取引の約定のあとの決済や証拠金の管理に関わる業務では、東京金融取引所の商品か、ほかの 3 つの取引所の商品かによって、決済の相手方になる清算機関(取引の決済を引き受ける機関)が違います。
取引所ごとの上場商品と清算機関
日本のデリバティブの取引所は、根拠の法律、上場している商品、清算機関で、次の表のように分かれます。たとえば日経225先物は大阪取引所、原油の先物は東京商品取引所に上場しています。無担保コール翌日物金利(TONA)をもとにした 3 か月の金利先物は、大阪取引所と東京金融取引所の両方に上場しています。商品名は取引所が使う名前で書きます。大阪取引所の商品一覧では「TONA3か月金利先物」、東京金融取引所の略称では「TONA3ヵ月金利先物」です12。
| 取引所 | 根拠の法律と種類 | 主な上場商品 | 清算機関 |
|---|---|---|---|
| 大阪取引所 | 金融商品取引法の金融商品取引所(総合取引所) | 株価指数先物とオプション、国債先物とオプション、金利先物、有価証券オプション、通貨先物、貴金属・ゴム・農産物の先物 | 日本証券クリアリング機構 |
| 東京金融取引所 | 金融商品取引法の金融商品取引所 | 金利先物とオプション、取引所為替証拠金取引、取引所株価指数証拠金取引 | 東京金融取引所 |
| 東京商品取引所 | 商品先物取引法の商品取引所 | 原油、石油製品、電力、LNG の先物 | 日本証券クリアリング機構 |
| 堂島取引所 | 商品先物取引法の商品取引所 | 米穀指数、貴金属、農産物の先物 | 日本証券クリアリング機構 |
取引所に上場して売買される先物、オプション、証拠金取引などのデリバティブ取引は、金融商品取引法でいう市場デリバティブ取引にあたります。金融商品取引法は、金融商品市場で、市場を開く者の定める基準と方法に従って行うデリバティブ取引を、市場デリバティブ取引と定めています3。商品先物取引法の「上場商品」は、商品取引所が取引の対象として定める大豆や金などの物品と電力を指し、取引される先物とは別のものです4。
金融商品取引法は、内閣総理大臣の免許を受けて金融商品市場を開く法人を、金融商品取引所と定めています5。大阪取引所は、この免許を受けた金融商品取引所です6。東京金融取引所も金融商品取引所です2。一方、商品先物取引法は、商品(コモディティ)や商品指数の先物取引の市場を開くために許可を受けた株式会社などを、商品取引所と定めています7。東京商品取引所は、この許可を受けた商品取引所です6。
農林水産省によれば、2025 年 3 月時点の商品取引所は東京商品取引所と堂島取引所の 2 つです。大阪取引所は、農産物なども取引しています。このように金融商品に加えてコモディティも扱う金融商品取引所を、総合取引所といいます8。取引所が決めた規格で売買する上場デリバティブと店頭デリバティブの違いは、上場デリバティブと店頭デリバティブで扱います。
大阪取引所の上場商品
大阪取引所には、株価指数、国債、金利、個別の有価証券、通貨を対象にした金融の先物・オプションと、貴金属、ゴム、農産物などのコモディティの先物・オプションが上場しています。たとえば日経平均株価を対象にした先物には、日経225先物、日経225mini、日経225マイクロ先物の 3 つがあります。オプションは、日経225オプションと日経225ミニオプションの 2 つです1。日本取引所グループ(JPX)の商品一覧から、種類ごとに主な商品を挙げると次のとおりです。
| 種類 | 主な商品 |
|---|---|
| 国内の株価指数 | 日経225先物、日経225mini、日経225オプション、TOPIX先物、TOPIXオプション、JPX日経インデックス400先物 |
| 海外の株価指数 | NYダウ先物、台湾加権指数先物、FTSE中国50先物 |
| 国債 | 中期国債先物、長期国債先物、長期国債先物オプション、超長期国債先物(ミニ) |
| 金利 | TONA3か月金利先物 |
| 個別の有価証券 | 有価証券オプション |
| 通貨 | 米ドル/日本円先物、ユーロ/日本円先物、中国オフショア人民元/日本円先物 |
| 貴金属 | 金、銀、白金、パラジウムの先物、金先物オプション |
| ゴムと農産物 | ゴム(RSS3)先物、一般大豆先物、小豆先物、とうもろこし先物 |
このほか、日経平均・配当指数、日経平均ボラティリティー・インデックス、東証REIT指数、CME原油等指数を対象にした先物もあります1。日経225先物は日経平均株価を、TOPIX先物は東証株価指数(TOPIX)を対象にしています9。
国債先物は、利率と償還までの期間を取引所が決めた標準物を対象にした先物です10。長期国債先物の標準物は、利率 6%、期間 10 年の長期国債標準物です1。商品ごとの限月や呼値の単位は、商品によって決まり方が違います。
東京金融取引所の上場商品
東京金融取引所には、金利の先物とオプションと、個人の投資家向けの証拠金取引が上場しています。金利の商品は TONA3ヵ月金利先物とそのオプションで、どちらも 2023 年 3 月に取引が始まりました。証拠金取引は、取引所為替証拠金取引(くりっく365)と取引所株価指数証拠金取引(くりっく株365)の 2 つです211。
くりっく365 は、銀行や証券会社のディーラーが相対で取引するインターバンク市場の外国為替の取引をもとに、個人の投資家などに向けて上場した商品です。取引する人は証拠金を差し入れ、その何倍かの金額を取引します(レバレッジ)。取引できる通貨の組み合わせには、米ドル/円のような円との組み合わせと、ユーロ/米ドルのような円を含まない組み合わせがあります12。くりっく365 は 2005 年 7 月に取引が始まりました11。
くりっく株365 は、国内外の株価指数と上場投資信託(ETF)を対象にした証拠金取引で、保有できる期間は最長でおよそ 15 か月です13。大阪取引所の株価指数先物と同じく株価指数を対象にしますが、上場している取引所と清算機関が違います。
東京商品取引所と堂島取引所の上場商品
東京商品取引所にはエネルギーの先物が、堂島取引所には米穀指数、貴金属、農産物の先物が上場しています。東京商品取引所の上場商品は、ドバイ原油、ガソリン・灯油・軽油、東・西・中部の 3 つのエリアの電力、LNG(液化天然ガス)の先物です。このほか、中京石油に分類されるガソリンと灯油の先物もあります1。電力先物は 2022 年 4 月から正式に上場していて(本上場)、その後、取引する期間の種類と対象のエリアが増えています14。
堂島取引所の上場商品は、堂島コメ平均(米穀指数)、金・銀・白金の先物、とうもろこし、米国産大豆、小豆、粗糖の先物です15。粗糖の取引は、2022 年 10 月 4 日から当面のあいだ休止しています(2025 年 3 月時点)16。江戸時代の堂島米市場で行われた、現物を受け渡さずに帳簿の上で売買を突き合わせる米の取引(帳合米商い)を、農林水産省は先物取引の前身と説明しています17。
清算機関と 2013〜2020 年の統合
大阪取引所、東京商品取引所、堂島取引所の上場商品は日本証券クリアリング機構(JSCC)が清算し、東京金融取引所の上場商品は東京金融取引所が自ら清算します1819。そのため、同じ種類の先物でも、東京金融取引所で売買したか、ほかの 3 つの取引所で売買したかで、決済の相手方になる清算機関が違います。証券会社 A 社が、JSCC と東京金融取引所の両方で清算資格(清算に参加する資格)を持つとします202。A 社が TONA をもとにした 3 か月の金利先物を、大阪取引所と東京金融取引所で 1 単位ずつ買う架空の例で考えます18。
図の説明
JSCC と東京金融取引所の両方で清算資格を持つ A 社が、TONA をもとにした 3 か月の金利先物を、大阪取引所と東京金融取引所で 1 単位ずつ買った例です。点線の矢印は、それぞれの買いの決済の相手方(JSCC と東京金融取引所)を指すもので、受け払いの流れではありません。
JSCC と東京金融取引所は、どちらも金融商品取引法の金融商品取引清算機関として、金融庁の一覧に載っています(2021 年 10 月 11 日時点)2122。JSCC は、商品取引清算機関として、東京商品取引所と大阪堂島商品取引所の商品市場の取引も清算しています6。大阪堂島商品取引所は、2021 年 8 月に今の堂島取引所に名前を変えました23。清算機関が決済の相手方になる仕組みは清算取引と相対取引で扱います。
ここからは、大阪取引所、東京商品取引所と JSCC の今の関係ができるまでの経緯です。
図の説明
出来事を古い順に並べています。最後の節目は 2020 年 7 月 27 日の市場の移管と JSCC の合併で、この 2 つは同じ日に行われました。出来事の間隔は、時間の長さに比例していません。
JSCC は、東京証券取引所グループと大阪証券取引所の経営統合のあと、大阪証券取引所の上場デリバティブの清算機能を統合しました20。大阪証券取引所は大阪取引所に名前を変え6、東京商品取引所は JPX の子会社になりました14。2020 年の市場の移管と合併で、JSCC は大阪取引所、東京商品取引所、大阪堂島商品取引所のコモディティのデリバティブの清算も始めました2420。
注
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日本取引所グループ「商品一覧」(先物・オプション、2026 年 4 月 13 日更新)の大阪取引所と東京商品取引所の表。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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東京金融取引所「事業内容について」の「デリバティブ商品の上場と運営」「上場商品概要」「清算資格について」「上場された商品の清算業務」と、「他の取引所との連携」の説明(「金融商品取引所であるTFX」)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4
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「金融商品取引法」第 2 条第 21 項。 ↩
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「商品先物取引法」第 2 条第 7 項。 ↩
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「金融商品取引法」第 2 条第 16 項。 ↩
-
日本取引所グループ「事業紹介」(2025 年 8 月 21 日更新)の「日本取引所グループとは」とその注、「大阪取引所」「東京商品取引所」「デリバティブ市場について」「日本証券クリアリング機構」。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4 ↩5
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「商品先物取引法」第 2 条第 4 項(商品取引所は会員商品取引所と株式会社商品取引所)と第 6 項(株式会社商品取引所)。 ↩
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農林水産省「商品先物取引とは」の「Q&A」の Q1(2025 年 3 月時点)。 ↩
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大阪取引所「先物取引のすべて」の 2 ページ、「株価指数先物取引の仕組み」の「(1) 取引の対象」。 ↩
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日本取引所グループ「商品概要」(国債(JGB)先物)の「商品概要」。 ↩
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東京金融取引所「取引所為替証拠金取引 くりっく365」の冒頭の説明と「取引通貨ペア」。 ↩
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東京金融取引所「取引所株価指数証拠金取引 くりっく株365」の冒頭の説明。 ↩
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日本取引所グループ「沿革」(東京商品取引所、日本取引所グループ参画以降、2026 年 4 月 13 日更新)。 ↩ ↩2
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堂島取引所「上場商品について」。 ↩
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農林水産省「商品先物取引とは」の「Q&A」の Q2 の「(参考)国内の上場商品・上場商品指数一覧(2025年3月時点)」。 ↩
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農林水産省「商品先物取引とは」の「先物取引の歴史」の「江戸時代」。 ↩
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東京金融取引所「清算決済業務概要」の冒頭の説明と「清算機関とは」。 ↩
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日本証券クリアリング機構「JSCCとは」の冒頭の説明、「沿革」の 2013 年 7 月、2020 年 7 月の行と、「「清算機関」の機能」。 ↩ ↩2 ↩3
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「金融商品取引法」第 2 条第 29 項。 ↩
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金融庁「金融商品取引清算機関」(2021 年 10 月 11 日時点)。 ↩
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堂島取引所「堂島取引所のご案内」(2024 年 8 月現在、農林水産省のサイトに掲載された資料)の 1 ページの年表の 2021 年 4 月と 2021 年 8 月の行。 ↩
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日本取引所グループ「貴金属先物等の市場移管及び清算機関の統合の完了について」(2020 年 7 月 27 日)。 ↩
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大阪取引所「先物取引のすべて」の 10 ページ、「株価指数先物取引の仕組み」の「(4) 立会方法」の「①立会時間」の注。 ↩
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大阪取引所「先物取引のすべて」の 12 ページ、「株価指数先物取引の仕組み」の「(5) 取引単位、呼値、制限値幅及びノンキャンセル・ピリオド」の「④制限値幅」。 ↩