変動証拠金や当初証拠金を相手に渡す担保管理の担当は、どの資産を渡し、いつ入れ替えるかを日々決めます。その事務を第三者に任せる方式を選ぶ場面や、任せた先の報告を読む場面で、この仕組みの理解が要ります。

担保管理者を含む三者の関係

トライパーティ担保管理は、担保を差し入れる側、受け取る側、担保管理者の三者で成り立ちます。担保管理者は、両者に委ねられて、担保の選択、評価、入れ替えなどの事務を行う機関です1。

日本証券クリアリング機構(JSCC)は、担保事務の負荷の軽減と担保の効率利用を目的に、代用有価証券の預託の方法へ三者方式を加えました2。

レポ取引では、約定の後の事務(担保の選択、資金と担保の受け渡し、担保の保管、期間中の管理)を第三者の代理人に任せる形を、トライパーティ・レポといいます3。担保管理者は、保管銀行や、国際的なCSD、国内の CSD が務めることができます3。担保管理者は代理人で、取引の当事者ではありません。レポ取引では、一方の当事者が債務不履行になったときは、もう一方の当事者がその影響を受けます。担保管理者がその影響を引き受けることはありません4。デリバティブの担保でも、事務を任せるサービスが提供されています5。

G 銀行差し入れる側担保管理者担保の事務H 証券受け取る側必要額の指示日次報告必要額の指示担保の割当て
図 1担保を差し入れる側、受け取る側、担保管理者の関係
図の説明

必要額の指示と日次報告は、資産でなく情報の流れです。資産の矢印は担保管理者から H 証券への 1 本だけで、G 銀行から担保管理者へ資産が移る経路は省いています。日次報告は G 銀行にだけ出し、H 証券への報告の有無は示していません。

割当てから入れ替えまでの流れ

担保管理者は、両者から必要額の指示を受けて担保を割り当て、担保を評価し直し、入れ替えの依頼に応じます。必要額は、担保で満たす額のことです。

G 銀行担保管理者H 証券必要額を管理者に指示する同じ必要額を管理者に指示する両者の指示が一致するか照合する適格な担保を選びヘアカットを引いて割り当てる担保を受け取る担保を評価し直す入れ替えを依頼する新しい担保を入れて元の担保を戻す
図 2担保の割当てと入れ替えの流れの一例
図の説明

図は一例で、標準の順ではありません。G 銀行と H 証券は別々に必要額を指示し、担保管理者が両者の指示を照合してから担保を割り当てます。割当ての後に、H 証券の受取と担保の評価のやり直しが並び、評価の後に G 銀行が入れ替えを依頼します。

割当てで担保を選ぶ条件は、あらかじめ合意した信用と流動性の基準、集中限度、取引ごとの希望です。担保管理者は、差し入れる側の口座から、この条件を満たす担保を、必要な額になるまで自動で選びます6。差し入れていない資産を見つけ、受け取る側の条件に合う適格な担保かを確かめ、ヘアカットと集中限度を当てはめ、効率のよい割当てを分析して、担保を相手に動かします7。適格な担保の種類、ヘアカット、集中限度は、あらかじめ決めた担保の条件表にもとづきます8。

評価は、担保管理者が定期的にやり直します6。入れ替え(担保の差し替え)は、差し入れる側の依頼で行います。レポ取引の三者方式では、欧州の担保管理者の多くが、担保が受け取る側の条件を満たさなくなったときや、差し入れた証券を売却するために取り戻すときにも入れ替えます6。

担保管理者の運用の条件は、提供会社ごとに決まります。次は BNY のサービスの条件で、三者方式の一般の条件ではありません8。

  • 必要額は、前回からの増減でなく全額で受け取ります。
  • 両者の一致する指示だけを処理し、担保が足りない口座を管理者の判断で直すことはしません。
  • 入れ替えは、新しい担保が先に入り、そのあとに元の担保が戻る形で行います。必要額以上の価値がある口座だけが対象です。
  • 現金の担保は受け付けず、マネー・マーケット・ファンド(MMF)は当初証拠金の担保にできます。

割当てと入れ替えの例

G 銀行が H 証券に当初証拠金を差し入れ、担保管理者が割当てと入れ替えを行う架空の例で考えます。必要額は、評価額で 98 億円とします。担保の条件表では、国債のヘアカットが 2%(時価から 2% 差し引く)、上場株式のヘアカットが 30% です。G 銀行は、差し入れていない国債(時価 100 億円)と上場株式(時価 200 億円)を、担保管理者のもとに置いています。

1 日目は、G 銀行が国債を先に差し入れに使う希望を出しているため、担保管理者は国債 100 億円を割り当てます。2 日目に、G 銀行が国債をほかの取引に使うために入れ替えを依頼します。担保管理者は上場株式 140 億円を先に割り当て、そのあとで国債 100 億円を G 銀行に戻します。

日 割り当てた担保 時価(億円) 評価額(億円) 必要額 98 億円との差(億円)
1 日目 国債 100 98 0
2 日目 上場株式 140 98 0
3 日目 上場株式 126 88.2 −9.8

評価額は、時価からヘアカットの分を引いて求めます。国債は 100 × (1 − 0.02) = 98 億円、上場株式は 140 × (1 − 0.30) = 98 億円です。

2 日目の入れ替えで、G 銀行は国債 100 億円をほかの取引に使えます。その代わり、同じ 98 億円の評価額を満たすために拘束する時価が 40 億円増え、拘束する資産に株式が入ります。3 日目に上場株式の時価が 10% 下がると、評価額は 126 × (1 − 0.30) = 88.2 億円になり、9.8 億円の足りない額が出ます。

変動証拠金と当初証拠金での使いどころ

非清算の店頭デリバティブでは、三者方式を当初証拠金と変動証拠金の両方の差し入れに使えるサービスがあります。BNY の資料は、これを当初証拠金を差し入れる規制に対応するサービスとして挙げています5。日本の証拠金規制について、金融庁は 2015 年の時点で、当初証拠金は倒産隔離したうえで管理されることが望ましく、ほかの取引の担保に出したり貸したりする消費は当然に禁止されると回答しています。分けて管理する方法の例には、カストディアンを使うことが挙げられています9。当初証拠金の分別管理の規制は、担保管理で扱います。

清算機関への担保の預託にも、三者方式を使う制度が整えられています。JSCC は、2026 年 9 月 4 日に、クレジット・デフォルト・スワップ(CDS)と金利スワップの清算業務の規則改正を公表しました。代用有価証券の預託と管理の方法に、トライパーティ担保管理サービスを用いる方法を加える改正です10。施行日は、2026 年 10 月 5 日以後に JSCC が定める日です。清算参加者は、JSCC が公示で指定する提供会社に開設された JSCC 名義の口座へ代用有価証券を振り替えて預託し、この方法で預けた代用有価証券は、JSCC が定める手数料(コラテラル手数料)の対象外です2。

金利スワップの制度要綱(2026 年 7 月 8 日)は、対象を国債証券と米国財務省証券とし、金利スワップ清算基金、当初証拠金(清算約定の自己分に限る)、破綻時証拠金として預けられるとしました11。施行日時点の提供会社は Euroclear です。清算参加者、Euroclear、JSCC の三者で担保サービスの契約を結ぶ必要があり、この方法で預けた代用有価証券は信託銀行への信託設定を行わないとされています11。

カストディアンへの預託との違い

担保の受け渡しの方式は、担保の選択と返還の手間がどこにあるかで分かれます。BNY の資料は、カストディアンに預ける第三者保管とトライパーティを、次のように比べています12。

方式 担保の選択 担保の返還
第三者保管(カストディアンへの預託) 差し入れる側が選ぶ 従来型は相手の署名した承認書が要る。不要にした型もある
トライパーティ 担保管理者が条件表にもとづいて選ぶ 必要額の指示を受けて、帳簿上の移動が自動で始まる

トライパーティは、資産の持ち主と運用者の方針がそろっているときに採れます12。

最適化と担保の変換

担保管理者の最適化は、差し入れる側の資産が変わったあとも、より良い担保の組み合わせがないかを見直し、必要な入れ替えをすることです。たとえば、差し入れる側がのちに買った証券が、受け取る側の条件を満たすなら、はじめに差し入れた証券と入れ替えられます6。担保管理者は割当ての分析で資産の効率のよい使い方を探り7、JSCC の規則改正も担保の効率利用を目的に挙げています2。

最適化は、手元にある適格な資産の中で、どれを割り当てるかを見直すことです。資産そのものは変わりません。担保の変換は、手持ちの流動性の低い資産などを、担保として使える質の高い資産に、期間を区切って取り替える取引です。担保の変換は担保の調達と差し替えで扱います。

担保管理者の名前と提供範囲

公開の資料に提供範囲が書かれた担保管理者を挙げます。提供範囲は各社の公表資料の自己紹介で、粒度が違います。

名前 資料に書かれた提供範囲 資料の時点
BNY 非清算の店頭デリバティブの当初証拠金と変動証拠金の差し入れ、短期の資金調達、証券金融の担保5 2025 年 6 月作成の PDF
Euroclear 参加者から、担保の選択、評価、入れ替えを引き受ける担保管理者。グループで共通の担保プールを作る方針1 2026 年版の報告書(2025 年末の状況)
Clearstream 清算機関 ICE Clear Europe の清算会員が、Global Liquidity Hub の三者方式で証拠金の担保を預けられる接続13 2015 年 3 月の発表

担保の事務を請け負う事業者には、担保の選択や入れ替えとは別に、証拠金の事務を代行するサービスもあります。三菱UFJ信託銀行と日本マスタートラスト信託銀行は、店頭デリバティブの証拠金の計算、過不足の管理、取引相手との照合、授受を代行するサービスを提供しています14。変動証拠金は 2016 年 2 月、当初証拠金は 2021 年 7 月の発表です。

注

  1. National Bank of Belgium, "Securities clearing, settlement and custody"(外部サイト)(Financial Market Infrastructures and Payment Services Report 2026), section 2.2, page 22. Euroclear グループの役割の説明。 ↩ ↩2

  2. 日本証券クリアリング機構「金利スワップ取引清算業務に関する業務方法書」等の一部改正(外部サイト)の概要 4 と、新旧対照表の業務方法書の取扱い第 13 条第 2 項(2)の 2、第 44 条。 ↩ ↩2 ↩3

  3. International Capital Market Association「Frequently Asked Questions on Repo」(外部サイト)の 24 "What is tri-party repo?" の 1 段落目。 ↩ ↩2

  4. ICMA「Frequently Asked Questions on Repo」(外部サイト)の 24 の 2 段落目(担当者はあくまで代理人で、当事者の間のリスクの関係は変わらない)。 ↩

  5. BNY「BNY Triparty Segregation」(外部サイト)(PDF の作成日は 2025 年 6 月)の 4 ページ "Triparty Services" と 5 ページ冒頭。 ↩ ↩2 ↩3

  6. ICMA「Frequently Asked Questions on Repo」(外部サイト)の 24 の 3 段落目(自動の担保選択、評価のやり直し、入れ替え、最適化)。 ↩ ↩2 ↩3 ↩4

  7. BNY「BNY Triparty Segregation」(外部サイト)の 2 ページ "Triparty" の "What does it give you?" の 6 項目。 ↩ ↩2

  8. BNY「BNY Triparty Segregation」(外部サイト)の 5 ページ "Service Parameters"(必要額、照合、価格の情報源、入れ替え、現金と MMF、条件表)。 ↩ ↩2 ↩3

  9. 金融庁「コメントの概要及びコメントに対する金融庁の考え方」(外部サイト)(2015 年 12 月 11 日)の No.109 と No.110(PDF の 18 ページ目)。 ↩

  10. 日本証券クリアリング機構の「新旧対照表一覧(2026年)」(外部サイト)の 2026/09/04 の 2 件と、CDS の改正(外部サイト)の概要。施行日は同ページの Ⅲ。 ↩

  11. 日本証券クリアリング機構の制度要綱(外部サイト)(2026 年 7 月 8 日)の 4(3 ページ)。 ↩ ↩2

  12. BNY「BNY Triparty Segregation」(外部サイト)の 2 ページ "Triparty vs. Third Party"。 ↩ ↩2

  13. Clearstream「Clearstream and ICE Clear Europe launch collaboration on triparty margin collateral management service」(外部サイト)(2015 年 3 月に更新されたメディアリリース)の本文 2 段落目。 ↩

  14. 三菱UFJ信託銀行・日本マスタートラスト信託銀行の2021 年 7 月 13 日の発表(外部サイト)の 2(2 ページのスキーム図を含む)と、2016 年 2 月 16 日の発表(外部サイト)の 2。 ↩