清算されない店頭デリバティブ取引の担保は、変動証拠金の請求と当初証拠金の見積額の算出という業務で出てきます。取引相手が規制の対象かを判定するときと、受け入れる担保の資産の種類を決めるときにも、この規制の条件を参照します。

何を求める規制か

証拠金規制は、清算機関を通さない店頭デリバティブ取引(非清算店頭デリバティブ取引)について、金融商品取引業者等が取引相手と証拠金を受け渡す措置を講じることを求める規制です。受け渡す証拠金は 2 種類あります。変動証拠金は、取引の時価の変動に応じて差し入れる証拠金です。当初証拠金は、将来発生しうる費用や損失の合理的な見積額に対応して差し入れる証拠金です1。

金融商品取引業者等は、証拠金規制に沿って、清算されない店頭デリバティブ取引の相手方との証拠金の受け渡しの措置を講じます。監督指針は、その態勢の整備を着眼点に挙げています。

きっかけは国際的な合意です。標準化された店頭デリバティブ取引の清算集中、取引情報の報告、清算されない取引へのより高い所要自己資本を、2009 年 9 月 24〜25 日のピッツバーグ・サミットで G20 が合意しました2。合意の全体はG20 の店頭デリバティブ改革で扱います。証拠金については、バーゼル銀行監督委員会と証券監督者国際機構(IOSCO)が、清算されないデリバティブ取引の証拠金規制の最終報告書を 2013 年 9 月に公表し、2015 年 3 月に改訂しました3。

日本では、金融庁が 2016 年 3 月 31 日と 7 月 25 日に関連する内閣府令や監督指針などを公布し、2016 年 9 月 1 日に施行しました。金融庁は、この規制を、金融システムを安定させることなどを目的に、国際的な合意に沿って 2016 年 9 月から、取引の規模に合わせて段階を踏んで実施するものと説明しています4。内閣府令の案は 2015 年 12 月 1 日の施行を予定していましたが、国際的な導入時期が 2016 年 9 月に変わったため、日本も 2016 年 9 月に合わせました5。

根拠と所管、違反したときの扱い

義務を負うのは、金融商品取引業者等、つまり金融商品取引業者と登録金融機関です6。

金融商品取引法(金商法)は、金融商品取引業者等が避けなければならない業務の運営の状況の 1 つに、「公益に反し、又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがある」状況のうち内閣府令が定めるものを挙げます。金融商品取引業等に関する内閣府令(金商業等府令)は、その状況の 1 つとして、変動証拠金と当初証拠金を受け渡す措置を講じていない状況を定めます7。証拠金を受け渡す措置の規定は金商業等府令にあり、店頭デリバティブ取引等の規制に関する内閣府令(店頭デリバティブ府令)にはありません8。

規定 定めていること
金商法 第 40 条 金融商品取引業者等が避ける業務の運営の状況のうち、内閣府令で定めるもの
金商業等府令 第 123 条 変動証拠金と当初証拠金の措置、対象から外れる取引、担保にできる資産と代用価格
金融庁長官の告示(2016 年 3 月 31 日) 証拠金の計算の方法、潜在的損失等見積額の算出方法、担保にできる資産とヘアカット
金融庁長官の告示(外国の規制との関係) 外国の規制に従えば日本の措置を講じなくてもよい場合
監督指針 当局が監督で見る着眼点(規制そのものではありません)

告示は 3 つあります。金融庁告示第 15 号が潜在的損失等見積額の算出方法を、第 16 号が担保にできる資産とヘアカットを、第 17 号が変動証拠金と当初証拠金の計算の方法を定めます9。

監督指針は、金融商品取引業者等の態勢整備の着眼点を示します。主要行等向けの総合的な監督指針と金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針では、次の点が着眼点です10。金融機関等は、金融機関と、外国で店頭デリバティブ取引を業とする者です。

  • 店頭デリバティブ取引の想定元本額の平均が 3,000 億円未満で規制の対象から外れる者も含めて、金融機関等との取引で変動証拠金を受け渡す態勢の整備に努めているか。
  • 当初証拠金の対象になる者は、当初証拠金の態勢整備にも努めているか。

金融商品取引業者等が措置を講じていない状況にあるときは、行政処分があり得ます。内閣総理大臣は、公益または投資者保護のため必要かつ適当と認めるときは、金融商品取引業者に業務の方法の変更その他の改善に必要な措置を命じられ、登録金融機関にも同じ命令の規定があります11。金融商品取引業者と登録金融機関が法令に違反したときは、登録の取消しや、6 か月以内の業務の全部または一部の停止を命じられます12。

条文は 2026 年 10 月 12 日時点の版です(金商法は 2026 年 8 月 12 日施行の改正まで、金商業等府令は 2026 年 8 月 3 日施行の改正まで、店頭デリバティブ府令は 2025 年 6 月 1 日施行の改正まで)。

対象になる取引と者

規制の対象になるかは、取引が非清算店頭デリバティブ取引に当たるかと、当事者が対象の者に当たるかで決まります。どちらも、その取引を行った時(基準時)の状況で判定します13。

対象になる取引

非清算店頭デリバティブ取引は、店頭デリバティブ取引から、金融商品取引清算機関か外国金融商品取引清算機関が債務を負担する取引と、金融庁長官が指定する取引を外したものです1。指定されるのは、外国の清算機関が債務を負担する取引のうち、取引に基づく債務の不履行が日本の資本市場に与える影響が軽微なものです14。

取引 扱い
清算機関が債務を負担する取引 変動証拠金も当初証拠金も対象外
通貨スワップで元本として定めた金額に相当する通貨を授受する約束の部分 当初証拠金は対象外。変動証拠金には同じ除外の規定がない
店頭商品デリバティブ取引、為替フォワード(先物外国為替取引) 府令は、非清算店頭デリバティブ取引とは別の取引として挙げている
暗号等資産関連店頭デリバティブ取引 変動証拠金は当分の間、対象外。当初証拠金は記載なし

店頭商品デリバティブ取引と為替フォワードは、規制の対象の取引の相手方との間で継続して含めるなら、対象の取引と一緒に計算に含められます。含めるかどうかは当事者が選べます15。

対象になる者

変動証拠金と当初証拠金の対象になる者は、取引の当事者の区分と取引規模で決まります。当事者の一方でも対象外の区分に当たれば、その取引は対象外です16。

当事者の区分 変動証拠金 当初証拠金
第一種金融商品取引業者、または登録金融機関のうち銀行、商工組合中央金庫、農林中央金庫、全国を地区とする信用金庫連合会、日本政策投資銀行、保険会社 店頭デリバティブ取引の想定元本額の平均が 3,000 億円以上なら対象 3,000 億円以上で、グループ合計の想定元本額の平均が基準額(段階ごとに変わる。当初証拠金の基準額の表)を超えるなら対象
外国で店頭デリバティブ取引を業とする者(国際決済銀行、国際開発金融機関、外国の中央銀行、外国政府を除く) 一括清算の約定が有効と確認されている国の者で、3,000 億円以上と見込まれるなら対象 同じ条件に加え、グループ合計が基準額を超えると見込まれるなら対象
上の 2 行以外の金融商品取引業者等(第二種金融商品取引業者など) 対象外 対象外
事業会社など、上の 2 行のどちらにも当たらない者 対象外 対象外
同じグループの会社どうしの取引 対象外 対象外

変動証拠金の 3,000 億円は、各月末日の想定元本額の平均額で判定します。集計の期間は、基準時の属する年の前々年の 4 月から前年の 3 月まで(基準時が 12 月なら前年の 4 月からその年の 3 月まで)です16。

信託勘定で経理される取引は、信託財産ごとに判定します。変動証拠金は想定元本額の平均が 3,000 億円未満の信託財産が、当初証拠金は 3,000 億円未満か基準額以下の信託財産が対象外です17。当初証拠金の基準額は、適用の段階ごとに違い、2022 年 9 月 1 日からは 1.1 兆円です。段階ごとの基準額は、適用の段階と日付の当初証拠金の基準額の表のとおりです。

変動証拠金の対象かどうかを、この節の条件の順に並べると、次の図になります。

はいいいえ清算機関が債務を負担しない取引か対象外はいいいえ双方が表の対象の区分の者か対象外いいえはい同じグループの会社どうしの取引か対象外はいいいえ双方の想定元本額の平均が3,000 億円以上か対象外4 問で外れなければ、原則として変動証拠金の対象
図 1変動証拠金の対象かどうかの判定
図の説明

変動証拠金の対象かを、4 つの質問で順に確かめる図です。どれかで外れると対象外で、すべて通ると原則として対象です。質問 3 は「はい」で、ほかの質問は「いいえ」で外れます。国内の者だけの判定で、外国の者の条件は表のとおりです。図が表さない条件は 3 つあり、暗号等資産関連店頭デリバティブ取引の除外、信託勘定の取引の信託財産ごとの判定、外国の規制との重複で扱う同等と認められた外国の規制に従う取引の除外です。当初証拠金は、さらに基準額で判定します。

C 銀行と D 社が、清算されない金利スワップを結ぶ架空の例で考えます。

  • C 銀行(登録金融機関である銀行)と、別グループの D 社(第一種金融商品取引業者)が、清算されない金利スワップを結びます。双方が表の対象の区分に当たり、同じグループの取引でもないので、効くのは想定元本額の条件です。双方の想定元本額の平均が 3,000 億円以上なら、変動証拠金の対象になります。
  • C 銀行が、事業会社の W 社と、清算されない金利スワップを結びます。W 社は表の対象の区分に当たらないので、C 銀行の想定元本額が 3,000 億円以上でも、取引は変動証拠金の対象外です。

2022 年 9 月以降に第一種金融商品取引業者の 2 社が、ほかの条件を満たす清算されない金利スワップを結ぶ架空の例で考えます。当初証拠金の基準額に当てはめると、一方のグループの想定元本額の平均が 2 兆円で、もう一方が 8,000 億円なら、8,000 億円の側は基準額の 1.1 兆円以下なので、この取引は当初証拠金の対象になりません。もう一方が 1.5 兆円なら、両方が 1.1 兆円を超えるので、当初証拠金の対象です。変動証拠金は、両社が 3,000 億円以上かどうかで別に判定します。

変動証拠金と当初証拠金で求められること

金商業等府令は、対象の取引について、金融商品取引業者等が次の措置を講じることを求めます。

変動証拠金

変動証拠金では、非清算店頭デリバティブ取引の時価を相手方別に合計した額と、受け入れている(または差し入れている)変動証拠金の時価を、毎日算出します。

算出した額が、当事者があらかじめ定めた請求を要しない額を上回るときは、直ちに、変動証拠金の預託等(差し入れること)または返還を相手方に求めます。求めた後は、遅滞なく預託等または返還を受けます。相手方からの同じ求めには応じます18。

告示は、算出する額の求め方を、時価の合計額によって分けています19。

時価の合計額 相手方に差し入れている変動証拠金 告示が定める額の求め方
プラス なし 時価の合計額から、受け入れている変動証拠金の時価を引いた額
プラス あり 時価の合計額に、差し入れている変動証拠金の時価を足した額
ゼロかマイナス 問わない 差し入れている変動証拠金の時価から、時価の合計額の絶対値を引いた額

時価の合計額が 3 億円のプラスで、相手方に差し入れている変動証拠金がなく、相手方から 1 億円を受け入れている架空の例で考えます。算出する額は、3 億円から 1 億円を引いた 2 億円です。時価の合計額が 2 億円のマイナスで、5 億円を差し入れているなら、算出する額は 5 億円から 2 億円を引いた 3 億円です。

請求を要しない額は、当初証拠金の分と合わせて 7,000 万円以下の範囲で当事者が定めます18。担保の契約書には、最低受渡額と呼ばれる似た仕組みがあります。契約書の定めは、CSA(担保契約)で扱います。

時価を算出する日時は、実務上可能な限り計算を行う時点に近いものにする必要があり、請求は算出の後に直ちに行います。金融庁は、「遅滞なく」を、実務上可能な範囲で速やかに行われることと説明し、「直ちに」はそれより早い場合を指すとしています20。

当初証拠金

府令は、将来発生しうる損失の見積額を潜在的損失等見積額と呼びます。当初証拠金では、相手方との間の潜在的損失等見積額と、受け入れている(または差し入れている)当初証拠金の時価を、次のときに算出します21。

  • 非清算店頭デリバティブ取引を行ったとき
  • 取引が終了したときなど、権利関係に変更があったとき
  • 最後に見積額を算出した日から 1 か月が経ったとき
  • 相場の変動などで、当初証拠金を求める必要が認められるとき

請求する額は、見積額から、受け入れている当初証拠金の時価と、当事者があらかじめ定めた控除額を引いて求めます。控除額は、当事者とそれぞれのグループの会社の取引を合わせて 70 億円以下で、定めがなければゼロとみなします。担保の契約書には、閾値と呼ばれる似た仕組みがあります。

求めた額が請求を要しない額(変動証拠金の分と合わせて 7,000 万円以下)を上回るときは、直ちに当初証拠金を求め、遅滞なく受け入れます22。

当事者の算出額が食い違うときは、あらかじめ約した方法で算出した額を先に受け入れ、残りの差を解消する措置を講じます22。

受け入れた当初証拠金は、相手方が債務を履行しないときに遅滞なく使え、受け入れた側に一括清算事由が生じたときは相手方に返るように、信託の設定かこれに類する方法で管理します。担保に出したり貸したりしません。ただし、金銭の当初証拠金は、管理に付随して安全な方法で運用できます23。

潜在的損失等見積額の算出方法は、告示が定めます。定量的計算モデルを用いる方法と標準表を用いる方法の 2 つで、モデルを使う金融商品取引業者等は、あらかじめ金融庁長官に届け出ます。モデルで計算できない取引は標準表で計算します24。モデルは、片側 99% の信頼区間と 10 日以上の保有期間を使います。残存期間が 10 日未満の取引は、残存期間を保有期間とみなせます25。

担保にできる資産とヘアカット

変動証拠金と当初証拠金は、金銭と、金融庁長官が定める資産で充てます26。金融庁長官が定める資産は、金銭、中央政府や国際機関などの債券、一定の格付以上の債券、指定国の代表的な株価指数を構成する株式、これらだけに投資して価格が毎日公表される投資信託などです。当事者や同じグループの会社が発行した資産は除かれます27。

担保の価値(代用価格)は、変動証拠金を金銭で充てる場合は、その金銭の額です。それ以外の資産は、時価からヘアカットを差し引いた額で、資産の通貨が当事者の定めた通貨と違うときは、通貨の違いの分も差し引きます。当初証拠金を金銭で充てるときも、通貨が違えば通貨の違いの分を差し引きます28。ヘアカットの数値は、次の表のとおりです29。

資産の区分 信用リスク区分 残存 1 年以下のヘアカット(%) 残存 1 年超 5 年以下のヘアカット(%) 残存 5 年超のヘアカット(%)
金銭 なし 0 0 0
中央政府、国際機関、地方公共団体などの債券 1-1、または銀行自己資本告示第 89 条第 3 号に該当 0.5 2 4
同上 1-2、1-3 1 3 6
同上 1-4 15 15 15
上記以外の発行体の債券 2-1、3-1、3の2-1、4-1、5-1 1 4 8
同上 2-2、2-3、3-2、3-3、3の2-2、3の2-3、4-2、4-3、5-2、5-3 2 6 12
指定国の代表的な株価指数を構成する株式 なし 15 15 15

表の数値は時価から差し引く割合です(ヘアカット 2% なら、時価から 2% 差し引く)。資産の通貨が当事者の定めた通貨と違うときは、さらに 8% を差し引きます。投資信託などは、投資先の資産に適用されるヘアカットのうち最も高いものを使います29。信用リスク区分は、適格格付機関の格付に対応する銀行自己資本告示の区分です。

適用の段階と日付

規制は、取引規模の基準額を段階的に下げながら、順に適用が始まりました。日付は次のとおりです。

日付 出来事
2015 年 12 月 11 日 金融庁が内閣府令案へのパブリックコメントの結果と、見直した案を公表
2016 年 3 月 31 日 金商業等府令の改正(平成 28 年内閣府令第 25 号)と金融庁告示第 15 号から第 17 号を公布
2016 年 7 月 25 日 金融庁が関連する内閣府令や監督指針などを公布4
2016 年 9 月 1 日 改正府令を施行し、告示の適用を開始。変動証拠金と当初証拠金の最初の段階の適用が始まる
2017 年 3 月 1 日 変動証拠金の適用が、最初の段階に当たらない対象の者にも始まる

当初証拠金の基準額が下がる 2017 年 9 月 1 日から 2022 年 9 月 1 日までの段階は、当初証拠金の基準額の表のとおりです。

適用は、2016 年 9 月 1 日以後に行う取引からです。施行日前の取引は対象になりませんが、対象の取引の相手方との間で継続して含めるなら、対象の取引と同じ計算に含められます30。変動証拠金は、取引の当事者の双方について、2016 年 3 月から 5 月の各月末日の想定元本額の平均額が 420 兆円を超える場合は 2016 年 9 月 1 日から、それ以外は 2017 年 3 月 1 日から適用しました31。

当初証拠金は、グループ合計の想定元本額の平均額が基準額を超える者が対象で、基準額は次のとおり下がりました32。

適用の期間 基準額(兆円)
2016 年 9 月 1 日から 2017 年 8 月 31 日 420
2017 年 9 月 1 日から 2018 年 8 月 31 日 315
2018 年 9 月 1 日から 2019 年 8 月 31 日 210
2019 年 9 月 1 日から 2021 年 8 月 31 日 105
2021 年 9 月 1 日から 2022 年 8 月 31 日 7
2022 年 9 月 1 日以降 1.1

当初証拠金の判定に使う想定元本額は、取引を行った年の前年の 3 月から 5 月の各月末日の平均額です。取引を行った時が 9 月から 12 月なら、その年の 3 月から 5 月を使います33。

バーゼル銀行監督委員会(BCBS)と証券監督者国際機構(IOSCO)は、当初証拠金の対象を想定元本額の小さい当事者にまで広げる最後の 2 段階(最終フェーズ)の開始を延期しました。基準額が 7 兆円になる 2021 年 9 月 1 日と 1.1 兆円になる 2022 年 9 月 1 日は、上の表のとおり延期後の日付です。

外国の規制との重複

日本の規制と外国の規制が重なる取引では、外国の規制に従うことで日本の措置を講じなくてもよい場合があります。金商業等府令は、金融庁長官が指定する場合の取引を、対象から外しています。指定の対象は、日本の措置と同等とされる外国の法令に従うことなどを理由に、「措置を講じなくても公益に反し又は投資者の保護に支障を生ずるおそれがないと認められる場合」です34。

金融庁は 2016 年 10 月 21 日に、この指定を定める告示(平成 28 年金融庁告示第 48 号)を公布しました。外国の規制が適用される取引であれば、国内取引でもクロスボーダー取引でも国外取引でも、この指定の対象になりえます35。同等と認められた外国の規制は、告示の改正で広がりました3637。

告示と公表 同等と認められた外国の規制(所管する当局)
2016 年 10 月 21 日に公布した告示 米国商品先物取引委員会(CFTC)、カナダ金融機関監督庁(OSFI)
2017 年 8 月 25 日の公表 加えて、オーストラリア健全性規制庁(APRA)、香港金融管理局(HKMA)、シンガポール金融管理局(MAS)。適用は 2017 年 9 月 1 日から
2019 年 4 月 25 日の公表 加えて、欧州経済領域協定で定められた国に適用される規制。公布と施行は同日
2020 年 12 月 25 日の公表 英国に適用される規制。公布は同日で、適用は 2021 年 1 月 1 日から

2020 年 12 月 25 日の改正は、英国の EU 離脱を受けて、2021 年以降も英国を対象とする同等性の評価を続けるためのものです37。

実務への影響

対象の者の業務では、相手方ごとの時価の合計額を毎日算出し、当事者があらかじめ定めた請求を要しない額を上回るときに、変動証拠金の受け渡しを求めることになります18。当初証拠金では、見積額の算出に加えて、受け入れた証拠金の信託などによる管理が必要になります23。

対象かどうかは、取引を行った時(基準時)の状況で判定するため、取引の時点で対象かを確かめる必要があります13。

この記事が書いていないこと

暗号等資産関連店頭デリバティブ取引の当初証拠金に、変動証拠金と同じ除外が及ぶかと、2020 年 12 月 25 日の金融庁の公表より後の同等性の指定の改正は、この記事では扱いません。

注

  1. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 1 項第 21 号の 10(変動証拠金と非清算店頭デリバティブ取引の定義)と第 21 号の 11(当初証拠金と潜在的損失等見積額の定義)。 ↩ ↩2

  2. "G20 Leaders Statement: The Pittsburgh Summit"(2009 年 9 月 24〜25 日の会合)の "OTC derivative contracts" の項。この声明は証拠金には触れていません。 ↩

  3. 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(2015 年 12 月 11 日)の凡例(PDF 2 ページ目)。同資料は、バーゼル銀行監督委員会と IOSCO の「中央清算されないデリバティブ取引に係る証拠金規制に関する最終報告書」を、2013 年 9 月及び 2015 年 3 月改訂として示しています。 ↩

  4. 金融庁「「金融商品取引業等に関する内閣府令第百二十三条第十一項第五号及び第十二項第五号の規定に基づき、…(平成二十八年金融庁告示第四十八号)の一部を改正する件」について」(2019 年 4 月 25 日)の本文 1 段落目。 ↩ ↩2

  5. 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(2015 年 12 月 11 日)の No. 17(印刷ページ 3、PDF 5 ページ目)。 ↩

  6. 「金融商品取引法」第 34 条(金融商品取引業者等は、金融商品取引業者又は登録金融機関をいう)。 ↩

  7. 「金融商品取引法」第 40 条第 2 号。「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 1 項第 21 号の 10(変動証拠金)と第 21 号の 11(当初証拠金)。 ↩

  8. 「店頭デリバティブ取引等の規制に関する内閣府令」(2025 年 6 月 1 日施行の改正までを反映した本文)で、証拠金の語が出るのは第 4 条第 1 項第 5 号だけです。同条は、清算集中等取引情報として保存する事項を定めます。 ↩

  9. 金融庁告示第 15 号、第 16 号、第 17 号(金融庁のサイトに掲載された本文。いずれも 2016 年 3 月 31 日付、2016 年 9 月 1 日から適用)。前文は府令の改正前の番号(第 21 号の 5・6、第 8・9 項)のままで、今は第 21 号の 10・11、第 10・11 項です。 ↩

  10. 金融庁「主要行等向けの総合的な監督指針」のⅢ-2-3-2-1-2(12)(印刷ページ 110〜111)、「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」のⅣ-2-4(4)(印刷ページ 124〜125)とⅧ-1-2(登録金融機関。印刷ページ 431〜432)。「金融機関等」の範囲は、金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」の No. 44(印刷ページ 7)。 ↩

  11. 「金融商品取引法」第 51 条(金融商品取引業者)と第 51 条の 2(登録金融機関)。 ↩

  12. 「金融商品取引法」第 52 条第 1 項第 7 号(金融商品取引業者が、業務に関し法令または法令に基づく処分に違反したとき)と第 52 条の 2 第 1 項第 3 号(登録金融機関が、登録金融機関業務に関し同様に違反したとき)。 ↩

  13. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 9 項第 1 号ハ(非清算店頭デリバティブ取引の実行時を基準時とする)、第 12 項と第 13 項(基準時において対象外になる取引)。 ↩ ↩2

  14. 「金融商品取引法施行令」第 1 条の 18 の 2(外国の法令に準拠して設立された法人で、外国で金融商品債務引受業に類する業務を外国で行う者が債務を負担する取引のうち、債務の不履行が日本の資本市場に及ぼす影響が軽微とみて金融庁長官が指定するもの)。「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 1 項第 21 号の 10 が、この指定を非清算店頭デリバティブ取引から除いています。 ↩

  15. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 9 項。変動証拠金は第 1 号、当初証拠金は第 2 号。通貨スワップの元本を授受する部分を当初証拠金の対象から除くのは第 1 項第 21 号の 11、暗号等資産関連店頭デリバティブ取引を変動証拠金から当分の間除くのは同府令附則(平成 28 年内閣府令第 25 号)第 3 条。 ↩

  16. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 12 項(変動証拠金)と第 13 項(当初証拠金)。当事者の区分は第 12 項第 1 号、第 4 号イ・ロ、第 13 項第 1 号、第 4 号イ・ロ・ハ、グループ内の取引は第 12 項第 3 号と第 13 項第 3 号。 ↩ ↩2 ↩3

  17. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 12 項第 2 号(変動証拠金)、第 13 項第 2 号(当初証拠金)。 ↩

  18. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 1 項第 21 号の 10 のイ(毎日算出)、ロ(請求を要しない額を上回るときは直ちに預託等または返還を求める。この額は第 21 号の 11 ロの額と合わせて 7,000 万円以下)、ハ(遅滞なく受ける)、ニ(相手方の求めに応じる)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  19. 金融庁告示第 17 号第 2 条第 1 号から第 3 号。 ↩

  20. 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(2015 年 12 月 11 日)の No. 81(印刷ページ 12、PDF 14 ページ目)と No. 91、92(印刷ページ 14、PDF 16 ページ目)。 ↩

  21. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 1 項第 21 号の 11 イ。 ↩

  22. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 1 項第 21 号の 11 のロ(請求を要しない額を上回るときは直ちに預託等を求める)、ハ(遅滞なく受ける。額に差異があるときは、あらかじめ約した方法で算出した額を受け、残額を速やかに受けるなど差異を解消する措置を講じる)。控除額と 70 億円は、金融庁告示第 17 号第 3 条第 1 項と第 2 項。 ↩ ↩2

  23. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 1 項第 21 号の 11 のニ(信託の設定またはこれに類する方法での管理)とホ(担保に供し、または貸し付けない。金銭の管理に付随して安全な方法で行う場合を除く)。 ↩ ↩2

  24. 金融庁告示第 15 号第 1 条第 1 項から第 3 項(方法、金融庁長官への届出、標準表で算出する取引)。 ↩

  25. 金融庁告示第 15 号第 3 条第 1 項。 ↩

  26. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 10 項(資産)。 ↩

  27. 金融庁告示第 16 号第 1 条第 1 項第 1 号から第 5 号。 ↩

  28. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 11 項第 1 号から第 3 号。当初証拠金を金銭で充てる場合に通貨が違うときは、第 3 号にあたり、金銭のヘアカット(0%)に通貨の違いの分(8%)が加わります。 ↩

  29. 金融庁告示第 16 号第 2 条第 1 項の表と第 2 項(通貨の違いの 8%)。 ↩ ↩2

  30. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」附則(平成 28 年 3 月 31 日内閣府令第 25 号)第 1 条(施行日は 2016 年 9 月 1 日)、第 2 条第 1 項。 ↩

  31. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」附則(平成 28 年 3 月 31 日内閣府令第 25 号)第 2 条第 2 項(420 兆円以下の取引に 2017 年 2 月 28 日まで規定を適用しない)。条文は当時の第 21 号の 5(今の第 21 号の 10)と書いています。 ↩

  32. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」附則(平成 28 年 3 月 31 日内閣府令第 25 号)第 2 条第 3 項(第 123 条第 13 項の「一兆千億円」を段階ごとに読み替える)。2022 年 9 月 1 日からは、本則の第 123 条第 13 項第 1 号ハと第 4 号ハの 1 兆 1,000 億円です。 ↩

  33. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 13 項第 1 号ハと第 4 号ハ。集計は、当事者の双方が対象の区分の者である取引で、親会社等、子会社等、親会社等の子会社等の取引を合計します(グループ内の取引は除く)。 ↩

  34. 「金融商品取引業等に関する内閣府令」第 123 条第 12 項第 5 号(変動証拠金)と第 13 項第 5 号(当初証拠金)。 ↩

  35. 金融庁「「…(平成二十八年金融庁告示第四十八号)の一部を改正する告示」の件について」(2017 年 8 月 25 日)の本文。2016 年 10 月 21 日の告示の枠組みの説明と、CFTC、OSFI、APRA、HKMA、MAS の記述。 ↩

  36. 金融庁「「…(平成二十八年金融庁告示第四十八号)の一部を改正する件」について」(2019 年 4 月 25 日)の本文。CFTC、OSFI、APRA、HKMA、MAS に加え、欧州経済領域協定が定める国に適用される規制を指定に含めると記しています。 ↩

  37. 金融庁「「…(平成二十八年金融庁告示第四十八号)の一部を改正する件」について」(2020 年 12 月 25 日)の本文。英国が EU から離脱したことを受け、2021 年以降についても、英国を対象とする同等性の評価を続けられるよう告示の一部を改正し、その日に公布して、2021 年 1 月 1 日から適用すると記しています。 ↩ ↩2

  38. 金融庁「金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針」のⅣ-2-4(4)③(印刷ページ 125。③ハは一括清算の約定が有効か確認できていない外国の金融機関等との取引のリスク管理)と②ロ(金銭の当初証拠金の運用の安全性)。 ↩ ↩2

  39. 金融庁告示第 15 号第 9 条第 1 項、第 2 条。 ↩

  40. 金融庁告示第 15 号第 6 条第 1 号、第 3 号、第 6 号。 ↩