CVA リスクの資本賦課は、CVA の変動に備える資本を計算して、自己資本比率に反映する業務で出てきます。SA-CVA(標準的方式)の承認を申請し、月ごとに報告する体制を整える業務にも関わります。

CVA リスクの資本賦課は何を求めるか

CVA リスクは、クレジット・スプレッドなどの市場の変動で CVA が変動するリスクです。銀行自身の信用リスクの変動によるものは含みません。ここでの CVA は、取引相手の信用リスクを勘案しない公正価値評価額と、勘案した公正価値評価額との差額です1。会計上の CVA は、この規制上の計算とは別のものです。

この資本賦課ができたのは、金融危機の経験によります。危機では、取引相手の信用力の悪化などによるデリバティブの時価損失が、実際の取引相手のデフォルトによる損失より大きい例がありました。バーゼル II では、取引相手のデフォルトに対する自己資本の枠組みはあっても、CVA の時価変動リスクに対する枠組みはありませんでした。2010 年に公表されたバーゼル IIIが、デフォルトに備える枠組みに加えて、CVA の変動に備える資本の賦課を導入しました2。デフォルトに備える分はカウンターパーティ・クレジットリスク(CCR)の資本、CVA の変動に備える分は CVA リスクの資本です。

バーゼル銀行監督委員会(BCBS)の見直し前の方式は、2 つでした。1 つは、取引相手の信用スプレッドを使う VaR で計測する先進的リスク測定方式です。もう 1 つは、CCR のEADから BCBS が定めた式で計測する標準的リスク測定方式です。見直しの前に指摘された問題には、市場要因によるエクスポージャーの変動を捕捉しないこと、CVA ヘッジの実務とのずれ、会計上の CVA との乖離、金融機関の規模や特性が反映されないことがありました3。

2017 年 12 月 7 日に中央銀行総裁・銀行監督当局長官グループ(GHOS)が承認したバーゼル III の最終化には、CVA リスクの枠組みの見直しが含まれます4。この見直しで、計測方法が 2 つの手法(BA-CVA と SA-CVA)と簡便法に整理されました5。バーゼル規制の枠組み全体と各区分の適用日は、バーゼル規制とデリバティブで扱います。

根拠と、対象になる取引

日本では、銀行法に基づく金融庁の自己資本比率の告示の第 8 章の 2「CVA リスク」が、計算を定めます6。標準的手法で信用リスクを計算する銀行は、CVA リスク相当額を 8% で割った額を、信用リスク・アセットの合計に足します7。

項目 告示の定め 条
算出の対象 CVA カバー取引と、適格なヘッジ取引(まとめて CVA ポートフォリオ) 第 270 条の 2 の 2 第 2 項
算出の手法 BA-CVA か SA-CVA。SA-CVA は金融庁長官の承認が要る 第 270 条の 2 の 2 第 1 項、第 270 条の 4
簡便法 国内基準行で、想定元本が一定以下の場合 第 270 条の 5

CVA カバー取引は、次の者以外を取引相手とする派生商品取引(告示の語で、デリバティブ取引のこと)と、銀行の財務会計で時価評価の対象となるレポ形式の取引、信用取引などです(重要性が低いものを除く)。除かれるのは、適格中央清算機関、一定の要件を満たす間接清算参加者の取引の直接清算参加者、資金清算機関等です6。外部の CVA ヘッジ取引の相手が CVA カバー取引の相手にも当たるときは、その相手に対する CVA リスク相当額も算出します8。

3 つの計算方法と選び方

計算方法は、金融機関の規模や特性に合わせて 2 つの手法と 1 つの簡便法が用意され、使うために必要な当局の承認が違います5。

方法 計算の入力 取引相手の信用力のヘッジ 市場要因のヘッジ 当局の承認
BA-CVA(基礎的方式) CCR の EAD と実効マチュリティ 勘案できる 勘案しない 不要
SA-CVA(標準的方式) CVA と、ヘッジ手段の感応度 勘案できる 勘案できる 金融庁長官の承認が要る
簡便法 CCR の信用リスク・アセット 勘案しない 勘案しない 条件に当たる国内基準行が使える

表の列は、金融庁と日本銀行の 2018 年の概要の整理です。承認と簡便法の使える範囲は、告示の定めです910。SA-CVA を使う銀行も、SA-CVA を使うのが適切でないネッティング・セットには BA-CVA を使います11。会計上の CVA を計算していなくても、BA-CVA は計算できます12。

はいいいえ算出の対象になる取引(適格中央清算機関などを除く相手との派生商品取引など)があるか算出の対象になる取引がないはいいいえ金融庁長官から SA-CVA の承認を受けているかBA-CVA で計算する(条件に当たる国内基準行は簡便法も可)SA-CVA で計算する(適切でないネッティング・セットはBA-CVA)
図 1CVA リスクの計算方法を分ける質問
図の説明

質問は 2 つで、算出の対象になる取引があるか、SA-CVA の承認を受けているかです。質問 1 が「いいえ」なら、算出の対象になる取引がない、という結果です。質問 2 が「いいえ」、つまり承認を受けていなければ BA-CVA で計算し、国内基準行で条件に当たれば簡便法も使えます。承認を受けていれば SA-CVA で計算しますが、SA-CVA を使うのが適切でないネッティング・セットには BA-CVA を使います。

簡便法の条件と計算例

簡便法は、バーゼル銀行監督委員会(BCBS)の枠組みでは、非清算の店頭デリバティブの想定元本が 1,000 億ユーロ以下の銀行に限られます。CVA の所要自己資本を CCR の所要自己資本と同じ額とし、ポートフォリオ全体に使います。条件を満たしても、監督当局が特定の銀行に使わせないこともできます13。告示では、国内基準行で、適格中央清算機関など以外を相手にする派生商品取引の想定元本の合計が、直近の期末から算出基準日までの間 10 兆円以下なら使えます。その派生商品取引の信用リスク・アセットの額に 12% を掛けた額を CVA リスク相当額とし、CVA ポートフォリオ全体に使い、ヘッジの効果は反映しません10。

簡便法を使えるかは、告示の条件では次の 2 つの質問で確かめます。

はいいいえ国内基準行か簡便法は使えないはいいいえ適格中央清算機関など以外との派生商品取引の想定元本合計は 10 兆円以下か簡便法は使えない簡便法を使える
図 2簡便法を使えるかの判定(告示)
図の説明

2 つ目の質問の想定元本の合計は、直近の期末から算出基準日までの間の額です。どちらかの質問が「いいえ」なら簡便法は使えず、BA-CVA か SA-CVA で計算します。

国内基準行の G 銀行で、適格中央清算機関など以外を相手にする派生商品取引の想定元本の合計が、直近の期末から算出基準日までの間 8 兆円の架空の例で考えます。2 つの質問に「はい」と答えられるため、簡便法を使える条件を満たします。適格中央清算機関など以外を相手にする派生商品取引の信用リスク・アセットが 2,500 億円なら、CVA リスク相当額は 2,500×12%=3002{,}500 \times 12\% = 300 億円です。この簡便法では、CVA のヘッジの効果は CVA リスク相当額に反映されません。想定元本の合計が 12 兆円なら 10 兆円を超えるため、簡便法は使えず、BA-CVA か SA-CVA で計算します。

BA-CVA の式と計算例

式の構造

BA-CVA は、取引相手ごとの値 ScS_{c} を求め、取引相手の間の相関を使って合算します。ヘッジを勘案するかどうかで 2 つの形があります。

ヘッジを勘案しない部分の資本 KreducedK_{\text{reduced}} は、次の式です。

Kreduced=(ρ∑cSc)2+(1−ρ2)∑cSc2K_{\text{reduced}} = \sqrt{\left(\rho \sum_{c} S_{c}\right)^{2} + (1-\rho^{2}) \sum_{c} S_{c}^{2}}

ρ\rho は 0.5 です。取引相手 cc の値 ScS_{c} は、取引相手のすべてのネッティング・セット NSNS について、次のように求めます14。

Sc=1α RWc∑NSMNS⋅EADNS⋅DFNSS_{c} = \frac{1}{\alpha} \, RW_{c} \sum_{NS} M_{NS} \cdot EAD_{NS} \cdot DF_{NS}
記号 意味
α\alpha CCR の計算方法で決まる値
RWcRW_{c} 取引相手のセクターと信用力(投資適格か、投機的格付・無格付か)で決まるリスク・ウェイト
MNSM_{NS} ネッティング・セットの実効マチュリティ。下限は 1 年で、5 年の上限は付けない
EADNSEAD_{NS} CCR の計算で使う与信相当額(CVA の影響は勘案しない)
DFNSDF_{NS} 規制上の割引係数 (1−e−0.05 MNS)/(0.05 MNS)(1-e^{-0.05\,M_{NS}})/(0.05\,M_{NS})

α\alpha は、SA-CCR と期待エクスポージャー方式で 1.4、カレント・エクスポージャー方式で 1 です。期待エクスポージャー方式で取引相手に固有の特徴があるときは、より保守的な値を使います。期待エクスポージャー方式の承認を受けた銀行は、MNSM_{NS} に別の実効マチュリティを使い、DFNSDF_{NS} は 1 です。

SA-CCR の EAD は、再構築コストとポテンシャル・フューチャー・エクスポージャー(PFE)の合計に 1.4 を掛けて求めます15。SA-CCR を使う銀行では、1.4 を掛けて求めた EAD を、ScS_{c} の式で α=1.4\alpha = 1.4 で割ることになります。EAD の求め方はSA-CCRで扱います。

RWcRW_{c} は、告示の表で、次のとおりに決まります16。

取引相手のセクター 投資適格(%) 投機的格付・無格付(%)
ソブリン(中央銀行、国際開発銀行を含む) 0.5 2.0
地方自治体、政府支援法人(非金融)、教育機関、行政機関 1.0 4.0
金融(政府系金融機関を含む) 5.0 12.0
素材、エネルギー、工業、農業、製造業、鉱業、採石業 3.0 7.0
消費財・サービス、運輸、倉庫、行政支援サービス業 3.0 8.5
テクノロジー、通信 2.0 5.5
ヘルスケア、公益事業、専門・技術関連業 1.5 5.0
その他 5.0 12.0

ヘッジを勘案する形(完全な BA-CVA)は、ヘッジを勘案した資本 KhedgedK_{\text{hedged}} と KreducedK_{\text{reduced}} の加重平均を取ります。ヘッジを勘案しない形(限定的な BA-CVA)は、β\beta を 1 にして、ヘッジの効果を反映しません。どちらも、最後に割引係数 0.65 を掛けた額が CVA リスク相当額です1718。

Kfull=βKreduced+(1−β)Khedged,β=0.25K_{\text{full}} = \beta K_{\text{reduced}} + (1-\beta) K_{\text{hedged}}, \quad \beta = 0.25 Khedged=(ρ∑c(Sc−SNHc)−IH)2+(1−ρ2)∑c(Sc−SNHc)2+∑cHMAcK_{\text{hedged}} = \sqrt{\left(\rho \sum_{c} (S_{c}-SNH_{c}) - IH\right)^{2} + (1-\rho^{2}) \sum_{c} (S_{c}-SNH_{c})^{2} + \sum_{c} HMA_{c}}

SNHcSNH_{c} は、取引相手 cc の単一の債務者を参照するCDSなどによるヘッジの効果、IHIH はインデックスによるヘッジの効果、HMAcHMA_{c} は、取引相手を直接参照しないヘッジに残る差(ベーシス)の分です。ヘッジ hh の効果は、次の形で求めます19。

SNHc=∑h∈cγhc⋅RWh⋅MhSN⋅BhSN⋅DFhSN,HMAc=∑h∈c(1−γhc2)(RWh⋅MhSN⋅BhSN⋅DFhSN)2SNH_{c} = \sum_{h \in c} \gamma_{hc} \cdot RW_{h} \cdot M_{h}^{SN} \cdot B_{h}^{SN} \cdot DF_{h}^{SN}, \quad HMA_{c} = \sum_{h \in c} (1-\gamma_{hc}^{2}) \left(RW_{h} \cdot M_{h}^{SN} \cdot B_{h}^{SN} \cdot DF_{h}^{SN}\right)^{2}

γhc\gamma_{hc} は、ヘッジの参照先で決まる相関です。取引相手を直接参照するなら 100%、取引相手と法的に関連する組織なら 80%、同じセクターで同じ地域の組織なら 50% です。BB はヘッジの想定元本、MM はヘッジの実効マチュリティです。

T 銀行の計算例

T 銀行が、金融機関の V 社(投資適格、取引相手は 1 社)と 1 つのネッティング・セットで取引し、SA-CCR の EAD が 14 億円、実効マチュリティが 3 年の架空の例で考えます。T 銀行は SA-CCR を使うので、α\alpha は 1.4 です。

まず、割引係数を求めます。DF=(1−e−0.15)/0.15=0.9286DF = (1-e^{-0.15})/0.15 = 0.9286 です。次に、金融の投資適格のリスク・ウェイトは 5.0% なので、Sc=(1/1.4)×0.05×3×14×0.9286=1.393S_{c} = (1/1.4) \times 0.05 \times 3 \times 14 \times 0.9286 = 1.393 億円です。取引相手が 1 社なら、KreducedK_{\text{reduced}} は ScS_{c} と同じ 1.393 億円です。ヘッジがなければ、CVA リスク相当額は 0.65×1.393=0.9050.65 \times 1.393 = 0.905 億円で、8% で割った信用リスク・アセットへの上乗せは 11.32 億円です。

次に、T 銀行が、V 社の CVA のヘッジに、実効マチュリティ 3 年、想定元本 10 億円の CDS を使う 2 つのケースを比べます。1 つは V 社を直接参照する CDS(γ\gamma は 100%)、もう 1 つは V 社と同じセクターで同じ地域の別の会社を参照する CDS(γ\gamma は 50%)です。どちらも CDS の対象はリスク・ウェイト 5.0% の金融です。

ケース KhedgedK_{\text{hedged}}(億円) KfullK_{\text{full}}(億円) CVA リスク相当額(億円) 信用リスク・アセットへの上乗せ(億円)
ヘッジなし 1.393 1.393 0.905 11.32
V 社を直接参照する CDS 0.000 0.348 0.226 2.83
同じセクター・地域を参照する CDS 1.393 1.393 0.905 11.32

直接参照する CDS の例では、ヘッジの効果 SNHcSNH_{c} が ScS_{c} と同じ 1.393 億円になり、KhedgedK_{\text{hedged}} はゼロになります。それでも β=0.25\beta = 0.25 のため、KfullK_{\text{full}} は KreducedK_{\text{reduced}} の 25% が残ります。同じセクター・地域の CDS は、効果が 0.696 億円に下がり、ベーシスの分 HMAcHMA_{c} が 1.455(億円の二乗)加わります。この例の数値では KhedgedK_{\text{hedged}} がヘッジなしと同じ 1.393 億円になり、資本は減りません。これは、γ\gamma が 50% で想定元本が同じというこの例の組み合わせだけの結果で、部分的なヘッジがいつも効かないという意味ではありません。ヘッジの経済的な効果と、資本の計算で認められる効果は、このように一致しません。想定元本や相関を変えると、結果も変わります。

SA-CVA の式と承認の条件

式の構造

SA-CVA は、CVA の感応度を使う方式です。FRTB の標準的方式と同じく、リスク感応度にリスク・ウェイトを掛け、相関を使って合算します20。CVA リスク相当額は、デルタ・リスクの分とベガ・リスクの分の合計です。デルタ・リスクは、金利、外国為替、取引相手のクレジット・スプレッド、参照先のクレジット・スプレッド、株式、コモディティの 6 つのリスク・クラスで算出します。ベガ・リスクは、取引相手のクレジット・スプレッドを除く 5 つで算出します21。リスク・クラスの間の相関は勘案せず、単純に合計します20。

リスクファクター kk ごとに、CVA の感応度 skCVAs_{k}^{CVA} と、適格なヘッジ手段の感応度 skHdgs_{k}^{Hdg} を求め、リスク・ウェイト RWkRW_{k} を掛けた差が、ネット加重感応度 WSkWS_{k} です22。

WSk=RWk skCVA−RWk skHdgWS_{k} = RW_{k} \, s_{k}^{CVA} - RW_{k} \, s_{k}^{Hdg}

バケット bb ごとの資本 KbK_{b} は、バケットの中で相関 ρkl\rho_{kl} を使って WSkWS_{k} を合算し、ヘッジが完全に効かない余地として、ヘッジの加重感応度の二乗に R=0.01R = 0.01 を掛けた分を加えて求めます。リスク・クラスの資本は、バケットの間の相関 γbc\gamma_{bc} を使って、次のように合算します22。

K=mCVA∑bKb2+∑b∑c≠bγbc Sb ScK = m_{CVA} \sqrt{\sum_{b} K_{b}^{2} + \sum_{b} \sum_{c \neq b} \gamma_{bc} \, S_{b} \, S_{c}}

SbS_{b} は、バケット内の WSkWS_{k} の合計を、−Kb-K_{b} から KbK_{b} の範囲に収めた値です。乗数 mCVAm_{CVA} は告示で 1 ですが、金融庁長官は、CVA の計算のモデル・リスクに対処するために必要と判断した場合に、この乗数を引き上げます23。リスク・ウェイト、相関、バケットの表はリスク・クラスごとに告示が定めます。

承認の条件

SA-CVA を使う銀行は、あらかじめ金融庁長官の承認を受け、承認を取り消されない限り使い続けます9。承認の審査では、エクスポージャー計測モデルが、承認に先立って 1 年以上、銀行のリスク管理で運用されていることなどが見られます24。承認を受けた銀行(SA-CVA 採用行)は、CVA リスク相当額を月ごとに算出し、金融庁長官に報告します25。

承認の基準には、次のことが含まれます26。

  • CVA デスクを置き、CVA のリスク管理を主導し、ヘッジ取引を執行するトレーダーを配置する。リスク管理の状況を示す書類は、週 1 回以上作る。
  • エクスポージャー計測モデルを検証する部署を、取引部門と CVA デスクから独立して置く。
  • CVA のリスク管理の全体の過程を、少なくとも年 1 回、内部監査が検証する。

CVA は、取引相手のデフォルトで生じる損失の期待値として測ります。構成要素は、市場で観測されるクレジット・スプレッドなどから推計したデフォルト確率、そのデフォルト確率を求めるときに使った、デフォルト時の損失率(LGD)、シミュレーションによる将来エクスポージャーです。SA-CVA 採用行自身のデフォルト・リスクは考慮しません27。将来エクスポージャーは、会計 CVA を測るモデルに基づいて測り、ネッティングの認識も会計 CVA と同じ扱いです28。

担保の効果は、法的な要件を満たす場合に限り認識します。担保を授受しない期間(リスクのマージン期間)は、レポ形式の取引などは 4 営業日、それ以外は 9 営業日に、担保授受の間隔 NN(日次なら 1)を足した日数が下限です29。

CVA のヘッジとほかの資本賦課

CVA リスクの適格ヘッジとして認められた外部の取引は、CVA リスクの枠組みで資本を計算し、市場リスクの計測の対象に含めません。二重に資本を積まないためです30。適格でない外部のヘッジは、市場リスクの対象になります31。

CVA のヘッジは、外部との取引のほか、銀行の中のほかのトレーディング・デスクとの内部取引でもできます。内部取引は、CVA デスクとトレーディング・デスクの互いに完全に相殺するポジションで構成します。市場リスクの枠組みだけが捕捉するリスクの計測の対象になる内部取引には、適格なヘッジと認める条件が付きます。対象のリスクは、カーベチャー・リスク、デフォルト・リスク、残余リスクです。トレーディング・デスクが第三者との間で、CVA デスクに対するポジションを完全に相殺する取引を結んでいる必要があります313233。

適格なヘッジの条件は、方式で違います。BA-CVA は、単一の債務者を参照する CDS とコンティンジェント CDS、インデックス CDS に限ります32。SA-CVA は、CVA のリスクを軽減する目的で使って管理し、ヘッジ対象とヘッジ手段の文書を作っている取引ならよく、金利、外国為替、株式、コモディティなどのヘッジも反映できます。ただし、証券化エクスポージャーや、ルックスルーができないファンドへの出資を使ったヘッジ取引は、適格になりません33。

CVA リスクの資本は、ほかの資本賦課と入力や枠組みを共有します。BA-CVA は、SA-CCR などで求めた EAD を入力にします。SA-CVA は、FRTB の標準的方式と同じ感応度ベースの枠組みを使い、将来エクスポージャーの計測には、会計 CVA を測るモデルを使います2028。

適用時期と、2018 年の概要との違い

日本では、告示の改正(令和 4 年金融庁告示第 22 号、2022 年 4 月 28 日の日付)が、2023 年 3 月 31 日から適用されます。適用日から 1 年(内部モデルを用いない国内基準行は 2 年)を経過する日までの自己資本比率の算出は、従前の例によります34。2026 年 10 月の時点では、この猶予はすでに終わっています(1 年の猶予は 2024 年 3 月 31 日、2 年の猶予は 2025 年 3 月 31 日まで)。適用日前にも、SA-CVA の承認の申請をできます35。適用日前に旧告示の規定で CVA リスク相当額を算出していた銀行には、簡便法を適用しません36。

金融庁と日本銀行の 2018 年 2 月の概要は、BCBS の最終文書の理解を助ける資料です37。この最終文書は 2017 年 12 月に公表されました4。この概要と、2026 年 8 月 24 日更新の告示では、次の点が違います38。

項目 2018 年 2 月の概要 告示(2026 年 8 月 24 日更新)
簡便法の対象 非清算店頭デリバティブの想定元本が 1,000 億ユーロ以下の銀行。CVA の所要自己資本は CCR と同額 国内基準行で、対象の派生商品取引の想定元本が 10 兆円以下の場合。信用リスク・アセットの額に 12% を掛けた額
BA-CVA の割引係数 記載なし 0.65
BA-CVA のソブリンの投機的格付・無格付のリスク・ウェイト 3.0% 2.0%
SA-CVA の乗数 mCVAm_{CVA} 1.25 1

式と BA-CVA、SA-CVA の数値は、表の「2018 年 2 月の概要」の列を除き、告示によります。2010 年のバーゼル III と 2017 年 12 月 7 日の最終化の記述は、概要とプレス・リリースによります。

実務への影響

方式によって、業務で要る手続が変わります。BA-CVA に承認は要りませんが、SA-CVA は金融庁長官の承認が要り、承認を受けた銀行は CVA リスク相当額を月ごとに算出して報告する体制を整えます39。ヘッジ取引は、方式ごとの適格性の条件を満たすものだけが、CVA リスク相当額の計算に反映されます3233。

注

  1. 「銀行法第十四条の二の規定に基づき、銀行がその保有する資産等に照らし自己資本の充実の状況が適当であるかどうかを判断するための基準」(平成十八年金融庁告示第十九号。金融庁の全体版、2026 年 8 月 24 日更新。以下「告示」)第 1 条第 77 号の 2「CVAリスク」(22 ページ)。 ↩

  2. 金融庁、日本銀行「「信用評価調整(CVA)リスクの最低所要自己資本」の概要」(2018 年 2 月。以下「2018 年の概要」)の「1.これまでの経緯」(2 ページ)。本文の「時価損失」「時価変動リスク」は、この資料の語です。 ↩

  3. 2018 年の概要の「2.現行のCVAリスク規制」(3 ページ)。 ↩

  4. 金融庁「プレス・リリース「中央銀行総裁・銀行監督当局長官はバーゼルⅢの最終化に合意」(仮訳)」(2017 年 12 月 7 日)の 1 ページ(承認の日付と、CVA リスクの枠組みの見直しを含むこと)、2 ページ(最終規則文書を同日に公表したこと)。 ↩ ↩2

  5. 2018 年の概要の「3.CVAリスクの見直しの概要」(4 ページ)。 ↩ ↩2

  6. 告示第 270 条の 2 第 1 項、第 2 項(393〜394 ページ)。「時価評価の対象となる」は第 2 項の語で、第 1 条第 77 号の 2 の CVA の定義は「公正価値評価額」と書きます。 ↩ ↩2

  7. 告示第 48 条第 1 項第 3 号(136 ページ)。 ↩

  8. 告示第 270 条の 2 の 3(394〜395 ページ)。 ↩

  9. 告示第 270 条の 4(400 ページ)。 ↩ ↩2

  10. 告示第 270 条の 5 第 1 項(429 ページ)。ポートフォリオ全体に適用し、CVA リスクのヘッジ手段によるヘッジ効果は反映できません(同条第 2 項)。 ↩ ↩2

  11. 告示第 270 条の 4 の 14 第 1 項(406 ページ)。ネッティング・セットを分ける場合の要件は同条第 2 項です。 ↩

  12. 2018 年の概要の「6.基礎的方式(BA-CVA) ~CVAヘッジを勘案しない場合(Reduced version)~」(9 ページ)。 ↩

  13. 金融庁、日本銀行「「信用評価調整(CVA)リスクの最低所要自己資本」の概要」(2018 年 2 月)の「3.CVAリスクの見直しの概要」(4 ページ)と「7.簡便法」(11 ページ)。 ↩

  14. 告示第 270 条の 3 の 3 第 1 項、第 2 項(396〜397 ページ)。割引係数は同条第 2 項の DFNS の算式です。期待エクスポージャー方式の承認を受けた銀行は、MNSM_{NS} に第 158 条第 1 項の実効マチュリティ、DFNSDF_{NS} に 1 を用います。 ↩

  15. 告示第 79 条の 2 第 1 項「与信相当額=1.4×(RC+PFE)」(190 ページ)。 ↩

  16. 告示第 270 条の 3 の 3 第 3 項の表(397〜398 ページ)。 ↩

  17. 告示第 270 条の 3 の 3 第 1 項(396 ページ)。β\beta は 0.25、ρ\rho は 0.5、割引係数(DSBA-CVADS_{\text{BA-CVA}})は 0.65。 ↩

  18. 告示第 270 条の 3(395 ページ)、第 270 条の 3 の 4(399 ページ)。限定的な BA-CVA は、β\beta を 1 として算出した KfullK_{\text{full}} に 0.65 を掛けた額です。 ↩

  19. 告示第 270 条の 3 の 3 第 4 項、第 5 項、第 7 項(398〜399 ページ)。γhc\gamma_{hc} の値は同条第 4 項の表。インデックスのヘッジの IHIH は第 5 項、第 6 項(リスク・ウェイトに 0.7 を乗じるなどの調整)。DFhSNDF_{h}^{SN} は (1−e−0.05 MhSN)/(0.05 MhSN)(1-e^{-0.05\,M_{h}^{SN}})/(0.05\,M_{h}^{SN}) です。 ↩

  20. 2018 年の概要の「5.標準的方式(SA-CVA) ~計算の概要~」(6 ページ)。 ↩ ↩2 ↩3

  21. 告示第 270 条の 4 の 7 第 1 項〜第 3 項(401〜402 ページ)。 ↩

  22. 告示第 270 条の 4 の 8 第 3 項〜第 6 項(402〜403 ページ)。RR は同条第 5 項で 0.01(ヘッジング・ディスアローアンス)。バケット内の合算の式の正確な形は、告示の同条第 5 項にあります。 ↩ ↩2

  23. 告示第 270 条の 4 の 10(404 ページ)。 ↩

  24. 告示第 270 条の 4 の 3(400 ページ)。 ↩

  25. 告示第 270 条の 4 の 6(401 ページ)。 ↩

  26. 告示第 270 条の 4 の 38 第 2 項第 3 号(CVA デスクと週 1 回以上の書類)、第 6 号(検証部署の独立)、第 5 項(年 1 回以上の内部監査)(426〜428 ページ)。 ↩

  27. 告示第 270 条の 4 の 31 から第 270 条の 4 の 33(422〜423 ページ)。 ↩

  28. 告示第 270 条の 4 の 34 第 1 項〜第 5 項(423〜424 ページ)。 ↩ ↩2

  29. 告示第 270 条の 4 の 35 第 1 項、第 2 項第 3 号(424〜425 ページ)。 ↩

  30. 2018 年の概要の「4.CVAヘッジの取り扱い」(5 ページ)。 ↩

  31. 告示第 11 条の 13 第 1 項〜第 4 項(61 ページ)。 ↩ ↩2

  32. 告示第 270 条の 3 の 2(395〜396 ページ)。 ↩ ↩2 ↩3

  33. 告示第 270 条の 4 の 13 第 1 項、第 2 項(405 ページ)。除外する商品は、同項ただし書が引く第 271 条の 2 第 6 項各号(435 ページ)。 ↩ ↩2 ↩3

  34. 告示(令和四年四月二十八日金融庁告示第二十二号)附則第 1 条、第 2 条第 1 項、第 2 項(596〜597 ページ)。 ↩

  35. 同附則第 16 条(605 ページ)。 ↩

  36. 同附則第 17 条(605 ページ)。 ↩

  37. 2018 年の概要の 1 ページ(表紙の注記)。 ↩

  38. 2018 年の概要の「3.CVAリスクの見直しの概要」(4 ページ)、「5.標準的方式(SA-CVA)」(6 ページ)、「6.基礎的方式(BA-CVA)」(9 ページ)、「7.簡便法」(11 ページ)。告示は、第 270 条の 5 第 1 項(429 ページ)、第 270 条の 3 の 3 第 1 項、第 3 項(396〜397 ページ)、第 270 条の 4 の 10 第 1 項(404 ページ)。 ↩

  39. 告示第 270 条の 4 の 3(400 ページ。承認の基準に適合する見込みの審査)、第 270 条の 4 の 36、第 270 条の 4 の 37(425 ページ。月ごとの算出と報告の体制の整備)。 ↩