15 項(商品デリバティブ取引)。 ↩ ↩2

  6. 「商品先物取引法」第 2 条第 1 項第 1 号から第 4 号(商品)。 ↩

  7. 「商品先物取引法施行令」第 1 条第 1 項(法第 2 条第 1 項第 1 号の政令で定める物品)と第 2 項(同項第 2 号の政令で定める鉱物)。表の例は、それぞれの項が挙げる物品から選んだ。 ↩ ↩2

  8. 「商品先物取引法」の附則のうち、平成 26 年 6 月 18 日法律第 72 号の附則第 32 条(「第二条の規定による改正後の商品先物取引法」第 2 条第 1 項第 4 号の電力を前提にした経過措置)。公布日は e-Gov 法令検索の附則の見出し(平成 26 年 6 月 18 日法律第 72 号)による。 ↩

  9. 「商品先物取引法」第 2 条第 2 項(商品指数)。 ↩

  10. 「商品先物取引法」第 2 条第 3 項第 1 号から第 7 号(先物取引)と第 14 項第 1 号から第 7 号(店頭商品デリバティブ取引)。第 3 項第 4 号と第 14 項第 4 号、第 5 号はオプション、第 3 項第 5 号と第 6 号、第 14 項第 6 号はスワップの型。 ↩

  11. 「商品先物取引法」第 2 条第 4 項から第 6 項。 ↩

  12. 「商品先物取引法」第 9 条(会員商品取引所の設立の許可)と第 78 条(株式会社商品取引所になる許可)。 ↩

  13. 「商品先物取引法」第 2 条第 9 項(商品市場)、第 5 条第 1 項と第 2 項。 ↩

  14. 「商品先物取引法」第 2 条第 7 項(上場商品)。 ↩

  15. 「商品先物取引法」第 6 条(商品市場類似施設の開設の禁止。取引所金融商品市場を除く)、第 331 条(適用除外の施設)、第 2 条第 14 項(店頭商品デリバティブ取引)。 ↩ ↩2

  16. 「商品先物取引法」第 2 条第 17 項と第 18 項(商品取引債務引受業、商品取引清算機関)、第 167 条(許可)、第 173 条第 1 項(承認)。 ↩

  17. 「金融商品取引法」第 2 条第 24 項第 3 号の 3(商品)、第 2 条第 8 項第 1 号(商品関連市場デリバティブ取引の定義)。 ↩

  18. 「金融商品取引法施行令」第 1 条の 17 の 2(法第 2 条第 24 項第 3 号の 3 に規定する政令で定めるもの)。 ↩

  19. 農林水産省「商品先物取引とは」の「Q&A」の Q1(2025 年 3 月時点)。 ↩ ↩2

  20. 「金融商品取引法」第 2 条第 14 項(金融商品市場)。 ↩

  21. 「金融商品取引法」第 2 条第 8 項第 1 号から第 4 号(金融商品取引業。第 1 号は商品関連市場デリバティブ取引を除く)、第 28 条第 1 項第 1 号の 2(商品関連市場デリバティブ取引についての第 2 条第 8 項第 2 号、第 3 号、第 5 号の行為は第一種金融商品取引業)と第 2 号(店頭デリバティブ取引についての同項第 4 号の行為)、第 29 条(登録)。 ↩ ↩2

  22. 「金融商品取引法」第 194 条の 6 の 2(商品市場所管大臣への協議と同意)、第 194 条の 6 の 3(事前通知)。商品市場所管大臣の区分は、商品先物取引法第 354 条第 1 項。 ↩

  23. 「商品先物取引法」第 2 条第 22 項第 1 号から第 5 号(商品先物取引業)と第 200 条第 1 項第 6 号(外務員の登録の対象に店頭商品デリバティブ取引の勧誘が入る)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  24. 「商品先物取引法」第 190 条第 1 項と第 2 項。 ↩

  25. 「商品先物取引法」第 191 条。 ↩

  26. 「商品先物取引法」第 193 条第 1 項第 1 号から第 5 号と第 2 項。 ↩

  27. 「商品先物取引法」第 200 条第 1 項と第 2 項(外務員の登録)。 ↩

  28. 「商品先物取引法」第 210 条(顧客財産の分離保管等)。 ↩

  29. 「商品先物取引法」第 211 条第 1 項(届出。「銀行その他の政令で定める者を除く」の括弧書きを含む)と第 2 項(120% を下回らないこと)。 ↩

  30. 「商品先物取引法」第 2 条第 28 項と第 29 項(商品先物取引仲介業、商品先物取引仲介業者)、第 240 条の 2 第 1 項(登録)。 ↩

  31. 「商品先物取引法」第 349 条第 1 項から第 8 項(特定店頭商品デリバティブ取引業者)、第 352 条(上場商品などの公示)。損失補塡などの禁止は第 214 条の 3 の準用。 ↩

  32. 「商品先物取引法」第 4 章(商品先物取引業者)の第 213 条、第 213 条の 2、第 214 条、第 214 条の 3、第 215 条、第 217 条から第 220 条の 3 まで。第 220 条の 3 は金融サービス提供法第 7 条から第 10 条までの準用。 ↩

  33. 「商品先物取引法」第 214 条第 1 号から第 10 号。 ↩

  34. 「商品先物取引法」第 214 条第 9 号と、「商品先物取引法施行令」第 30 条の見出し(「不招請勧誘が禁止される商品取引契約」)。 ↩

  35. 「商品先物取引法施行令」第 30 条。第 1 の項目は第 2 条第 22 項第 1 号から第 4 号の行為を内容とする契約で、損失が取引証拠金等の額を上回るおそれがあるものに限り、第 2 の項目は同項第 5 号の行為を内容とする契約。 ↩

  36. 「商品先物取引法」第 220 条の 4 第 1 項と第 2 項。第 1 号が勧誘の相手方(第 213 条の 2、第 214 条第 5 号、第 7 号、第 9 号、第 215 条)、第 2 号が申込みを受けた相手方か契約を締結した相手方(第 209 条、第 214 条第 8 号、第 217 条から第 220 条の 3 まで)。 ↩

  37. 「商品先物取引法」第 2 条第 25 項第 1 号から第 8 号(特定委託者)。 ↩

  38. 「商品先物取引法」第 2 条第 26 項(特定当業者)。 ↩

  39. 「商品先物取引法」第 197 条の 3(特定委託者への告知義務)と第 197 条の 7(特定当業者への告知義務)。第 2 条第 25 項第 7 号と第 8 号は、外国の取引所に相当する施設の会員等と委託者保護基金など。 ↩

  40. 「商品先物取引法」第 197 条の 4 第 3 項と第 9 項。 ↩

  41. 「商品先物取引法」第 232 条第 1 項と第 2 項(業務改善命令等)。 ↩

  42. 「商品先物取引法」第 236 条第 1 項第 1 号から第 5 号(監督上の処分)。 ↩

  43. 「商品先物取引法」第 357 条第 4 号。 ↩

  44. 「商品先物取引法」第 362 条第 8 号。 ↩

  45. 「商品先物取引法」第 367 条第 7 号、第 8 号、第 9 号(第 217 条第 1 項、第 220 条第 1 項、第 220 条の 2 第 1 項の義務違反)。 ↩

  46. 「商品先物取引法」第 218 条第 4 項(第 214 条の第 1 号に係る部分に違反したときなどの損害賠償責任)と第 220 条の 3。説明すべき事項は第 217 条第 1 項第 1 号から第 3 号。準用される金融サービス提供法は第 7 条から第 10 条で、第 7 条は元本欠損額を損害の額と推定する規定。 ↩

  47. 「商品先物取引法」第 8 章(第 356 条から第 375 条)の罰則で、第 214 条第 5 号から第 9 号の違反を挙げる規定が見当たらないことと、第 236 条第 1 項第 5 号。 ↩